ep.16:Genocide Fader
それでは、会議を開きます。
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1495年後──。
「…これを総称して《ジェノサイドフェーダ》と言います。そして、このような悪夢が二度と起きないよう、残された人類は、それを切に願いました。」
「何?それ」
「知らないの?昔に生きた者の証」
「《アナテマの聖典》だな?」
「へぇー、物知りだねあんた」
[うるせぇな]
[姉さん…ごめんね…もう少し時間かかるんだ]
「うん、わかったよ」
「んで、その聖典に書かれた内容を読んでくれよ」
「あのね、もう姉さんは読み終わったんだよ」
「そうよ、ごめんね」
「じゃあ俺が読んでやる」
「いや、よして。もうこの情報を聞くのは嫌だ」
「なんでだよ。そんな事が書かれているのか?」
「そうね、どうしようも無い…血の世界」
「フン、おもしれえーじゃねえか」
「姉さんが嫌って言ってるんだから、やめなよ」
「あーあ、わかったわかった。お前が言うなら兎も角、“ヘイスローザ”が言うなら別だ」
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ツインサイドにて、世界国家首脳会議が開催された。
当該会議は4時間を予定しており、世界の在り方、金融や経済の動向、国際問題への対応…その他の小問題。その全ての問いに対して意思決定を行う。
最終的な結論を議長である《首の賢人6名》が下す。
大陸国の代表者達が《月の臍》に集合。
定刻の19時丁度に首の賢人5名が扉から現れる。
老体の姿で一人一人の居様を見渡す。円卓上になったテーブルにて座っていた代表者達が一斉に立つ。
首の賢人が所定の場所につき、「お座り下さい。」と言った。少しの間が空く。代表者は頭を揺らす事も、目を動かす事もなく、ただただ視線を真っ直ぐに向ける。首の賢人の様子は見ていない。独特の緊張感に包まれた中、真ん中に居座った首の賢人が開口。
「では、今から会議を開きます。」
「メインの議題テーマとして、皆様に送られていただいたブラーフィ大陸の文化遺産“マウントウェザー”が劣悪な環境に置かれた…という大気汚染問題。
当該問題を中心的に皆様からの意見を頂戴する予定ではありましたが、内容を優先的に変更させていただきます。ご了承ください。緊急議題として15時間前に襲撃を受けたアドバンスドユダフォートの件を取り扱います。」
中心の首の賢人からその右の者へ、話は引き継がれる。
「トリカノン海域にて航行中だった、海上基地アドバンスドユダフォートが大規模な襲撃を受けました。襲撃者は、セカンドステージチルドレン“フェーダ”です。彼等は我々の戦闘兵器の要であるマザーコピー《オリジナルユベル》を簒奪。多くの戦死者を出しました。これは、4105年に起きた《パノプティコンアイランド襲撃事件》以降最大の攻撃です。到底許される行為ではありません。」
次に、中心の首の賢人から、左の者に話が移る。
「ですが、我々は大いなる一歩を踏み始めました。フェーダの皇帝として君臨していたニーディール・アルシオン、皇女ヴィアーセント・アルシオンを殺害しました。フェーダの中心人物にあたる者、そして、アルシオンの血を引く者です。残されたアルシオンは、ニーディールの最後の娘・スターセント、ペンラリス・アルシオンとペイルニース・トゥルーフの息子である“サリューラス・アルシオン”…この2人が最後のアルシオンです。」
一番右に位置する賢人に話が移る。
「サリューラス・アルシオンは、オリジナルを簒奪したとして最重要国際指名手配犯に指定しました。彼が再び我々人類の前に現れるのは、いつなのか。強奪されたエゼルディの所在を特定する事は不可能だと言われています。こちらからの攻撃が不可能なら迎え撃つしか方法はありません。防衛大臣は陸海空全ての攻撃団をフルスタートさせています。」
一番左の首の賢人に話が移る。
「私がもし、フェーダ員ならば、ツインサイド大統領府を爆撃します。何故なら、このような世界を統制する代表者が一堂に会しているのです。世界を変えるには持ってこいの日だと言えましょう。当該会議を中止するという考えが我々首の賢人で話し合われました。結論から申しますと、このまま会議を続行致します。今こそ、セカンドステージチルドレンへの反抗意識を露わにするのです。これ以上、ヤツらへの好きにはさせてはなりません。次に攻撃をするのは、我々人類です。復讐がなんだ?私達にされた事がそんなに悔しいのか?憎いのか?苦しいのか?お前達は“異分子”だ。死なねばならぬ。殺めなければならない者だ。人類は絶対に許してはならない。セカンドステージチルドレンを一人残さず駆逐しましょう。彼等は人間ではありません。生物でもありません。ただの無差別殺戮兵器です。近年のフェーダの凶行は、戦後史上最悪の大量虐殺事件です。最後の最後まで追い詰める。そして一人一人を磔刑に処します。殺された兵士、民間人の遺族の方達に拷問の機会を与えましょう。人類が受けた消え失せない哀しみと痛さ…全てを暴力に変えて彼等に裁きを下すのです。」
首の賢人中心に位置する男に話が移る。
「今、人類は立ち上がる時です。人間には無限の可能性がある。セカンドステージチルドレンはその最たる存在です。ですが、これは失敗作。失敗作は処分しなければならない。声を上げましょう。世界が協力すれば、立ち向かえます。終末世界はもう来ている。さぁ、始めるのです。勝つのは人類!最後に地球に残るのは、我々だ!」
「会議中失礼します!ツインサイド上空から謎の種子型物体が接近中。たった今、投下された模様で戦闘機が第3航空師団を編成し、撃滅のために空軍基地を離陸しました。」
「来たか…。」
この世界に生じる災いは、全てが同期されている。
この物語は、物語の中に過ぎない。