[Chapter.12:introduction“SisterfoodOfSeranoon”]
第拾参章、スタート。
[Chapter.12:introduction“SisterfoodOfSeranoon”]
先程までこちらに盈虚ユメクイさまがいらっしゃった⋯という事実は本当でしょうか?
⋯⋯⋯なるほど⋯本当なのですね⋯⋯⋯そうですか。あー、すみません。それはこちらの問題ですので、皆様が気になさらなくていい事です。⋯ん?なんですか?あ、、そう言われてしまうと⋯⋯ですか?気になりますか?いえいえそんな大したことではないですから。もっとも、自分達には少しの問題のある事で、皆々様には⋯⋯はい、⋯⋯ええぇ⋯はい、はい⋯そう、、ですか?はい⋯分かりました。
今、伝達が入りました。皆々様にもお伝えした方が今後のストーリーラインにも工夫が増える⋯ということですので、お伝えしたいと思います。すみませんね、なんだか、もったいぶったみたいな演出みたいになってしまって⋯ですがみなさん、そこまで眼球を尖らせて聞くような話では無いので、そこのところは柔らかい、柔軟な感覚で受けていただければ有難いな⋯と思うばかりです。では⋯始めたいと思います。
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盈虚ユメクイさまにお伝えしたかった言葉は以下の通りです。紙に書いてあるのでそれを読みたいと思います。
『貴殿。幾重の事項が発生し、多次元世界にも障害が発生中。原世界の戦争は1月20日以降も続いており、これ以上の観測は無意味なものと判断が可能。戮世界からの先遣隊は原世界民族とコンタクト。一触即発の危機が発生した事はシナリオ通りなのか?もしこれがテリングに沿ったものなら今すぐに軌道修正を願う。戮世界への影響が発生している事は言うまでも無い。特異点兆候の発生源は原世界にあるにもかかわらず、戮世界からの特異点兆候発生は前代未聞だ。そちらの方も緊急対応を要請する。原世界の問題。再三の注意だ、日本帝国だけでは無いぞ?いい加減ベースラインに設定するのはどうなんだ?日本を基軸としても、思うようには行かないだろう。それに主力セブンスが兄弟世界へ送られた事によって、ノーマルヒューマンだけとなっている。沖縄から進軍中のメイカーズファスタ。彼等と枢機卿船団の対立。並大抵の戦闘では終わらんぞ。ただの人間では無い。世界戦争の攻撃を生き抜いてきた者たちだ。フラウドレス・ラキュエイヌを筆頭とするセブンス。このセブンスとなったロストライフウイルス。この影響を受けても尚、生き続けている意味はなんだと思っている?⋯⋯皆までは言わん。盈虚ユメクイ、現状をどう心得ているのだ。次回の議会までに回答文を揃えておくこと。以上。メルヴィルモービシュより』
盈虚ユメクイさま。聞いておられるんでしょう?
後でお時間ください。
⋯⋯すみません、皆様。
心に留めないでください。皆様の中で、ふつふつと生まれている感情は本物です。それを大事にしてくださいね。これは語り部軍団を代表して言っています。たった一人の意見ではありませんよ。
幻夢郷はこの世の理のすぐ隣に存在する大切な機関です。嫌々、こうして集まった方もいるかとは思います。ですがもうしょうがないのです。2つの世界を我々は見定める必要性がある。原世界と戮世界。2つの世界の均衡を平定にするべく、語り部軍団はシナリオの軌道修正を行っています。皆様の思考が、我々の脳に結実する事で、より多くの案を組み込む事が出来ます。するとどうなると思いますか?ほら、言うでしょう?昔から。“たった一人よりも、みんなでやれば⋯ナントカ⋯”とか。あるじゃないですか。幻夢郷もそうであってほしい。
───『Part of Froudless』乳蜜祭 第三節。
記録班:ムナシキ
当該シナリオは、前章の原世界メンバーから入れ替わり、戮世界のメンバーを中心に描いた物語として構成が開始されています。その戦いのスケールは壮大なものでした。前章では基本的に教皇ソディウス・ド・ゴメインドに立ち向かう、サンファイアとアスタリスの2人。主にこの3人で物語は描かれていきました。途中と終盤から多くの異形生命体が出現し、物語の幅が拡大。様々な登場人物がセブンスの2人を助けたり助けなかったり⋯カオスな展開を我々は執筆しました。そんな前章と比較して今回のチャプター12は多くの登場人物が、ヘリオローザとセラヌーン姉妹を翻弄。前章以上のカオスな展開が待ち受けていましたね。
これに関しては我々も加筆修正を施した場面も多数あるのですが、これも最近の多次元世界の障害発生でフェール・デ・レーヴ・トパーズとの通信が不安定に陥り、シナリオへの着手が困難になる事態へと突入しました。そうなってしまうと、この登場人物達は、与えられた舞台装置を活用して物語を自分たちの手で進行させるしか他ありません。
そんな通信障害発生が当該チャプターでは多く現れ、語り部軍団の知らぬストーリーラインが構築。その特異点兆候に相当する事象を予測していた語り部軍団なのですが、その予測範囲を大いに飛び越える事象も沢山ありますね。
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ヘリオローザとセラヌーン姉妹。この3人を分断エリアで一緒にするのは中々の賭けだと思います。ヘリオローザはアトリビュートへの憎悪があります。過去、アトリビュートが戮世界にいた時代。ヘリオローザはラキュエイヌの身体に宿ったり宿らなかったり⋯今の人間形態を模した時などに、多くの仕打ちが与えられたみたいです。
『アルシオン王朝帝政時代』。
この物語のキーとなる重要な時代。律歴4119年、ツインサイド戦争の後。フェーダは戮世界テクフルを征服。
虐殺王サリューラス・アルシオン皇帝が戮世界テクフルの公王となり、全統制を実施。ヘリオローザはその時代のラキュエイヌの中で、アルシオン王朝の理不尽な新法の餌食となったのだ。弱ければ殺される⋯。そんな時代でした。
目の前で人間が死者となる風景なんてざらです。
その時代の前から、ヘリオローザはかなりのクレイジーな女でした。アルシオン王朝帝政時代というイカれた風習が蔓延した戮世界テクフルを生きてきたヘリオローザ。
そんなヘリオローザがアトリビュートに対して怒りを覚えるのは無理もありません。アトリビュートはセカンドステージチルドレンの子孫なのですから。
それなのに⋯ヘリオローザは優しいですね。優しいのか⋯後でのお楽しみとして取っておいているのか⋯真相はこの続きの物語を読んでいけば分かるのかもしれません。
ヘリオローザは、アトリビュートのセラヌーン姉妹2人に助けを求めます。今はそれしか無い⋯“利用しよう”と思ったのです。自分の宿主であるフラウドレスが教皇ソディウス・ド・ゴメインドの攻撃で瀕死状態に陥っている。今、サンファイアとアスタリスは“向こう側”で教皇というイカれたガキと戦っている。教皇は2人に任せて、フラウドレスはヘリオローザが⋯ということです。
サンファイアとアスタリスはせっかく愛しの人を見つけたのに、久々に会った姿がボロボロ⋯ですからね。大好きな女の子と久々に会って、痣だらけ、血だらけ、曲がっちゃダメな方向に腕・足が曲がってる⋯。そんな姿を見たら、皆様はどう思いますか?
こんな状態に至らしめた人間を殺したい⋯と思うのが普通でしょう。そうです。普通なんですよ。この考えが。
セブンスもセカンドステージチルドレンの子孫です。分岐進化なので、こういう所もアトリビュートと似ている⋯?のですかね。
鬼のような審判。あまりにもなザマでしたからね。絶賛、セブンスの2人はフラウドレスの仇を打つために戦闘を開始しています。それに関しては前章でミッチリと描かれていますので、そちらの方をご覧いただければと思いますよ。
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ヘリオローザの怒り。セラヌーン姉妹の怒り。
双方の怒りは同じカテゴリーの中でも、枝分かれするような感情だと思っています。セラヌーン姉妹の怒りは、奴隷制度からの解放を宣言する為の怒りですね。
セラヌーン姉妹は今日、この日の為に今まで生きてきた⋯と言っても過言ではありませんから。
シキサイシア。乳蜜祭最大のイベントですね。大陸神グランドベリートへの奴隷を捧げる儀式。これを行えば、原世界からのシェアワールド現象によって発生する汚染物質は無くなる⋯。そう、言われています。
ただ、その奴隷となる候補の多くはアトリビュートが選出されているんです。当然、アトリビュートはこの状態を確認し、各地方に散らばります。地方には留まらず、他の地方にまで逃げます。ですが、今日まで多くのアトリビュートが奴隷となり、大陸神グランドベリートに捧げられて来ました。
先程まで、『捧げられてきた』と表現していますが、セラヌーン姉妹を始めとする、生存中のアトリビュートはこの事象を『殺された』と解釈しています。実際に原世界の戦争によって発生しているシェアワールド現象の産物“汚染物質”は減少傾向にあります。なので、無駄な儀式では無い事が明らかとなっているのです。だから大陸政府と七唇律上層部はシキサイシアの頻度を加速させます。剣戟軍のアトリビュート捜索網は一気に拡大。多くのアトリビュートが捕らえられてしまいます。その際、剣戟軍に協力した裏切りのアトリビュートが存在する事をここに記載しておきましょう。
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『ミュラエ・セラヌーン』。
彼女はトラウマを抱えています。テクフル諸侯直属の大陸政府・ティリウスと戦闘を開始させた時にそのトラウマに拍車が掛かる事態が展開されてしまうんです。
クレニアノン。この男の存在を皆様は覚えていますでしょうか。セラヌーン姉妹の両親を殺した張本人です。彼は剣戟軍に協力していました。最終的にミュラエは彼を殺害するのですが、クレニアノンはセラヌーン姉妹を助けようとしていたんです。おかしい話ですよね。両親を殺したのは現実、本当の話です。ですが、それは仕方無かった⋯。クレニアノンの心を理解したミュラエは自分の行動に後悔を露わにする。ウェルニは姉の行動を『正しいよ』と肯定するのですが、妹の声はあまり届いていないみたいです。
クレニアノンを殺した事によって、その日以降、クレニアノンの魂が宿されたような気分となる。このトラウマがティリウスとの戦闘によって、増大する事になるとは⋯この時の彼女には思ってもいないだろう。
ティリウスも同じく、天根集合知を使える。能力こそ違えど、強力な天根集合知を繰り出してきた。
2人の戦闘は激化していく中、新たな存在がこの地に飛来する。分断エリアに亀裂が入り、教皇ソディウス・ド・ゴメインドが侵入。剣戟軍、異端審問執行官という2つのコミュニティを強制送還したのだ。2つのコミュニティは通常人類によって構成されたチーム。天根集合知等の異能スキルを持ち合わせていない存在だ。教皇はこの通常人類達を使用し、サンファイアとアスタリスとの戦闘に使用。この模様はチャプター11にて明らかになっているかと思います。大天使アークエンジェル。普通の人間が天使となり、翼を生やした瞬間です。
旧式ヒュリルディスペンサー。
今の分からない言葉でした。ミュラエ、ウェルニはヒュリルディスペンサーによって天根集合知を対価として受け取りました。これは朔式神族との契約によるもの⋯と言われていました。ですが、これは嘘、だったのです。この対価を受け取る儀式は名前こそ同じ“ヒュリルディスペンサー”だが、セラヌーン姉妹が受けたのは旧式と呼称されているもの。ウェルニはアリギエーリ修道院、ミュラエは両親が殺された後、カタベリー修道院にて、旧式ヒュリルディスペンサーを受けた。なんと2人は偶然、旧式ヒュリルディスペンサーの実験台として利用された修道院に通ってしまっていたのだ。
旧式が実施された理由。未だに旧式を実施しても子供達は自分の部位欠損に臆する事は無いのか⋯というそれだけの理由。まだ理由があるのかは、こちらでは分かりません。何せこれは幻夢郷が介入しているパートじゃありませんから。戮世界テクフルのオリジナルですよ。
知っての通り、ミュラエは“子宮”を。ウェルニは“記憶”を。それぞれが無くしました。この実験を企画したのは司教座都市スカナヴィアのゾディアックと呼ばれる七唇律聖教のお偉方。スカナヴィアのゾディアックはチャプター12にて多くの場面で戦闘に参戦しています。意外とあんな所に⋯こんな所に⋯スカナヴィアのゾディアックは介入していたんですよ。
ミュラエのトラウマ。どのようにこの事象が繋がるか⋯と言うと、ティリウスです。ティリウスがなんと旧式ヒュリルディスペンサーを受けた者だったのです。ティリウスは“生殖器”を手放しました。ミュラエが偶然、ティリウスの股間に壊死相当の攻撃を加えた時、彼女は気づきました。そんなティリウスはもう既にミュラエとの戦闘で死も同然の状態でした。ミュラエは最後の攻撃として発動させたのですが⋯なんとその事実を、ティリウスが死ぬ直前に知る事になってしまったのです。なんと可哀想な事でしょう。もっと先に知っていれば⋯あの時の出来事を話せたのに⋯。生憎、ミュラエは当時の事を全く覚えていません。ティリウスは覚えていたみたいです。ミュラエのことも。
そう、ティリウスはミュラエが旧式ヒュリルディスペンサーを受けたカタベリー修道院にいたのです。間近に。
再会⋯とも言うべきシチュエーションだったんですね。これは。しかし、ティリウスはなぜ、これを明かさないまま、ここまでに至ってしまったのでしょうか。
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『ヘリオローザとティーガーデン』
チャプター12ではヘリオローザが抱くフラウドレスへの愛についても深く描かれました。フラウドレスという存在について⋯ヘリオローザは今までのラキュエイヌには無いモノを沢山感じているようです。なんと言っても、セブンスの力。ラキュエイヌ史上初となるゼロイチの異能者。今まではヘリオローザの存在があった上での“ラキュエイヌ”でしたが、フラウドレスからはそれが一気に変わりました。ゼロイチでの異能。ヘリオローザの細菌組織が母・ロリステイラーから移植しようとした時、妨害する細菌が姿を現しました。それが、ロストライフウイルス。
懐かしいですね。こちら、皆様は記憶していましたか?無差別殺人バクテリアを。
西暦2648年7月22日。ブラッディローメイ戦争が始まりました。後にこれは世界戦争の第1次フェーズと謳われ、第2次フェーズに、西暦3101年4月1日より始まったデストラクチャーズ戦争が。第3次フェーズには、西暦3697年2月22日より始まったシェリアラージュ戦争があります。
この3つに分けられたワケ、というのが“使われた軍事兵器”にある。特にこのブラッディローメイ戦争。この戦争は353年間続く世界戦争なのですが、この間に先程申したロストライフウイルスが使われる事となるのです。ロストライフウイルスは世界のほとんどの国が所有しており、戮世界の文明の恩恵を深く受けている原世界の“日本”もロストライフウイルスを所有していました。
これは悪性ウイルス。ミサイルや焼夷弾等の滅殺攻撃が可能な軍事兵器に内蔵・搭載。それが一気に世界全体で使われ、大量の人間が死に落ちます。“無差別殺人バクテリア”と称した通り、民間人も巻き添えです。まぁこれは、ロストライフウイルスに始まった事ではありませんが。
西暦2799年10月1日。『ロストライフウイルス』が世界全体で使用され、世界戦争が激化。この殺戮兵器の投入によって、ダウンした地球の現状を『ロストライフアップデート』と呼称したみたいです。
しかし極小数の人間がロストライフウイルスを受けても尚、生命持続のシグナルを発信させたのです。
それが『セブンス』。ロストライフアップデートは、生きた人間と死んだ人間と兵器の影響を受けなかった人間に分別化。
もちろん、一番少ないのは数の少ないカテゴリーは“生きた人間”。セブンス化した人間に共通されるのは、先祖に超越者血盟がいるという事。
セカンドステージチルドレンの血は根絶されていません。ですが、超越者の存在は絶滅していたのです。
西暦2495年12月10日。最後のセカンドステージチルドレン、ハデスポネ・ジャセリアがこの日、死亡しています。最初のセカンドステージチルドレン第一世代が暴走してから、395年。原世界ではセカンドステージチルドレンは死滅しかけていました。この模様はチャプター2にて明かされています。
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『禍天の魔女』
ミュラエの天根集合知“幻影空間真空の抽象”。相対するのは七唇律聖教大陸政府直轄部隊のラージウェル。スカナヴィアのゾディアックによって緊急招集され、分断エリアに投入された参戦兵だ。
自分の力を相手に使われる⋯。思ってもいなかった事でしょう。ミュラエの黒影をラージウェルが巧みに利用。ラージウェルが発現した禍天の魔女“マズルエレジーカ零号”は、黒影を使用し、ミュラエの黒輪の世界に招待。ミュラエは白鯨ゲブラー等級の力を借り、能力の増大に出た。
そして、勝利の活路を見出していたミュラエ白鯨。禍天の魔女は、黒影の使い方を完璧に理解していなかった。黒影は天根集合知の発動等を封印する力を持っている。この効果は普通、発現者以外をターゲットに指定するのだが、該当者の中に禍天の魔女も入っているようだった。
現に今、ミュラエと禍天の魔女は、近距離戦を主軸とする戦闘を展開しています。
果たして、ミュラエはその弱点を突いて、大番狂わせを起こす事は出来るのか⋯⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯と、思っていたのですが⋯、、、
はい、ここに来てまた新たなる特異点兆候の発生です。どうやら、原世界で世界戦争のクライマックスが起き始めているようです。ロストライフウイルスは深き大地の根に、ずっといたみたいですね。
それでは、こちらからの報告は以上となります。
『中途半端だ』等の意見⋯その通りだと思います。申し訳ありません。こちらの諸事情です。
時間掛かります。また逢う日まで⋯。




