[#1~2-House of The Alcyon【1】]
[#1~2-House of The Alcyon]
この世界に織り成す、動植物の生態系の流れは、劣る事を知らない。
それ故に個体それぞれが様々な進化系統・分岐をさがしもとめて、自分に適した進化の形を遂げる。果てしない進化の果てに見えるのは、“死”へと終局する身体の破壊。生命は死ぬ。どう足掻いても必ずは命の終焉が始まる。
体内で働く細胞が脳での信号を、全て外部へ行動化させている。それに耐え切れなくなった動植物は、土に還る。
多くの生命がそれを繰り返し、世界の生命エネルギーの均衡は保たれつつある。そんな中でも異端な存在として、自然進化と人工進化を絶えず行い、新たな理を紡ぐ可逆と不可逆を持ち合わせた生命種がいる。
人間。
地球上に存在する他の生物とは一線を画す生命体。他の生命体とは異なる感情の表現が可能で言語能力という特異な性質を持つ。古くから地球に住み着いている人間は、多種多様な進化を経て現代まで生き延びてきた。
その生存本能は“極”に達していると言えよう。人は生きるために罪を犯してきた。楽園を追放された最初の大罪である“原罪”から始まり、大小問わず数え切れない罪を背負ってきた。
執拗な迄に生存に固執している。それが人間の使命なのだ。次の時代…また次の時代へ、己の血筋を受け継ぐ。確実な前へ進む一歩としては、子孫の繁栄は欠かせないものだ。だがその一歩というのが、過ちを選択する事項が多くなってしまう事にも繋がる。
それはいつしか、人と人との戦争にまで発展。同じ個体生命の形であるにしろ、戦いの概念を回避する事は難解だ。
“敵対”より、恐ろしいものは無い。
戦いの果てに待つ結果というのは、案外予測出来ないものでは無い。
勝つか、負けるか。どっちかしかないのだ。
イレギュラーな状態を除き、その2つ以外に有り得ないのだが、結局は両者がゴミのように次々と人を散らせてゆく姿を想像すれば、最早勝敗を決めるのが目的では無いのかもしれない…とも思えてしまう。
血が流れない時代など、存在しない。
人が持つ力には限界がある。「人には限界は無い」などと抜かした事を言う者も存在するが、それは個人の尺度の違いに過ぎない。個人の尺度でものを言ってしまえば、そんなものはファンタジー。何でも言いくるめることが可能になる。勝手なそれぞれの人生の結論。
個々の生命には必ず、限界がある。
だが、その限界を超越した“異分子”が存在する。
“セカンドステージチルドレン”略してSSC。
超越者、とも言われている。
彼等は人の姿をした悪魔。人智を超えた完全生命体。彼等は“SSC遺伝子”という特殊な遺伝子情報を有している。それにより幼少期頃から恐るべき能力を誇っていた。身体的にも学術的にも人間の如何なるステータス内外問わず、人の域を超えた天頂の力を持つ。
SSC遺伝子を持つ者は基本的に先天性の能力覚醒者が多数。だが、人間というのは実に愚かで残虐、非情な生き物だ。
大人達の身勝手な行動で、子供の人生を容赦無く奪う行為を平気な顔で実行。
“SSC遺伝子能力ワクチン強制投与”。
舞台となる世界を統べる大陸政府はセカンドステージチルドレンの遺伝子情報を保有している。そのデータを使用し、研究開発を重ねた結果、ワクチンアンプルを製造することに成功。これを子供に注射すれば、強制性を帯びた人工的なセカンドステージチルドレンが完成する。後天性セカンドステージチルドレン、そう呼ぶ。
子の意見も無く、後天性セカンドステージチルドレンとなるケースは珍しい事じゃない。
では何故、大人は子供をSSCにするのか。
財産になるからだ。
近年、この世界の情勢は大きく変わりつつある。地域紛争の活発化、暴動、そして…セカンドステージチルドレンの攻撃だ。先天性セカンドステージチルドレンがこの世界に現れた律歴4000年8月20日。この日から世界は混沌とした時代に突入した。
この世界に存在する4つの大陸。それぞれの大陸政府の協力関係も弱体化していき、SSCの齎す攻撃が最悪の結果を招いている。何の目的で我々人間を攻撃してくるのか…理解が出来ない。重要施設を破壊し、経済的損失を狙っている。明確な目的があると推察できる。更に、“攻撃”という名目の中には当然、人間への直接攻撃も当てはまる。
現時点で世界が抱える主な問題はセカンドステージチルドレンの攻撃だ。貧困層が増加。生活を確保するのは、至難の業になった。食糧の困窮と安息の地の確保が人間には適切な生存競争の選択なのだ。
そんな選択肢すら与えれてもらえないのが、セカンドステージチルドレンに破壊された街の住民、死んでいった住民。
目も当てられない地獄のような光景がネットワークを通じて、全大陸で確認することができた。
最早、生きてる事が苦痛なのかもしれない。
天才を欲する親の身勝手な都合と判断で、能力覚醒を強いられた子供。それを卑劣と捉えない人間が多数いるのも現実だ。
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セカンドステージチルドレンには、その比類なき力の代償で生命力は極端に短く、20歳という若さで生涯を終える。
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この事象が真実と実証された昨今では、SSCワクチン強制投与は殺人罪として扱わなければならないのでは無いか…という学識研究者も現れた。今、世界で、このワクチン強制投与は罪に問われる対象の刑事罰として、大陸法で指定された。
だが、現在では若くしてこの世を去る若者が多く、その全ては能力に長けた人間であったことがパーソナルデータに記録されている。法に背いた者が、今でもワクチン強制投与を行っているという、人の穢れた思考を垣間見る事ができる一つの事象。
SSCワクチンは、闇市場“ダーティーマネー”にて取引されている。勿論、これは警察が取り締まらなければならない案件ではあるが、一向に解決への糸口が導き出せずにいる。何か大きな組織が関係している事は明白であった。
セカンドステージチルドレンとして生きる者には、“思い出”が無い。先程書き記したような内容だと崇め奉られるような存在を空想できさえするが、現実は甘くない。「あの家には悪魔がいる…」と罵られ、親から虐待を受けるとそれに対して、子からの暴力で家庭崩壊。能力者は人の域を超えた存在。感情の臨界点も軽々と超えてくる。自身では制御が効かない程まで、力を相手に加えてしまう。
その結果、セカンドステージチルドレン達の末路は悪夢だ。
記憶を辿っても、プラスな方向に繋がるようなものが無い。それは皆一緒の事実。先天性も後天性も関係無い。
セカンドステージチルドレン達は、各々に“覚悟”がある。社会の闇に身を潜め、己の力を行使する事で裏社会の支配者になった者。自警団のように反社会勢力を警察の影で取り締まる正義の旗を掲げる者もいる。
前者は勿論、後者もこれは公にする事は出来ない。
この事実がどうであれ、能力者の居所が発覚するとそれぞれの大陸政府が統制する強化人間隔離施設“ニゼロアルカナ”へ連行される。四肢拘束、飲まず食わず、人体再生能力の可否を確認する部位の切断…人の様々な限界値を求められる人体実験。それを繰り返すSSCにとって地獄の日々…という逸話が一般の間では流れている。
そんな噂が流れるのは無理も無い。セカンドステージチルドレンは悪魔だ。産まれてくる事自体が、大罪なのだ。
そんな大罪を欲する大人。
矛盾だらけの世の中。小難しい現実を虚構と落とし込みたい。
そんな隔離施設に囚われの身となった一人の男児“サリューラス・アルシオン”。
サリューラスは血塗られた過去と決別すると共に、この監獄からの脱出を図る。
サリューラスの忌まわしき過去…。
それは、アルシオン家の血統が全ての始まりである。絶望し、憂鬱になり、別離を迫られ、隔離され、再会を遂げ、寵愛と出会い、絶愛する。
主な舞台はこの世界に点在する四つの大陸の中で最大の規模を誇り、当然ながら比例するように人口も最多数を有するラティナパルルガ大陸。
当大陸を中心に、生物達による価値を模索する物語が始まる。




