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Lil'in of raison d'être/リルイン・オブ・レゾンデートル  作者: 沙原吏凜
第一章 夭折の叛逆/Chapter.1“Rebellion”
14/77

ep.5:強奪艇と急造人工島

ちょっと多すぎない?

入るかな…

[#5-強奪艇と急造人工島]


現在、フェーダとサリューラスが搭乗しているのはステルス搭載超大型全翼航空爆撃機エゼルディ

半年前、剣戟空軍が保有していたエゼルディをフェーダが強奪。この際、剣戟軍には開発されていたアンチSゲノムブッシュ内蔵兵器の破壊活動が主ではあったが、このようにエゼルディ強奪という緊急追加目標指定が課せられるのは珍しい事では無い。

《空軍戦闘兵器開発研究機構襲撃》の任は《フェイ》率いる《コードフェイ隊》。フェイメードは見事に作戦をやってのけ、エゼルディを強奪。フェーダにも伝わっていた人類科学の粋を結集させたこの巨大航空機。当該機には、フェーダによる魔改造が至る所に仕込まれている。セカンドステージチルドレン回収活動を行う為、SSC遺伝子の血をアンプル化してそれをレーダーサイトに書き込む事で世界中にいるセカンドステージチルドレン所在地の閲覧が可能になる《ドスレーダー》なるものを開発。攻撃的な側面で言うと、フェーダの遺伝子細胞粒子で《SSC遺伝子能力内蔵攻撃型アンプルタレット》を艦首、右舷砲、左舷砲、艦尾に搭載。既に記している通り、ステルスモードは探知レーダーサイトからの消失と光学迷彩による視覚的な面でも敵を圧倒する。このステルスモードはフェーダが構成したものでは無く、元々備わっていたシステム。まさか、人類が作った最高峰の最新鋭サイバー技術が敵の力に渡ってしまうとは…。

抜群の攻撃性能と不可視性のトップクラス。

エゼルディは、今のフェーダの要とも言える存在。

このエゼルディの影響により、人類からの先制攻撃が行えない…という現状にあるのだ。


「ここはみんなの部屋。サリューラスの分も用意してあるわ。」

ヴィアーセントが、迷路のような航空艇の中を、隙間なく案内してくれる。

「ヴィアーセント、後は頼んだよ。」

「はい、御父様。」

「では、サリューラス…また、、、明日な。」

ニーディールが離れ、ここからは2人っきりになった。ニーディールの最後の表情は、なんだか異変があった。希望…では無い。何かを決心したかのような眼球の決まり具合だった。

「サリューラス、本当にあなたが無事で良かった。もう私達だけだから。アルシオン家は。あともう一人いるんだけどね。今はエゼルディにいないの。」

「任務に出てるの?」

「そうよ、妹なの。きっと気が合うと思うわ。少し、面倒な子だけどね。」

「そうなんだ…。」

「とても面白い人よ。私は好きかな。サリューラスもきっとハマると思うよ。」

「そう…面白い人?」

「うん!凄く面白い!」

「…」

「ね、サリューラス。」

「なに?」

「こっち見て…サリューラス。あなたの事は、必ず守る。私の命に変えてでも。絶対に。」

「…うん、ありがとう…」

「だから、私にそんな顔見せないで。」

「俺…そんな顔してた?」

「うん…なんだかとってもうつろな顔、してる。サリューラスかっこいいんだから。」

「ありがとう…」

ヴィアーセントは、サリューラスの頬に手を手向けた。

「あなたはもう大丈夫…絶対に。」

「…、、、、お姉ちゃん…」

「お、、、お姉ちゃん…そっか…私、お姉ちゃんなんだよね。お姉ちゃんが、こんなことやっていいのかな…ごめんね」

「大丈夫だよ。ありがとう…」

廊下を歩き、ヴィアーセントが止まった。

「ここよ、ここがあなたの部屋。好きに使っていいわ。生活必需品は下にあるからとってきて。セルフサービスよ。使いすぎはダメ。共用の物もあるから、そういう所もきっちりとね。…、、、、大丈夫?」

「うん…大丈夫だよ。」

個室に入ったサリューラス。先程から口を開けるのが無駄な作業かのように、虚無の時間を流している。それは無理も無い。急な展開に疲れていたんだろう…きっとそうだ…。この7年間、サリューラスはずっと眠っていたという…。

夢の中では何を見ていたのか…。

想像もできないようなものをみていたのか。

それとも、私と同じような夢を見ていたのか。

「そ……じゃあ、少し時間空けてからまた話そ。」

────

「お母さんとは何があったの?」

────

「その話は…あまりしたくないな…。」

「そっか…。わかった。」

「ごめんね。」

扉は閉まり、サリューラスとは別れた。


「ごめんなさい…。本当に…。」

ヴィアーセントは、閉まった扉を背にゆっくりと部屋を離れていく。その一言を扉越しから聞いていたサリューラス。彼女が隠している真実を知る日は来るのだろうか…でも何故か、それは知らない方がいいのかもしれない。薄々は感じ取っていた。それは彼女もそうだと思う。

───

「あなたならいわなくてもわかるでしょ?」

───◈

この一言は扉越しの言葉じゃない。

部屋へ誘ってくれた、あの時…あの一瞬の会話と会話の間に、、、そんなことを頭の中に送り込んでいた。ヴィアーセントは何かを訴えていた。でもそれを形作っては話したくない。きっとその真実には、悪夢のような出来事が長い時間にわたって行われていたんだ。《アルシオンの血脈伝道線・トゥルースブラッド》はグレーゾーンにまで来ている。セカンドステージチルドレンの各血族には、その家系でしか起こしえない魔法領域が存在する。トゥルースブラッドはその一種であり、未だに多くの特殊領域があると云われている。だが、アルシオンというのは他のセカンドステージチルドレン血統とは追随を許さない力を持つ。その力はアルシオンである自分達ですら判りかねるもの。


セカンドステージチルドレンの能力相乗効果についても、同時に書き記そう。セカンドステージチルドレンは、単体でも恐るべき能力を発揮し、近接攻撃と飛び道具等を技巧派に扱える遠距離攻撃、多発的な展開が可能なディフェンスシールドは敵からの攻撃を防ぐのは当然の事で、敵を不動にさせる隔壁機能も持つ。自己防衛能力にも長けていて、リペア機能は個体差はあるけれども戦闘経験を積めばそれ相応の卓越されたものになる。

天武の才。

完璧と究極。

人が思い描く全ての思想。

誰もが虚構だと信じたい紛い物無き、混沌の塊。

誰が創造したのか、誰が望んだのか。

何の目的で誕生したのか。

“果ては”存在するのか。

ここから進化し続けるのか、退化するのか。

全くもって詳細が不明。

攻防に優れたそれは、正に戦闘兵器。セカンドステージチルドレン達は互いを人として認識しているのか。僕には判らない。このフェーダという組織が、どのくらいの結束力、固い絆で結ばれているのか。その答えを探りながら暫くはここにいよう…そう思う。


今は、どこに向かっているんだろう。

部屋の外に出てみる。

「まもなく、ポーターズウェッジ島。空挺内の全作業員は発着ブロックへ速やかに移動を開始してください。居住区画の兵士は民間装具を破棄し、直ちに統括司令センターへお願いします。」

なにやら、騒々しくなってきた。

少しの時間が経過していたかと思っていたが、時の流れは生物の都合を尽く破っていく。

「サリューラス!こっちに来て!」

ヴィアーセントが目の前にやってきた。慌ただしくなる空挺内を駆ける2人。何者かの襲撃があったのか…と悟るサリューラス。だけどそれは直ぐに、考えすぎた自分の勝手な偶像に過ぎないと気づく。

空挺からの窓に目を向けると、そこには巨大な島が映っていた。

「なんだこれ…。」

「《ポーターズウェッジ島》。私達の生活拠点よ。ここがフェーダの総本部って言う事ね。」

「なんだ…びっくりした…脅かさないでください。」

「ハハハッ、ゴメンね…!早く見せたくてサ…!」

ヴィアーセントの機嫌がさっきとは打って変わっている。取り敢えず良かった…。今の方が断然良い。


そうだ…ねぇ…


なんか…


うん。


みんなに…


かえってきて。


だめ、そこにこないで!


おまえはだれだ?


あなたのさきのこ。


前から俺の中にいるのはお前か?


そうだよ、みんなのことみてる。


俺の中にしかいないのか?


みんなをみてるよ。みつけて?


みんなって誰だ?


うーん、それは、まだいわなーい。


名前はなんだ?


うーん、きみがみつけるんだよ?

わたしのこともね。


もう見つけてるじゃないか。


え?いまのわたし?ちがうよ!!みんなのなかにわたしはいる。そのぜんぶがいっしょなんだよ?だからこれはほんとうのわたしじゃない。

ほら、あのひとのなかにいもいるじゃん。


ほんとうだ。


ほら、あのおんなのこのにも。あっちのおとこのこにも。わたしはいる。みんなをみてるよ?


力を貸してくれるのか?


たまにね。みてるよ。みつけて?ぜったいに。

──


「サリューラス…?大丈夫?」

「大丈夫…大丈夫。」

「…さぁ!着いたよ。私達の我が家。」

断界の孤島・ポーターズウェッジ島。かつては、人類が亜鉛鉱山生産工場及び、精錬所として造成された人工島。二ーディールはそこに目をつけた。上空からこの人工島を発見し、直ぐ様に襲撃を決行した。

エゼルディでの生活も限界に達し、乗員数も限界値に到達していたため、拠点の設営を急いでいた。だから、この島をフェーダの拠点にする事を即日決定。

人工島を強奪するフェーダの暴虐非道な作戦はこうだ。島全体を暗黒に覆う《スフィアシュバルツ》を発現。フェーダが暴虐を尽くす際に発動させる《エスピオナージレイドシステム》で襲撃。

この作戦を総じて《ジェノン計画》と言う。

島で生活と仕事をしていた者達には、死んでもらった。島を乗っ取ったフェーダはポーターズウェッジ島を外界からは姿を確認できないようにした。SSC遺伝子能力を使用した特殊透明網膜クォーターライアーメールで外界との関わりを完全にシャットアウト。人類の立ち入りを禁じた。目視も不可能だ。ポーターズウェッジ島に入港するには、抱擁されているライアーメールを解除して進行が可能になる。解除方法は、フェーダ上級官の《SSC遺伝子プラスシグナル》を行使する必要がある。誰でも彼でも、ライアーメールを解除する事はできない。

因みに現時点で、フェーダ上級官はポーターズウェッジ島に一人。その一人が今はポーターズウェッジ島の管理を担当している。だがその者は、何かと物騒で直ぐに頭がキレるタイプ…だとヴィアーセントは言う。

──

「で、でもォ!女の子だから!可愛いからね。性格が…ね、、ちょっとね…あとは見てみたらいいと思うよ。」

──

エゼルディがポーターズウェッジ島のライアーメール領域に進行開始。

神が泣いてるような、神々しい雄叫びが響き渡る。不可侵領域を超えたのだ。そして映るのは、広大なポーターズウェッジ島の姿。面積22万平方キロメートル、元々島全体が工業地帯のような要塞となっていたものはほぼ現存している。生活資材や食糧を作成する加工場や生産パイプライン、巨大な産婦人科施設等、セカンドステージチルドレンにとって必要不可欠なエリアを増設した。

中でも重要視されているエリアは、産婦人科。

セカンドステージチルドレンは20歳で生涯を終える。

《20エンド(セカンドステージチルドレンの呪縛)》 とも呼ばれているこの謎の現象。未だに解明はされていない。人外未知の超越者が故の代償…だとフェーダは仮定している。だから、このセカンドステージチルドレンは子孫を残し続けなければならない。この謎を解明するまで…子孫にこの謎を解明してもらうために…。人間のように永く生存する事が可能になるように…幾ら超越者と言っても、ポンポンポンポン生まれる訳では無い。だが例外もある。純血者同士の性行為では、胎児の出産スピードが極端に早い例がある。セカンドステージチルドレンのどこまでが、“純血者”と判断されるのかと言うと、四世代前までの人物に濃厚な能力者遺伝子が備わっていた場合、現代に生きる子孫が純血者と判断される。それと二ーディールとエレリアのような、近親相姦も純血者を出産できる行為に該当する。


人と同様に男と女が性行為をして、誕生する一つの生物だ。

アルシオン家がやってきた《リコンビナント》は、フェーダではやられていない。二ーディールが止めたようだ。二ーディールを含めたアルシオン家の全員はリコンビナントに成功し、20歳を超えても死には至っていない。何事も無く生きている。

《現にサリューラスは、21歳だ。》

だが、フェーダメンバーは違う。混血児では無い、純血者。多くのDNAを複合させたアルシオンとは別に、人体に含まれている血液の種類が劇的に少ない。一時はリコンビナントをするべきだと考えたが、これ以上の人類の大虐殺は生存の危機に及んでしまう。人類には今、アンチSゲノムブッシュがある。もしもの事がある…。

サリューラスが拘束された時にアンチSゲノムブッシュ内蔵拘束兵器レッドチェーンを使用していた。あんなもの、通常のセカンドステージチルドレンでは全身から力が抜けてしまうのだ。サリューラスは違った。《オリジン》の血があるからだ。オリジンの血は、サリューラスを始めとするアルシオン全員に宿されている。アルシオンの血を他のフェーダメンバーに投与するという実験も行ったが、そのメンバーは20歳を超えて死んだ。意味が無かったのだ。もっと高純度の血液が必要なのかもしれない。今のアルシオンには高純度なアルシオンの血を持つ者は、存在しない。

アルシオン皆が、アルシオン以外の血を持つ混血だからだ。


そんな中、可能性が浮上する。

サリューラス・アルシオン。彼は特別だ。父親の身勝手な行為で生まされた…戦闘兵器だ。彼自身は、自分の力をまだ完全に把握しきれていない。でもそれでいい。知ってしまうと持たないと思う。サリューラスを連れてきた理由は他に無い。

明日の作戦に参加させる。

サリューラスを、マザーコピーに接触させる。接触させ、覚醒したサリューラスの血液を採血する。その血液を投与すれば、20エンドを解けるかもしれない。

それを思いつくまで、どれほどのセカンドステージチルドレンが20エンドを迎えたことか…。フェーダメンバーは、20歳までに子を産まなければならない。理由は上記に記した通りだ。

子孫を産む…。

それだけは、人間と同じような原理だ。

しなければならない。

愛さなければ、セカンドステージチルドレンは死滅する。

すぐだ。

20年。

それも、子供のうちに繁殖ができるわけでもない。残された時間は少ないんだ。フェーダに時間は無い。サリューラス・アルシオンは最後の希望なのだ。


島中心部に位置するのは、《エクリュプラザ》という黒の塔。ここがフェーダ総本部として機能し、ポーターズウェッジ島の社会福祉やインフラ整備の統括、世界中の点在しているイドフロントフェーダの状況確認のオペレート等…フェーダに関連する全セクションの管理をしている機構である。

「どう、ポーターズウェッジ島は?」

「凄いです、至る所に人がいる。全員セカンドステージチルドレンですね。」

「勿論よ、皆が皆を支えているの。皆が仲間よ。大事なね。」

「セカンドステージチルドレンは、人間だと思う?」

「急にどうしたの?サリューラス…。」

「思うんだ…セカンドステージチルドレンがどう生まれたのか。なんで人の皮を被ってるんだろう…どこかで人と絡んだって事です…よ、、ね?」

「サリューラス?ここにいる皆は、人とは思ってない。アイツらとは違うのよ。不完全な生命体で出来損ないの群体。一人で動いてもどうしようも無い。やっと複数人が集った所でいざ、目標を果たせるのかと思いきや、多くの時間を浪費してしまう…。コストパフォーマンスの悪い、ただただ生きてるだけの肉体よ。くだらないわ。知ってるでしょ?セカンドステージチルドレンに対して、人類が行ってきたことを。あなたも見るんでしょ?」

「見るって…何をですか?」

「たまにフラッシュバックしない?誰かの記憶を追憶したり…それを《血脈伝道線トゥルース・ブラッド》って呼んでるわ。」

「最近よくみます。それも長く…。」

「私は最近見ない。なんでだろうね。あの人の声、好きなんだ…なんか、、いつも背中さすってくれるんだよね。」

「さすってくれる…」

「そう、そんで語りかけてくれる。でもいっつもカタコト…というか子供みたいなんだよね。」

「確かに…判ります。」

「ね、なんなんだろう…あの子。護神だね。祈っとこ。ね?」


ポーターズウェッジ島に着港。

「さぁ、みんなを紹介するよ。来て。」

ヴィアーセントの案内でポーターズウェッジ島を回る事になった。

多くのセカンドステージチルドレン反応を脳で検知する。そして目に映ったのは、貿易港と工業地帯だ。貿易と言っても一体どこと交易を結んでいるのか知らないが、とにかくターミナル港のような大きさ。貨物列車が行き来してもおかしくないレベルの規模だ。

「ここはフェーダの生活を維持するための物資が全て揃う《ポートアベニュー》よ。」

「凄い…沢山の能力者だ。なんか見られてるんですけど。」

「そうね、あなたが特別だからよ。」

──

「あいつがそうなのか?」

「ええ、アルシオンの最後の生き残り…」

「おかあさん!はやくほしいよ、あの人の血」

「うん、大丈夫だよ。あの人が救ってくれるから。」

「やだよ!しにたくない!おねえちゃんこのまえに、しんじゃったじゃん!」

「だから…その事はもう忘れて…ね?」

──


苦しい世界だ。若者しかいない島。大人がいないんだ。セカンドステージチルドレンは結婚を余儀なくされる。そして、最低でも一人。最高記録は4人を産んだ婚約者も存在する。いわゆる、一人が2回と双子が1回の出産ケースだ。14歳以降から子作りは始まる。情欲に溺れている訳では無い。しかし例外はある。でもそれは、【子孫を残しているんだ】と他のフェーダメンバーは割り切っている。ヤリチンとか、ヤリマンとか、絶倫といった戯言を言う者はいない。この世界においては、子孫を残す事が全てなのだ。生物は最大の資源。


「もうーー!!オソーーーイ!!」

ポートアベニューから、住居が立ち並ぶ《ライフスタンドエリア》、重要施設が立ち並びエクリュプラザが聳える《ゼノンソーサーエリア》。フェーダが超能力で完成させた建築物。これは、人類が建てたようなものにも見える。フェーダはこうして、人類の歴史から学習している。思考と学習に関しては、人類と酷似した脳の作りをしているからだ。

今でも、人類から学んでいるジャンルはある。中々に確立される事がない“教育”の面だ。数学や語学の授業はアップデートされる事はあまり無いが、歴史や科学となると話は別になる。この時代、歴史学者がこぞって政府への時代間航行タイムワープの許可を行っている。人類の学び舎にて、歴史の教科書がアップデートされるのは日常茶飯事。《エデュケーションデバイス》に書かれていた事が、昨日と今日で全くの正反対を書き記している時もあった。

歴史は最初そのぐらい曖昧に書かれていて、次々と有識者が《インフィニティネットワーク》を通じて編集、書き加えが行われる。

一体いつ、完成されたエデュケーションデバイスを配布されるのだろうか…。

歴史学者達は過去への旅を幾度となく行う。上記に記した通り、時代間航行正式認定証とワームホール突入の問題有無確認テストを受講しなければならない。

簡単にタイムワープを許してはいけない理由。それは無許可での過去への介入は歴史改変の原因になるからだ。セカンドステージチルドレンも歴史に対しては慎重になる。もしかしたら、自分達が存在しないパラレルワールドの誕生により《多重層次元理論》の定説。即ち、“人類進化伝説”の抹消が始まる。

これは、セカンドステージチルドレンの存在消滅の危機にもなる。

フェーダも手を出せない“禁足地”もある…という事だ。


「きこえてんのかァ!?コラァァァ!!」

「ちょっと!スターセント!ここにいるみんなは、仲間。新入り多数のお仲間さんだよ?」

「黙ってろお姉ちゃん!なんだァ?お前ら?見るからに弱そうだなぁ〜???コイツらヤクニタツノ??」

「あったりまえでしょオ?皆今日から仲間なの!紹介するわ、《スターセント・アルシオン》。お父さんの末っ子よ。あ、そうだこの子が例の子よ。」

「そんなもん、見れば判る。」

ジローと凝視されるサリューラス。

「……なんなんですか?」

「まぁこいつは多少なりとも役に立つかもね。せっかくお姉ちゃん達が二ゼロアルカナまで行ったんだから、何を連れてくるんかと思えば、このアルシオン以外は使えないヤツばっかジャない!」

ヴィアーセント、サリューラスの後に続く回収されたセカンドステージチルドレン達が罵声を飛ばす。

「ウルせえっだよ!オマエら!殺すぞ。」

その言葉と共に放たれる黒の波長ブームが、脳に直接の攻撃サインを送る。それに戦き、各々の新入りが案内された居住区画へと向かった。

「もう、スターセント?やめなよね、それ。」

「あいつらの顔、ムカつくんだよ。んで、そいつが目玉ね。」

「そうよ、サリューラス・アルシオン。ペンラリスの子供よ。」

「お母さんは誰なの?」

「サリューラス?誰なの?」

「ああ、ペイルニース・トゥルーフという名前でした。」

「そうか、トゥルーフか。こらまた面倒くせぇ家とヤッたな…合点がいく。」

「そう…トゥルーフなのね。」

2人が自分だけの世界に一瞬移行する。それは直帰する。

「さ、サリューラスは休んで。明日なんだけど、サリューラスにも参加してほしい作戦があるの。だから、ゆっくり休んで…ね?」

「うん、判った。」

サリューラスは入室コードキーを受け取り、用意された自室へと向かった。


「お姉ちゃん?サリューラス、あの子は…嫌な予感がする。パパはどう言ってるの?」

「お父さんはサリューラスに全てを懸けてる。」

「パパはもう、危ないよ。幾ら私たちが超越者でも、死ぬは死ぬんだよ。死の宣告には抗えない。生物だからね。」

「そうだね。お父さんには長生きしてほしい。だから、早くサリューラスをマザーコピーに触れさせる。」

「明日やるんでしょ?」

「うん。用意できてる?」

「あっタリまえでしょ?フェーダが誇る最強部隊アルマダが海に沈めてやるよ!」

「やってやろう!」


「お前達。」

「パパ!」「お父さん!」

「パパ大丈夫?」

「大丈夫だよ、島も問題無かったか?」

「うん、大丈夫だよ!人間来たラ殺すだけ!」

「頼んだぞ、スターセント。ヴィアーセント、サリューラスは休んでるか?」

「うん、休ませたよ。明日の事も言っておいたよ。」

「そうか、判った。明日の作戦をもう一度確認しておこう。」

おいおいおいおいおいおいおいおいお!!!なんじゃこいつら、良くもまぁこーんな使えなさそうなヤツら捕まえて帰ってきたなぁ!姉キィ。なぁんだコイツ。いけすかねぇなぁ。もっとカッコイイ男連れて来てよーー。イケてるの連れて来てよ…あ、サリューラス、あんたは別よ。あんたは私が守ってあげる。弟の罪、償わなきゃね。

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