[#119-現実の残滓【1】]
[#119-現実の残滓]
───Side:ウェルニ・セラヌーン。
どういう訳か、私は自分の中にいる別の個体と言い合いになってしまった。
暴喰の魔女・レピドゥス。
彼女は私だ。
私も彼女だ。
彼女が私を大切に尽くしている通り、私も彼女を大切に、そして、必要としている。元々は、アリギエーリ修道院のノアトゥーン院長の異形生命体を宿主としていたが、ウプサラの虚想空間にて、旧式ヒュリルディスペンサーを受けた時に、全てが変わった。
私の人生は華色になった。
見えないものが見えてくる。
それでいて、今までの記憶が編集され、全くのゼロからの再スタートとなった私の人生において、暴喰の魔女・レピドゥスの存在は大して、阻害されるようなものとは感じなかった。
彼女が居たから、今の私がいる。
決断をする時、いつもレピドゥスが私のアシストをし、どんな状況に陥っても、最適解なルートを模索。
彼女に頼りすぎ⋯と思う時もあったが、彼女の一言二言は私にとって、重すぎる言葉の連続なのだ。レピドゥスを損失したら⋯と考えてしまう時が何度もある。
その度に、レピドゥスが私の思考回路にバリケードを張り⋯
『わたしがいなくなる事は無い。もし、そんな事が起きようものなら、それは、ウェルニが命を落とす時だ』
私が死ねば、あなたが死ぬ。
あなたが死ねば、私も死んだ事になる。
二つで一つ⋯そんな綺麗なものでは無いけど、私はレピドゥスが居て、ようやく完成する個体なんだ。
私の想いに応えて欲しい。
戮世界テクフルが、私の命と引き換えに良くなるなら⋯もう、私の人生は消えてしまった方がいいのかも⋯。
ベルヴィーとナリギュが、そう望んでいるんだ。私の命と引き換えに、戮世界テクフルの未来を選択した。そこに偽りは無いのだろう。
当然だよ。私は、戮世界テクフルで生き延びていく事は難しくなるだろう。今日の奴隷帝国都市ガウフォンの乳蜜祭を襲撃した件で、戮世界テクフル全体にて、再び超越者をあぶりだす作戦が再編される。私たちの行動のせいで、戮世界テクフルにのさばっている生き残りの超越者が、捕獲されるのだ。




