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ep.6:Tsar Harmony:AN207

いよいよだな。

時間はいつにもなく、遅く感じていたが、いざとなるとそうもいかん。運命の日。待ちわびたぞ。

[#6-Tsar Harmony:AN207]


ラティナパルルガの二ゼロアルカナ総本部の襲撃を決行したフェーダ。

次の標的は既に決まっている。フェーダが次の目標として指定したのは、《王都ツインサイド》。

そこは世界各国のリーダー達が一堂に集う世界国家首脳会議が開かれる場所。当該会議では、過去に《セカンドステージチルドレン対策法案》を閣議決定した大元でもある。

その会議が明後日に開催されるのだ。

今年の議題としてメインに上げられている内容は、加速しているフェーダの暴走行為について、世界各国によるサジェスト、それを一つの回答として全世界の認識を共通にし再定義する。

そして、フェーダの大打撃都市襲撃セクション《メガロポリスレイ》を受けた各地の資本主義システム、高次的グローバルサービスの再確立化、世界経済のハブ要素を有する重要都市エリアの早期復旧計画全予算案が予定されている。

ツインサイドを襲撃すれば、世界は一気に闇へと落ちる。代表者を皆殺しにする事で、新世界の誕生を切らせる。フェーダが新世界のリーダーになる。リセットできるんだ。世界を。この腐りきった苔まみれの脳みそ連中を跡形もなく消し去る。


ツインサイド襲撃に向けて、フェーダは大型海空母艦海上軍事基地アドバンスドユダフォートに格納されているメガトン級爆弾セト63《ツァーリ・ハーモニーAN207》の強奪作戦を計画する。

当該爆弾は現存する戦略兵器の中でも最大の核爆発エネルギーを撒き散らす最凶の水素爆弾。このツァーリ・ハーモニーは、ツインサイド襲撃に欠かせないアイテムなのだ。

ツインサイド自治領空域は、アンチSゲノムブッシュ内蔵のバリアを張っている。セカンドステージチルドレンの遺伝子能力を無力化する高レベルな《放射粒子》を観測した。

このバリアを突破するのは容易ではない。仮に成功できたとしても、アドバンスドユダフォート着艦時に体力が残っているかどうか、定かじゃない。だから、このバリア突破には人工的に造られたツァーリ・ハーモニーによる、莫大な熱核エネルギーの使用が最適解だという判断になった。

ツァーリ・ハーモニーは異常なまでに敏感。少しの振動、掠り擦り程度の衝撃でツァーリ・ハーモニーの《非適合干渉自己防護自爆プログラム》、非関係者による認証装置の接触で、爆発を起こす。

その爆破レベルは通常時、いわゆるツァーリ・ハーモニー爆破正規起動ルートの場合と同等の威力を発揮する。敵に奪われるぐらいなら、この海上要塞を捨て去る覚悟だ。人類側の本気が伺える。更にSSC遺伝子を持つ者が触れると、上記と同様の自爆プログラムが発動する仕組みにもなっている。フェーダは事前に、ウェポンモジュールに《電磁柵“エレクトロキャプチャー”》を装備。この電磁柵を展開し、直接セカンドステージチルドレンが、触れること無く間接的な奪取を図る。

「エレクトロキャプチャー、これは何処で手に入れたんだ?」

「スタァちゃんがやったよ〜、パパ!アイツらの駐屯基地がユレイノルドの北の端っこにあったんだ。設計図と作成する為の素材を全部奪ってきたってわけ!」

「勝手な行動は慎むんだぞ?」

「そうよ、スターセント。スターセントみたいなタイプって直ぐ死ぬ感じよ?」

「ハハッ!バッカじゃないのォ?ゴミが作ったカルチャームービーの典型的な流れに、だァれが乗るんだよ!」

「はぁ…ヴィアーセント、頼むぞ。私はもう、あの子にはお手上げだよ…。」

「お父さん…私も…。。。」

呆れた様子の2人を前にしても、まだまだ罵倒をし続けるスターセント。

「なに笑ってんのォ?アンタら。」

「笑って…ふふふ、、ない、フフ、よ?」

「あぁ、そうだよ、スターセント…、、、、わらってないよ。」

「パパ、パパってさなんかさ、きな臭い顔してるよね」

「どういう事だ?」

「私に嘘ついてる感じ?あたしそういうの嫌いだよ?」

「お前に嘘ついてる事なんて何も無いぞ?」

「いや分かってるよ。パパが私の事を大好きな事も分かってる。だけどね、それが目立っちゃって粗が直ぐ浮き出てくるんだよ」

「スターセント、あんたお父さんにさっきから何言ってるの」

「うるさいなぁ、、、お姉ちゃんもお姉ちゃんだよ。あの“干渉ちゃん”に色目使ったんじゃねえーの?」

「色目なんか使ってないよ!」

「ちょっと私より胸大きいからってそれで釣ろうってーの?」

「そんな事してませーん!」

「そんな事してみろよ。私が全力であなたのフォローしてあげるよ」

「え、ふぉろーするの?」

「そうよ、フォローしてあげる。だってサリューラスはアルシオンなんでしょ?アルシオンは近親相姦でできてるんだから」

「ちょっと!いい加減にしなさい」

「何よ、事実じゃない。パパとママは同じじゃない!アルシオンなんでしょ?」

「やめなよ…パパがこんな目の前にいるのになんであなたはそんな事言えるの?」

「言えるよ、ねぇーパパ。パパはママの事愛してたの?」

「、、、、、うん、愛してたよ」

「私はママが好きだった。パパも勿論好きだよ。でも同じ女としてママには強い憧れがあったんだ。二人が“あっちの世界”からやってきて、ここに来て、私達を生んで順風満帆とはとても言えない生活を強いられているにも関わらず、ママはいつも笑顔で私を慰めてくれた。私が感情の爆発の影響で遺伝子反応が高くなった時も、どうやったらその力を制御出来るのかを教えてくれた。ママは優しかった。ママは大切だった。絶対に失いたくなかった…ねぇパパ。ママは死ななきゃいけなかったのかな…ママは生きたかったはずだと思うよ…ママに会いたい…」

「もういいよ…スターセント…やめてよ…」

「お姉ちゃんだって同じでしょ!!」

「ヤメテよ…もう本当に…」

「思い出したく無いんでしょ?あの時の記憶を全て消し去りたいんでしょ?でもそんなのやめた方がいいよ。これは背負わなきゃいけないんだよ。ママとデュルーパーお兄ちゃん…マディセントも…あと…」

「やめろ。その子の名前だけは言わないでくれ」

「何?パパ。認められないの?認めなよ…あの子だってあなた達の子なんでしょ?」

「そうだ…だが、あの子の名前だけは言わないでくれ…あとは全部受け止めるから…だから《最後の子供の名前》だけは言わないでくれ…」

「分かった…パパは好きだよ。好きだけど、ママへの行動を許した事は無い。今も許せないし、この先もずっと許す事は出来ないと思う。でも許したいとは思ってる。ママがいない現状にはまだなれない…ママを下から見るのが好きだった。太腿を枕にして、ママがいつも私を褒めてくれる。性格も顔も身体も、褒めてくれなかった箇所は無い。」

「そうだね…私もママ大好きだった」

「パパは?」

「当たり前だよ…エレリアは全てだ…彼女が居なければ、今の自分は無い。二人には本当に申し訳無いと思っている。けどな、ああするしか無かった。自分にはこれ以外の選択肢は浮かばなかった…。スターセント、許せないのはわかってる。ただ分かってくれ…理解してくれ…お前達を大切に思ってるからこそ、犠牲にするしか無かったんだ」

「ママが死ぬんだったら私が死んだ方が良かったよ!!!」

「スターセント!やめなよ!」

「ねえ!ごめん…もうね、私…あんたの事を何度殺そうかと思ったんだ…何回思ったか判らないぐらいにね…でも根幹に“パパ”ってまだ言いたいってなったんだ。パパって私、大好きだったんだって…それを思い起こすとこの気持ちが和らいだ…。今こうやってパパの事を殴ろうとしてるのは、私も予想外。もう我慢ならなかったんだろうね。離すよ…」

「スターセントの気の済むまでやってくれ…。もう自分は生きてはいけない存在なのかもしれない」

「そんな事言わないで。パパは私達の唯一の親なんだよ。ニーディール・アルシオン。パパはアルシオン最後の長。今、恐らく最後のアルシオンが私達の元にやってきた。サリューラスは全てを変える…そうでしょ?」

「ああそうだ。サリューラスが鍵だ。これからの…セカンドステージチルドレンの歴史に新たな特異点が生まれる」

「サリューラスにはママ達との事、言うの?」

「いや口にはしない。やがて知る事になるからな」

「《ドリームウォーカー》?」

「あとは“歴戦の裁定者”達が、サリューラスを王にする。我々はそれのフォローバックだ。」

「サリューラス・アルシオン…あいつ、何者?」

「ただの混血では無い…特別な遺伝子が入り混じった危険因子。多分、生まれてきてはいけなかった。」

パパはもっと私を褒めてくれていーいのに…。もっと私をできる女だと認定してほしい。今よりももっと…もっと…。

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