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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾四章 ギンヌンガガプの使徒/Chapter.14“Finale:MilkyHoneyFestival”
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[#118-裂け目より来たりし【5】]


ノアトゥーン院長の叫び。

ウプサラソルシエーウプサラソルシエール幼生体が奴隷超越者の空間裂傷によって大きな外傷を負ってしまい、再発現が不可能な状態になってしまった。ノアマザーに相当する七唇律聖教の戦士がこのような危機に陥ってしまうのは、前例のない事だ。


教皇ソディウス・ド・ゴメインドの暴走を予期出来なかった、“七唇律聖教”のミス⋯として、これは受け止めなければならない。


ノアトゥーン院長の声掛けを受け、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカの修道士は、白鯨再発現に向けて、一時撤退を決断する。修道士達にはそれぞれの思いがある。ノアトゥーン院長と共に戦いたい⋯この場に残って奴隷超越者の無力化に努めたい⋯。

多くの者がノアトゥーン院長との共闘を願っているが、ベルヴィーとナリギュ⋯二人の修道士はここからの撤退を望んでいた。

それは未来のため。ノアトゥーン院長が少しでも望んだことなら、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカの修道士であるなら⋯教母ノアマザーの宣告は受け止めなければならない。


ベルヴィーとナリギュが適切な判断をしている。傍から見たら、ベルヴィーとナリギュ以外が、“仲間思い”やら“恩師思い”等と、御託を並べる者がいると思う。だが、ここは戦場だ。

それに恩師が、こんな所で死ぬはずが無い。


ベルヴィーとナリギュは、決断し切れていない修道士達の思いを突き動かす一言二言を言い放つ。


──────

「私たちの白鯨で、あの屍どもを殺す」

「ノアマザーもそれを望んでる」

──────


『屍』。その表現は、現在の奴隷超越者には最適なフレーズだ。教皇から受けたエネルギーステロイドは人体に想像以上の負荷を齎し、最短距離での“覚醒状態”を発動させることが出来る。超越者と言っても、人間は人間。それに現時代の超越者はアトリビュート。アルシオンを始め、フェーダ等の勢力が戮世界テクフルを統制、治世の時代にあった時から比較すると圧倒的に、超越者の力は激減の領域に達していると言ってよい。


律歴5604年1月20日。

超越者の時代は終わりを迎えつつあった。だから通常人類に、超越者は“奴隷超越者”として生贄候補に選定されてしまっているのだ。もちろん、超越者が捕獲された理由として大陸政府の上級戦士が派遣、超越者vs異能者(天根集合知持ち、異形生命体発現可能者)が繰り広げられ、数の暴力で押し負けた⋯というのも理由の一つにはある。それでも中には、“通常人類に真正面から戦闘で敗北した”という超越者のケースも実際に少なくない。こういったデータから察するに、もう、超越者の時代は終焉を迎えつつあるのかもしれない。


乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカは動く。

ノアトゥーン院長は、ニュートリノ・シリーズで、奴隷超越者を葬る。現行の全てが、カナン城に来訪した意味とは全然違う。七唇律への反逆行為者が現れた⋯という報告が届き、ノアトゥーン院長はアリギエーリ修道院の乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカを引き連れて、ガウフォンへと現れた。それなのに、今戦っているのは“味方として扱える筈”の、“教皇からの使者”だ。


修道士は前を向く。その方向に、ノアトゥーン院長の姿は無い。奴隷超越者が大翼を広げ、一時的撤退を図る修道士達に襲い掛かる。修道士達は己の天根集合知ノウア・ブルームを発動しようとするが、皆の体力は極端に激少。自分達でも、今、知った。

戦闘で、撤退行動で、現在置かれている人体への負荷を全面的に把握出来ていなかったのだ。マディルスを筆頭に、自分の“負荷”を思い知ると、フレギン、パレサイア、ベルヴィー、ナリギュ⋯この順番で徐々に地面へとその身が落ちていく。


倒れ伏せるベルヴィー。視線が一気に大地へと落ちる。

顔面が大陸へと落ちる時、ズシン⋯と重みが頭部へとダイレクトに伝わる。その地平の果てに、ウェルニの姿があった。


「ウェルニ⋯⋯⋯⋯⋯」


──────────────

「わたしの勝ちかもじゃん」

──────────────


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