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[#22~29-私と3人]

ジェノサイドフェーダのその後を描く、サーガストーリー。

[#22-私、遺された価値の模索]


律歴4119年12月7日。

旧ツインサイド爆心地エリア──。ジェノサイドフェーダ発生及び、フェーダがツインサイドエリアから離脱して5時間が経過。大量の死者を生んだこの惨劇には生存者がいた。生存者は他の生存者を探し、極小数の者が手を取り合って共にこの地を逃れようと奮闘していた。



12月8日──。

奮闘虚しく、生存者が激減する事態が発生。


12月9日──。

生存者三名が息を吹き返す。


12月10日──。

ツインサイドから世界に向けて奇病発生。


以降、《テクフル》は異常発生の連鎖的な毎日を受けている。

フェーダとの戦争が齎したものはなにか…。

祝福か、呪いか。

それは、種の系譜によって委ねられる事となる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ジェノサイドフェーダから、5ヶ月後──。

**20年5月5日。ここ最近、世界ではとあるパンデミックが発生し、大混乱を招いている。

王都ツインサイドにて起きた人間とセカンドステージチルドレンによる戦争では、副次的な細胞粒子が拡散されていた。それは人を強制的に超越者化する《SSC遺伝子》に酷似したウイルスデータだった。フェーダは剣戟軍への攻撃と並行してSSC遺伝子を四散させていたのだ。


ラティナパルルガ政府はこれを《ダスゲノム》と呼称。“セカンドステージチルドレンになる素質を持たない人間”にダスゲノムは感染。

━━━━━

そして、ダスゲノムからの受付に答えられない身体は次第に蝕まれていく。

━━━━━

この惨劇でフェーダは、多量のダスゲノムを使用。それは地上に蔓延しウイルスが単独行動をとることで、様々な場所に転移。這い蹲る。

ダスゲノムは最初に、ツインサイドエリアの周辺領域である《グリーズノートスケール》と《ベルサイユスリーチ》に位置する都市をウイルス攻撃。ダスゲノムは自身の細胞を強化させながら、移動するという生育機関を有している。それが、一体どのような原理で、なぜ成長するのか、全くもってそれは解明できていない。

第1の感染者が発生したのは、ツインサイドエリア。第2はツインサイドエリアの北東地域グリーズノートスケールに所在している《ティルタールシティ》。


第1の感染者は死者となった人間が転化した姿だ。“セカンドステージチルドレンに成り損なった”その容姿は、“未完成”という言葉が適切だろう。フェーダからの破壊行為により、破損した部位からSSC遺伝子を噴き出して滴らせながら徘徊している。これは、剣戟軍調査部隊が外気汚染防護服を着装し、ツインサイドエリアのリサーチを行った際に判明した事だ。

ツインサイドエリアは全域が遺伝子主流福流共に、危険濃度信号を発信させている。その調査時に発見した《ダスローラー》と呼称する徘徊者を捕獲しようという計画を緊急決定したのだが、想像以上に狂った行動をとり攻撃パターンの予測が出来なくなる。調査隊は壊滅し、それに追従していたドローンのみが帰還。

犠牲者を生む事にはなってしまったが、これによりツインサイドエリアは全域閉鎖。

民間人の立ち入りを禁止した。

調査隊に追従していたドローンのカメラ映像を確認した所、こちらから近づこうとしない限り、相手からの攻撃は行われない事が判った。

即ち、ダスローラーは攻撃意志を持つ者を攻撃対象とする可能性が有る…という仮の判断に至った。政府はツインサイドエリアを、《グラウンド・ゼロ》感染爆発ポイントとして指定。

ダスゲノムはその後も、規模を拡大させ大陸全土に広がった。今、このラティナパルルガ大陸では安息の地を求めて人々が生活苦難に陥っている。


再び、フェーダがツインサイドエリア離脱から5時間後──。

ツインサイドエリア改めて、ダスゲノム爆心地には、生存者が3人いた。

《ファウンス・ウィララスカ》

《アルマーレ・クウシル》

《ラルース・コークアプ》、この3人の女性。

この3人は関係性が無い全くの赤の他人。異なる方角から集まり各々が他の生存者、或いは救済の一手を求めて彷徨っていた。年齢は全員が16歳。出来上がり過ぎてる偶然だが一つの事実。3人の境遇はそれぞれだ。その中でも、アルマーレが唯一、ツインサイドエリアに観光者としてやって来ていた。

他の二人はツインサイドとは縁のある人物。

この惨状を受け止め切れない…。

この地獄の災禍と化した王都で、三人は生存を確保するためこの街からの脱出を決意する。


[#23-私、人を見るのが好きなの]



**20年1月1日──。


ツインサイドエリアは非常に広大な敷地面積を誇っている。それに伴って、倒壊したビル群が更なる視界の邪魔となっている。

道も無ければ、行先すらもままならない。

本当にこの道が合っているのか。

誰も判らない。

3人は歩く。

ただただ歩く。

会話もあまりしていない。

だって赤の他人だから。

気まずい雰囲気にらなる…という段階にも達さない。

話してる方が、その先の会話をしなくてはいけない…リードしなきゃいけない…と、思ってしまう。

牽制し合う…この表現が適切なのかは判らないけど、多分そうなんだと思う。


今更ながら思う。

────

“本当に幸運だったな”と。

────


だって本当に人が居ないんだ。

誰も居ない。

死んでるんだよ。

何人の死骸を見た事か…その殆どが部位損壊を遂げていた。腕がもげたり、腕の断面図が見えたり、右の眼球があらぬ方向を向いていたり、飛んできた破片が口に入りそのまま息絶えていたり…“グロテスク”という言葉をそのままの意味で言い表したら正にこの回答が提示されるんだろうな。

この光景に慣れてしまった私が嫌いだ。

こんな光景を見るなんて…そんな未来を誰が予想するもんか…。

ふざけやがって…信じられない…。

私…ファウンスは、建築物の死角になった事で絶対死を免れた。本当にギリギリだった。

アルマーレは、避難する人々の中にいたという。

大混雑でその時に雪崩が起きてしまう。

だが間一髪の所で、雪崩に巻き込まれずに済んだ。“目の前”で雪崩が止まったらしい。

人と人の圧縮密度は身体を真っ平らにするに、十分な力を誇る。

ラルースは、死体と思われたのか、フェーダにスルーされたという。なんともこれまた大幸運な事だ。

この上記の奇跡の後は、皆同じ。行くあてもなく放浪と休息を繰り返していた。


会話が無い。

まるで気の知れた仲のように。

何事も言葉を交わすこと無く、アイコンタクトで全ての事象に対応出来るような軋轢不仲スーパーマンチーム。


だけど、最初はこんな地獄みたいな雰囲気ではなかったんだ。


「ねぇーえ!あんた達はどこ出身なの??」

アルマーレはこういう性格だ。

活字からでも伝わるでしょ?自分の視界に急に現れるみたいな謎の突撃頭部。

自分の世界を構築していたのに、何故かなんの前触れも無く介入してくる理解不能な人。

クラスの中心にいるような女。

私がすこーし嫌いなタイプだと言える。異性から勿論好かれるし、同性からも好かれる感じの女。

すこーし嫌い。

いけ好かないんだよな…こういうのって。

自分勝手なのがムカつく。

自分の事を知って欲しいのか、好きになってほしいのか、それ以上の事を植え付けようとしているのか。

相手の術中にハマっているような気がして胸がムズムズするんだよ。私が少しの時間、数秒だと思う。

それへの返答をしようと、踏み締める足と共に地面を見ながら回答に困っていると…

「ねえねえ!ラルースは??」

ってなった。こいつは、誰でもいいのか?

話す相手?話し相手?とにかく話せればいいのか?

「《ハイブラックハーバー》の《メラールザブ》。」

「えぇ!!そんな遠くなの??」

「うん、今はツインサイド第3学舎に通ってるから、寮で生活してる。」

「へぇーえ、ファウンスは?」

ラルースはクールだ。無駄口を叩かない。

必要最低限の言葉だけで話を構成している。私は好きな方だ。そっちの方が、かっこいいし、なんだかカリスマ感がある。本当に好きな人としかツルまなさそうで、ツルまなければ“一匹狼”感が出ていて、とても良い。

「あのさぁ?聞いてんの?」

「あんたさぁ、ちょっと黙ってくれない?」

「もう無理…マジで…ほんとに…、、、なんで2人ともそんなにあるけんのよ、、、」

「私だってキツいよ…でも進まないと…こんなとこに居れねえんだろうが。」

「そりゃあそうだけどさぁ…もう、、ちょっとタンマ、、」

「はぁ?」

「もう、、、じゅーすちょうだい、、」

「昨日上げたやつが最後だよ、、、」

「えぇー、あんなにあったのににに」

「お前が全部飲んだんだろうが!カラッカラにしやがって!」

「うっさいな…ほんとに、、あんた友達いないでしょ?」

「(なんだこいつ…)そう思ってもらって結構。」

「私のオトモは、準備万端でいつも遊びに来てくれるんだよ?私の好きなジュース、いつでもどこでも食べれるプロテインバー、チョコバー、ロック付きのグミでしょお?あと、怪我した時用の絆創膏、ポケティも3つ以上は持ってきてくれる!」

「お前、隷属してんのか?」

「何も言ってないよ、指図もしてない。」

「じゃあ相当周りに恵まれてるんだな。」

「ヘヘェーン、どう?あんたもその身分になってみる?」

「誰がなるか。」

「でもさぁ?昨日会ったばかりなのに、なんでこんなに会話弾むんだろうね。」

「弾んでねぇよ。」

「ええ?結構良い感じじゃない??なんか、、会話の、、」

「ドッジボール?」

「そうそう!!それ!“ドッジボール”!」

「ハッハッハッ、お前、今から私と喧嘩するか?」

「はァ??」


昨日のアルマーレと比べてみたら、まだ楽な方だ。

初めて会った時はフェーダと剣戟軍への不満が止まらなかった。息を吐くように愚痴を吐き出す。息を吸う度にその反動でデトックスされる文言は強さを増大させる。言葉の意味とか、熱量というか、兎に角あらゆる悪口パッケージワードを私達にぶつける。不満の対象が居ないから自然とそれを受けるのが私達になる。

でも、それは同意できる内容だ。

こんな所で戦争なんかおっぱじめて、民間人も巻き込んで、たまったもんじゃない。剣戟軍への不満は先程のものと該当する箇所もあるが、それとは別に“現在”に対して付随する不満だ。

───

何故、助けに来ない?

───

有り得ない…これ以上の非常事態があるのか?

普通、こんな大都市で戦いが起きた…んでその後、救助を行うのが普通じゃないのか?

なのに、機影すら見えない。音も聞こえない。

見捨てたって事なのか?軍が民間人を見捨てた?生存者を捜索しないなんて…この世界はバグってる。この街で戦闘が起きたんだよ。

まさかここ以上に、人員を送らなきゃいけないイベントが起きたって?信じられない。これ以上の事があるか…大虐殺だぞ?目が慣れるほどのだ。お前達が一番この苦しみをわかるはずだろ?

何故なんだ?

この周辺地域の国家機関に不信感を抱く。

こんなにポストアポカリプスのような大地を見ても、少しくらいは捜してくれてもいいだろう。もう、、、“決めつけた”のか?もうあそこには、生きてる者はいないってなったのか?決まったのか?

人類の逸脱した考えに腐敗の色を感じるファウンス。


アルマーレが口を開いた。

「なんか、おかしくないですか?」

さすがのアルマーレも、この救援隊が来ない状況に違和感を抱いたか…。

「なぁんで、女ばっかりなんですかねー、、」

バカだ、多分こいつは本物なんだな。

「かっこいい男でもいないのかなーー」

こんな状況でも異性を考えるんだ。陽気な喋り方で今を深く思考しようとしない。私は“第一印象”で人がよくわかる。

第一印象を大切にして欲しいと、相手方には心からそう思っている。

目線、口角、手の仕草、身体の揺らつき、足の向き。

人間の全てのパーツからは読み取れる要素が多すぎる。多すぎるが故に、対人関係の時にはそれが武器になる。それは善し悪しの振れ幅が広い。

話し手と聞き手のそれぞれの感情が、一定になる事は無い。なっていたとしたら、それはとても面白くない時間。過ごしたくない、なるべく、いや…さっそうと逃げるだろう。すぐに話を切り上げて、自分の時間に没頭したくなる。

アルマーレには、そう思う時と思わない時がある。それがややこしい。だけど、彼女と一緒にいなきゃいけない。

この惨劇から逃れた貴重な証人として、警察に行けばいい。アルマーレの馬鹿なセリフを皮切りにブレーキが外れたかのように、乱暴な言葉を吐き続けた。

「もう!なんで誰も、助けに来ないのよ!!」

「(今更かよ…)」

それに比べて本当に、ラルースは大人しい。心地よい…とまではいかないが…。急に止まるし、考え事を突拍子もなく発表し出したり…。何かと面倒な女なんだ。目障りで耳障りな女がいるから、こういう女は余計に目立つ。バカうるさい女に対しての…もう、本当にイライラする!頭がおかしくなる。ただでさえ、思考停止していてもおかしくないのに。混沌とした世界に、この人間関係、運命とも言えるのか…。

喋るし、喋らないし、喋るし、喋らないし。

……、、、、

喋るし、喋らないし、喋るし喋るし喋るし…


アルマーレがラルースに急接近する。

「ねえ、あんた全然喋んない。一緒にいるんだから、構ってよ。」

「不要だ。同行しているのは、敵からの注意が逸れるからだ。」

「それって、私を必要としてるってこと?」

「意味は合ってる。」

「なんだぁ、じゃあ最初からそう言ってくれればいいのに!」

「君との会話は何かの利益に繋がるのか?」

こいつは、本当に女なのか?クラス奥の窓際隅に居座り続ける男の陰気な奴に見えてくる。顔は可愛いのに。

「うん!繋がる繋がる!えぇっとねぇぇ、美味しいスイーツ知ってる!メイクも教えてあげるよ!あと、男との付き合い方もね。あんた見るからにコミュニケーション能力無いでしょ?」

「…」

「いいのいいの!私と一緒にいる特典は沢山あるよ!“スペシャルフィーチャー”アルマーレ・クウシルをいつでも使ってーー!、んね?」

「承知した。」

会ってからほぼ、会話に参加していなかったラルース。

冷たい対応だったが、アルマーレの横暴な能天気さを受け止めた。それは仕方なく…のように思えた。

視線はしっかりとアルマーレに向けていたから。

そして、ほんの少しだけ口角が上がっていた。一文字一文字の音から鮮明な舌使いが聞こえる。

流して作られるようなら音じゃない。本当の気持ちを伝える時に感受される音だ。

唾液の音と混じりつつ、不愉快なサウンドの中で感情表現が踊る。その踊り方には、複数の種類がある。

それは感情の伝達方法によって異なる。ラルースが発した音にはマイナスベクトルの不穏性は感じられなかった。

「アルマーレはここに観光で来ていた…と言っていたが…」

「あららら、やっぱり気になってたんだね、アイツとの会話」

「このアバズレ…」

「そうだよ、ツインサイドに来るのは初めてだよ。一度は行ってみたい!って思ってたんだよね。」

「どこが目的地だったんだ?」

「そりゃあ勿論!トゥインクルショッピングモール!ツインサイド限定の化粧品目当てだったんだー!あとはご飯かな。たらふく食べてたの。」

「一人でか?」

「違うよ、友達と。でも、、人だかりができて…離れ離れになっちゃった、、、私が目を覚ました時、真っ先に行ったんだよ?最後、一緒にいた所に。だけどもうそこにはいない。人の雪崩だよね」

「残念だ」

「ううん、ありがと」

「非力ではあるが…役に立てる事があれば、私を使え」

「優しいんだね、すっごい嬉しいわ。じゃあさ、さっさとこんなとこ出て、買い物とか…イタッ、ちょっとぉ?ファウンスちゃん?今ラルースとデートの約束しようとしてたんだけど…??ムードを壊さないでくれないかな?」

先頭を歩いていたファウンスが急に歩きを止めた。

自分の話に夢中になっていたアルマーレは、動きを止めれなかったが、ラルースは止まっていた。ファウンスにぶつかった瞬間に大体の愚痴を吐き出し、その後ラルースにムスッとした態度を示した。

「ごめん。。」

ラルースは、引き気味の感じで謝る。

「なにぃ??なんかあったの?」

ぶっきらぼうに言い放ったアルマーレ。

その異変にアルマーレは、一筋の光を見つけた。


[#24-私、可愛いの見つけた]


ラルースも気づいた。

生存者だ。

生存者を発見した。

ここまで一日、まっっっったく生きてる人間を見つけて来なかったけど、ようやく新たな一員を迎え入れる事になった。

しかも女。

またかよ…年齢も同じように思える。

清楚でプラチナブロンドの髪色、長身気味で美脚が映えるミニスカート。白色のパンプスを履いている。

崩壊した建造物を壁にして、長座体前屈をしているかのように足を伸ばして身体を弱らせていた。

3人は彼女に近づく。

「めっっっちゃ、かァァァ〜いい!!」

アルマーレが爆発した。

確かに彼女は可愛い。

まだ喋ってもないけど、声すらも可愛らしいんだろうな…と思わせられる程のキューティクルさ。外見だけで人を判断するのは宜しくない事だが、今回ばかりは治外法権。

確かに彼女は可愛い。

アルマーレの声を大にしてのあまりにも少女すぎる大枠の意味合いで発言された感想について、判らないでも無い。“第一印象”を大事にしている私からしても、彼女のファーストパンチは面食らった。

普段なら、相手の内的宇宙を先に読み取る。

そして、そこから人格性とか行動原理、感情と表情の揺らぎ具合等に結実するものを統合させる事で、第一印象を形作る。だが、そんなルーティンを殺すようか輝きが彼女にはあった。

でもおかしいんだ。“光”輝くという意味での輝くでは無い。だからといって、暗黒性に満ちたものでは無いのだが、真正面から“光”を感じる訳ではない気がする。


「ねえねえねえ!この子、めっちゃ可愛いんだけど!何この子!?アイドル?芸能人??ねぇ!ラルース知ってる?」

「いや…私も知らない。」

「普通の子…なのかな…にしても可愛いなぁ、、、こんな子が、砂埃に塗れて…早く拭ってあげなきゃ…おい!ファウンス!タオル持ってねぇのか??」

あからさまな好意対象者への態度変容に、強い憤りを見せるファウンス。その反応からか生まれた強い歯軋りで、ラルースはファウンスの顔を見に来る。

「ラルース…私、あのクソ女をぶっ殺すかもしれん。その時になったら止めてくれ」

「…承知した」

ファウンスは手持ちのハンドタオルをアルマーレに渡す。

「あんがと。」って言われた。

棒読みで無感情を貫いていた。受け取り手が不快になる対応だった。

私ですら感じてしまった第一印象の“可愛い”。

全く、情けない事だ。

でもそれに付随して第二印象が同時にやってくる。

“私たちと同じく、砂埃に包まれていた”という事。

でもまあそれは、私じゃなくても直ぐに判る事。

一応の理解を示す為、不平等は避けたいから投げ掛けて置く事にする。にしても、この女はこんな戦果を経験してはいけない女だなぁ…。

男が戦争に行ってる間、家事や子供の世話を一生懸命に奮闘し、今か今かと戦場で血を流す夫の帰りを待っている戦争映画のヒロインみたいな感じだ。

だけど、何かがおかしい。

“欠けている”。

別に、身体の部位が破損してるとか、物理的な状況を見ての感想じゃない。そのはずだったら、爆発的な第一印象となっている。可愛いなんて馬鹿げた感想が、とうとう笑えないレベルになる。

私らしさの欠片も無い誰もが思える内容に落ち着くんだ。

そんな感想は表に出さず、内側にしまっておこう。

なんでかって?

「かァァァいイイ!」

私の独白にカットインする自己中心的女。

この女…私達の喋る気が失せるぐらい喋る…。

肺活量メーターが微動だにしないのか…本当に判りやすすぎる女だ。自身のテンションが上がるとどうも自己を保てなくなる女。そういう女が落ち着く着地地点は大体予想出来る。

“飽き”だ。

人は先程までの記憶は失ったかのように、次の好意対象を見つけると直ぐに移行する。こういった女はそれの典型的なケース。周りへの配慮も無い、自分が世界の真ん中にいると思い込んでいるヒロインぶった迷惑ヴァルキリー。

雰囲気なんか気にせず、自分の世界だけで生きてる女。今まで経験したことの無い関係値を構築する事になった私は、食道にステーキが詰まったのかと思った。

「言葉が出ねぇぐらい、ムキィてなる。。。」


「おい、、、大丈夫か??」

アルマーレが、初陣をかざった。

「アルマーレ、私が先に言葉をかけたかった。」

「なんだラルース、変な愚痴を言うんだなガッハッハッ!」

「…、、あなた、ジョウブなのか?」

「大…付けないの?」

「アルマーレが言った事は、言いたくない。」

「それ、、どゆこと?」

「自分を大事にしたいんだ。」

「“自分らしさ”ってこと?」

「そういう事だ。」

「なんか、、、、変だね、ラルって。」

「そうか?考えたこともない。」

「まあ、自分の事は自分ではわからないからね。私が教えるよ。「変じゃねぇ?」って思ったら。速攻で言うから!」

「わかった。宜しく頼む。」

「オッケー!じゃあ早速2つ目!」

「なんだ?」

「無表情で言うの止めて。マジすっげぇ怖えから。」

「わかった。」

「『わかった』だけじゃなくて、感謝も大事よ?」

「何故なんだ?」

「私が嬉しいから。“ありがとうポイント”貯めてるの。」

「わかった。ありがとう。」

「うん!ソレでよし!」


「おい、お前ら、、、」

「なんなのぉ?ファウンスちゃん??…、、、!」

アルマーレとラルースの引っ掛かりの無い会話の最中、女が目を覚ました。

「あ!!ねぇ!かわいいの!大丈夫?」

「…」

ファウンス・「話せるか?」

「…」

「ありがとう。」

「なんで??」

「違うのか???」

「うん…大丈夫だよ、、、、、」

目を覚ました彼女。

「ちょっと!本当に大丈夫?」

態勢を立て直して、彼女は直立を遂げた。

「大丈夫だよ、ありがとう。」

「こういう時にも使えるのか?」

「ラルース?ちょっとうるさい。あなた大丈夫?巻き込まれたんだよね?よく生きてたね!私達も戦争に巻き込まれたんだけど、生きてたんだ。今んとこ生存者は私達だけ…もしかしたらあなたが最後かも…ねえ…なにか知らない?この状況を。」

「、、、、、、わからない。」

「そうか、、ねぇ名前は?」

「…《エリヴェーラ》」

「エリヴェーラ?可愛い名前だね!私はアルマーレ。あんたに負けじと可愛い名前でしょ?この生真面目な子が、ラルース。んでぇ、こっちが、いけ好かない時がある女、ファウンス。仲良くしよネ?」

エリヴェーラ・「うん。」

おっとりとした表情の中に、華麗さを魅せる彼女。

声が可愛い。

自我を強調させる訳でもなく、自分の内面を一通り把握しといての初対面者に対して発する言葉の音圧では、最良のサラウンド。上目遣いも可愛かった。

男だったら間違いなく、一生を誓うヤツだ。

はぁ、、、もうこんな感情を抱くのは止めよう。

でもこんな状況で、こうして生きる糧を手に入れられたのは嬉しい事だ。

ファウンスは、己の簡易的な感情の揺籃を呪う。

「手を貸して!」

アルマーレが手を差し伸べるとエリヴェーラは、その手を振り払った。一度は目にしていたその手を、嫌な物でも見たかのように左へ流した。アルマーレは一瞬、ムッとした表情になったが、彼女の気持ちを重んじた。

「もう、、、誰も生きてなイ、、キットね。」

覚束無い口調で、何かを発したエリヴェーラ。3人はそこまで重要な事を言っていないと思い、特に何も解釈する事はなかった。

だけど、見た目への影響がその発言の後から顕になっていた。“可愛げ”が感じられなかったんだ。なんだかおかしな感想だけど、圧倒的な違和感があったんだ。

「ん?」

アルマーレがエリヴェーラに迫る。とにかく迫る。迫る。

「な、、なに?」

「、、、、可愛い。」

こいつはほんとにバカだ。

「ありが、、とう、、」

ごめんな、、エリヴェーラ、私は恥ずかしいよ。この阿呆女に対しては母性が芽生えてくる。

私がなんとかこの腐れ切った性格を矯正しなくては…。

「エリヴェーラ、一緒にここから出よ?みんなで出れば怖くないよ!私がいるんだから!ねっ?良いでしょ?いいでしょ?イイでしょ!?」

「うん!よろしくみんな。」

取り敢えず、今はこの4人でツインサイドエリアからの脱出を図る。

と、言ってもずっと続けている行動がエリヴェーラが加わるからって変更されるということでは無い。

ただただ歩き続ける。

今私達にできる事はそれだけだ。

エリヴェーラの雰囲気がまた変わった。変容の激しさにこちらの感情が追いつかない。第一印象の感じに戻っている。

て言うか、さっきよりも口角が上がっているし、目が大きい。見開いている。そんなハツラツの笑顔が3人の心に突き刺さる。

3人が一斉に思う。

「この子、守ろ。」


[#25-私、愛されるために生きてる]



───────────────────██


ねえ、きこえてる?


きこえてるんだよね。


うん、そのはんのうだったらよかった。


あなたをえらんだ。


そのいみはゆわなくてもわかる。


そう、わかるはずよ。


みんなががんばってるわ。


あなたがひっとうとなって探しなさい。


ん?なれないかな。これ。


うけとめてばっかだからだよね。


はなしてもいいんだよ?


おはなししたいな。


だから、はやくこれになれてね。


まってるよ。


─────────────────────█


「よし!じゃあ前進だよ!ぜんしん!、、、、ってぇ、、えぇ??」

アルマーレが先導しようとした時、エリヴェーラが先立って先頭に居座った。

エリヴェーラは勝ち誇ったような顔をしている。


「エリヴェーラ?」

「あんた、そこは私の場所よ。新入りのエリヴェーラはラルースと一緒に居なさいよ。」

「私についてきな。」

一瞬でも腹を立てたアルマーレだが、エリヴェーラの最上級のあざとさに見惚れてしまう。

自身に生まれたどうしようもなくも発散せざるを得ない不要な概念感情。

慄いてしまう程度のキューティクルさに、途中途中で言葉が途切れてしまう。

タジタジと言ったところだろうか。

手の施しようが無い厄介なタイプ。

これで可愛くなかったら総袋叩き。

「エリヴェーラ、行くあてがあるの?」

ファウンスが問う。

「そうよ、なんかドンドン進んでいくけど。あたし、歩きづらい所もうヤよ。」

瓦礫、下水管から漏れ出た汚泥と水が開けた道にも障害として行く手を遮る。だが、そんなものを気にせずエリヴェーラは突き進んで行く。

ナビでも仕込んでいるかのように、迷わず歩く。

歩き続ける。

「大丈夫よ、さ、こっちかも。」

「あ、、“かも”なのね、、やっぱり」

「そうだよ?カモ。カモ!カモぉ〜。」

「カモ!カモカモ、、、カモ!」

「かも。」

「(頼むからお前だけは、普通でいてくれよ。。)」


「エリヴェーラ、私達は1日前に知り合ったのよ。赤の他人」

「うん、一緒に居れば判るよ。会話の間、本音を言えてない口調と声の音。」

「音?」

「そう、音。何かまだ隠してるでしょ?」

「隠してるっていうかあ、まぁホントに知り合ったばっかだからね」

「そう、別にここから仲を深めるつもりも無いし、、」

「もう!ほんとファウンスって性格キツすぎ!友達いないでしょ」

「そうよ、いないよ?なにか文句あんの?」

「ふん!あんた、こんな状況じゃなくても野垂れ死にの人生ルートね」

「あんたなんかに私の人生決められたくないわよ。」

「なんですってぇ?!」

「…」

「ラルース?この2人いっつもこうなの?」

「いや、、あまり知らない」

アルマーレとファウンスのなんの精算性も無い言い合い、それを後方から傍観するラルース。

そんな事が5ヶ月も続くとは思ってもいなかった。


未だに救助隊は来ない。

耐え切れなかった空腹には、爆撃の影響を辛うじて100%受けていなかった中破状態の食品施設が役に立った。

基本的には屋外へ露出している店舗は、甚大な被害を被っている。

その中で被害を最小限に抑えていた、或いは微量たる食糧のみが残存していた決壊の店屋…中でも商業施設は、中心部分に位置し、人々が憩いの場として利用する広場周辺の店が残存するという…生きる希望を捨てる気にはさせてくれなかった。

4人は歩く。ただただ、歩く。

普段は様々な場所にアクセスができるように、複数の分岐ルートが点在している。

そのためもあって、ツインサイドには高架道路と地下トンネルが交差し合っている。

更には通常道路も加わる事により、複雑な交通状況を生んでいる。ツインサイドにはこのぐらいの交通レベルが必要な都市なのだ。

その交通システムが欠落している。

高架上にあったものが、全て地上に崩落している。

結果、私達の動きを遮っている。

非常に面倒臭いバリケードだ。

到底よじ登れるような、生易しい高さじゃない。

時々、人間の力…女の力でなんとかなる高さのものに出会す。なんとかそれを探し回って探し回って、脱出ルートを模索する。そんな気の遠くなる行為を続けていけば、集中に必要な血液なんてカラッカラになる。

身体から水気も無くなっていく。

殆どが通れない道だが、中には通れるような道もある。

「壊すならもっと、粉々に壊せよなぁ!」

アルマーレが大きな溜息の後に愚痴を吐く。瓦礫の決壊度に統一性が無い。

ここまでやった来れたのに…と思っていたら、その先は複数の支柱が連なる事により、封鎖されていた。

その結果は、振り出しに戻る…と言ったところだろう。

とにかく、私達の想いを汲み取ってくれないツインサイド廃墟。

「皆、ちょっと待って…わたし、、、もうムリ」

アルマーレが複数回の大きな呼吸音を繰り出し、静止した。

ファウンス・「もういい加減にしなよ、まだまだなんでしょ?エリヴェーラ」

エリヴェーラ・「いいえ、そんな事もないわ。」


「え??」


「もうそろそろよ、頑張って。みんな。」

エリヴェーラがそう言うと、瞼を閉じた。

その時間は長かった。

別に空気が美味しいわけでも無い。

この光景にはもう慣れたから、今更嫌になって視界拒否をした訳でも無いだろう。

なにを考えているのか判別がつかない。

その姿を無言で見続けるファウンスとラルース。

「なにやってんだ??おーい」

一人、アルマーレはその虚無の時を許さなかった。

「おーーい、エリヴェーラぁ?、、、、、死んだんかァー??連れてけバカーーーー!」

「アルマーレ、ちょっと待って…」

「なんだよぉファウンスちゃん、また私にちょっかい出すンか??アァん?」

「待って、なにか感じない?」

「はァ??、、、、うわ、、なんだこれ?」

「うん、私も感じる。」

「みんな、感じるのか…おい、エリヴェーラ?」

ファウンス、ラルース、アルマーレ、3人には何かの異変を感じた。

それは言葉で伝え切れない特別なオーラだった。しかもそれは、内外を問わず放っている。

自分の身体から…外気を通じて、その違和感は伝達されてゆく。


「さぁ、もう少しだよ。」


「おい、エリヴェーラ、何してたんだよ?」

「何も無いよ。私が黙ってて悲しかった?泣いちゃった?」

「べっつにー、ただあんたがナビなんだから、こんな所でくたばってもらっちゃあ困るのよ 」

「へぇ〜、信頼してるんだァ?可愛いねェ。」

「うっさいナこいつ、はよ連れてけやバカ」

「この建物を曲がってみ。」

「えぇ?」

前を先導している2人が、死角となった建物を曲がり、恍惚と姿を消した。そんな姿を見て、ファウンスとラルースは急いで2人の元へ走った。

「もう、、、何してんだよアイツら…ラルースいくぞ」

「うん」


曲がる先、瓦礫を登った所に2人はいた。

「おい、急に走るな!どうしたんだよ…」

「ファウンス…あれ見てよ」

4人の眼前に広がるのは、真っ白い瓦礫が見渡す限りに果てている。この色の建造物は1つしかない。

「これ、なに?」

アルマーレが3人に問う。

「王宮だよ、ツインサイド・カリーシ」

「これが、、あの王宮?」

多方面のメディアでよく見ていた世界を統べる塔が、あられもない形を遂げている。初めてその目で見たアルマーレは、大きく落胆する。

「あーあ、せっかく見たかったのに…もう最悪…サイアクぅ!何よこの姿…ぐっちゃぐちゃじゃん、、、もっと早く着けばよかったな…」

「アルマーレ、こっちだよ。」

エリヴェーラが、王宮の方を指差す。

「王宮か…」

ファウンスがそう呟く。

「はぁ、、、あなたの本当の姿を見てみたかったよ、カリーシちゃん、、、」

アルマーレはツインサイドに来たのは、ジェノサイドフェーダが起きた日が初めてだ。

だから、ツインサイド・カリーシも生で見るのは初めて。ツインサイドに住む者で、この建造物を見た事が無い人なんていない。

アルマーレはどうやらカリーシを見ること無く、ジェノサイドフェーダに巻き込まれたようだ。

相当落ち込んでいる。

見れなかった事を悔やんでいる。

でも、それに相当する感動ではあったに違いない。

世界で唯一の光沢感を放つ、色彩を使っている特殊金属コーティングの塔。

圧倒されるその純白は、見る者の心の中を抉るような切っ先の鋭い刺激を与える。

アルマーレには見せてやりたかった。

この落ち込みよう…。

きっと見たら予想だにしない驚きを見せることだろう。

人格も変わっちゃうんじゃないかって言うぐらい。


[#26-私、はじめてだから色々と見て回りたいの]



ツインサイド・カリーシ、決壊したその姿はこの場での惨劇を想起させた。見るに堪えない肉片の飛び散りも、最早恒例行事のようになりつつある。特段珍しい光景では無いから。

「すごいね、、、見たかったなぁ、ねえファウンス、どんな感じの建物だったの?」

「そうだなあ…高いイメージは強いね。真下から見ると首がつりそうになるぐらい」

「へぇ〜、あたし高い所平気だよ!」

「そうなの?」

「うん、実はね、私、スカイダイビング!やった事あるの」


「スカイダイビング?」


「スカイダイビング?ホントに?」

「そう!凄いでしょ?それでね、なんか人生観変わっちゃったんだよね。空から見る星ってすごいよォ?」

「星って…そんな上にいったわけじゃないでしょ?」

「いやいやァ、地球って表現させてよ。どんどんちっちゃくなる街をみると優越感あるのよね、んで人間達がその小さい小さい建物の中にいるんだって考えたら、もうなんか、、ねぇ?」

「言葉が出なくなるぐらい良い思い出なのね」

「そう!そゆこと!ファウンスも今度、一緒に行こうよ!」

「わ、わたし!?私は…たかいところ、、ニガテだから…」

「だいじょうぶ!安心して。私がコーディネートしてあげる!ラルースも行くのよ!」

「私、たかいところすき」

「そうなんだ…まぁ考えとく」

「意地でも行かせるからね、ヘリコプターに引きずり込んでやるんだから!」

なんだか、彼女の勢いに負けてしまっている気がする。という事は、私は彼女の人格を認めている…という事になる。小難しい事は考えずに、彼女との相対をしていたら、いつの間にか彼女と心を通わせていた。人間というのは実に妙だ。でも、そんな妙を受け入れた。

彼女の良さに気づいたんだ。アルマーレは私を欲している。私もなんだかんだで、アルマーレの自由奔放でどうしようも無い無法な性に、振り回されたいのかもしれない。

なんなんだろうね…アルマーレって、癖になる笑顔を見せてくるんだ。気持ち悪いよね。でもなんか、私、こういう人って初めてなんだ。実際にはね。

小説だけの世界だと思ってた。弾き散らかしている笑顔には、裏がないように思える。なんか…もっと知りたいって思えてきた。

アルマーレをもっと知りたい。


「おい?大丈夫か?ねぇー!」

「あ、うん、ごめん」

「何してんのー?ずーーとボゲェとしてたけど…さっ、チンタラしないで!いくよ」

アルマーレに目覚めさせられ、私は想像の世界から帰ってきた。現実では3人に導かれるまま歩いていたようだ。気づいたら、ツインサイド・カリーシの直前までに来ていた。

「さてと、んでぇ、どうするの?」

カリーシ目前になってみたはものの、入口は封鎖…というか、瓦礫による倒壊で通れずにいた。どこから王宮内に進行できるのか、判らない状況だ。

「エリヴェーラ、もうここからは判断のしようがねえか?」

「うん、残念ながらね。」

「自力で探すしかないのか」

「うー〜わ、メンドイ…もうなんでこんなにも、ぐちゃぐちゃなの!」

「当たり前だろ?戦争があったんだから、しかもここは王宮。王宮の中にいた連中が目当てなんだろうな」

「どゆことよ、ファウンス?」

「普通に考えてみろよ、各国のリーダー達が一堂に会した舞台なんだぞ?フェーダの目的なんて底が知れてる…こいつら全員、一気に殺す事だろ」

「はぁ…そういうことね横暴」

「ラティナパルルガ大陸以外の有権大陸国が集う世界会議。それが開かれていた」

「セカンドステージチルドレン対策法案の決議元はその世界会議だ」

「なるほどね…惨いことするなあ…ほんと…ん?」

アルマーレが途方も無くブラブラ歩いていると、何か隙間を見つけた。

「ねぇ!みんな!ここから入れるんじゃない?」

3人が一斉に集まり、アルマーレの声元へ。

「うん、いけそうだね。」

「よし、いこう」

4人はカリーシの内部侵入に成功した。


今にも崩落しそうな内壁。これ以上の前進は止めた方がいいのでは無いか…と思った。

だけど、これを機にも止めないのがエリヴェーラとアルマーレ。

「ふんふふんふふんふーん♪ ふんふふんふんふーん♪」

「なによ、それ。」

「えぇ?なんか楽しいじゃん?あんたやるのよ」

「やらない。」

「つまんない女、あんたら友達いなかったでしょ?」

「何か問題でも?」

「ベッツに〜、つまんない人生だったのね」

「あたしはあたしなりの人生を歩んでいたのよ。あんたみたいなラクに過ごして、自分に都合の良い人間としか相手しないみたいな、楽観的な生き方してないのよ。」

「なに固いこと言ってんのよ、もうそんなダルい考えやめな!」

「これが、あたしなの。」

「はいはい、わっかりましたよーお」

前を歩くエリヴェーラとアルマーレが言い合いをしている。途中で前後にズレたり、言動の起伏が激しくなる。見ている側としては飽きがこない仕様。この薄気味悪い空間はそこまで、思っていたほど壊れてはいない。形象崩壊の綻びは見せている。亀裂が生じており、あと何かの衝撃さえ加えれば地震のように波打つ感覚で、終わりを迎えるだろう。

「ねぇ、エリヴェーラ?なんで王宮になんか入ったのよ、そろそろ教えてくんねぇか?」

「特に無いわ。」

「え、」

「そうよ、特に無い、だって、彷徨いててもしょうがないじゃない。」

「まぁ確かにエリヴェーラの言う通りかも…」

「ふっざけんじゃないわよ!ノープランなの!?」

「ノープランよ、ほぼ同じ光景だったし、汚ったない死体ばっかで嫌だったでしょ?新たなる情報を手に入れるためにもこちらから動かなきゃダメなのよ。希望なんて待ってても来ないわ。希望を迎えに行くのよ。」

「なぁーに、キメた事言いやがって…」

「アルマーレ、エリヴェーラの言う通りだよ」

「なんなの!ファウンスはそっちよりなの!?」

「いや、、よりとかじゃなくて…」

「何か知ってるから、何か心当たりがあるからここまで来たんじゃないの!」

「でもほら、王宮に入れるなんて滅多にないんだよ?アルマーレ」

「えぇ?」

アルマーレは涙を零しながら、ファウンスの言葉に寄りかかった。

「王宮なんて、一般人はぜぇーったいに入れない禁足地。内部の全貌なんて一切明かされてないんだから」

「…」

「そんな所に入れたなんて、私達超ラッキーなのよ?」

「…らっきい?」

「そう、ラッキーい」

「、、、、そなの?」

「ああ、世界で選ばれた人物のみが許される“審判の園”」

「そこに入れてるんだから、アルマーレ、探検気分で行ってみよ」


─────

なんで、私、こんなにも彼女のこと、考えてるんだろう…なんでこんなにも、彼女に、寄り添ってるんだろう。

─────


「、、、、、、わかた」

「うん!よし」

「終わったー?なーぐーさーめ。」

「黙れ!このアバズレ」

「あんた私のセックス事情知らんでしょうが。」

「なによ、ヤリまくってんの?」

「まぁね、飽きがこない程度に交換してるから。」

「フン、どんくらいよ?」

「まぁ2桁はいってるかな。」

「私も2桁いってるわ」

「お前らゲスいな…よくそんな話しを今、できるな」

「女にとって肉欲に溺れるのは良い事よ。」

「そう!ファウンスはどんくらいなのよ?」

「私は、そういうの経験してない」

「え!なに破ってないの?」

「なにか文句ある?」

「もったいなーい!ファウンスこんなに良い女なのに、なんでよー?」

「興味無いのよ、男に」

「勿体なーい。」「もったいなーい」


─────

私は男に興味が無い。そういう行為も興味無い。だって、セックスなんてお互いの距離の把握でしかないから。愛し合っていたとしても、結局は技術力を図られてるだけ。相手を癒す道具でしかないんだ。相手のタイミングに合わせて、こちらが応対しなければ男は萎えるんでしょ?男の色欲さには、不快感MAXなんだよ。

私を好きになる人は沢山いた。告白だって数え切れない人数にされた。でも軒並みしょうもない男ばっかり。体目当てな事が見てとれる。そんなのとしても、私が相手じゃなくてもいいじゃない。

私の肉が欲しいだけ。

私に抱き寄せられたいだけ。

違うの。

“私は、心と身体を一つにしたいの。”

ただ単に、快感を覚えるだけじゃ違うの。

興味が無いって言ったけど、本当は興味ある…“あった”が正しいね。1回だけ…した事があるの。良かった。最中は物凄く良かったの。肉体と肉体を重ね合わせるあの体位は堪らなく気持ち良かった。する前は好きじゃなかった。やった事なかったから、どういうものなのか、知りたくて受け入れた。そして、彼の眼差しに私は惚れた。最中だった。「この人になら私の全てを捧げてもいい…」、そう思えた。

好きになったの。

でも、相手はそんなつもり無かった。

時が経ち、私は妊娠した。

彼にその事を伝えたけど、全くこちらに寄り添う気はなかった。この人は、ただ私を道具として見ていたんだ。私のあそこ、おっぱい、おしり、太腿、唇、ベロ。

性具として扱われた事に、私は憤慨した。私は彼の全てを受け止めたのに、彼の心にはエクスタシーの精液で満たされていた。私を考える余白なんて無かった。自分が満足すればそれで十分だった。それが許せなかった。

腹の子供は中絶させた。若者の中絶問題はそこまで、問題視される出来事では無い。それはセカンドステージチルドレンの影響もある。病院では、妊娠が発覚するとすぐさまお腹の子供の遺伝子検査が実行される。

正直言って、子供の事よりも、私が眼中に無かった事の方が、ムカついてる。

感情的になる順番が間違ってる気は無い。私があなたの中に存在していなかった。己の欲望のままに、性の傀儡として機能するしか無かった私を呪いたいと思う。それに連なって、相手の男には死んでほしいと思った。力強い圧が上からのしかかって、そのまま足が地面に押し付けられるように、骨と肉が泣き叫びながら崩壊してほしい。地面にめり込んでいく足から、骨が飛び出す姿を夢想した。私は笑っていた。苦しがっている相手の顔、あまりにもな激痛さに、液体という液体が人間に備わる全ての穴から発出している。生気を失っていく人間の身体が、こんなにも私の好みに該当するとは思わなかった。

たまに思い出すんだ。

今は、アルマーレに言われて記憶の倉庫から、ベルトコンベアのように神経回路へ流れ着いた。

もうあんまりだよ。

こんなことでこれ以上の無駄な瘡蓋を弄り回すのはやめにしたい。


────────

「なに、この匂い…くっさァい!」

先を進むアルマーレが、声をだいにした苦言を呈す。腐敗臭が激しい。王宮に入ってからと、確かに死臭は濃度を増した。だが前進するにつれ、匂いは黙っていられない程となる。

「確かに…これは、、凄いな」

「ねぇ!!もうどこまで行くのよ!もうあたし嫌だ!」

「もうちょっと行ってみよう。」

「エリヴェーラ、あんた、口元塞いだ方がいいわよ」

「大丈夫よ、ご心配ありがとう。」

「フン、あっそ、そのまま鼻の奥まで、殺戮の害に満たされるといいわ」

止まることをしないエリヴェーラ。それに律儀な対応を示す3人。3人は、この刺激の強さに混乱する。猛炎が噴出する火事場のような、長時間の滞在には生命に支障を来す辛さだ。

「安心して、死臭を嗅ぐだけでは死なないわ。我慢して。」

「なによ、、、アイツ、、なんで、ふつうにしゃべれんのよ、、、…」

「エリヴェーラ…」

「どしたぁ?やっと口開いたネ」

「私と同じ感じがする」

「ラル何言ってんのよ、あったりまえじゃない」

「…、、、、、、、、」

「なによ」

「、、、、、」

「はァーあ、ラルちゃんには教育が必要みたいね」

「、、、」

ラルースの言う事が判らないのは、ファウンスも同様だ。“同じような気がする”ってなんかおかしな日本語。なんか自分達2人は人じゃないみたいな言い方。

アルマーレがファウンスに近づく。

「いい?ラルちゃんは賢そうに見えて、おバカよ。化けの皮がいつ剥がれてもおかしくないぐらいにね。もうペラッペラよ、だから、後で私達が世話してあげましょ」

「はぁ…」

「約束よ!」

遠ざかっていってしまった。なんとも、攻略しがいのある女だ。


だいぶ進んできた。多分だけど、中心地にはもう少しなんじゃないかっていうぐらいに。先程よりも、匂いがキツくなる。刺激的なツーンと鼻に刺さるような、不快になる匂い。

「これは、食物だ。人間じゃない」

ラルースが分析した。

匂いの種類的には複数の物が重なっていると思われる。ツインサイド中に存在していた、死体からの悪臭が風に乗って運ばれたもの。そして強烈なのは、この王宮内の死体。殺戮方法が他とは違っている。内臓を破裂させているんだ。

「なによ、、、これ、、、」

「フェーダだよ。」

「だろうね」

「信じられない…もう、、ちょっと、あんまり見たくない、、かな、、」

断裂部分からは血管が数本飛び出し、下顎を殴り飛ばされたのか部位破壊を遂げておりその影響で、舌がデローンと落ちている。その無惨な死体は、足を進めるごとに増殖。その殺戮の結果も、惨さを増していた。フェーダはとにかく、殺戮を好んでいる。だけど王宮内の剣戟軍への対処には“違い”があった。


“部位破壊”を好んでいる。

ただ殺すのでは無く、殺しを楽しんでいる。娯楽としてなのか、ストレス解消なのか…安直な考えを列挙しているが、どの答えの果てには“復讐”というものが介在しているに違いない。切断された指が落ちていたり、体内から引き出した血管を可能な限り結び付けてその者の身体を縛っていたり、強制的に関節逆方向に曲げられた腕、肋骨が剥き出しになっていたり、去勢された生殖器が死体を紹介するように矢印を催す形で前置されていたり…多種多様なグロテスクの幅を効かせている。

「しゅみわっる…《ネクロフィアアベニュー》とでも名付けようか」

上空から射し込んでいた太陽の光が、無くなりかけている。それは、瓦礫の隙間が無くなりつつある事を証明していた。光が無くなったことにより生じるのは足元の確認だけでは無い。遠方だ。まだまだこの先、道があった王宮内だが照明の役割を果たしていた陽光の無作用によって、完全なる暗黒へとなった。

「ねえ!なんでよ!なんで急にこーーんなに暗くなったのよ!」

「うるさいよ、アルマーレ。大丈夫、ほら。」

「うぇ?」

隙間は確かに少なくなっていたが、陽光の消えた原因は、雲だった。太陽が蜘蛛に隠れただけで、まだ暗がりの中を彷徨う事にはならないようだ。

「はぁーー…あんしんした、、、」

「いくよ。」

「ねぇ…あたし、、ムリなんだけど…」

「もう…はい、こっち来て」

「ファウンス、イッケメーン!」


肉眼では確認しきれない道の果て。近くに行くしかないと…歩みを止めない。

「ヒィっ!なに…!」

アルマーレの足からポチャッと多分の水の音を発生させた。暗黒空間に会話をする事をやめていた4人。その擬音は空間を一瞬にして伝う。禍々しいまでに跫音した水気は、アルマーレの心体を疲弊させた。

「もうムリ…怖すぎ…ファウンス!!」

「はいはい、いこうねー」

でもなんでこんな所に水気があるのだろうか。そう思い、地面に手を触れたファウンス。その刹那、その液体の正体が判明した。

「これは、、、、血だ」


────████◢◤◢◢◢█◤◤◤


なに?なんなのこれ…、、、、

なに、、何が映ってるの?

人だ、、人がいっぱい死んでいく。

切り裂かれていく。

上半身が斬撃されて、ずり落ちていく。

そこから噴出する血液で、視界が紅くなる。

紅くなる。

どんどん紅くなる。

動いてる?

誰かの視界、、、なのかな…

これは…、、、、ツインサイドだ。なんだか懐かしいなこの光景。

まだ破壊されてないツインサイド?

人と…ひ、、と、、、、?違う。こいつらは、セカンドステージチルドレンだ。

なんだ、、誰かが、入ってきた。

言ってる事が判らない。

向かう敵全てを排除している。

なんで、、なんでこんな映像を見ているんだ…、、

─█████──────◈◈◈◈───


「血液…」

隙間から陽光が射し込み、アルマーレの畏怖の正体が露になった。太陽の光量が拡大し、視覚可能なエリアとなる。

「え、、深っー…あたし血溜まりに足突っ込んだの?」

「ファウンス?」

「ファウンス?大丈夫なのか?」

「うんごめん、、ちょっと目眩がしてさ…」

「…………………………。」


血溜まりとなっている箇所が何個もある。勿論その付近には、剣戟軍の死体がある。でも最早、これが軍人なのかどうかは判らない。装備をしている人間もおれば、人の姿として確認しようがないまでに、破壊された生物個体も残置されている。フェーダは殺しを好んでいるのか、一種の行動に飽きたから様々な“殺しの方法”を模索しているのだろう。

陽の光を存分に浴びたカリーシ跡。

五感に与える具現化された恐怖を乗り越え、4人は進む。

────

進む理由は、行くあてがないからだ。

────


明暗を繰り返す、カリーシ跡。

「ほんと雲っていちいちウザイわね…ジッとしてなさいよ…」

「風が強いのか…」

「きっと、そうだろうね」

「ありがとうファウンス、もう大丈夫よ」

「そう…」

───██████────────

陽光による明点の度に映される死骸が、今の私達には不必要な感情を与え続ける。こんなものは要らないんだよ。でも、何が欲しいんだろう。帰っても何をすればいいんだろう。何も無いのに…何も…私なんて、誰も相手になんかされてないのに…。みんなが羨ましい。ファウンス、ラルース、エリヴェーラ。皆の性格が羨ましい。私はいつも外側で生きている。本当の自分は自分にも判らない。嫌なんだよね。私の性格。本当に治らない。人から良く思われたいから平気で嘘をつく。学校のカースト制度に亀裂を生じさせる問題児となった。全くの無関係な男と女同士をセックスフレンドと言って遊んだり、ゲイやレズといった同性関係である事もでっち上げた。それを発言したわけは、単純だよ。

皆が笑ったから。

虚構だからいい。嘘は世界を取り繕ってくれる。自分の言う事で笑ってくれるのが嬉しい。でもそれはどんどん歯止めが効かなくなる。そして、全てが明らかになった時、私は総攻撃を食らった。言い出しは、私が一番最初にホラを吹いた相手。その女には、誰もいないと判断した場所でそこに自分の顔が映る中、下を掻き回していた…という嘘を拡散させた。皆は笑い、彼女を罵った。自分はここだけの話…笑うだけで済むと思っていた。そんな軽率な考えとは裏腹に、自体は悪化。取り返しのつかない自体が起こる。

虐めが起きた。こんな事がきっかけで虐めが起きるとは思わなかった。大人達も介入する事態にも発展し、その際に名前が上がったのが、私だった。

私は…嘘をついた。まだ嘘をついた。


知らない。

関係ない。

なにそれ。


相手がどんな思いとかは考えもしなかった。ただただ、面倒臭いと思っていた。だが確固たる証拠が見つかる。大陸を航空警戒している《ネキシレスドローン》。当該ドローンは、各国の安全を確保するために飛ばされている自律稼働超小型航空機。警戒シフトへの展開と、ハブシフトへの連動も対応している。ラティナパルルガ大陸から他大陸の重要拠点を中継地点として、巡回する。

そのハブシフトの中に、ソーシャルネットワーキングシステムの安全性、即ちブラックハッカーからの侵入を妨害する行動も備わっている。嘘を吹き込んだ際に、周辺の生徒が使用していたデバイスには、その発言がしっかりと記録されていたのだ。その生徒はライブ配信をしていた。ネキシレスドローンは、ライブ配信時の動画をネットの墓から掘り起こし、学校中に交錯する言葉と言葉の音を掻い潜り、見事にアルマーレ・クウシルの問題発言を掴んだ。

その時、私は…落ちた。そこからの記憶は逆によく覚えている。物を思いっきり投げられた。

時には鋭利な物を投げ込まれて耳の穴に突き刺さる事もあった。唾も沢山浴びた。もう嫌になった。昨日まであんなに私で笑っていたのに、なんでそんな尖った視線で見るの…。

学校はもうやめた。

誰からも相手にされない。

多くの時間を費やして、私はある決断に至った。

いつの間にかなんだ。

いつも、いつの間にか。

嫌いだよ。嫌いだ。

なんでこうなんだろうね。

うん、判るよ。

全部自分の選択のせいなんだ。私はいつも楽な道を歩んで来た。皆が、大変な道を選んでる中でいつも私は、安易な進路。でもそれが楽しかったのも事実。なんだけど、皆はそれぞれの個性を活かしてスキルアップに励んでいた。そんな事を知らずに私は、男を知っていく。抱かれるのが一番興奮する。だって、こんな私を求めてくれるんだもん。女みたいに鳴いてくれるんだよ。ムズムズが止まらないんだ。

界隈で私は、裏の王女として有名。毎日毎日、そうやって違う男と交合っていくのが、堪らなく幸せだった。私のテクニックが伝播する。中には、穢らわしい男もいたけど食い始めるとなんだか可愛く見えてくる。私の感情には劇的な可変性があるんだ。

美しくなりたい。

もっと、もっと、もっと、もっと…。

美しくなりたい。

女であるからじゃない。存在理由だから。性に逃げることが私の存在理由だから。自分の身体が武器になる。なんで、こんなことを気づかなかったんだろう。でも、今気づいてよかったかもしれない。

変われたから。

私という個体が、カわれたから。

それはとてもとても、嬉しい事。大事にしたいんだ。私は私のことを。残念だけど嫌いになれないんだ。本当は好きになりたい。狭間で生きるのは苦しくない。慣れとかじゃない。意地。折れたら負け。

でも、どうやっても過去の人間からは地獄の遣い者として見られる、次会ったら、どんな物を投げ込まれるか判らない。怖い…怖くなる。だからまた、男に逃げる。セックスに逃げる。すぐみんな、私を抱く。私が抱擁すると、更にその上をいってくれる。だから私の愛が止まらない。でもそれは、いつも偽善ぶってる。男はずっと『可愛いよ』《大好きになる》とか言う。嬉しいんだけど、本心は違うよね。ただその場限りの気分上げの言葉に過ぎない。唇と唇が、粘液を通じてソフトに感触し合う。食べちゃいそう。

腰が動く。

男の動作にも性格が乗っかる。

気持ちいいの。

その時の男の表情も見たら、余計に濡れる。グチョグチョの中で締め付けて、男の痙攣したかのような胴体の微振動に更に興奮する。こんな屈強な身体なのに、少しの圧を加えただけで、直ぐに欲情して、ヘトヘトに崩れてゆく。情けないとは思わない。誇らしいのよ私が。何故かそれは毎度思う。価値を証明できたって勝手に思ってる。勝手に。自分を信じ切れないからそう解釈している。その男のへたばった様を見て、追い打ちをかける。

頭を撫でてくれる。嬉しい。不自然な笑顔になろうはずが無い。なんて、簡単な生き物なんだろうか男というものは。8割がた、男達のその後の言葉は決まっている。

『また会いたいな』

断っている。一生に一度の体験にさせておきたいから。何回も何回も経験するもんじゃないよ。私となんて。もっといっぱい良い子はいるからさ、もっと運命的な人と出会って。私はその架け橋になれればそれでいい。

理解してくれる人もおれば、諦めずに何度も何度も、懇願する人もいた。ただただ、可愛いなぁって思った。だけど、私の決意は揺らがない。渋々に受け入れてくれる人が殆どだった。

何度も会うような価値のある人間じゃない。

私はこれでよかった。これでいい。そうしなきゃダメだと思う。再会もしない。“一夜の女”であり続ける。



やがて、私と肉体関係をもった男達が、自分の噂を聞きつける。いつしかこんな時が来るんじゃないかと、思ってはいた。私のネットワークアカウントに送られてくるダイレクトメッセージの連打。その多くは、食ってない男からの執拗な“アバズレ関連用語”と“偽り”という意味に該当する言葉の数々。いや、多分女からもあると思う。

まただ、、、、またこうして総攻撃を食らっている。もう私はそういう人生なんだね。なんだか、精々したよ。自殺を決めた。もう何もかもどうでもよくなった。せっかく…私の居場所を見つけたのに。男の元で幸せになる事が私の価値だった。だけど、それすらも奪われた。強引に召喚された招かれざるインターセプト。大事にしてたのに…今の私…。綺麗事に塗り固められた、はち切れんばかりの祝福。どう足掻いても結果は同じだった。

もういい。

もういい。

もういい。

もういい。

どうしよう…動かない。

飛び降りたいのに…ナイフを突き刺したいのに…轢かれたいのに…、、、、、、、、、、

動かない。

死ぬのが怖い。どうしても…そうなっちゃった。在り来りなんだけどね…やっぱり怖いよ。なんでできるんだろうね。逆に褒めたいよ。そんな事ができる人を。授かった命を自らの手で葬り去るのは、良心的であるとは言えない。こんなに感情ではMAX値で思い切ってるのに…夢を叶えるより懇願している。懇願のレベルが違う。

─◆

できることだから。

今すぐに、これは。

─◆

やろうと思えば直ぐにでも行動に移せる事だから。でもできない。できないんだよ。

だけど、人間なんだからしょうがない。この世で一番に小難しい生物だよ。

最後にしたかったこと…といっても、死なないけど…、、なにか果たしたい事を殴り書いてみた。

██

人と喋りたい

人と面と向かって呼吸を合わせたい

人と手を繋ぎたい

人と支え合いたい

人を助けたい

人と仲良くなりたい

人と何かを分かち合いたい

人と何かを成し遂げたい

人と一緒にご飯をしたい

人に相談したい

人から信頼されたい

人に笑ってほしい

人の輪に気兼ねなく入りたい

人から頼られたい

人の心に寄り添いたい

人との空気を噛み締めたい

人と無言でいたい

人とそれ以上の関係になりたい

人とその人の大切な時間を一緒に過ごしたい

人から嬉しい贈り物が欲しい

人と意地悪し合える仲になりたい

人と諍い無く親交したい

人の目を気にせず、自分の選択を決めたい


人を好きになりたい

███


ファウンス…ラルース…エリヴェーラ。

お願い…お願いだから…

どこにもいかないで…。

私を捨てないで。



┠──┨██████████████┠───┨


[#27-私、間違ったことなんてしてないの]



内側から破裂する臓物。虐殺された死体を後に前進する4人。腐敗臭は生きる気持ちを損失させる程に、充満度を広げている。点々に散らばる肉片が、後を絶たない。戦闘をしているならば、こんなにも散らばるのはおかしいと思われる。フェーダは、殺した人間に対して、非情なな追撃をお見舞したんだ。じゃなきゃここまで、死体から遠ざかる場所に置かれているのはおかしい。弾け飛んだ…その理屈も通るとは思うが、人間…いや…フェーダの奇想天外な殺戮本能は、常軌を逸してはいるが、人間の思考で考えられないケースでは無い。


ただ、やらないだけ。行為に及ばないだけで、人間にも可能な行動範囲ではある。それを平気で行えるからフェーダは、イカレている。

風穴を空けられたり、熱視線を浴びたり、腕と足が引きちぎらていたり、現実離れした攻撃を食らっていた王宮外のツインサイドエリア。

王宮内では、肉弾戦をしたかのような負けっぷり。

勝てるはずなんて無いのに…なんでこんな所まで刃向かおうとしたんだろうね。

勝てる見込みなんてあるわけない。

相手はセカンドステージチルドレン。

他とは一線を画す生命体。最高傑作であり最悪の代物。

一体どうして、人間はまだ、フェーダに降伏しないんだろう…。


┠────◈────┨

うん、そこね。

そこはちがうかも。

まぁいいよ、もっといってみて。

┠────◈────┨


「もう少し先に行ってみよう。」

「えぇ〜!まだ行くの…、、、」

「危ないじゃないか…もう、、いつこれが崩れるか判らないぞ?」

「大丈夫だよ、ここは壊れない。」

「なんんっっでえ言い切れんだよ」

「なんとなく…だよ。」

「退避しよう。嫌な予感がする」

「どうしたの?ラルース…」

「…」

ラルースが何かを感じたのか、虚ろな顔を見せる。心に大きな脆くも儚いマイナス思考を携えている。

ファウンスも何となくだが、そんな気がした。

言語化できるような確実的な証拠があるわけじゃない。

ラルースのその発言を受けて、「自分だけじゃないんだ…」と思った。複雑な感情をどう言葉にしていいのか…長考が必要だった。そんな事をしている暇はない。

だから…進むしかない。

3人の意向を全く飲もうとしないエリヴェーラ。残された3人は、一同に目を合わせ彼女を追従する事にする。


「エリヴェーラ…大丈夫なのか?」

アルマーレが語りかける。先程から頭が後ろから見えない位に下方に向いている。急に盲目となり地面のマーキングルートを検索しているかのよう。

体調が悪いのか…足のガタツキが確認された。アルマーレは急いで、彼女の元へ肩を貸す。だが、応対はなかった。無言のまま左右に揺れ続けながら、身体を動かす。目標地点なんて知らずに。そもそもゴールがあるわけではないし…もうさすがに、気が触れそうになる。

少し上から目線の口調が減るのは、この空間において特異点となった。取り憑かれるように、前屈みになって先を歩く。腕をヘルプしても、振り払われた。

「…、、、、」

手を貸したのは、またもアルマーレだ。無言の対応に、どう対処していいのか判らず、ただ硬直してしまう。

「エリヴェーラ…なんなのよ…」

「彼女…やっぱりおかしいな…」

「…うん」

「ラルちゃん…あんたほんと興味無い顔してるよね…」

「…そんなこと…ない」

「動揺してんじゃーン、可愛い顔してるんだからもっと、甘えていいんだよ?」

「私は…そういうの無理だから」

「ふーん、、、イチコロだと思うけどなぁ…男なんて」

「そう…なの?」

「そうだよ?」

「そう…なんだ…」

「その顔、武器になるから研いでおいた方がいいよ!絶対に使う日が来るから!てか、私が磨いてあげる!」

「いや、、それは、、、、い…」

「ねぇー!ファウンス!ラルちゃんの凛々しい顔をもっとレベルアップさせたいから付き合いなさい!」

「ラルース嫌がってるだろ…」

「だいじょうぶ!あの時、頼んでおけばよかったって後悔するよ?」

「、、、、、、、、」

「まぁいいわ、」

「おねがい…」

「え、、、、!うん!任せて!じゃあまずはね…」

「2人共、研磨は後」

「なによ、、」

エリヴェーラが停止した。

エリヴェーラの前には大きな縦に伸びた扉がある。その扉の上部に付けられている伸縮性弾力ベルトが破壊されていた。よって、当該扉は無造作にも隙間を開けた状態で、向こうの空間を提示していた。この扉の向こう…。

「行くよ。」

中に入ると、そこにも惨殺された人の死体が残置されている。でもこの顔は、見た事がある。

「この人って…ユレイノルド大陸の総合領主」

「こいつは…うん…なんか見たことある気がする…」

「ここにいるのは、《オーレギオンガルズ》の領主達だ。そして、ここが世界国家首脳会議が開催されていた《月の臍》。世界で立入ることができるのは極小数。必要数な支持を得る…国力増強に欠かせない絶対的な金融と経済の確保…軍事的な面による兵器新規製造と改造の総統…その他、様々なカテゴリーの絶対数値を満たさなければなれない《総領主》。つまりリーダーにならなければ通れない。カリーシ中枢区域に相当する禁足地だよ。」

「エリヴェーラ…ここが君の来たかった場所かい?」

「うん。」

「全員死んでるよ」

ラルースが全員の顔を見て判断する。

「そんなにジローっと見なくても、直ぐ判んじゃん」

部屋の内装等、月の臍に関する情報も王宮同様どこにも開示されていない最高機密。だが、現在はそんな月の臍に酔いしれる状況では無い。円卓の椅子に座っていたであろう総領主達が、入ってきた扉から離れ、最奥に集まった。そして、そのまま殺されたんだ。密集した総領主達の姿は、殺すには申し分ない事だろう。生首が地面に落ちている。頭と胴体を切り離されたんだ。横に瞬撃なる一刀が振り払われた。回避させる隙も与えず、フェーダは殺戮を尽くした。頚部から大量に流れたであろう血が、凄惨な現場を大きく象徴するランドマークとなっている。深紅に穢れた総領主達は、叫びながら死んだことだろう。

「酷いね…フェーダ…ここまですること?」

アルマーレが、皆に問いかける。

「復讐は生物の業だ。魂を持つ者には誰にだって与えられた平等な感情概念なんだ。」

「…、、でも、制御しなきゃ…何も生まれないよ…そこからは…」

「生まれるよ。」

「え、、?」

「生まれるよ…ここから新たな世界は創成される。」

「何を言ってるの?エリヴェーラ」

「…、、、、、…、、…、、…。」

不敵な笑みを浮かべるエリヴェーラ。

「きもちわる…なんなの」

その後、エリヴェーラが言葉を発する事は無かった。その刹那、なにやら音が聞こえてくる。近づいてくる。この翼が回転するような連続性のある音。間違いなくヘリコプターだった。天蓋を見ると、瓦礫から隙間が発見できた。射し込まれる太陽の光と共に、生きる希望が見い出せた事にアルマーレは歓喜する。

「あ!遂に救助に来てくれたんだ!こっちだよ!!おーーーーい!!」

「こんな所からじゃ…届かないよ…」

「やってみなきゃわからんでしょ!おーーーーい!!このバカァ!」

大きな声を上げる。ようやく救助部隊が出動したんだ…と若干ながら怒りも芽生えてくる。隙間から見るに、ヘリコプターは中空に待機していた。

「なんだ?何故、あのまま動かないんだ?」

「もう何してんのよ!早く着陸しなよ!!」

───

ついたのね。

───

「もう!なんで降りてこないのよ!」

中空に浮遊し続けるヘリコプター。そこから微動だにせず、ただそこでプロペラを回転させる。回転音は大きくならない。視覚からも判断は可能だが、王宮に近づく気配もない。

そして、、、ヘリコプターはどこか彼方へ飛んでいってしまった。

「えぇ、、そんな、、、、なんでよ、、なんで、行っちゃったのよ…」

「そんな…」

「何をしに来たんだ…」

「…。」

「きっと捜索はもう曖昧だ。こんな荒れ果てた戦果の地獄に生存者なんていないと、即決したんだろう。人影でも確認できない限り…」

ラルースは自身の見解を発した。

「じゃあなんで、一回でもここに来たのよ!あの滞空する時間はなによ!!ラルース答えてよ…!!」

「アルマーレ…私にも判らないよ。」

「もう…、、、なんでよ…もうやだ…」

失墜するアルマーレ。

「アルマーレ、大丈夫だよ、とりあえず今は。まだ生きてるんだから」

「ファウンス…うん、、そうだね、、泣きじゃくってもしょうがないよね」

3人は、人間を疑った。

やっと助けが来たかと思えば見て見ぬフリをされた…ように見えた。でも普通はもっとくまなく探すものでは無いのか…。あんなにあっさりと捜索を辞めてしまうなんて…。有り得なかった。人の心が無いように思う。嫌いだ。こんな状況の中で、“生きる人の深淵”を体験するとは思わなかった。こんな時だからこそ、支え合うべきでは無いのか…。

確かに、今、この立場において、私達の方からサポートといった行動はできない。戦場で助けを求めている無法者に過ぎないから。だけど、助けてもらわなきゃそれからの行動を示すことすらできない。今、私達には選択肢が一つしかない。“生き延びる”ということだ。このままじゃ何もアクションを起こせないまま朽ち果ててしまう。

一瞬訪れた希望が消え失せた。その衝撃はあまりにも大きかった。一度“助かるのかもしれない…”思ったから。その矢先、無情にも響き渡った翼の回転音。慣れかけていた地獄へ、更なる悪夢の追撃が襲う。

現実は、そう優しくなかった。

どうすれば、いいのか。ここに長くいても、屍の匂いが強烈になる。ここはあくまでも建物内。隙間から微風は吹いているが、淀んだ不愉快極まりなく、嫌悪感しかない空気が形成されるのは時間の問題だ。

─────

そこから、いって。

あとは、またみつければいいから。

あなたたちをまってる。

─────


「出よう。」


[#28-私、いつしかこうしてわらえるときをまってる]



3人はそれに同意し、月の臍を後にした。

「来た道を戻ろうよ」

「そうだね」

アルマーレの意見に合意するファウンス。

「いいだろ、エリヴェーラ。もうここには何も無い。なんの用があったか知らないけど…総領主か?この人達に用があったのか?」

「うん、そウだね。どんなオ顔してんのカナって思っタだけだよ。」

「そんだけ?」

「そうだよ…。」

「ふーん」

来た道を戻る。

腐敗度が来た時よりも、濃度を増している。

やはり、ここに長居するのは危ない。パニック状態に陥る可能性を持つ、タガが外れた無限のウイルス。えらく抽象的な受け取り方になったが、とにかく早く出たい。頭がおかしくなりそうなんだ…。


「…そうか。」

「ん?なに?」

「…。」

「ん??、、、、あ、ここだったよね!入った所」

「うん、そうだな、出よう」

王宮から出ると、そこには夥しい数の人間がいた。剣戟軍だ。私達が王宮から出る前から、既に銃を構えている状態にあった。そして、、その銃口は判りやす過ぎる程にエリヴェーラに向けられていた。

「兵隊さん?ありがとーーう!もうやっと救助に来たのね!ちょっと遅すぎやするけど、まぁ来てくれたから許す!」

アルマーレが剣戟軍に声を掛ける。誰に声を掛けていいか判らなかったから取り敢えず、大声で言った。

────

「後ろのお3人、その女から離れなさい!」

────

剣戟軍の一人がそう言った。

「はァ?何言ってんの?おっさん…なんで私達がエリヴェーラから離れんのよ」

言ってる言葉は理解できる内容だが、あまりにもエリヴェーラに対して失礼な事を言っている。アルマーレは激昂する。

「どういう事だ、エリヴェーラ」

ラルースはエリヴェーラに問う。無言を貫くエリヴェーラ。目線が揺籃する事無く、光線を放つかのごとく、一点を重視線している。眉根を寄せて、剣戟軍を睨みつける顔面を作り上げていた。

「エリヴェーラ?どしたの??」

先頭にいるエリヴェーラの顔を覗き込む。アルマーレは思う。両者は過去に確執がある…と。

────

「さぁ!早く離れて!王宮内に入ってください!」

────

「うっさい!エリヴェーラは仲間!なんでそんな事言うんだ!このノロマ救助部隊が!」

「助けに遅れたのは大変申し訳ございません…現在、ラティナパルルガ大陸全土に蔓延している謎の悪性症候群の対処に追われていまして…」

「なに、、、それ」

「そうですよね…ここで生き残った方ですもんね…知るはずがありません」

「その悪性症候群というのはなんですか?」

「すみません、詳しい話は長くなります。とにかくお3人こちらへ!」

エリヴェーラは、鼻息を荒くしている。短期間一緒に途方に暮れていただけだが、こんな彼女の様子を見るのは初めてだ。会った時から沢山の人格を露わにしている。だが、これまでとはワケが違う。

憎悪だ。

今のエリヴェーラには憎悪が迸っている。現在の彼女を象徴する言葉として最も適したなものと言っていい感情。

エリヴェーラは何も発さずに、無言の圧を剣戟軍に向けている。

一方の剣戟軍側は、エリヴェーラに対して慄いている者が多数確認できた。というより、殆どの者が足を異常に動かしたり、構える銃を不必要なまでに立て直している。立ってるだけで精一杯の者を見るに、絶望的状況である可能性も示唆できる。心を一つの感情が埋め尽くす。それはどうにもこうにも排除できる簡単なものでは無い。

だけど何故、私達…いや、、エリヴェーラと相対してそこまでの状態に打ちひしがれるのか…。戦慄する剣戟軍だが、少数の男からはそれを感じられない。装備も他とは勝手が違っている。たぶん、この集団を束ねる長なのだろう。この男だけ、目つきが異なる。

まるで一度、喧嘩をして負けた相手が再戦を求めてきてるかのよう。

そして、その男が、一歩二歩と前進。

この兵士から投げ掛けられた言葉に、理解の速度が追いつかなかった。


───────────

「君達の前にいるのは、フェーダだ」

───────────

「んえ…?」

「…」

「…、、え?」


勿論、3人は信じられなかった。急にそんな事を言われても、どうその言葉を飲み込めばいいのか…。

「どういう事?ねぇ…違うよね…?エリヴェーラ、違うでしょ?何言ってんのよ、あのおっさん…バッカじゃないの」

アルマーレはエリヴェーラの顔を見ながら、言葉を選ぶこと無く、思いの丈をぶつける。その様子に、ようやく視線をこちらにズラしたエリヴェーラ。

「ねぇ!どうなのよ!答えて!!」

動揺しまくっているアルマーレ。

「じゃあ何故、フェーダなのに私達を殺さないんだ?」

「そ、そうよ!私達彼女と何日も一緒にいたけど、このとおり、殺されてないのよ!人間を憎んでるんでしょフェーダは…じゃじゃあエリヴェーラは違うじゃない!」

ファウンスも共に反発した。こうやって出会う前までは、全くの赤の他人だった。こうして出会えた事も何かの運命だと思っている。確かに彼女は不可思議な面がある。それは否めない。

でも、こんな子が、フェーダにいるのだろうか…。そこが引っかかっている。こんなにもまともに私達人間と関わり合えるものなのだろうか…。フェーダは悪魔だ。分かり合えるはずが無い。人を憎み、無差別に虐殺を続ける最悪の異分子。

─────

セカンドステージチルドレンは、互いに放たれる系統周波数を特定し、能力者かどうかを判断する。能力者としての判断がなされなかった場合、殺害を即実行する。

─────

これは、《研究所》が公式発表したセカンドステージチルドレンの遺伝子を採取して解析された外的行動パターンの一つ。群れる事を特性として備えているセカンドステージチルドレン。一つの個体でも十分に、生き永らえるだろうに…。なんとも愚かで、残酷な生き物だ。仮に彼女がフェーダだった場合、すぐさま私達は抹殺されている…という事になる。

だから、、、エリヴェーラは、、、、人だ。悪魔じゃない。

「違う。エリヴェーラは違います。人間です。私達が生きてる事がなによりの証拠です」

ファウンスは、硬い眼差し…発せられる言葉一文字一文字に、強い信念をのせて。

それをうけて兵士達は、目を合わせ、彼女の言葉にゆっくりと頷く。だが彼女の言葉とは裏腹に、レーダーサイトには嘘偽り無く、【S Genom Online】の警報コードが表示されていた。


 [#29-私、ここまでの力だとは正直思ってなかった]



 3時間前───。

「Sゲノム反応を検知!場所は、ダスゲノム爆心地“ツインサイドエリア”です。」

「なに!?ツインサイドにシグナルだと?」

「はい、間違いありません!」

「敵個数は?」

「一名です。」

「警戒ヘリを飛ばせ。現場の状況を知りたい。」

「了解しました。本部より連絡、出動命令だ。Sゲノム反応を検知した。場所はツインサイドエリア。状況不明。肉眼での確認無しに確定回答を得る事はできない。よって、警戒ヘリの出動を命ずる。」

 剣戟軍ラティナパルルガ総合本部から調査隊として4名がツインサイドエリアに飛んだ。

「これより目標地点へ向かう。」

 離陸。

「もう、なんでこんな時にツインサイドに向かうんですかぁー?」

「Sゲノム反応だ」

「お前話聞いてなかったのか??」

「はーい、、、だって、あっちこっちでもう今手一杯ですよ、、て…Sゲノム反応ですか?!」

「ああ、詳細は不明。それを今から調べに行く」

「で、でも、ツインサイドエリアはもう、誰もいないって、先遣隊が報告したんじゃ…」

「ああそうだ、だからこのミッション…意味わからんっちゅう話だ」

「もうそんなことばっかりですよ…ダスゲノムは今や、他大陸にまで進出しているらしいですしね…」

「交易貨物船からのウイルス感染が確認されたと聞いた」

「まずいよね…こりゃあ…この世界どうなっちゃうんだろう…」

「セカンドステージチルドレンは、最近行動を見せないから、それが何よりも救いだな」

「アイツら…死んじゃえばいいのに…」

「すまなかったな…《メラーシュ》。俺達の救助がもう少し早ければ、助かったのに…」

「いいんですよ!先輩達に物を言ってしまった私の責任でもあります…」

「メラーシュ…」

「感染だったか?」

「はい、、、“セカンドステージチルドレンの成り損ない”となって、、そのまま身体組織が破壊されたらしいです」

「《ダスローラー》に成り果てておけば、まだ希望はあったかもしれない…」

「いや、いいですよ、私は。死ぬなら死んでほしいんです。苦しみながら生き、死を恐れながら生きる…そんな事だったら、終わりにしてあげたい…私はそう思ったんです」

「俺は理解できるよ、メラーシュ」

「《バインズ》さん…ありがとうございます」

「ダスローラーは、セカンドステージチルドレンの細胞粒子が癒着したパラサイト変異体だ。そこからの運命は2つの分岐点に別れる…変異体として行動し、大陸を彷徨い続け人間を見つけ次第噛み殺す徘徊者となるか…それとも、殺すか…」

「ダスローラーには、多くの謎が未解明のままになっている。それの解明には十分な時間が必要だし、多大な経済効果を生み出す事になるだろう。だが、判明している事がある」

 ─────

「ダスローラーは、人間に戻す事ができる」

 ─────

 剣戟軍第8先遣隊がラティナパルルガ大陸の北方に位置する《ハイブラックハーバー》の《ペーカーズアーツ》という街へ赴いた時だ。

 既に大陸全域には、緊急避難警報《アラート-レベルファイブ》が発令。ジェノサイドフェーダによって、拡散された悪性症候群ダスゲノムは大地に蔓延り、根を張る大樹を伝えながら、大陸中に容赦無く襲いかかった。緊急避難警報を受けた民達は、剣戟軍の用意した輸送機で、ユレイノルド大陸への疎開を余儀なくされた。だが、剣戟軍がラティナパルルガ大陸全ての街に訪れるのは長い時間が必要となった。

 その間、ダスゲノムが気を休めることは無かった。ペーカーズアーツ到着後、視界に広がったのはSゲノムを多量に摂取した成り損ないとダスローラー。成り損ないとダスローラーの違いは、歩行速度が大きな違いである。他にも様々な面で変質した部分を確認できる。外皮ダメージは確認できないが、口許は血だらけの個体もいた。屍のように噛み跡を他者に加える事で、感染していったケースがあるという事象を記しておく。

 フェーダの立場になったとして、簡単に説明すると成り損ないは“失敗作”でダスローラーは“成功作”とでも表現できるだろうか。

 しかし先述したように、ダスローラーは人間に戻す事ができた。正確に言うと、実例は11人のみ。運良く捕獲に成功したダスローラー。これを実験体として扱い、未知の情報収集として大切に保管される事が決定された。その実験最中に遺伝子情報が並ぶ体内管から、微量ではあるが元々の遺伝子を発見した。その遺伝子を絶やすことなく増殖させる事ができれば、感染ウイルスを除去できるかもしれない。この実験体には申し訳無いが、やらなければ…一歩踏み出してみなきゃ次には進めない。自分達の行動を信じて、剣戟軍直属科学研究部隊は《サルベージ計画》を実行。

 被検体の家族に来てもらい、血液採取の了承を得て、その血液を体内に投与するために、血流の流れを促進させる軟化剤を複合。それにより早急に体内に血族の者の血が流れ渡る。

 そして、見事、サルベージ計画は成功。その後、当該計画が次々に実行される。だが、成功する被検体は殆ど無かった。100体は捕獲した。だが、成功したのは11人。その計画中に誤って事故を起こし、被検体が暴走を開始。科学研究部隊の中心メンバーが成り損ないとなり、サルベージ計画は途絶えた。


「殺したい…できることなら、ね…」

 メラーシュの家族はペーカーズアーツに住まいを持つ。メラーシュは剣戟軍への入隊で、ツインサイドエリアに《聖都送り》となった。これは比較的珍しいことでは無い。ラティナパルルガ大陸を始めとするこの世界の人間は、皆がツインサイドでの仕事を望んでいる。そのため数多くの若者が集まるのだが、ツインサイドに住めるのは定められた条件を満たさなければ許可が降りない特別な場所。それもそうだ。ここは政府の人間が住まう最重要都市。生半可な人間があれよあれよと簡単に来れる場所じゃない。

 学歴、経済力、犯罪履歴、人間関係。ツインサイドでの住居査定には、その者の過去を洗いざらい弾き出される。だがこの、査定を乗り越えなくてもツインサイドに住める方法がある。それが、剣戟軍への入隊だ。勿論、これも、生半可な気持ちでは不可能。主に肉体と精神に絶対的な余裕が必要だ。それには自身があった。

 見事メラーシュは入隊試験に合格。それは今から、2年前の出来事。まさか、フェーダとの戦争がこんなにも早く訪れるとは思わなかった。私は何も守れずに…家族を見殺しにしてしまった。フェーダには、復讐してやりたい。レッドチェーンで繋いで、機銃掃討をぶちまけてやる。

 メラーシュの復讐心は、感染爆発の影響を受け複雑化した中でも、弱まる事は無い。


「まもなく、ツインサイドエリアです」

 操縦士が3人に伝える。

「レーダーサイトに反応は?」

「はい…Sゲノム反応確認しています」

「よし、まずは上空から捜索だ。お前たち、暗視スコープを使え」

「了解」「了解」

「報告と現状が異なっている。未だにダスゲノムは大地に根づいている…そしてその粒子が、建築物にも影響を与えている…」

「一体どこにいるんだ…?」

「ツインサイド・カリーシ…久々に見ました…」

「そうだな、今や、本部はあっちだもんな」

「はい、、こんな姿になるなんて…ん?なんだ…」

「爆心地付近にエネルギー反応を確認!」

「場所は?」

「エネルギー反応、ツインサイド・カリーシ内より確認できます。」

 バインズ、メラーシュ、《タルロス》は、王宮にスコープを向けた。

「だめだ…隙間が沢山あるから中身を確認できると思ったけど…まったく中が把握できません…」

「よし、光学透視スケイラーザーの出番だな」

「なんスか!それ!」

「邪魔物を透き通して、その先の生物反応を確認する事ができる上級官専用のレアアイテムだ」

「うひょ〜いいなぁセンパイ!」

「はやくみてくださいよ…」

「よし、見るぞ」

 バインズはスケイラーザーで王宮の天蓋部、つまり決壊した中で隙間がある箇所を片っ端から覗く。

「これは…、、、」

「何か…見つけましたか?」

「ああ、、、女の子だ…」

「え?」

「人だよ…人がいる…しかも3人だ…」

 バインズは、王宮内を確認した。

「女の子達…応援を求めてる…」

「じゃあ今すぐ、着陸しなきゃ!耐性防護服を着て今すぐ下に行きましょう!」

「だめだ…」

「どうしてですか!助けを求めてるんでしょ!?」

「いる…ダスローラーだ…」

「えぇ…」「え…」「え……」

「ひ、、人と…一緒にいるんですか?」

「ああ、そう見える…」

「んなバカな!なんでその女の子達は殺されてないんですか!」

「んな事、俺にもわからん!更なる変異体の可能性がある…本部に連絡しろ、増援を呼び再びここに戻る。下にいる生存者を救うんだ」

「メラーシュ、必ず助けよう…」

「はい…絶対に助けます!」

 中空を続けたヘリは、本部へと緊急帰還した。

「応答せよ、こちらツインサイド調査隊、応答せよ」

「コールOK、こちら総合本部どうした?」

「ミッションリタイア、これより本部へ帰還する」

「何があった?」

「ツインサイドエリアにて、未確認のダスローラーを発見した。そして、生存者も発見」

「生存者が?」

「ああ、現在警戒ヘリにて備わる観測システムじゃ埒が明かない。無人航空機プレデターでの正確な情報収集を提案する」

「了解、5分後に発進させる」

「生存者は3人いる、女の子だ。生存者が何故、ツインサイドエリアにて今日まで生き延びたのか…全くもって理解ができない。プレデターでその周辺区域であるツインサイドエリアにて起きている異常地形変革と気象についても、分析してくれ」

「大佐、調査隊サードツーからの要請です、無人航空機プレデター発進の承認コードをお願いします」

「分かった、承認コード“パラメキア1133”。機動作戦センターを展開、“テラーバイト師団”“アベンジャー師団”ミッション通達だ」

「状況は把握しています、プレデターから2分程遅れをとっての行動開始となります」

「いいか、ダスローラーへの生死は問わん。殺せるなら殺せ、生存者は必ず保護するんだ。貴重な証人となる」

「了解」


 総合本部からプレデターが発進。観測を主な役割に持つ補助的な航空機。場合によってはミサイルを発射できる爆撃機としての顔も持つ。

 《テラーバイト師団》《アベンジャー師団》が、《機動作戦センター》を引き連れ、作戦行動を開始した。

 舗装された幹線道路を走る2つの師団。

 大型トレーラー内──。

「まさか、ツインサイドにまた出向くとは思いませんでしたね」

「ダスローラーもいない…と他の隊から報告を受けていたはずだからな」

「見て見ぬフリをしたんすかね…」

「いや、、そんなハズはない」

「そんなヘマをする隊じゃないからね、ツインサイドエリアを訪れた最新の小隊は《ワンサード》。精鋭部隊と言われている」

「じゃあ、なんなんだ…」

「何かが起きている…としか言いようが無い…」

「プレデターからの現地映像届きました長距離からの捕捉望遠を展開します。」

「何だ…これは…」

「黒と赤に塗れている…」

「これが…今のツインサイドエリアか…?」

 プレデターが提供した映像には、今現在のツインサイドエリアが確認できた。その様は、とても聖都と言える内容では無かった。誰もが夢見た楽園の欠片一つすらない。

 このSゲノムシグナル対象者へは不可解な点がまだある。この者が、ジェノサイドフェーダ中のツインサイドエリアにいなかった…という事だ。剣戟軍兵士の眼球には超小型サイズのチップが装着されている。これを《サイトカインプラグチップ》と呼んでいる。

 このサイトカインには、その兵士が経験した戦闘情報諸々を剣戟軍の前線基地、本部へ伝達、敵性組織との勝敗戦績もプログラム化されている。それにより兵士の待遇処置や昇進も決められている。そのパーソナルデータには肉眼で視覚した映像も定期的に自動送信される。記録は全て、ネットワークサーバーによって厳重保管されている。

 その兵士達の記録には、ツインサイドエリアで行われた戦争により巻き込まれた民間人の安否も書き込まれている。一度、兵士の目に映ればその民間人の詳細なデータが発行される。ツインサイドエリアに一度でも立ち入れば、民間人はパスポートを作成させられる。そのパスポートには顔、年齢、誕生日、肉体的な面の特徴といった情報を即座に記録しICチップに埋め込む。

 そのステータスはネットワークサーバーにてバックアップ。この住民データと来訪者データとジェノサイドフェーダの戦闘視覚映像を照合すると、ツインサイドエリア全民間人の生死を一致させる事ができるのだ。

 その結果、捕捉された女はジェノサイドフェーダ時、ツインサイドにはいなかった事が判明。サーバー内にデータが存在していないのだ。全兵士のサイトカイン視点映像を確認したが、この女の姿は無かった。銀髪の女だから直ぐに見分けがつくはずだ。

「つまり…ジェノサイドフェーダ後にここへ訪れた…という事か…?」

「なんでこんな所に…来るんだ…」

「死者を拝みに来たのかもな」

「そんな成人君主が今の若者にいるのか?」

 当然、死亡してもバックアップデータが消去される事は無い。

「空間転移…」

「まさか…ダスローラーですよ?」

「そのまさか…みたいな事が起きるのがこの世だ…ダスローラーは未だに我々が未知の域を隠しているかもしれない」

「その可能性は十二分にある」

「つまりは、ツインサイドに何か用があって現れた…という事になるんですか…」

「何も無いはずだが…今はその仮説を立てるしかない」

「ダスローラーが、自己意識を持つ生命体というのは有り得ますか?」

「十二分にあるな」

 セカンドステージチルドレン。彼等は最終的には何を果たすつもりなのか…何をゴールとして定めているのか…。私はこれについて、長く考えている。ミッション遂行中、これの事を考えすぎて疎かになってしまうほどだ。最近はいつも同じ仕事ばっかり。セカンドの成り損ないを保護、若しくは駆除をする雑務だ。幸いな事に成り損ない達は、圧倒的な戦力を誇っていない。“未完成の超越者”と揶揄されている。言わば、アンデッドだ。足を引き摺り、移動速度はそれなり。本気で走れば、追いつかれる速度では無い。だけど、油断をすると命取りになる。

 何故、駆除だけではなく、保護という選択肢があるのか。それは、ダスローラーのサルベージ計画成功がある。サルベージ計画の際に、生体をアポイントした時に判明した遺伝子情報。成功時には完全な人間へと戻っていた。ダスローラー化した人間には、何万もの遺伝子情報が発見されている。その遺伝子情報が全て、消失したのだ。“完全な人間に戻った”という表現は、その名の通り以上の内容で、

 ──────

 人の遺伝子がセカンドステージチルドレンの遺伝子を勝る事が確定したのだ。

 ──────

 これの結果を受けて、政府はダスローラーよりも貧弱な身体である成り損ない…以下ポラスアンデッドと呼称する。ポラスアンデッドのサルベージ計画を実行に移そうとする。だが先述した通り、サルベージ計画を成し遂げた科学研究部隊中心メンバーは、不慮の事故で死亡。サルベージ計画に使用されたマテリアルは、記載されていたがそれ以上の事は引き継がれる事は無かった。当時、それは大きな波紋を呼んだ。

 ────

 何故、そんな少数の人物しか沿革を知らなかったのか。

 ────

 普通、こういうものは後継されるものであり、多くの人物が知る必要性のある大事な作業。確かに機密情報ではあるのかもしれない。だが、人を救える可能性があるのだ。そんな希望を知るのがたったの“4名”だったとは…。

 どうして、計画遂行がこの4名に限定されたのか…。

 謎は空白のまま。

 明かされる事は…もう、、、…。



 そして、現在──。

纏めました。諸事情です。

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