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[#38-いつもこうしてたら、花を愛でる]

[#38-いつもこうしてたら、花を愛でる]



忘れられない。

忘れたくない。

忘れることができない。

忘れようにも、こべりついてる。

懐かしくない。

いつも、近くにある。

脳みその中、直ぐに取り出せそうな…。

近くにある。

近くにある。

近くにある。

近くに無い時、それは自分の死を意味する。

近くにある。

だからと言っても、今、自分が生きてる…なんて思わない。でも、生きてる。

いや…、、、、

生かされた?…、、のまちがい。

判らない。判りたくない。

まただ、またこうして、自分の中で、決めつけようとする。自分なんて何ができるか…わかったもんじゃない。自分ですら、力を知らない。

まだ、出したことの無いものがあると思っている。それを出す時が、今だ。

自由の存在。

誰にも束縛されない、自由の存在。

私がルールの世界。

1本の線がある。その線は私から伸びている。その線が、どこを辿るのか…決めるのは私。

そう、私。

私が全てを決断できる世界。

だから、壊すの。

だから、削除するの。

だから、始末するの。

だから、リセットするの。

だから、変わるの。

世界が、新たに誕生する。

────

「“ヘイズローザ”?」

────

深紅の柩。誰も居ない私だけの空間。私が私に対して、自問自答をする場所。胎内のように包まりながら、私はこうして、世界を見つめ直す。そんな時、好んで呼ばれたくない言葉が掛けられる。

「何でその名前で呼ぶの?」

「いや、、、、久々に呼んでみたんだ」

「まぁ、いいけど…」

「姉さん見つけたよ」

「うん、ありがとう、《サンファイア》」

「遅かったな、サンファイア」

「《アスタリス》も協力してよ。そしたら、もっと早く見つけれたのに」

「俺みたいなんは、そーいう雑務はやんねぇんだよ」

「なにぃ?」

「サンファイアが、こーいうのは“お似合い”だっつってんだよ」

「やんのかァあ?」

「おお、ヤル気かぁ?こいつ」

─────

「やめな」

────────────

「姉さん…」「すまん」


「次は、どこなのサンファイア」

「うん、次はね…ここ」

「なんだここは?建物が凄い伸びてるな…」

「この時代は、世界戦争が起きる原因を作った“存在”が誕生した時代だよ」

「ここが…アイツらの…生まれたセカイ、、、」

「いくか?フラン」

「当然でしょ」

「よし、サンファイア殺ろうぜ」

「言われなくても」


3人は“標的”を探していた。

その標的というのは、人間と時代。

3人は、恨んでいる。人間を恨んでいる。憎んでいる。裏切られた。全てを捨て去られた。心の無い獣というのに相応しいヤツらに、支配された。怖い思いをした。

私達、3人は…、、何もできなかった。

でも、今ならできる。

今なら、自分が今、どうするべきか。次に進むにはどうすればいいのか。何を果たせばいいのか。

あの時は、殺りたくても殺れなかった。

殺してやる。

殺してやる。

殺してやる。

◈────────────────◈

見つけたんだ。

全ての始まり…

セカンドステージチルドレンオリジンを。

◈────────────────◈


西暦3700年4月9日──。


《フラウドレス・ラキュエイヌ》、誕生。

戦禍の中で、私は生まれた。

3年前に開戦した…と位置づけられたシェリアラージュ戦争。今までの戦争とは違い、セブンスが民間人をも攻撃する最悪のフェーズに突入した。

今まで第2フェーズとして謳われていたデストラクチャーズ戦争は、セブンスが敵国の兵士のみを攻撃していたのに対し、3年前から不穏な動きが見られてきた。それが民間人への攻撃だ。

それも敵国自国関係無い。現時点日本ではそのケースは確認されていない。“日本”と“それ以外の他国”で何故、セブンスの攻撃対象に差があるのか。全世界は、憂慮すべき事態と考えて、セブンスの兵器としての活用法を再び、問い質した。


そんな時代に、フラウドレスは誕生する。

街は朽ち果て、制限された世界で生き続けなければならない。それは子を産んだ事で、容易ではなくなる。但し、そんな事は承知していた。

父親デュピロー母親ロリステイラーは、覚悟をもってフラウドレスの出産を決意。デュピローは、日本軍の兵士だ。ロリステイラーは周辺人物の助力もあり、フラウドレスの世話に励んだ。

そんな時、デュピローからの突然すぎる言葉に、ロリステイラーは驚愕した。

───────

「俺、軍やめるよ。やめて、一緒に育てよう」

───────

、、、、、え…?あまりにも突然過ぎて、長い間が空白が生まれた。でもデュピローの顔は本気だった。いつもだったら、そんな馬鹿げた事を言っても笑いミのある顔面を作るのが常。だけど、デュピローの今の顔はそんなもんじゃなかった。本気で思ってくれてる。

「いいの…?」

ロリステイラーは、これからを心配する意味を存分に含んだ言葉を投げる。

「大丈夫だよ。仕事は直ぐに見つけられる。軍の友人に武器商人がいるんだ。明日からでも直ぐにそこへは行けるんだ。もう席は用意してくれてる。だから、金の心配は大丈夫だよ。」

「でも、、、、きゅ、、急にどうしたの??」

─┨────┨─┨

「、、、、2人が大切なんだ…」

┨───────┨

デュピローは、愛する嫁と赤子に会えない環境が苦しかった。とてつもなくキツかった。

「2人に会いたい。2人となるべく、一緒にいたい。この戦争がいつまで続くか判らない…次はどこに飛ばされるか判らないし、もしかしたら、もう、、、帰って来れないかもしれない…。嫌なんだよ…君と“フラン”に会えなくなるのが…一昨日久々に、フランの顔を見て…3ヶ月でこんなにも成長するなんて、思いもしなかった…。だから、お願いだ…ロリス。軍をやめさせてくれないか?」

「うん、わかったよ…。」

ロリステイラーは、デュピローを抱擁した。嬉しかったからだ。泣いて叫びたくなるくらい嬉しかった。最高の男を手に入れた…と思った。

「仕事なんてなんでもいいよ。お金なんて別に、そんなに持たなくていいよ。あなたと一緒にいれればいい。あなたとフランと一緒にいれればいいよ。………ゴメンね…ちょっと感情的になりそう…、、うん!わかった!一緒にいよう。一緒にフランを育てよう!」

「ありがとう…大好きだよ」

「私も…」

2人は改めて、お互いの愛を確認し合う。デュピローが起こした愛ゆえの突発的な衝動は、ロリステイラーの心を掴んで離さなかった。これから、3人…若しくはそれ以上の子供を産んで、素敵な家庭を築いていこう。こんな時代だけど…こんな時代だからこそ、きっと強い子供が産まれてくるはず。フラウドレスも女の子だけど、私達の愛があれば、どんな壁でもぶち破っていける。

強くなるよ。強くなる。この子は、強くなる。

だって、見てよ。この顔。なんかまるで、少女みたいだもん。0歳児だよ?うん、大丈夫。大丈夫。大丈夫。



だがそれは、長く続かなかった。


8月2日──。


フラウドレスに異変が生じた。普段は自分で進めないような所まで、自力でやってのけた。階段、段差、少々重い障害物の跳ね除け。

「ねぇ、あなたこれ、やっぱりおかしいよ…」

「ああ、、、、一体…なんなんだ…」

「元気なのはいい事だけど…なんかおかしくない?」

「……いや、大丈夫だよ。ホントに強くなっちゃったんだよ」

「うーーん、、、早すぎるけどなぁ…」

2人はフラウドレスの急激な成長の速さに驚く。いや、デュピローは違った。何故か、澄まし顔と言うか…「良かった良かった」みたいな…とにかく、私とは違う驚き方をしていた。


何かの異変を抱えて過ごした8日後。

事態は急変する。

フラウドレスがセブンスである事が発覚した。事の発端は、フラウドレスの目の前にあった自身の2倍はある物量の小規模棚に浮力を持たせた事から。その時、2人はフラウドレスの力を確認した。2人は疑いたく無かったが、俗に言う“能力者”なのかもしれない…と思わざるを得なかった。

一回はこのままフラウドレスの異常行動を無視しようとも考えた。

しかし、このままセブンスの予備軍である可能性を踏まえた上で、この子を放置するのは得策なのか…とも思った。

そう、何かを考えまくった。

だって、普通は出産直後にセブンスの診断が早急にされ、そこから3年契約の下さなければならない。だが出産から3ヶ月が経過しての現状。

こんなことって有り得るのか?


「どうする…?」

「…、、、、」

2人はフラウドレスを連れて、“日本軍統括能力者識別研究センター”を後にした。

「3年契約…?」

ロリステイラーが言った。

「でも、、、この子が…」

「あなた、軍をやめたのよ?せっかく辞めたのにここで、手放しちゃうの?そんなの…ダメだよ…軍をやめた意味がないじゃない…」

「ありがとう…そうやって考えてくれていて嬉しいよ。でもこの子が、戦争に勝つ手立てになるんだぞ?」

┨─────────┨

「いつ帰ってくるの?」

┨─────────┨

「…え」

「この子は、いつ帰ってくるの?いや還ってくるの?」

「……、、、」

「ねぇ、あなた、兵士だよね?軍の兵士だよね?セブンスを見た事があるんだよね?あの子達ってさ、何をしてるの?」

「いや、、、」

「答えてよ。なにか知ってるんじゃないの?」

「いや、何も知らない…」

「…、、…、、親の元から子供が離れてる理由ってなんだっけ…」

「国家としての特殊兵器開発のためのアンプル採取。セブンスから採取した細胞粒子を利用して、新たな兵器製造に使う…」

「子供がその後、帰ってくる…そんなケースを私は、聞いた事がない…ねえ、、、フラウドレスは帰ってくる?」

「…、、、判らない」

彼の目と鼻は澱みがあった。

「言えない事があるのね…それは何?法律?決められてる事?守秘義務?関係者以外には、口にしてはならないこと?あなたにとって、私は関係無い人って事?ねぇ?ねえ、ねえ、、、どうなの?」

「違う…違うから…ロリスを愛している。心からそう思ってる」

「じゃあ、そんな契約無視してやりましょう」

「だめだ…そんな事、、、絶対にダメなんだ…」

「知ってるのね…、、もういいわ。わかった…」

私は、彼に対して初めて軋轢を感じた。彼の逸脱した心情は、もう見ていられなかった。私は思う。彼が戦争で体験してきたのは、人の恐ろしさじゃない。

能力者の恐ろしさ。

彼は私を守ろうとしているのかもしれない。

でも、何か、不十分な点が幾つも確認できた。

嫌な気持ちになる。こんなの初めて。感じたくなかった。彼から、そんな思いを抱かずに、済むと思ったのに。

だからと言って、一方的にはなりたくない。

彼も、、、やるせない気持ちにいるんだろう…そう、思いたかった。

私は、彼の答えを半分汲んだ。

3年契約を結び、施設へ連れていく…。

否が応でも、そうしなきゃならない。

折角、天職を辞めたのに…これからだって時に…3人と過ごす時間が極端に狭められた。

普通に嫌だ。

嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

はぁ…、、、、、もう。。。。


この3年間。

私は2人に、これ以上無い至福の時を過ごさせてくれた。

「可愛いねぇ…!!」

「そうだな…本当に可愛いよ…!」

そんな言葉が断続的に聞こえる。なんて、麗しい時間だったんだろう…。

今でも思い出す。あの、寄り添ってるくれる2人の声。顔も。近すぎってぐらいに、寄せてくる。

2人が遠くにいたような覚えがない。なんか、、ほんと、ずっと一緒にいてくれたんだよね。外に行く時だって、常に一緒。おんぶとか、抱っことかは例外。心配しすぎなんじゃない?…って思ってたけど、でも…こうして2人が私への愛を形で表してくれる。あの時間が耐え難く幸せだった。

よく母が、花を私に見せてくる。綺麗。そんな表情をしたからなのか、母の私へのフラワーギフトはどんどん加速していく。最初は小さかったのが、次第に成人が両手で持つに丁度いいサイズのものまで提供してくれた。そういった私よりサイズが大きい物は、全て能力で浮力を効かせて花全体を見尽くした。2人は当該能力を、不思議がっていたけど、すぐに慣れていた。受け入れた。

「スゴいねーー!!!フラウちゃんはこんな事もできるんだね!」

母の声が本当に好きだった。本当に、、本当に、好きだ。可愛い声で、私の全てを認めてくれる。親としての一面は捨てていない。ダメなものはダメ。白黒ハッキリしていたから、尚更印象深い。多分自分の知らない所でも、スムーズに事を進めていたんだろう。

父親の記憶はあまり無い。脳内に書き込まれている父の最新のデータは、私が2歳になったぐらいのもの。それ以降、父に世話をしてもらったというデータが検索されない。母のデータはある。うん、色々あったんだ。

この3年間、2人には亀裂が生じる出来事があった。

最初の1年は何事も無く、平穏な日々を毎日迎えていた。だけど、私が1歳の誕生日を迎えて1ヶ月が過ぎた頃。父が、家に帰って来ない日が多くなる。

「大丈夫だよ、パパはね、お仕事で中々帰って来れなくなっちゃったんだよ。フラウのために頑張ってるんだよ。だから、応援してあげようね」

私は、知っていた。私を寝かした後に、2人が胸を締め付けるような言葉を吐き合っている事を。二人の間には大きな亀裂ができていた。最初は、浅いものだったけどそれが増幅。互いの弱い所、つまりは私に対しての育児の工面、金銭面の関係で優雅な暮らしができていない事。絶対に仲良く、攻撃的にならなければ2人の心は平常心を維持したまま話を円滑に進行できていたはず。

そうはならなかった。2人の音圧は、最終的に私の存在を忘れたかのように、家中へ響音する。

「どーしたの…ママパパ…」

私は、2人の前に現れてみた。

「あ、、、ごめんね…フラウ…ほんとうにごめんね…、、、大丈夫だよ…大丈夫…パパとね、ちょっと作戦会議してたの…うん、作戦会議。フラウを、次はどこに連れて行ってあげようかなって。ね?」

「うん、そうだよ…フラウごめんね、起こしちゃったね」

2人の顔がムカついた。セブンスの能力を活用しなくても、聞こえているレベルにまで到達した過激なディスカッションだったのに、シラを切りやがって…。いつまで私の事をそんな扱いするのだろう。もう私は“普通”で言うところの10歳には達しているというのに。

これを境に2人の距離は、、、、更に遠くなって行った。縮まらない。表では特に問題は無かった。3人で遠出もした。だけどそれは、私がいるからだ。フラウドレスというパイプラインがあるから、2人は別れずに済んでいる。でも、時間の流れというのは2人の心の距離を遠ざけるに一番の材料。

────

最早、枷となっているんだ。互いの存在が。

────

そして、発覚するデュピローの“他の女の存在”。夫への不満が重なった今、これが最終的な決定打となった。

2人の仲は“私を施設へ送るまでの関係”となった。

互いの心情に寄り添った結果、こういった判断になった。皮肉にもこの結論に達するまでの会話が、今までの2人の会話の中で一番に、互いを理解しようと努力しているシーンだった。それが何よりも、悔しかった。表面上の会話が薄っぺらい。母の友人、父の友人、それぞれが関係性の深い人物、第三者が介入してくる際の2人の顔と来たら、こんなにも恥ずかしい思いをする事は無い。虚飾に彩られた全面的に偽りを写し出した、親の表情は見るに堪えない。家庭内で2人が干渉する事はゼロに近い。それは互いのルーティンを熟知し合ってるから。

私への愛は本物なんだろうか。

私への愛の形として、贈ってくれる花にはどんな意味があるんだろうか。

節目になると毎回、異なる種類の花を私に与えてきた母。いつしか父も花を贈ってくれた。母が与える花にいつも私が喜んでいるからだと思っている。花は、その時の状況を示しているようにも思えた。こうなってほしいという意味もあると思う。

最後に見たフラウドレスの表情、感情。

母の感情、父の感情

2人の関係が悪化してきた頃から、贈る花への影響は判りやす過ぎる程に、見え見えだった。

私の周りは花で埋め尽くされた。もう花を好きになるしか無い状況。花以外を持ち入れたくないという迄に至る。

花を好きになる。

花が私を好きになる。

花だけを好きになる。

花へなら、自分の気持ちを届けられる。

花と一緒にいると、2人には見せない私になれる。

花が私を変える。

花が私を変える。


どうにかして。

どうして。

自分だけの力じゃ無理。

花が好きなんでしょ?

そう、花が好き。

ここにいるみんな、違うの。

何かを打ち明けた時の返答がみんな違う。

じゃあいいんじゃないの?

ダメなの。

何がダメなの?

頼ってる。

今のあなたには、頼りがいのあるものが必要。

もう一人で生きれる。

無理。それは無理。

決めつけないで。

決めつける。

決めつけないで。

決めつける。

私の線路を決めつけないで。

線路?

あなたでしょ?

違うよ。違う。

あなたは、だれ?

あなたが今、一番欲してるもの。

なに。

あなたが一番欲しいものが、集合したもの。それはとてもとてもあなたにとって耐え難いもの。どう足掻いても、これを掴む事はできない。それが、今、あなたの前に現れている。現れているの。わからない?分からないの?その顔は何?その目、その口、その鼻は、今、何を求めているの?どうしたら、今の自分が無くなると思う?考えたことある?今の自分が綺麗サッパリにいなくなって、別の自分が現れるの。そうして、元はあった自分が消えて、生まれ変わるんだよ。どう、望んでるんじゃない?感じたいんじゃない?別の“ワタシ”を。

別のわたし?

そう、あなただけじゃないもの。あなたは。あなたは、沢山いる。ただそれを出さないだけ。出したらもう大変な事になるから。収拾つかなくなって、自分自体を葬る事になる。この世は、タイムパラドックス。様々な次元と等しく繋がっているの。これは別の私。あなたに、救難信号を送っている。

今の私じゃない私は、どこにいるの?

【多元世界】よ。

多元世界?

この世は、様々な世界で形成されている。だけど全ての世界が平行線、全て平等の扱いなの。全てが平等で等しくある単一の線。この各線はある特定のイベントが発生する事で、【シンギュラリティポイント】が生まれる。このシンギュラリティポイントが交点となり、新たな分岐路が発生。それがどんどんと駒を進めると、やがて一つの線と出会う。それが今回は私がいる世界だった…っていうわけ。生物は全て統一。シンギュラリティポイントは、いついかなる時も起点として生じる。生じた先のルートで遭遇する別の世界の住人は、元いた場所の全ての生命体をコピーしているの。生年月日、顔のパーツ、スリーサイズ、頭皮のタイプ、指の長さ、靴のサイズ、全てよ。でも、コピーしているからと言って、人格形成にはバグが発生する。私と別の私であるあなたとの性格はどうやら、真反対のようね。私は別に花は好きじゃない。てか、興味も無い。こっちの方のパパは、ママと楽しくやってるよー?そっちはなんか修羅場みたいだね…かわいそー。私達のこの動きは【管理人】が全て見ている。管理人は飽き性だから、シンギュラリティポイントの発生時に分岐路を作るお茶目な性格も持ち合わせている。その場合は、どういった状況に陥るか判らない。イレギュラーの中のイレギュラー。その時は、またこっちからこうやって、挨拶するかもしれないし、また別の私がやってる来るかも。まぁサプライズって事ね。、、、、、うん!なんか、、、さっきっからずーーーっとあなたの顔、スーパーで魚を買う時の主婦みたいな顔してるけど、まぁいいわ。説明ゼリフ臭くなる前にお暇するね。ばいばーい。


この一連の流れは、この時が初めてじゃなかった。今回が今までの中で、一番に感情を掻き立てる程のものだった。別の私。知らない私が、この世には何人もいる。いつしか出会うのかもしれない違う線の私。違う私は何をしてるんだろう。何を抱えているんだろう。何を目的に定めて生きているんだろう。何をどうしたら幸せを感じられるんだろう。花が好きな私はいるんだろうか。“素朴”というコーティングをして、脳と口が直結したかのように吐き出される疑問。約束の日が近づく。


西暦3703年4月16日──。


「こちら北海道の知床から生中継でお送りしております。間もなく、日本軍が大艦隊を引き連れてロシア領 オホーツク海へと進軍していきます」

北海道からマスコミが多く押し寄せた。日本の漁業交易経済に多大なる影響を与えた北方からの悪性生命体。自らの領海である存在を管理しないどころか、問題を山積みした状態のまま放置したロシアに日本は激怒。戦いの模様は、日本軍の戦力を国民に見せるために余すこと無く映された。

戦いを見た。ここまでの規模のものが合法手段で視認できる事は滅多に無い。TVニュースで取り扱うのは、勝敗の結果のみ。戦況を知るのはその時に参戦した兵士と、その戦いから帰還した兵士が帰路に着いた先で待つ家族達。ネットワーク上では、何の注意書きも無く戦場の様を映し出された動画もアップロードされている。望遠されたもの、その場でのもの。映像の内容は、語るべきでは無いだろう。見るに堪えない恐ろしい事は、語らずもがな。


「なんだろう…あれ…」

「どうしたの〜?」

「ねぇ、ママ?あの海と海のあいだにできてるあれなにぃ?」

「え?なんの事言ってるの?」

「戦いだよ。いまおきてる戦いのなかにできたやつ。しらない?」

「うん、、、ママごめんね。フラウの言ってる事、理解したいんだけど…わからないんだ…」

「そう…なんだ、、、、ねぇママ?」

「なに?」

「わたしってへんなの?」

「…、、、、、そんなことないよ、、!」

「でも、じゃあなんでママとパパにはわからないことだらけなことが、わたしにわかるの?」

「…、、、、…」

「ママ?どうしていま、そうやってじぶんなんかって思ってるの?」

「…!」

「だいじょうぶだよ。ママは、だいじょうぶ。ママはママのままでいてね」

「…フラウドレス…、、、」


母親との会話で乖離を発見するのは、何度目か判らない。その都度都度で母親は困惑方向の、辛い表情になる。私はそんな顔を見たくない。作らせたくない。だから、成る可く私は外見上の身体を意識した年齢作りを行う事にした。でもたまに、先程のような形で困らせてしまう事もある。気をつけなきゃ…。

判らない事がある。母親に聞いたこの件だ。ネットワーク上にて公開された海の戦況。多くの人間が死んだと、テレビでは言っていたが死因は明かされていない。それに今回は勝敗も明示されなかった。その場合に該当する事案としては、引き分けが一番考えられるものではあるが、他の何かあるのだろうか…。

私は、日々更新される戦争関連のニュースに関心を示している。何故かは判らないが、身体が反応をする。

人の声が聞こえてくる。

戦争中の兵士達の声が脳に木霊する。

「死にたくない」

「やめろ」

「助けてくれ」

「声を聞け!」

「処置だ!」

そんな醜い所業の数々が、そうした言葉によって戦場が自分の脳内で形作られて明確になる。

言葉が私を作る。

言葉で私は成り立つ。

言葉のおかげで私は伝えられる。

言葉って不思議。

いつか、こうして言葉が無くなる世界が来ると思う。でもそれを促すのも言葉のせい。何もかも結局は言葉で決着する。戦争だって、言葉で片付ければいい。でもそんなに簡単に事を進めませれないのが人間。

私は、人間なのかな。

人間であることを考える自体、人間がする事じゃない。

じゃあ、私は違うのか。

何に、該当するんだ。

セブンスって、なんなんだろう。


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