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[#30-私、遣いものだから]

選択肢はもう無い。

[#30-私、遣いものだから]



現地に到着した師団は、眼前に立つダスローラーに身構える。すると団長の元へ一つの連絡が送られる。

「作戦変更だ、生存者も殺せ」

「え、な、何故ですか?」

「この5ヶ月もの間、身体に影響が無かったとはとても思えない。ダスローラーが近くにいたという事も鑑みた結論だ、起きてはならない事態が発生するかもしれん」

「起きてはいけない…とは…」

「感染だよ」

「了解」

師団長は、全兵士サイトカインに向けて作戦変更の指示を命じる。

「子供を殺せ…と言うのですか?」

「そうだ、本部からの指示だ」

「ですが…」

師団長から送られるシンクロノイズテキスト。脳内に送られるサイトカインを送受ルートに、《メッセンジャーセル》が電子とも似つかない、高速リニアコミュニケーションを開始する。

そのテキストに同意する者もおれば、同意できない者もいる。後者の兵士はシンクロノイズテキストで、応対を始める。

「そんな事を…我々軍がしていいはずがありません」

「無駄口を叩くな、上からの絶対命令だ。従え」

「しかし…なんでもない…普通に女の子だ…それに…Sゲノム反応の彼女だって…今までのダスローラーとは全く違う…

────────

普通に女の子じゃないか…」

────────

「ダスローラーの分析パターン《Code:7G》がついたんだ。これ以上の無意味な回答はお前の現地位の失脚を意味するぞ」

「…、、、了解」

軍司令本部から全兵士に通達が来た。

「テラーバイト、アベンジャー師団に告ぐ。キルポイントを指定した。攻撃開始。繰り返す、攻撃開始」

2つの師団は全武器による一斉射撃を開始した。マシンガンといった重装兵器を始め、レールガン搭載型戦車や攻撃アパッチの榴弾マシンガンが一点に収束した。

辺りは弾幕と爆煙で、視界が奪われた。

「ミッション成功、これより帰還する」

テラーバイト師団長が、軍司令本部に連絡。

「了解、間もなく《ケラーズヒューメイル》から爆撃機と輸送機が避難民を連れて到着する。それに乗り込め。回収する」

「師団長…」

「なんだ?」

索敵兵が師団長にテキストを送る。

─────

「シグナル…消えていません。それどころか…増えています」

─────

「…、、なに!?」

レールガンの投擲放物線に歪まれたような傾向が見られた。


「これ…なんなの…ねぇ…」

「おい…私たち…今、軍に…撃たれた…?」

「……、どういうこと」

アルマーレ、ファウンス、ラルースは謎の防御膜によって弾丸から身を守られた。それの発現元は前方に直立していたエリヴェーラだった。

「エリヴェーラ…?」

アルマーレが語りかける。

「ねえ、、エリヴェーラ…大丈夫?」

「大丈夫だよ。優しいよね、アルマーレって。」

「いや、、あの、、ちょっとあなたって…」

「うん、そうよ。私は…セカンドステージチルドレン。」

3人は、それぞれの感性のままに驚く。

「うーん…でも違うのかな…。正確に言うと…セカンドステージの前…1.5?《セカンドステージニア》って言おっかな。」

「えぇ…?」

「エリヴェーラは、セカンドステージチルドレンなの?」

「あの人達が言ったこと、間違ってないの?」

「うん、間違ってない。間違ってない…。」

「そんな…騙してたの…ねえ…」

「アルマーレ…」

「騙してたの!?ねぇ!!」

「ごめんね…でもお願い、今は許して…それと…私に感謝した方がいいよ?」

「何故だ?」

ラルースが問う。

「だって…

──────

君達はもう、人間じゃないんだよ?」

──────

「え?」

「なに…それ…また何言ってんの?」

「だって、、、人間だったらもうとっくに死んでるよ?私があなた達に《セカンズブラッド》を与えたから。それにプラスして《ダスゲノム》が身体に入った。よって、君達は死なずにセカンドステージニアとなった。」

「…、、、、、、、はぁ?意味わかんない…」

「もっと意味が判るようにしてあげようか?今、私達の会話ってさぁ…どのくらいのスピードで完結してると思う?」

「…!?」

3人が戦慄した。3人とエリヴェーラは防御膜の中で、“遅れた時間”を過ごしていた。通常先程の会話だと、2分間はかかっていたはず…。だが、この4人はその2分間に相当する会話時間を超高速に行ったのだ。その時間実に、8秒。知らずのうちに3人は、2分間に相当する時間を過ごしていた。

「安心して。防御膜外の時間の流れは、こちら側に合わせてくれるから。」

「えぇ?、、、、、、、」

「うーん、、言葉に困るよね…多分今、アイツらは君達3人の能力者反応を検知したと思う。だから、逃げるよ。」

「逃げるって…どこに…」

「、、、虚座よ。」


「クソ!なんだ!?」

「円形シールドからの高エネルギー反応を確認!」

「敵個体数4!7Gです!」

砂塵は突然起きた爆風により、一気に振り払われた。猛烈に吹き荒れる局地的な嵐が、視界を紛らわす。

「ダスローラーは今現在どうなっている!?」

「判りません、前方にて発生中の光波体式ハリケーンのみのエネルギー反応しか確認できなくなりました!」

「《結界》を張ったか…総員、一斉射撃に向けて再装填!アタッカーグランド55を展開」

「テラーバイト師団長、こちら爆撃機フォーネリア、間もなくツインサイド現着、民間人を乗せた《カーゴスクエア》と散開し、急行する」

「フォーネリア機長、ツインサイド現着で高度を攻撃行動に合わせろ。105mm砲台で雨を降らせてやれ!」

「了解。ツインサイドにて《バードレイン》だ、お前達やるぞ!」

「オーー!!!」

爆撃機フォーネリア。剣戟軍航空部隊直轄の全翼大型航空機だ。現在は主に、ポラスアンデッドを上空から駆逐するための殲滅兵器として名を馳せている。搭載兵器は、榴弾マシンガン、ホーミングミサイル、リア砲台、炸裂爆弾とそれを垂直落下させる開閉ヴェール。積載量も160tに耐えうる。そんなメガトン級に巨大な航空機が能力者を皆殺しにするため、ツインサイドに急行する。

────────◈────────

え、なに…私達…攻撃された?撃たれた?なんか、、、すごいいっぱい飛んできたんだけど…なんでなの?なんで人間が私たちを攻撃したの?さっき、エリヴェーラに向けて来た敵対意識が、私達にも向けられたって事?

どうして?

何故そんなことをしたの?

怖い…怖くなる。

人が怖くなる。

あの時、何故か判らない…こんなに理解できない事が多いと、脳みそがチカチカする。そう、あの時の人間達の顔が…一変していた。

最初…であったとき?うーん、その表現はおかしいのかな。

「そこの3人、女から離れなさい…!」

だったっけ。

あの時の顔…私達にだけだけど、優しかったな。今思ってみれば、私達の事を考えてだったのに。

凄く変わってた。あんな一瞬の出来事だったのに、全員の射撃時の顔面の構成を認識していた。

なんでだろう。気持ち悪いくらい不思議なの。ハッキリ覚えている。

殺そうとした?

私達を殺そうとしたの?

人が?なんで?

なにをしたの?

なんでそうなったの?

ん、なにこれ…。あれ、、、聞こえてくる。聞こえるよ?あんた達の、、、なんていうの、、これ、、連絡かな、、脳内に神経伝達の追従で、メッセージが肉声に乗っけられている。全部聞こえるんだ…。

“こーげきかいし”????

なんだよそれ…それが今のやつなんだね…。

コロソ…殺しタくなっテきた…。

こコにイるやつ、全イン死ンじゃえ。

──────────◈◈─────────


「何…なんか…私ってこんなに筋肉質だった?」

「うん、私も…、、何か凄い…力が漲ってくる…」

「エリヴェーラ…これは、、一体なんだ?」

3人の身体から、何者か判らない…謎の力が顕になる。振り払われた砂塵と共に、4人は剣戟軍師団への攻撃を開始した。これでもかと浴びせられる銃撃を4人は躱す。

「何この力…ねぇ…2人も…」

「見てよ…エリヴェーラが…」

エリヴェーラが、兵士を虐殺している。砂塵を振り払った途端、目にも止まらぬ迅速で八つ裂きにしている。空間を切り裂いたソニックブームが、広範囲に渡り命中。特殊攻撃の他にも近接攻撃での撲殺も行っていた。小柄…というよりも一般的な普通の女の子からは、想像もできないようなグロテスクな攻撃を見せていた。腹部への右ストレートが兵士に決まり、頭部から出血が飛び散った。外から体内部に通じる穴から、血が噴出した。出まくった。体内に残る全ての血がゼロになるまで吹き出た。とても普通じゃ見てられない光景だった。だけど、私達は見れた。

注目して…、、、、見た。

エリヴェーラ、攻撃の一手を止めない。刃向かう的全ての喉元を掻っ切ってゆく。これ、、、そう、、追えるんだ…。そのスピードについていけるんだ。ゆっくり見えるぐらいに追える。3人はエリヴェーラの攻撃を傍観する。

「もうやめて!エリヴェーラ!何してるの!!」

アルマーレが、暴走するエリヴェーラの手を止めた。アルマーレ自身も不可解だが、エリヴェーラの高速移動にビットが可能な事を理解し、虐殺の手を止めた。エリヴェーラの右腕を掴み、当該行動の停止を諭した。

「なにって…人よ…私の敵だから。殺してるの。」

「やめて、こんなのおかしいよ」

「あなた達も気づいてるはずよ。淵から湧き出る…憎悪が。己の記憶では無い…誰かの記憶を…。見えるでしょ?深い深い…奥底で嘆く…喚いて…叫んで…苦しんで…虚ろになり…朽ちる。でも、這い上がってる。そんな事を邪魔した存在…ここも見えるよね。」

「見える…なんだこれ…」

「血と骨と水と管…そして、魂。ここにあるもの全て…私達の胎芽たる存在の墓標なのよ。私はあなた達を選んだ。協力して。大丈夫。あなた達が苦しむ事は無い。私が守る。その代わり…“命令を受けなさい”。」

エリヴェーラの攻撃が止まった。

「なんだ?停止したのか?」

「こちらフォーネリア、ツインサイドエリアを肉眼で確認。これよりバードレインを開始する、今すぐそこから退避せよ」

フォーネリアの機長がテラーバイトの師団長へ、音声連絡が送られた。

「だめだ!!今ここに来るな!!」


エリヴェーラは身体を宙に浮かせ、周辺の瓦礫に浮遊能力を与えた。エリヴェーラ自身からは謎の飛翔体が発現されている。

「これダスローラーなんて軽いヤツじゃないぞ…!」

「ではまさか、、、」

────────────

「セカンドステージチルドレンだ…!」

────────────

「あんな俊敏なダスローラーは見た事がない…」

「ダスローラーの新種と捉えることも捨てないでください」

「とにかく今はこんな師団ごときで対処できるような事態では無くなった。緊急エスケープシステム起動だ!」

「はい!」

テラーバイト師団とアベンジャー師団の各代表者が互いの意見交換で現状のイレギュラー問題への解を提示した。暴走するサイクロンを止める術は現状に無かった。爆撃機フォーネリアが遂に、現着する。

「なんなんだ…これは…!」

巨大なハリケーンが、ツインサイド・カリーシにて発生している。

「こんなものに日和るな!ターゲットはあの中にいると思われる。全面射撃で一点突破だ!」

「了解、ベンチャーストップアンロック」

「航行角度の維持をしろ!」

「お偉いさんには申し訳ないが、王宮を火の海にさせてもらうぞ…」

「距離よし、左舷方向発射開始!」

フォーネリアによる、爆撃が始まった。放たれた弾丸が更なる砂塵を生む…はずだった。だが…そうはならなかった。射撃直後、ハリケーンが一瞬にして終息した。映像を鑑賞してる時に突然のカットがかかり、別の映像に切り替わったようだった。バードレインは、エリヴェーラを始めとする、ファウンス、アルマーレ、ラルースに向けて攻撃された。

エリヴェーラの発現した飛翔体は次第に大きさを増し、計り知れないパワーを誇った。その飛翔体、力の源はエリヴェーラ自身で、それを増強させるマテリアルがあった。

─────

3人だ。

─────

ファウンスとアルマーレとラルース。この3人からは、“極エネルギー”が出力されている。人間が決して、数値化する事の出来ない絶対領域。これは、“人間では無い何者か”を証明する指数だ。3人はエリヴェーラを中心とし、位相空間を形成。肉眼でも確認できるピーンと引き伸ばされた紐の糸。この紐の糸は、エリヴェーラに伝達されるエネルギー供給源。ジャンヌ・ダルクが戦乱の旗を掲げた時、フランス軍が鼓舞されたように…3人は、エリヴェーラへ力を与えている。

「おい…あの3人…何してるんだ?」

「判らない…ただ、見えている情報をそのまま伝えるならば…あの女に協力している…」

3人の顔が死んでいる。ただ、パーツには生気が感じられる。目は見開いているし、肌の色も普通。だけど、エリヴェーラを信仰の対象としているかのような佇まいだ。

飛翔体はエリヴェーラの頭上に作られ、円環がその外周を周回する。その円環には3人から送られた極エネルギーと浮遊能力を有した岩石と瓦礫。その浮遊物質群が、爆撃を開始したフォーネリアと残兵に対して、高速に散開した。フォーネリアは、空中にて大破。“ツインサイド・カリーシに現着”という文言を発していたが、勿論、実際には現着という程の王宮近辺では無い。かなりの距離をとってのバードレインだった。それは単に、相手の攻撃を読んでいた…という理由が含まれている。そんな少しばかりの逃げ道は全くの皆無だった。

超高速に飛んできた瓦礫。最初は小さい小さい破片が飛んできた。こんなものは飛行態勢に問題は生じなかったが、ここからの追い討ちは酷かった。破片が徐々にサイズを増していく。翼、ターボエンジンへ、飛行に支障を来すレベルの破片が飛んで来る。接触音が強まり、カタカタ…という音だったのが、3秒後にはガタガタ…と、フォーネリアの装甲板にバーストが走る。

─────

「じゃあね、人間さん。」

─────

フォーネリアは大破。上空にて大爆発を起こす。

エリヴェーラは終息させたハリケーンから、新たな光波帯を生成。それが再び渦を巻き、ハリケーン状のものを発生させたかと思えば、今度は地面に影響を与える災厄へと変貌した。協力な渦巻が地殻変動を起こし、大量の兵士の死骸が、その割れた地面に隙間へと滑り落ちる。死骸も落ちると、その流れに乗る形で瓦礫も当然に次々と隙間へ雪崩込んだ。大震動により、陥没が発生。ツインサイド・カリーシにて発生した謎の渦巻が移動を開始する。先程の“球体型ハリケーン”とは大きく特徴が異なる。ハリケーンはサイズを増大させていたのに対し、渦巻は最初に生成されたサイズを維持している。但し、小さいという訳では無い。尋常では無い大きさである事は確か。直径3km、高さ2.7kmの渦巻は地上を這うようにツインサイドエリアを襲う。渦巻が通る道には先行して地殻変動が発生、近づくにつれて建造物の崩壊が始まる。軋みが連なる。次第に連鎖性を帯びた崩壊体は、渦巻の到来を待つこと無く、遠方のツインサイドエリアでも地殻変動に発生。


ツインサイドエリア、改めて、ラティナパルルガ大陸のこの付近はプレートが犇めき合う大陸だ。だが、地震など起きたことが無い。それは、この大陸は昔から《創成なる神々》が守護しているから…という伝承がある。神々は《最初の人々》とも云われており、ラティナパルルガ大陸を始めとするこの世界の安寧と秩序のコントロール、天秤としての役割を果たしていた。然し、謎の事件が起き最初の人々は民から、迫害される事となる。その迫害に憤怒した最初の人々は、この世界の先住民を虐殺。散々殺した後に、謎の失踪を遂げた…という。この伝説は古くから語り継がれている伝説として、この世界のマッドな書物として、児童にはセンシティブな表現をマイルドにした形で、様々な媒体で取り扱われているバイブル的な“コンテンツ”だった。

だから、民は最初の人々を忌み嫌ってはいるが、神として崇める者もいた。その崇拝者達が声を上げることで、この世界に起こる誠に不可思議な出来事は全て、“最初の人々による血伝え”なんだ…と司祭する。もし、そうなら、何故怒った人々は我々が住まう大陸に振動を与えないのか…色々と矛盾点を考察するが、それを唱えるごとに崇拝者は論法を変えて、己が信仰する対象を守った。

そんな守護のベールが、破られていく…。


「クソ…クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソッタレが!!おい…皆…そんな…おい…どこにいるんだ…?はぁ…そんな…俺だけか?俺だけが生き残った…、、、、のか、、、は…!あれは…」

一人の兵士が、空を見上げる。放物線を描く噴煙が、彼方に飛ぶ。ツインサイド・カリーシを背にし、ツインサイドエリアのメインゲートに向かって、飛んで行った。

「なんだ…これクソ…!」

まとまった言葉が出てこない…ただただ自分を責めるしかできなかった。倒れた仲間達を弔う事すら許されない。全員が下に落ちていった。陥没と陥没の間へ。その溝は決して広いという事では無い。人がジャンプで飛び越える事が可能な距離ではあった。中を覗く。何も見えない。暗黒の世界が広がる。

「どうすれば…いいんだ…こんな…更に何も無い空間で、、、独りにされた…そうだ…フォーネリアの…、、フォーネリアに生存者が、、、いるか、、もしれない。クソ…!!」

痛い…、、、、、、、右手の指を2本損失した。今まで、孤独の苦しさに直面していたから、そんな事に気づく暇もなかった。エリヴェーラの波掌撃が、縦に発生。波掌撃が次々と兵士を左右に分裂させていく中で、私は間一髪の所で一命を取り留めた。指を失ったが、命に代えてみればどうってことない。でも、、今となれば…こんな大敗を喫する事になるなら、切り刻まれた方がよかったかもしれない…もうなんだか、喋る事すら面倒になる。

許さない。絶対にアイツらを許さない…。復讐してやる。私が唯一の生存者だ。この血に塗れ、動きもしないはずの切られた指の感覚が伝わる。今にも動き出しそうだ。その刹那に尋常ではない激痛が走った。だけど、、、嘆かない。涙だけが体内から出てくる。意志とは反して、流れ続ける。止めたいのに止められない。自分の中に2つの人格があるようだった。そんな事ないのに…、、これは自分の意思なのに…。自分は涙を流したいのに、どうしても受け止めきれない。事実を受け止められない。負けを認めてしまう気がする。まだ負けてない。私は…まだ負けてない…、、まだ、、生きてる。必死にこらえた。これ以上出てくる涙を私は認めない。ここまでの涙は私の落ち度。もうこれ以上の涙腺を開けることは許さない。涙は一番楽な安定剤だ。涙を流す事で、現実からの逃避ができる。それに仲間が手助けをしてくれる。だけど、代償は大きい。指図を待つようになる。そして、自分が嫌いになる。

私は幼い頃に、多くの涙を流す時間を過ごした。人生の中で涙のバッテリーがあるなら、私は一つの人生で使い果たす量を超えているだろう。だから、もう無駄な体液を流したくない。そうやって自分という概念を壊す。壊していく。でも、本懐はしない。無理くりに取り繕った自身への正義は簡単に中折する。見苦しいよ。本当に。私は自分の事がどうしても好きになれない。あー…またこれだ…また自分を責める。普通に生きてるだけなのに。私を守れるのは私が唯一であり、最初の人物なのに。そんな唯一の良心である自分すら敵に回す。いや、勝手に敵へと鞍替える。


もう、、、やだ、、なにか、、ないの?なにか、、ない?お願い…します…カミサマ…なにか…、、、私に、、何かを恵んで…ねぇ!!!お願いだからさぁ!!ねぇーーーーエエーー!!!!!何が《七唇律》だよ…。くだらない…必要な時には何も差し伸べてくれねぇじゃないか!!、、、、、、、、、、

はぁ、、

なんだこれ、、

もう、、、

死にたい、、、

どうにしかして死ねないかな、、、

瓦礫の尖った物に刺さりにいこうかな、、、、

痛そうだな、、、、

眼球でも抉ろうかな、、、

いやそれはただ痛いだけで終わる、、、

死にたい

死にたい、

死にたい、、

死にたい、、、

死にたい、、、、

死にたい、、、、、

死にたい、、、、、、

、、、、、、ん?なにこれ、、なにか見える。

なんだこれ…なにか凄い…どうやって言葉にしたらいいんだろう…光輝く…この美しさ…なんだよ、これ…。ちょっと待って…これ、、、まさか、、…違う…ち、、が、、う、、よね?あの、人間だと思われていた3人の女が生み出していた“極エネルギー”に酷似している。“ダスローラーに近しい存在”に送信されていた。でも…なんで、そう理解したんだ?判らない…なんでだ?何故、私はこれを、それだと思ったんだ。

粘着性のあるこの謎の体液。私はこれに触れた。

──────────

ねえ、たのしいことする?

きっとね、あなたはビックリするよ?

ビックリしすぎてぇ、、、オカシくなっちゃうかも。

でもね、なんかぁ、、飽きちゃったんだよね。

うん、なんかね、、飽きちゃった。もう、、。

だから、あなたには違う方向から紡いでもらおうと思う!

邪魔者殺しに行ってよ。

あなたが邪魔者と思う人を殺しなさい。

私の夢なの。

でもこれは、あなたの根幹に眠るものでもあるよね?

だから…あなたを選んだ。

そう簡単に、死にたい…なんて、言うもんじゃないよ?

まだまだやりたい事あるでしょ?

まだ、やんなきゃいけないことあるでしょ?

死んだらもう終わりだよ?

せっかく、生まれてきてこんだけの人生で、勿体ないよ!

やり返せばいい!

こうなってしまったきっかけである…ヤツを殺せばいい!

それできっと、あなたの心は満ちる。

そんな気がする。

だって、今のあなたの心、終わってるよ?

何もかもを捨てる気でいるよね?

うーん、面白そうだけど…なんか…うーん…

せっかく力あげるんだから、もっと、暴れてよ。

あなたは一匹狼になるのかな…それともその身体で人間を仲間にするのかな…??

楽しみにしてるよ?

◈──────────────────────◈

やんなきゃ…ヤンなきゃ…殺んなきゃ…じゃなきゃ私…このまま地面にいっちゃう。ここにいる人達みたいになっちゃう…だから、いく。

いこ。うん。いこ。うん。

そうだよ。うん。いくんだ。

殺してやる。

──────

私は歩いた。この今にも出したくてたまらない煮えたぎった力を宿しながら。行き先は決まっていた。私は…“人間”だ。けど、それとはもう違うカタチのものに、なってしまった。でも、彼等は私を知っている。この腕章もそうだ。何よりの証拠。人であった証を消したくない。これがアイツらとは“別の存在”である事を意味する。

必ず、殺す。

絶対に。

たとえ、これ以上、モノを失っても…最後に立つのは…私だ…。


運命は必ず生涯を変える。

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