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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾四章 ギンヌンガガプの使徒/Chapter.14“Finale:MilkyHoneyFestival”
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[#118-裂け目より来たりし【6】]


視界がボヤけていく。ベルヴィーの視線が不安定になった状況を見て、ナリギュがベルヴィーの元へと這い寄る。マディルスとパレサイアにも、同様の負荷が掛かり、生命維持にも異常信号が出ていた。それでもナリギュは、ベルヴィーの身体を最優先に這い寄った。

ナリギュは他の三人と比べても、負荷が少ない。どういう事か⋯これは恐らく、ナリギュが白鯨ケセド等級を完全制御下に置かれていない状況にあったから⋯だと推察される。

ベルヴィーが見る視線の先⋯そこに、ナリギュも視線を落とす。そして見つめる⋯。


ウェルニが見つめ返してきた。


ナリギュは恐怖のあまり、視線を逸らす。一旦は視線を逸らしたが、ベルヴィーはウェルニへの視線を一切逸らさず、見つめ続けていた。

ウェルニはこちらに眼差しを向け続けている。その顔は異端児⋯とでも言うべきか、狂気の微笑みを作っていた。恐らく、暴喰の魔女・レピドゥスの神経が半分以上は回路に備わっている状態なのだろう⋯と勝手に推測。そうでもなきゃ、あの顔は⋯⋯⋯と、ベルヴィーは自問自答を繰り返す。

回答無き題材に挑むベルヴィーとナリギュ。


ウェルニと二人の距離はざっと1キロメートル以上は離れている。やがて、ウェルニにも奴隷超越者の影が落とされ、空間裂傷の対象に指定。その時、ウェルニは暴喰の魔女を発動、“暴喰”によって奴隷超越者達は殲滅されていく。

その状況を見届けていたベルヴィーとナリギュは不思議に思う。


奴隷超越者を助ける為に、ウェルニはここへ来たんだ⋯と。


それなのに、こうも簡単に仲間の命を葬るのか⋯。他者の命よりも自分の命を最優先にするのは、何ら問題のある思考では無い。生命を与えられた存在として、そのような命を軽んじる行動は心が宿る人間として、当然の結論でもある。

だが、ウェルニは言っていた。


『超越者を助けに来た』


奴隷超越者への殲滅行動。

一体の奴隷超越者に対する攻撃の一手が加えられた事で、周囲に存在し、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカとノアトゥーン院長を空間裂傷の悲劇にあわせていた他の奴隷超越者が、ウェルニへの攻撃を本格化させる。ウェルニは迎撃態勢を取り、己の天根集合知ノウア・ブルーム『粘弾性円転自在』を発動。地面に向けて放たれた半球形の物質が大地へのバウンドを起こす度にエネルギーを上昇。そのエネルギーが量子臨界点を突破した段階で、攻撃対象である奴隷超越者へ直撃。粘弾性円転自在は大爆発を引き起こし、周囲にて接近しつつあった奴隷超越者にも範囲攻撃としてダメージが与えられた。

それでもまだまだ、幾数もの奴隷超越者が後を絶たずに、ウェルニの元へと襲い掛かる。ウェルニもそれに迎え撃とうと、天根集合知ノウア・ブルームの発動を即座に決断。しかし、背後から忍び寄る影に気づけず、ウェルニは拘束状態に陥ってしまう。


「レピドゥス!」


ウェルニがようやく言葉を吐いた。1キロメートル先にて、ウェルニvs奴隷超越者の戦闘を観測していた乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカとノアトゥーン院長にもそれは聞こえてきた。距離の問題があるので、もしかしたらこれ以外にも、言葉は吐き並べていたのかもしれないが⋯。


「今がチャンスだ」


「⋯⋯!⋯⋯そうだ」

奴隷超越者の注目がウェルニに集まっている。ノアトゥーン院長が、『チャンスだ』と言った事で、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカは、白鯨へのエネルギー小休止のシークエンスに本格的な移行を開始。


今や敵とした捕捉しなければならないウェルニに助けられてしまった七唇律聖教の皆々。それが事実である限りは、超越者である“元仲間”に対して経緯を表す。それが七唇律聖教に入信している人間だから。


ノアトゥーン院長が、ウェルニと奴隷超越者の戦闘に参戦。臍帯によって繋がれたニュートリノ・ヤタガラス『ジャールヴィ』とニュートリノ・レイソ『レスクヴァ』は、先程から動物性の強い酷似した姿を表現していたが、ウェルニに最接近する際は、そのフォームを見せていない。黒色粒子、白色粒子、それぞれのニュートリノ・シリーズが出来上がる前段階である、鴉素エネルギーと蛾素エネルギーによって生成された二重螺旋がウェルニと奴隷超越者を翻弄。遊弋化を遂げ自由自在に飛行する奴隷超越者に向けて、黒色粒子によって発動される攻撃アビリティが発動。


「ダークマター」

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