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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾四章 ギンヌンガガプの使徒/Chapter.14“Finale:MilkyHoneyFestival”
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[#118-裂け目より来たりし【4】]


ウプサラの壁に張り付いていた奴隷達が行動を開始。壁内にて超越者と大陸政府が戦闘を行っていた時間、傍観者的な立場を永続的に実行していたのが異質な存在をより引き立たせていた。ミュラエ・セラヌーン、ウェルニ・セラヌーンは元々、この生贄候補者達を奴隷解放する為に、奴隷帝国都市ガウフォンへと来訪。

現在は、ウェルニが沈黙状態。ミュラエの姿も周辺では確認できない。そんな現状での奴隷が行動を開始した理由、まったくもって理解が出来ない。シキサイシアにて大陸神グランドベリートへ生贄として捧げる予定のある大事な大事な存在なのに、どうして教皇はこんな事をするのか⋯。

───────────

奴隷には、天根集合知ノウア・ブルーム“大気外圧空間掘削”が有されていた。

───────────


当該天根集合知ノウア・ブルームは、空間を掘削する⋯まさにその名の通りの効力が発揮される攻撃型アビリティだ。しかも奴隷の数は、この分断エリアだけでも50を超える。教皇は奴隷達に天根集合知ノウア・ブルームの力を宿させ、なんと味方である乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカに対し攻撃を開始させたのだ。

意味不明な選択を教皇は実行に移したが、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカとノアトゥーン院長は、教皇の気分屋な性格を熟知しているので、納得してしまった。


『気分屋』という単純な理由で流してしまっていい事態では無い。だが、深く考え込んでしまっては、意味がない。だってもう、奴隷の行動は止まることが無いから。急停止するとなれば、それは教皇の意志が変わったか、または教皇が絶命したか⋯そのどっちかしか無い。前者も後者も、有り得ないので、奴隷の戦闘行動が停止する事なんて来ようはずが無いのだ。


天根集合知ノウア・ブルーム、大気外圧空間掘削は、空気を切り裂き、“空間裂傷”とも言える現象を引き起こす。奴隷は超越者の器を未だに象っているので、手腕から天根集合知ノウア・ブルームの能力が発動される。元々の超越者としての能力を維持している個体も複数体確認されているので、【SSC遺伝子+天根集合知ノウア・ブルーム】という非常に強力な生命体となった奴隷達。

教皇が施した天根集合知ノウア・ブルーム能力によって、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカの修道士達は、苦戦を強いられてしまう。

普通なら奴隷は、外敵として認識している超越者のセラヌーン姉妹やヘリオローザ等を狙うのがベスト。だが、教皇はそれを選ばない。基本的に教皇は、そのナリからも想像できる通り幼稚な思考回路で脳内は形成されている。


なだらかに終焉を迎えつつあった戦場が気に要らなかった教皇は、味方だろうとも容赦しない。


空間裂傷の同時多発を修道士各々の白鯨が、宿主を防御。しかしその空間掘削の威力は強靭なもので、白鯨が取り巻く光線ですら、斬裂されてしまう始末。白鯨の煌めきが戦場を覆い、空間掘削が行き場を失っても今度は奴隷自身が白鯨⋯更には宿主達へと襲い掛かる。

それに抗おうと、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカの修道士は必死になって攻防の連鎖を放つ。遊弋化を遂げていく奴隷。その力は、超越者として元々持っていた異能だ。


超越者の原点、“セカンドステージチルドレンオリジン”。


歴史より紡がれる濃密な血盟は、千年以上が経過した今でも劣化することは無く、現在進行形の出来事にある。セカンドステージチルドレンに退化なんてものは無い。

時代を重ねるにつれ、SSCは進化を遂げるのだ。セラヌーン姉妹以外の超越者に相当する人間は、今、教皇ソディウス・ド・ゴメインドによって暴走行為に及んでいる奴隷生贄候補者しかいない。


遊弋化を遂げた奴隷。進化を遂げていく奴隷超越者達。

時を与えず、短縮にて戦局を終わらせたかった乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカとノアトゥーン院長の願いは虚しく、奴隷超越者に遊弋化の隙を与えてしまった。飛翔をする奴隷超越者が断続的に実行する攻撃は、言うまでもなく天根集合知ノウア・ブルーム“大気外圧空間掘削”。教皇はこの天根集合知ノウア・ブルームを主軸として、戦局制御を行っている。

だが、空間裂傷を引き起こすこの天根集合知ノウア・ブルームにも弱点が見え始めてきた。

いや、正確には天根集合知ノウア・ブルームからの弱点、と言うよりも、奴隷超越者にウィークポイントが発見出来たのだ。


空間掘削を回避する乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカ。一瞬でも空白を与えてしまうと、奴隷超越者による天根集合知ノウア・ブルームが待ち受けている。しかし回避だけで戦いは幕を閉じない。どちらかが戦いを一変させる怒髪天な展開を生まない限り。


乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカ× 奴隷超越者。


両者の戦いが拮抗する中、ノアトゥーン院長が切り札を発動させる。


「はァァァァ⋯⋯黒色粒子、白色粒子!臨界点を編み起こす⋯!!」

ニュートリノ・ヤタガラス『ジャールヴィ』。

ニュートリノ・レイソ『レスクヴァ』。

二体の異形生命体ティーガーデンがウプサラの壁内に出現。ノアトゥーン院長からウプサラ粒子が放出されているが、正鵠の魔女『テオドシウス』を出現させてはいない。ニュートリノ・シリーズに相当する“司教兵器”で、奴隷超越者を葬るつもりだ。


「ノアトゥーン院長、奴隷超越者へのフル攻撃は生贄としての責務を全うさせずに生涯を終わらす危険性があります」

「ナリギュ、そんな事は分かっている」

ジャールヴィ、レスクヴァ。二体の司教兵器が奴隷超越者の空間掘削を防ぎつつ、形を作り上げていく。

そう、未だにニュートリノ・シリーズ二体は、完成系には至っていない。黒色粒子と白色粒子の二重螺旋のみが、戦闘空中を渦のままに描いていく。暴風を撒き散らし、空間掘削が起こった戦場を洗いざらいゼロに戻す。二重螺旋は回帰と破壊、二つの能力に長けたスキルを発動。二重螺旋が接触した部分は主に、空間裂傷が発生した部分。


天空と大地。

二点のフィールドに対して二重螺旋は回帰と破壊の限りを尽くした。


奴隷超越者は空間掘削で迎撃をしてみせるが、黒色粒子と白色粒子で構成された二重螺旋の攻撃速度は並大抵のものではなく、教皇の強制的な天根集合知ノウア・ブルームを孕んだ生命体である奴隷超越者は苦戦を強いられる。

やがて、ニュートリノ・シリーズ二体の形が完成。

ニュートリノ・ヤタガラス『ジャールヴィ』は黒山羊に酷似した姿を形成。ニュートリノ・レイソ『レスクヴァ』は蛇に酷似した姿を形成。アリギエーリ修道院での旧式ヒュリルディスペンサーにて、発現されていた時の司教兵器とは姿かたちがかなり異なったもの。

年月の経過はもちろんだが、環境への適応能力でニュートリノ・シリーズにも変化が現れるようだ。奴隷超越者の遊弋化が最終進化系へと突入。その判断に至った理由は、攻撃性の凶暴化にある。

天根集合知ノウア・ブルームの大気外圧空間掘削の力が増大。単発攻撃と近距離範囲がメインだった今までに対して、天根集合知ノウア・ブルームのスキルが急成長。範囲攻撃と近距離&中距離&遠距離攻撃を取得し、更なるパワーを身につけた。


空間掘削の飛躍的な向上を危険視し、ノアトゥーン院長は自身の切り札とも言うべき存在であるニュートリノ・シリーズを二体発現した。乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカは、天根集合知ノウア・ブルームと共に白鯨を再発現。ロビィナ等級とケセド等級、二種類の白鯨が発現されていた乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカの修道士達だが、空間掘削による裂傷を受け多方面においてダメージを負ってしまった。修道士達の白鯨は深手を負い、メイン攻撃出力である“光線攻撃”が発動出来ない時間が長くあった。

そのため、白鯨を再発現しなければならない。一定時間の小休止。ただ、その空白時間が生まれてしまうと、現状の乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカでは襲いかかって来る奴隷超越者を迎え撃つための“異能”が足りない。


乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカは『天根集合知ノウア・ブルーム』。

奴隷超越者は『SSC遺伝子』『天根集合知ノウア・ブルーム


更には教皇が絡んでいるので、他の異能アビリティも施されている可能性がある。可能性として考えられるのは、ニュートリノ・シリーズを始めとする、司教兵器。最悪の場合、“ウプサラソルシエール”の発現も視野に入れて考えねばなるまい。

今のところ、奴隷超越者のゼロイチ能力『SSC遺伝子』と教皇によるドーピング能力『天根集合知ノウア・ブルーム』の二つ。この二つでも相当な力を有しており、飛翔を簡単にしてみせる形態変化をして見せた段階で、まだまだ成長途中である事も有り得る。


─────────

「奴隷超越者の天根集合知ノウア・ブルームに注意しつつ、最新の白鯨を戦場に発現する為、一時的な撤退命令を下す!⋯⋯私が、ニュートリノ・シリーズで奴隷超越者の動きを止める!乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカは、己の白鯨発現に力を尽くせ!」

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