[#36-私、好きでもあるし嫌いでもある…]
[#36-私、好きでもあるし嫌いでもある…]
「痛い…いたいよ…いたい…痛い…、、、痛い、、」
「いたい、、くるしい、、、さけちゃう、、ねぇ、」
「これ、、いつまで、続くの、、、、、、、、、、」
「、、、、、、なぜだ、、なぜ、、、こんなことを、、」
施設に“収監”された。
戦争を勝利するために必要な高エネルギーの供給が、主な任務だと聞いていた。だが、蓋を開けてみるとそこは地獄だった。セブンスの能力を封じ込め、実験体として扱われる日々が続いた。
聞いてた話と違う。いや、“聞こえてきた話と違う”。どういう事だ?何故こんな事になっているんだ?
「どうだ?使えると言ってたのは」
「はい、順調にエネルギーを精製しています。あとはカプセル化したロストライフウイルスへの受信反応を確認すれば、ここから先にステップアップする事が可能です」
「ようやく、次のステージにいけるんだな」
「はい、369のおかげですよ」
「戦争での活躍はよく聞いている」
「あの、、所長。何故369が、マーチチャイルドに送られたんですが?」
「そうだな…ハワイ島での決戦だよ。あの爆発はコイツが起こしたものなんだ。知らなかったか?友人が兵士でな。名はタイダリザン。ブラッディローメイ戦争での暴走っぷりは目を見張るものがある。だがな、コイツはちと“やりすぎ”だ。やりすぎてしまったなぁ…あんな結果を招いてしまったなら、もう日本軍とは一緒にいられるはずがない。次また、あれ以上の爆発を起こす…という可能性も捨てきれず…よって、これからは、通常のセブンス同様、日本軍に活用される“極エネルギー”の精製に手を貸してもらう」
「なるほど…判りました」
「後の処理は、いつも通りだ」
壁を挟んで、大人が俺の事を話している。全て聞こえた。落胆した…今すぐにでもルケニアを顕現して、この建物をぶち壊してやりたい。でも…、、、なんだ?この身体に付けられた“赤いヤツ”は…。ただの枷じゃないぞ…侵してくる…どうにもこいつは、俺の身体を壊しに来ている、、、なんだコレ…力が吸い取られていくようだ…自分の中にある境界線を遠慮無く余裕な澄まし顔をして、邪魔をする。自我を壊しに来る。うざい、うざったるい…。
「聞こえる?」
なんだ…?
「タイダリザン…、、」
その声は…、、
「私よ、、さっきの、、」
アイオーニス…!大丈夫か、、?
「わたしは、、だいじょうぶ、、あんたの方がキツそうだったから、、」
まさか、、アイオーニスも、か?
「ええ、なんか赤いの付けられてる…、、」
クソ…、、、なんでこんなことを…!
───
「裏切られたのよ」
───
……、、、俺らが…?
「そうよ、私達は結局、奴隷だったのよ。そんでいつの間にか、こうしてセブンスを拘束する兵器も作られてしまった…」
なんでだ…敵国だったら納得できる…ただ、なぜ味方である日本が俺らにこんな仕打ちを…!
「判らない…ただ、私達は“異分子”よ。緊急時の策として、これぐらいの兵器を作っているのは、なんら不思議じゃない」
じゃあいつかはこうなると、判っていたのか?
「元々、“こうするつもり”…だったんじゃない?」
…そんな、、、クソ…下衆が…
「私達の他に、何人のセブンスが居るんだろう…?」
少なくとも、6人は居たはずだ。俺らは一列に並ばされて、その順番なのか判らんが、ナンバーを振られていた。
「私、375だった」
俺は、369。先端が俺だった…アイオーニスの後ろには誰かいたか?
「ううん、気配はなかったよ…」
じゃあ、少なくても6人がこの施設に入れられたって事か…
「でも、私がタイダに送った信号…他には全く届かなかった…だから、タイダだけなのかと思って…」
まさか、、、、、死んだっていいたいのか?
「だって…居たのに…信号が届かないんだよ?」
バカ言うな!人間がセブンスをこんな短時間で殺せるかよ!
「でも!、、、現にこうして私達の知らない兵器が作られてる…」
アイオーニスの言葉に俺は、どうも受け止めきれなかった。人類がセブンスを上回っている…だと?今までの戦争が茶番にすら見えてきた。これは日本だけなのか?他国でもこうして、セブンスに対しての愚行が行われているのか?
もし、そうなら…“何故戦争で自分が投入されたのか…”。
じゃああの、アメリカのセブンスも…俺と同じ境遇の持ち主なのか?
共通点があるから、こうして3人を戦わせた?
あの2人も…知らなかった?
知ってた?
────
知ってて…俺に殺された?
俺に殺される方が、いいから?
都合がいいから?
この後に起きる出来事を知ってるから?
────
考えうる地獄を頭の中で無造作に列挙する。ごちゃごちゃになった本棚。サイズも異なる“考えという名の書物”が並べられた。その並べ方も普通では無い。切れ端が無かったり、所々に鋏を入れているように刻まれていたり、人間の関節を逆に曲げたように本の見開きが成っていなかったり…“思考本”は、それぞれの損傷を見せる事で、現在のタイダリザンの脳内を形成していた。
セブンスは、人を超えた存在。身体面は勿論の事、知能指数も桁外れで、発育期間も超大幅にショートカットを行う。身体面と知能の段違いのレベルは、“セブンスがセカンドステージチルドレンと何らかの関係性がある”として、調査が進められている。
それに比べて、発育期間のショートカットは全くもって理解ができない。どういう原理なのか、何故、産後間もない段階で人間の言葉を理解できるのか。そして、実行し得るのか。
─────
やはり、セブンスはセカンドステージチルドレンの上位互換と言うに値する存在なのかもしれない。
─────◆
「、、、タイダ!タイダリザン!、、、タイダリザン!」
「…、、、、ンハッ!」
「大丈夫?」
「ああ、すまない…」
「この声って聞こえてないよね?人間に」
「そのはずだ…セブンスの血を持たない限り、セブンス同士のシンクロテキストが外部に漏れることは無い」
「だと、良いけど…、、」
「まだ、何か疑うのか?」
「当然でしょ?裏切られてるんだから…」
「何を予測しているんだ?」
「人間に加担しているセブンス」
「…、、」
「固まるよね…まさかね…そんな事無いよね…」
「ゼロじゃない…、、、、もう喋るな」
「、、、、、」
アイオーニスが提言したものが仮に…当たっていたとしたら…2人の会話が丸聞こえで、この話を人間に伝達しているクソ野郎がいる…。今考えてみれば、セブンスなんてろくな奴がいない。狂気じみたヤツらしかいない。こんな常人離れした力を持ってるんだから。俺の過去が珍しいとは言い切れない。もっと凄惨な過去を体験している奴がいるに決まってる。そしてその記憶を、武器にしている。
“無駄”となった、生物の過去など無い。死してなお、生命体の自我は無窮なる世に運ばれる。
誰かがその“記憶”を必要としている。
そんな曖昧な理の中で、生命体は他意な言を放ちながらも、同じ星に生まれた“一つの種”として最期まで自身の境界を大切にしている。
だが、セブンスの記憶を人間にインプットされた…となると、話は別になる。決して逃れられない運命に立ち向かわなければ、《彼我の境界》を超える事など、到底不可能。
セブンスの魂を残置する場所は、そんな生者からの…《葦原》からの申し出により、“記憶の震域”はセブンスの影響で停止。
葦原からの“記憶配達”は、人間であれば死者となってから、送られる墓標からのメッセージ。なのだが、セブンスの記憶は生存している者からも送られる。
“既に殺されているセブンス”は顕現するはずだったルケニアの具現化される前の素体データが、脳内と血路に書き込まれていた。生きてる人間は介入する《死者セブンス・“フィアーセブンス”》を死んだセブンスと判別する事はできない。容姿は人間の赤子なのに、代理として登場するルケニアが、人間の記憶領域を食い散らかす。脳に大きなダメージを負わせ、事の収拾がつかない事態に発展する。
┠─タイダリザン、アイオーニスのシンクロテキスト─┨タイダリザンの予測行動により信号受信不可能。




