表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/138

[#39-薔薇の暴悪]

[#39-薔薇の暴悪]



5月9日──。


私が、家にいる最後の日。母と父が揃っている。


色々あった2人だけど、なんとか最悪の結果にはならずに、全ての膿を出し合った。そうしていくうちに、お互いの存在が、私を施設に送った後でも必要…だと言う事を知ったから。案外、歪な関係にはなっていなかった。


それは、私の前だから?ううん、違うと思う。2人は本当に、私の“直視”できない所で、両親の間に不要な感情を削ぎ落としていた。

3人がこうやって揃う事に、私は普通に嬉しかったんだ。


「ママ、パパ、もうわかれわかれしないでね…」

「うん、そうだね。パパが100%悪かったんだよ…本当にごめんなさい。ママには何回も何回も謝って許してもらおうとも思ってないし、どうしたって許される事じゃ無いのはわかってるんだ…だから罪を償っていく。そう決めたんだよ」


「つみ?」


「そうだよ、罪…僕が全部悪いんだ…」

「いや…私も悪かったわ…」

「…そんな…」

「いいや、そうよ、私…妻として…夫への成すべき事ができて無かったのよ…話し合ってわかったわ…私にも非がある。そう、落とし込んだの」

「ほんとうに、ごめんなさい」

「さぁ、フラウドレス?もう私達は大丈夫。明日、あなたはこの国のために沢山の力を使うの。だから、それに備えてたっくさん栄養をエネルギー補給しなきゃね!」

「ロリス、フラウドレスはまだ、そんな言葉わからないよ!もっとわかるような言葉で言わなきゃ!」

「そうだったそうだった!そうだよね!フラウ?要はね…えぇ〜と…“力”は判る…よね…?」

────

嘘つき

────

「なに、今の…?」

「君も聞こえたのか?判らない…何か…頭にズキンと突き刺されたようだ…」


「フラウドレスは大丈夫?」

「…」

「どうしたの??ねえ!フラウドレス?フラウドレス!?ねぇ、、!!この子どうしたのよ!なに!?何が起きたのよ!ねぇアナタ!!これなんなのよ!!なんでこんなにヨダレ垂らしてるの!」

「癲癇だ…」

「なんでこの子に癲癇が起きるのよ!!なんで!?」

「そんなの僕にも判らないよ!でもこんなの……」

顔が変わる。見たことも無い…見たくもない…受け入れたくないフラウドレスの表情が、両親である2人には確認できた。

「嫌だ…そんな…フラウドレス!しっかりして!」

止まらない。手と足の震えは激しさを増していき、大人の抑えが効かない。

「取り敢えず救急車呼ぼう…!!」


「そうね…」


───

何してるのよ⋯私の娘に⋯何するつもりなの⋯。

───



───────◆◆◆──────

凄い心配してくれるんだね…あんたの方って。なんか凄いムカつくんだよなぁ、、、って、、アレ?ちょっと、、嘘でしょ?あんたほんとうに気絶しちゃったの??えええええーーーーー、勘弁シテよ…。なぁんか、ウザったくなっちゃった。ママとパパも、なんでこんなに仲良くなってんのよ…意味わかんない…意味わかんない…意味わかんない…意味わかんない!!!殺してよ。殺して。殺してよ。この2人を、八つ裂きにするのよ!!

───────◆◆◆──────

やめて!私を犯さないで!私のなかに入って来ないで!私に溶け込まないで!私はわたしでいたいの!せっかく戻れたのに!お願い!お願いだから、私でいさせて…。おねがい…。

──◆◆◆──

嫌。

──◆◆◆──

衝撃を感じた。

自らが振り下ろした蹴りは、強い風が出てた。

何も感じない。

何かを感じたい。

何も感じさせてくれない。

身勝手に守るお前はなんだ?

どうして、願い無くそういう事をする?

、、、、、、感じる。

血を感じる。

視線を感じる。

熱を感じる。

声を感じる。

聞こえる。

泣いてる。

喚いてる。

叫んでる。

哭いてる。

誰の声か、判らない。

聞き馴染みのない声。

特定しようがない声。

すると、一つの機能が突然回復し出した。

視覚。

黒幕に覆われていた視界に一筋の光が差した。

無邪気な笑顔を見せるように、私の感情を無視し、己の行動を最優先事項としたあまりにも複雑なもの。

母親と父親。

2人が、寝込んでいる。

先程までの状況とは全く違う。何時間も時が経過しているかのような世界。

粒子上の視界であるため、2人の現状が明確に把握出来ないのが、私の鬱憤に繋がる。

だがその願いを脳内に組成させた途端に、鬱憤は晴らされた。

腕が無い。

2人、それぞれの右腕が無かった。

腕は部位切断されていて、酷い出血。

なんでこんな事が起きているのか。

判らない。

聞いた事も無い、声色が飛ぶ。

胸を裂く。

心を貫く。

「どうシて…、、どうし、、、て、、こんナことするの、、、?」

「ママ?」

「フラウぅ?アナタ…なんでコんなことをシたの?」

「ママ…」

「ねェ…フラウ…、、、フラウドレス…?」

「ママ…」

「フラウ…ナノヨネ…?手ェ…ナインダケド…、、」

「ママ、、違う…私じゃない…」

「ナンデェ…?ナンデ、、、、ワタシタチフタリヲコンナメニアワセラレルノハ…アナタダケヨ…」

「ママ…違うの、、違う、、、違うって、、、、、判らないの…本当なの…、、、、なんで、、」

「フラウ…」

「パパ…」

「、、、、、、ごめんね、、、僕がぜんぶ悪いんだ…そうだよ…、、うん、、そうなんだ、、、そうだよ…でもネ、、、、僕は、、フラウドレスを産むことにハンタイした…」

「……」

「わかってたんだ…君が能力者として…産まれることを…でも、、、いいんだ…、、、、こうして、、僕を贖罪から解放してくれた…」

「違う…」

「違うんじゃない…違うんじゃないんだよ…君はこれでいい。これでいいんだよ。これから…頑張るんだよ…ほんとうに…フラウドレスは、、、僕の誇りだよ…それは…僕が一番に、、りかいしてるつもりだ…」

「…ねぇ…しぬの?」

「…そうなりたいな…ほら、ママはもう…喋んない…」

「いつか、こういう日が来るって、わかってた?」

「、、、、、、、、、、、、、」

父親は私の問いに答えること無く、息絶えた。それが私からの問いに対して、回答する事が難しいから…という愚かな終局を迎えたとはとてもじゃないけど、判定したく無かった。

この結果が、どうであれ、私には十字架が取り憑いた。軽いのか重いのか、よく判らない。自分で下した選択じゃ無いからだ。多元世界からの攻撃。一体どうして、このタイミングで起きたのか…私にはそれを鮮明にするべく、行動を起こそうと思う。

どこに行けばいいのか。

誰に会えばいいのか。

どうやったら、その“線”が並べられた多元世界に辿り着くのか。

だが、そんな私の生存理由を犯す出来事が発生する。

マーチチャイルドから、能力者捕捉調査班が出動。ラキュエイヌ家に訪問した。惨劇から1時間も経過していない…いや、これに関して私は判らない。

知らない大人。

家に来る。

何か喋っている。

さっきまで機能していた聴覚は、どこへやら。

何も聞こえない。

視覚はボンヤリ、不全では無い。

後に「あの時いた人物はこの中の誰でしょう」と問い質されたら、私はそれから逃げるだろう。

そうして、私は、連れて行かれた。

「この子だな」

「はい、間違いありません。能力者シグナルが3桁パーセントを突破しています」

「この子が、フラウドレス・ラキュエイヌ…この2人は…?」

「両親でしょう…」

「酷いな…これは…」

「はい、また腕を狙っています」

「、、、よし、遺体から採取される遺伝子エネルギーを回収したら、警察に引き渡す」

「この子は…」

「当然、連れて行く。明日から我が国の絶対力として活用させてもらう」


西暦3703年5月11日──。

フラウドレス・ラキュエイヌ、マーチチャイルド収容。



西暦3714年4月7日──。

ヘロディシガ・プロセルピナ=ネロヴー 制御管制ルーム“花弁の胎盤”


「姉さん?」

「う、、うん…」

「どうしたの?大丈夫?凄い厳しい顔してたけど…」

「大丈夫よサンファイア」

「寝癖…可愛いよ」

「フン、あなたはもうちょっと私を敬う事ね」

「“可愛い”って敬ってないのかな…」

「ええ、そうよ。敬ってない」

「そうですか…」

「フラウドレス、着いたぞ」

「うん、アスタリス」

「着いたよ。目標ポイントの座標地点だ」

「へぇ、凄い所だね…」

「これが過去よ。私達が生きてきた場所の何年も前の姿」

「フラウドレス、ここで…始めるのか?」

「ええ、もちろん。ここから殺る意味がある」

「無理しないでね」

「無理はするな」

「ありがとう。全てをゼロに戻す、《パーフェクトワールド》の始まりだよ」


第二章、終幕。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ