[#117-虚飾光柱【5】]
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レピドゥスからの暴喰が解かれていき、乳蜜学徒隊は戦闘行動を再開。
自身の行動範囲が極端に制限されていた先程よりかは、圧倒的に手数を打ち込める状態に戻った事で乳蜜学徒隊は各々の攻撃を繰り出していこうと、天根集合知の発動を決断。
ウェルニの想いなど目にもくれず、ベルヴィーとナリギュ達は戮世界テクフルの命運にその身を捧げた。
二人とウェルニの間に、友情なんて綺麗事はもう存在しない。一方通行なウェルニの思想は二人の心に行き届くものながら、ジュンワリと滲むような現行的な感情にまでは到達しなかった。
双方の想いが合致しない限り、それは発されていないも同然。
完全に立場が逆転した。ウェルニはレピドゥスの異能を殺そうと無理をしてしまい、身体に劇的な負荷を与えてしまった。神経接続を行い、主幹制御者のウェルニからコントロールを奪い取ろうと画策するレピドゥス。
これは全て、傍から見れば“一人の身体の中で行われている対立”によるものだ。
閉塞的な戦いが繰り広げられている中で、乳蜜学徒隊は、そんな状況を無視する程優しさに溢れた存在などでは無い。絶対的な超越者が目の前にいる、更には自らの精神世界で巻き起こる対立⋯。今、乳蜜学徒隊は絶好のチャンスを目の当たりにしているのだ。
超越者からの反撃の様子は全く感じられないので、余裕を持って対象を捕獲。その後のシキサイシアにまで行き着くルートを最小限に抑える事すらも容易だ。
「ベルヴィー、白鯨を使うまでにはならなかったな」
「うん」
ベルヴィーとナリギュ。二人は、悶え苦しみ暴喰の魔女と対立するウェルニの様子を上から目線で眺める。『上から目線』、物理的にもそう表現するしか無いのだが、二人は本当に『上から目線』を演出していた。何回でも言及しよう、この三人の間に特別な友情はもう存在しない。
他人、と言えてしまうまでの関係性では無い。
ベルヴィーとナリギュ、二人は声に出さないだけで、彼女との思い出を追憶。だがその記憶を流し見するようにしていっても、なぜか最終的な結論として浮かび上がって来るのは⋯
『あれ、どうして超越者と一緒に居たんだろう⋯⋯⋯⋯』
この文言。
これが、二人の脳に共通して浮上するようだ。
「おい、友情ごっこしてるところ悪ぃけどよぉ」
「フレギン、別に私達はそんなようなこと、してるつもり無いよ」
「でも、俺たちにはそう見えて仕方がねぇんだが?」
フレギンが後方にいる乳蜜学徒隊に興味を抱かせる為、ベルヴィーとナリギュに他の修道士へ意識を促す。
マディルスを始め、修道士みんながベルヴィーとナリギュに対して、怪訝な表情を浮かべていた。作り上げていた。
「みんなごめんね。勘違いさせてたら申し訳ないよ」
ベルヴィーが謝罪から始まり、それに続きナリギュも仲間たちの固い顔面を柔和にするべく、後に続いた。
「最期の挨拶。しようかと思ったんだけど、もうここ有様。私とベルヴィーが手を下す前に、勝手に暴喰の魔女とやり合ってるみたい。生きたまま捕獲するには今がチャンスなんだから、さっさとずらかって教皇の元へ運ぶわよ」
「キャプチャー展開。これより乳蜜学徒隊、アトリビュート捕獲作業を開始する」
ネラッドが捕獲フェーズに移行した事を宣言。その直後、乳蜜学徒隊が発現させていた白鯨ケセド等級とビナー等級は能力を終息させ、それぞれの宿主の元へと帰還していった。白鯨と今、ネラッドが宣言したキャプチャー作業を同時平行する事が出来ないのか、彼等の白鯨が終息していく。




