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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾四章 ギンヌンガガプの使徒/Chapter.14“Finale:MilkyHoneyFestival”
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[#119-現実の残滓【3】]


上空を見上げると、次元裂溝の発生が確認出来た。そこから黒色のエネルギーを纏った刃らしき物体が奴隷超越者に命中。更にそれは、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカとノアトゥーン院長にも命中していく。


当てずっぽうに次元裂溝から発射しているのでは無く、外敵として認識しているターゲットをロックオンしての攻撃だと判断出来る行動だった。何故なら⋯奴隷超越者百人以上、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカ四人、ノアトゥーン院長。

上記の目標ターゲットに次元裂溝より発射された“刀剣”が命中。ノアトゥーン院長は、ニュートリノ・ヤタガラス『ジャールヴィ』を発現していたが、それにも命中。


回避と防御を行えなかったのか、対象となった者たちは呆気なく、黒色の刀剣の餌食となっていく。


大地にその刀剣が突き刺さる事は無かった。放たれた百数本の刀剣は、ターゲットに命中し、その刀剣は役目を終えたように消失。鴉素エネルギーが搭載された黒色粒子に酷似している“黒色のエネルギー粒子”が空へ消えていく⋯。


ウェルニは、そのエネルギー粒子に見覚えがあった。


───────

「お姉ちゃんだ⋯⋯!!お姉ちゃんだ!!」

───────


セラヌーン姉妹の信号が交信可能となり、姉・ミュラエの生命反応が妹・ウェルニの脳内を刺激していく。そこには喜びの感情と共に、凶悪な負のエネルギーを有している感情も芽生え始めた。ミュラエとウェルニは一心同体とも言える存在。

生命反応を今まで共有出来ずにいたのは、ミュラエが異なる次元にいたから。その理由が、今、ウェルニの前で明かされる。


次元裂溝の裂け目。黒き刀剣が放たれるその場所から、光源体が発生。それは裂け目から飛び出し、目でギリギリ追える速度を維持したまま次元裂溝から飛翔を遂げ、ウプサラの壁内を駆け回る。光源体は刀剣同様、“黒色”を基調とした様相。

ダークエネルギーが球体を作り上げ、その姿に綺麗なまん丸の眼球でキラキラと視線を向け続けるウェルニ。ウェルニとレピドゥスにだけ、当該光源体の正体は分かっていた。


光源体はウェルニの前で停止。光源体の姿は、直ぐに解除され、眩いブラックオーラをピカー⋯と発光させた刹那、闇の霧を払い除け、その場に姿を現したのは⋯⋯⋯


「ウェルニ」

なんだか、久々のように思えてしまった⋯時間的に言ったら、まだ全然数十分しか経っていないのに。

大事な存在を失うと、より一層相手への気持ちが高まっていく⋯とか、そんな事を聞いた覚えがどっかであるんだけど、私はそんなんじゃない。

お姉ちゃんを失っても、失わなくても、感情の振れ幅は同じだ。


戦いを勝ち抜き、歴戦の戦士のような、誇らしい姿で、ミュラエはウェルニと再会を遂げた。



───Side:セラヌーン姉妹。


「お姉ちゃん!!」

私は抱き着いた。いてもたってもいられず、その場にて姉の胸へと飛び込んだ。姉は、“よしよし”と名ばかりに、私の頭をぽんぽんと叩く。その優しさに満ち満ちた手の温もりに、目が潤って来てしまう。

「ウェルニ、大丈夫だった?」

「うん、⋯⋯⋯私は大丈夫⋯」

「絶対大丈夫じゃないでしょ⋯その赤い顔」

「これは⋯お姉ちゃんとまた会えたから⋯!!」

「『また』って⋯。私とウェルニが別れて戦ってから、そこまで時間経ってないじゃない」

「でも!⋯。私は⋯⋯寂しかった⋯⋯⋯」

「はぁ⋯⋯レピドゥス」

「⋯⋯大丈夫よ。わたしがウェルニに変わって戦闘行動をコントロールしていた。今、涙が出ているのは⋯」

「ウェルニの本心⋯ってわけね」

「当たり前でしょ!!お姉ちゃんのバカ!バカバカ!」


姉と再会してから⋯と言うものの、年齢がグイッと下がったかのような幼稚なリアクションがよく目立つウェルニ。


「さてと⋯私の妹に手を出す輩はあそこにいる、旧友達ね」

「⋯⋯お姉ちゃん⋯⋯ベルヴィーとナリギュなの⋯」

「ええ、分かってるわ。次元裂溝から見てたから」

「お姉ちゃん⋯どうして次元裂溝の中にいたの?」

「そこで戦ってたからよ。ウプサラソルシエールとね」

「ウプサラソルシエールと?宿主は誰?」

「ラージウェル・プリミゲニア。女なのに、一人称が“俺”っとか言う、ちゃんとキショい奴だったわ。宿主は次元裂溝には来ていない。恐らく、ヘリオローザが倒したのかな、急に活動停止状態になったから」

「そ、そうなんだ⋯」


「ウェルニ、ごめんね。私、旧友さん達、殺しちゃうかもしれない。あなたには出来ないことでしょ?だから、崩れ落ちるまで滝のように涙が溢れてるんでしょ??」

「⋯お姉ちゃん⋯⋯私には無理かも⋯」

「いいのね?友達、殺すよ?」

「お姉ちゃん、お願い」

「⋯⋯分かった」

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