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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾弐章 鮮血太極図ワルプルギス/Chapter.12“SisterhoodOfSeranoon
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[#99-司教座都市スカナヴィアのゾディアック]

ヘリオローザ、ミュラエ、ウェルニの3サイドを同時進行にて。

[#99-司教座都市スカナヴィアのゾディアック]



ロウィースの心。わたしは彼の制御を奪うと共に、心の内を覗いた。特に必要性は無かったが、『暴喰の魔女』として一応の責務がある。人間を熟知する事はわたしに課せられた使命だからだ。ウェルニ・セラヌーンだけを本当は知っておきたい。彼女だけを知っていればそれでいい⋯。本来なら、そう思っておきたいのだが、そう上手くいかないのも現実。多種多様な人類種へとコンタクト。

ロウィースの心は薄汚れていた。とても、暗く、汚く、肌で触れない⋯錆びれた鉄鋼のようだった。ちょっと指が心の壁に触れると、ザラザラと錆びれた部分が朽ち果てるよう⋯。とても正常な状態とは言えないものだ。そんな者が、わたしからのエクスタシーを直視してしまうと⋯現実を忘れ、他人から与えられてきた数々の非情な洗礼を一蹴する事が出来た⋯。彼には願っても無い事だったんだな。

過去からの脱却。わたしはそういうつもりで彼を呼んだのではない。単純に、彼の制御を奪取するつもりで行ったのだが、そういう背景を知ってしまった以上、わたしは“正義

”を務めたのではないか⋯と思えてならない。



ルート上に落ちた降着物体。忘我しているロウィースの制御はレピドゥスにある。レピドゥスは、ロウィースと降着物体の接触を回避しようと、直前ではあったが、迂回ルートを模索。降着物体もそこまでサイズの大きいものではなく、ちょっと角度を変えただけで物体との接触を回避する事が出来た。レピドゥスは何を思ったのか、降着物体に不穏な影を抱いてしまう。レピドゥスは警戒。降着物体に接触させないように、ロウィースと降着物体の間の幅を広げていった。だが、それは何故か効かなくなる。


降着物体から発光。強い光が、複数光源体によって視界を眩ませる。レピドゥスはその場に留まれず、急いで現在位置からの退去を急がせた。その際、ロウィースの身体は無視。光に包まれた場所には、複数の光源体が発生。最初に光を発生させていた光源体と姿かたちは同じだったが、発光の種類がまた異なるもの。発光の色が違ったのだ。白く光る光源体を発生させていたが、その色は多様な方向性を纏うものへと分岐を果たしていた。これが何を意味しているのかは、全く理解出来ない。個性⋯として今は解釈するのが妥当だろう。

降着物体から放出されていた光源体が、降着物体に収束していく。“ベルト”を思わせる帯状のエネルギー量子が、光源体と光源体を結んでいく。“点と点を線で結ぶ”ように、ベルトは、複数の光源体にドッキング。ドッキングを重ねるに連れて、ベルトの光度数は上昇していった。しかし、上昇していく一方でこれまた異なった真反対の色素を纏っていくベルトも存在。即ち、“黒”に近い光度数へと下降している。その真反対の光度数同士のベルトが、降着物体を囲っていく。巻き付くように、グルグルとうねるようにまとわりついていき、遂には降着物体からの発光が遮断されるにまで至った。ベルトは完全に降着物体からの発光を遮断したのでは無い。ベルトが遮断出来なかった、降着物体の“隙間”からは、ほんの少しの発光が確認されている状態。ベルトの巻き付きが終了したその時、隙間から発出していた光が赤色に染め上げられる。それは光では無く、液体だった。煌めく赤色の液体の正体は、血液。隙間から流れ出る血液が、降着物体の置かれている周辺に滴り落ちていく。やがて血溜まりが出来た頃、降着物体から生命反応を感知。何故、今の今まで生命反応シグナルを確認出来なかったのか⋯、レピドゥスは警戒を怠らない。


その刹那、レピドゥスのビジョン通りの出来事が起きる。

「はぁ〜なにやってんのよ⋯。ロウィース」

謎の男が降着物体より現れる。男は降着物体の殻をぶち破り、ロウィースの胴体部分の服を掴む。服を掴んだ男はロウィースの身体を不用意なまでに地面に叩きつけた。叩きつける行為は一回で終わらず、二回三回と、次々に実行される⋯。ロウィースの意識はレピドゥスの手にあったので、彼が受けている負荷は自然的な流れでレピドゥスにも伝わった。シンクロニシティ的では無いので、レピドゥスに痛覚が同期されたわけでは無い。だからレピドゥスが負荷を負うような事では無いのだが⋯。レピドゥスの心には、裁縫に使用する小針のような刺々しい痛さ。ひとつひとつが小規模な痛さながら大群を連れてこられてしまえば、痛さは自然的に倍増していく。

「これぇ、あなたにも伝わってるの?」

「あなたは誰だ?」

「俺はぁ、ロウィースを叱る者だ。こいつめ⋯暴喰の魔女を相手に欲情しやがって⋯お前もお前だ。こんな状況で気持ちわりぃんだよ」

「これがわたしよ。わたしとウェルニを繋ぐ欠片なの」

「欠片ねぇー⋯そんないいように言っちゃってさぁ、今後とかを考えたらどう?」

「今後?あなたはさっきから⋯」

「ま、そんなのどうでもいいんだろうけどさ⋯ウェルニ・セラヌーンの身体から、出て行くんだ」

「却下する。わたしとウェルニは切っても切れない関係性だ。他人のお前にとやかく言われて、断ち切れるような浅い関係性では無い」

「そうか⋯だったら力づくでお前をその身体から捻りとるしかねぇな⋯」

男から発現される力が強大なものとなっていく。強大な力は肉眼で確認出来るものから、そうでないもの⋯と多くの異種方向に連なった自然の摂理を無視したオールマイティさを持ち合わせていた。

「自己紹介が遅れた。俺は“セルスピルス・マティア”。あそこで薔薇の暴悪ヘリオローザと戦闘を行ってる七唇律聖教の大陸政府直属議員。スカナヴィアのゾディアックより、救命を受けてここへやって来た」

「スカナヴィア⋯司教座都市か⋯」

「暴喰の魔女・レピドゥスなら、ゾディアックの存在を知っているよね。だってお前はノアトゥーン院長の暴喰の魔女だもんね。⋯⋯裏切り者」

「裏切ってなどいない。わたしは元から、七唇律聖教に力を貸した覚えはない」

「覚えは無い???アッハハハッハハ⋯!苦しい言い訳だねぇー。実際、ヒュリルディスペンサーで献上品を暴喰したのは君じゃないか」

「わたしの意志とは相反するものだ。わたしはあの時⋯操られていた⋯。それがお前達スカナヴィアのゾディアックだと⋯」

「あとをお前⋯」

レピドゥスの発言を遮るようにセルスピルスが待ったを掛ける。

「“わたし”ってなんだよ。“暴喰の魔女”がそんな一人称を持っていいと本気で思ってるのか?」

「ウェルニが教えてくれてたんだ」

「人間に?それも⋯アトリビュートから?⋯おいおい⋯勘弁してくれよ⋯穢れた血を持つアトリビュートからご教示を頂いたって言いたいのか?ンハハハハ!!マジでお笑いじゃねぇか!めっちゃクチャに面白いよ!!」

「⋯⋯⋯⋯殺す」

小声。

「えぅあ?なに?」

「お前を殺す」

「はぁ⋯ヒュリルディスペンサーの時みたいに、俺を暴喰するってことか?」

「お前⋯⋯⋯ウェルニを馬鹿にするような真似は許さない⋯」

「崇拝⋯ってか?」

「言葉がいちいちウザイね」

「んあ、そうだ。言い忘れていたけど⋯俺だけじゃねぇんだ」

「なに⋯?」

「上を見てみろ」


セルスピルスが上空を指差す。その瞬間、上空のウプサラの壁が一時的な解放を遂げる。つまり、分断エリアを作っていた壁の天蓋部分のみが消失したのだ。もっと言うと、この場から逃走することが可能となった⋯と解釈も可能。だが、そんなら甘ったれた事を考える余地すら与えない事態が起こってしまう。

天蓋が消失した後、超多数のアンカーワイヤーが降り注ぐ。またもや分断エリアに注がれる謎の物質。この流れからしてスカナヴィアが発生させているとみて、間違いない事象だったが、先程のものとは打って変わった手法を繰り出してきた。アンカーワイヤーが、剣戟軍テルモピュライと異端審問執行官の全メンバーを牽引。上空へと釣り上げられていく。次々と兵士、異端審問執行官が釣り上げられていく光景は、レピドゥス以外のヘリオローザ、ミュラエにも目視にて確認が出来ている。上空から発生している“一筋の線”が、ひとりひとりを上に引き上げていく様は、次元断裂の終始意味しているようにも見えた。更に、当該事象を異様なものにしているのは、釣り上げられていく者たちの顔つきにあった。

どういう訳か、剣戟軍テルモピュライと異端審問執行官の全メンバーは、それを受け入れているような表情をしていたのだ。つまりこれは全員が“待ち望んでいたこと”のように思えてならない。


「不思議そうだなぁ。不思議か?あー、そうか。不思議だよなぁ。だって通常人類があげられていくんだから」

「スカナヴィアか?」

「まぁ、、そうだよね。普通に考えて。この流れ的にそれ以外無いもんな」

笑いながら、現状を楽しんでいるように言ってのけたセルスピルス。上空に釣り上げらていく通常人類達だったが、そこに介入する黒色と白色が攻め寄ってきた。

「なんだ⋯⋯?」

セルスピルスがこのように言った。予想外の出来事⋯という事だろうか⋯。だがその疑問は直ぐに終わりを迎える。

「なぜだ?なぜ教皇がここに来る⋯」


上空に現れたのは、教皇ソディウス・ド・ゴメインド。教皇は上空へ釣り上げられている途中の全ての通常人類を自身に集約させ、超多数にも及んだ“線”の回収作業を実行。

─────────────────────

「なにこれなにこれ!何してんのよ!教皇は!」

「おい⋯教皇は何を考えてやがる!通常人類をこちらで回収して、強化人間へと進化させた状態をお見せしようと思っていたのになァ⋯勝手なことをしてくれる⋯」

「はい、状況レッド。全ての通常人類は教皇の手の中に陥りました」

「クソ⋯もういい、教皇は教皇で戦えばいいものを⋯どうして通常人類をサンファイア、アスタリスへ会敵させようとしてんだよ⋯おい、セルスピルスに続いてあとの3人の準備はどうなってんだァ?」

「はい、状況グリーン。問題無く、手筈は済みました」

「ごくろうごくろう!!、、台風の目!」

─────────────────────


教皇ソディウス・ド・ゴメインドは上空に現れ、全ての通常人類を集約した途端、姿を消した。そして、ウプサラの壁を再現。修復作業が終了し、教皇は当該分断エリアから姿を消した。通常人類を全て掻っ攫って⋯。


「教皇⋯」

「教皇ソディウス・ド・ゴメインド。あの子、連れて行っちゃったけど⋯あの人間達を何処にやったの?」

「ンなの決まってんだろ?あっちだよ。向こう側」

「セブンスか」

「セブンス⋯?あー、原世界版アトリビュートは『セブンス』って言うのか?」

「ああ、そうだよ。セブンス。サンファイアとアスタリス」

「2人を⋯失いたくないか?」

「⋯⋯⋯」

「おん?なんだ?そうでもねぇのか?別に失ってもいいって言う感じか?それとも、暴喰の魔女・レピドゥスにとっては邪魔者みたいな存在で、セラヌーンアトリビュートは大切に思ってる⋯的な?」

「⋯⋯アスタリスは⋯ウェルニとミュラエが大事にしていた仲間を殺したんだ」

何故、どうしてわたしはロウィースにその事を暴露したんだろう。それは自分だけで噛み締めたくない出来事だったからだ。たとえ外敵として認識している相手にでも、アスタリスの蛮行を伝えたかった⋯。少しでもウェルニの気分がそれで晴れる⋯と思っていたから。これはわたしの勝手なアイデアだ。ウェルニはこれで気分を害してしまう可能性すらあった。けど⋯⋯少しでもウェルニの気持ちを分かってもらいたい⋯そう思って、わたしはセルスピルスに打ち明けた。

「ふーん、まぁ、色々あるんだな」

「ああ⋯ウェルニはそれで⋯刹那的な癒しを求めていた。わたしは⋯ウェルニが失墜するさまを見たくない。近くで感じたくない⋯ウェルニは、笑っていてくれればそれでいいのだ⋯。それがウェルニだ」

「あんた⋯ノアトゥーン院長の暴喰の魔女だよなぁ?」

「その話はもうやめてくれ。わたしの宿主はウェルニだ」

「そうもいかねぇだろ?知ってるだろ?本来の宿主から離れると、お前の生涯を浸食する寄生虫が蔓延る事を」

「⋯⋯⋯分かっている⋯だから、しばらくしたら、ノアトゥーン院長の元へ戻るようウェルニを促すつもりだ」

「そのウェルニにも危機が迫っていたら?」

「⋯⋯どういうことだ?」

「知らないのか?浸食は暴喰の魔女だけでは無い。悪影響を及ぼす可能性があるのは、寄生宿主体にもあるんだぞ?」

「そんな⋯!!?」

「ほんとさ。だから、お前は今すぐにでもウェルニの身体から脱却する必要性があるんだよ。このままだと愛しの姫君が⋯死ぬぞ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや、嘘だ⋯。そんなことを聞いた事が無い。暴喰の魔女の正史を振り返っても、そんな事を記した古文書を聞いたことも無い。

「どうやら疑っているようだが⋯あ、もう一人、レピドゥスにプレゼントしたい人物の出動準備が整ったようだ」



──────Side:ミュラエ・セラヌーン。


「そんなモン?」

「テメェ⋯化け物め⋯⋯アトリビュート⋯」

「アトリビュートの力、舐めてもらっちゃ困るんだけど⋯?」

ミュラエはテクフル諸侯辺境伯ティリウス・ケルティノーズと対立。今は1対1のシングルマッチであったが、乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカ、剣戟軍テルモピュライ、異端審問執行官を相手をしていた。そこに、スカナヴィアのゾディアックが、剣戟軍テルモピュライと異端審問執行官を釣り上げ、結果的には教皇によって『向こう側』に強制的に連れて行かれた。乳蜜学徒隊カナン・ヴェロニカも、ヘリオローザの攻撃を受け、現在沈黙中。

「一人で相手するの?」

「⋯⋯⋯俺は⋯テクフル諸侯だ⋯当然だろう?」

「はぁ⋯あんたみたいな男、いちばん嫌いなタイプなんだよね」

「うるせぇ!来いよ!お前の穢れた血が絶やされるぐらいの、デッケェ攻撃ぶちかましてやるよ!」

「あんた、、、最初そんなキャラじゃなかったよね?私と戦闘してからすっかりと変わったじゃん?」

そう、私がティリウスと戦闘を開始した時はこのような雰囲気では無かった。自分が成果を上げる⋯俺がアトリビュートを殺す⋯と息巻いていたんだ。そのテンションは今でも継続されているが、何かとナルシシズムな部分がよく目立っていた。先に言うと私はそんな男が嫌いだ。とてつもなく嫌いだ。だからといって、引き芸に回るやつも苦手。ナルシストなんてこの世で一番に吐き気のする生命体かもしれないな⋯。だからサンファイアが大好きなんだ。

サンファイアが恋しい。


おっと⋯

「おい!テメェ!!避けてばっかりじゃねぇかよ!」

いや⋯今⋯サンファイアとエッチな事する妄想してたのに⋯!邪魔しないでよ⋯⋯⋯。サンファイアに会いたい⋯。サンファイア⋯あのウプサラの壁の向こう側にいるんだよね?大丈夫だよね??あなたなら⋯教皇を倒せる⋯よね⋯⋯⋯⋯⋯。でも、そんな私の大好きな人が大好きな人が、あの感じじゃ⋯。サンファイアより強いんでしょ?フラウドレスは⋯⋯⋯

「お前!!いい加減にしやがれ!!!!」

「なに!!!?うっさいんだけど!」

ティリウスの怒声がミュラエの耳にようやく届く。

「うるせぇじゃねぇんだよ。お前舐めてんのか?」

「サンファイアは⋯?」

「あん?」

「サンファイアは⋯無事なんだろうね?」

「サンファイア?ああー、あの原世界から来た異能者か?そんなん⋯死んでるに決まってんだろ?」

「⋯!?」

絶句した。ティリウスは今、あくまでも妄想で喋っている。にも関わらず、ミュラエはその言葉を一瞬ではあるが信じてしまうような素振りを見せた。もちろん、彼女はサンファイアの実力を信じている。だから、死ぬなんて有り得ないと思っているし、彼を強く信頼している。だが、まったくの赤の他人から彼の死亡想像を宣告されると⋯“言葉”にされると何故か、もしかしたらそうなってしまうのではないかと思ったのだ。

「死なない⋯⋯⋯サンファイアは⋯死なない⋯」

「あんた⋯向こう側では⋯いったい誰が相手をしてると思ってんだぁ?教皇ソディウス・ド・ゴメインド。大陸政府の頂点に君臨する方が相手をしてんだぞ?原世界の超越者が、勝てるような相手じゃねぇんだよ」

「決めつけないで。あなたが彼の何を知ってるって言うの?」

「原世界の超越者。アルシオンの起源たる遺伝子が含有されてる人間の末裔⋯だろ?そんな古くさびれた“旧異能”で太刀打ち出来るような相手じゃねえんだよ。それは戮世界に住んでいるあんた⋯ミュラエ・セラヌーンだって分かりきってる事だろうが」

ティリウスがミュラエに天根集合知ノウア・ブルーム“長距離精密射撃”をぶちかます。所謂、スナイパーライフルに相当する天根集合知だが、ミュラエの天根集合知ノウア・ブルーム“幻影空間真空の抽象”の魔の手が襲いかかる。ミュラエの当該ノウア・ブルームは、巨大な影を地上・中空に発現し、その影に対象物を飲み込まさせ、戦闘不能状態に貶める⋯という大胆不敵かつ、即時的なゼロ効果を齎す強力な天根集合知ノウア・ブルーム


幻影空間真空の抽象がティリウスが発射する天根集合知ノウア・ブルーム攻撃を食らい尽くす。直接的なダメージを与える為、ティリウスは天根集合知ノウア・ブルーム攻撃の全弾をミュラエに集中化。だがミュラエの目の前には、盾のようにミュラエを守護する幻影空間真空の抽象が発現。“黒影”と呼ぶに相応しい物体が、攻防両方の役割を果たし、ティリウスを地獄に叩き落とす。

「クソ⋯!!お前!いったいどうやってそんな天根集合知ノウア・ブルームを手に入れたんだ⋯!?」

「ンンーん、忘れちゃった。攻撃して来ないならコッチから行くよ」

ミュラエは今まで天根集合知攻撃全てを防いで来た。黒影が盾となり、全弾を弾いたり、吸収したりを担ってきたのだ。ティリウスが休みに入ったかのように戦闘状態をフリーズさせる。どうやら、ミュラエ・セラヌーンの力を甘く見ていたようだ。

「お前達⋯こんな事をして、許されると思うなよ、、、、」

「ん?なにそれ。最後に言い残す事はあるか⋯ってまだ言ってないんだけど⋯?」

「いい加減にしろ⋯⋯アトリビュート⋯お前たちを⋯朔式神族は許さない⋯⋯」

「朔式神族なんて、そんな過去の歴史に頼ってばっかりの大陸政府がすっごい嫌いなんだ⋯⋯私の家族を奪い去ったお前達が⋯憎くて憎くて仕方が無い⋯⋯」

「あれか⋯あの時の出来事は、共有されていたよ⋯。とても残念だ。けど、それを招いてしまったのは君の妹が、七唇律聖教に入教したからだ。違うか?」

「妹を⋯⋯妹を出すな⋯⋯いまは、私とお前の勝負だろうがァァ!!!」

ミュラエのリミッターが完全に解除された。天根集合知ノウア・ブルーム攻撃、黒影がミニガンを生成し、“黒影ガトリング砲撃”を開始した。ティリウスはそれを回避してみせたが、次々と砲撃されるガトリング砲の嵐に太刀打ちが出来ず⋯。最終的には一発の黒影弾丸が人体を貫通。甚大な攻撃負荷を与える事となる。ティリウスは、ミュラエを馬鹿にするような言い草をしているが、戦闘面では圧倒的な力の差が明らかだった。ミュラエはティリウスを打ち負かしている。

黒影弾丸の一発が人体を貫通し、出血が発生。その血を浴びたミュラエは狂乱の舞を披露する。

「アッハハハッハハハヒャハハハハハハヒャフヒャフヒャハハハアアアアハハヒャヒャヒャヒャヒャヒヒヒヒ!!」

「なんだお前⋯⋯イカれてんのか⋯」

「血ィ美味シイの⋯⋯⋯」

「イカレ女め⋯⋯⋯」

「モット⋯ちょうだい⋯ねェ⋯モット⋯モット⋯⋯」

不敵な笑みを浮かべながら、ミュラエの天根集合知ノウア・ブルーム攻撃が継続される。

「まずい⋯!」

「ヒャハハハハハハハハ!!逃げる逃ゲル!!逃げナキャ逃ナキャだ!!モットニゲテ!」

黒影弾丸、そして近接武器として黒影ソードがミュラエの右手には握り締められた。更に左手には黒影ピストルが装備され、全面的な攻撃形態が形作られた。

「おい⋯!来るな!!こっちに来るな!!」

「ンキキカキキキキカカカカククカキカカカキキキ⋯」

口角を上げながら、近づく。それから逃げるティリウス。そのティリウスの駆動を削ぎ落そうと、ミュラエの斬撃が迫る。黒影ソードが一気に間合いを詰める攻撃スキルを発動させ、ティリウスに黒影ソードの斬撃が炸裂。ティリウスの両足が切断。下半身は損失し、当然ながら逃走手段を失ってしまう。

ティリウスに残された相手に反抗を示す手段は、腕のみ。だがしかし、腕のみを振るうだけで、ミュラエの狂乱を収めることは不可能。

「私たち⋯⋯楽しィンだけどね⋯。私、子宮が無いの。だから⋯セックス出来るけど子供を産めない。それ、、あなた達のせいなんでしょ?」

「お前らが信じたのが悪いんだ⋯。お前らが決断したんだろうが!!天根集合知ノウア・ブルームが欲しいから!お前らが勝手に!決めた事だろうが!!俺らを巻き込むんじゃねぇこの悪魔め!」

「悪魔⋯悪魔はどっちだよ⋯アトリビュートは生きてるだけ⋯必死こいて生きて⋯お前達人間から逃げ続けてる⋯悪魔はどっちなんだよ!!」

「アアアアアアァアああああ!!!」

「なぁ!答えろ!コタエロ!!答えろ!答えろ!コタエロ!!」

悪魔の嘆き。悪魔の叫び。悪魔の怒り。悪魔の解放。

ミュラエが全身全霊でティリウスへの裁きを下している。

痛く苦しく、生きようと試みるティリウスの姿を見るとミュラエの心は満たされていった。

「麗しいわ⋯可愛い⋯⋯可愛いねぇ⋯なんで⋯だろう⋯血を出してくれたら、どんだけのブサイクな表情でも食いたくなっちゃうの⋯。ほら⋯⋯⋯みてよ⋯見てみて⋯??」

「はあ⋯!?」

ミュラエはティリウスとの肉体的接触を図る。ティリウスは倒れており、腕のみで反抗を示している中、ミュラエの攻撃を完全に防御出来ていない時間が継続されている。ミュラエはティリウスに対し無慈悲な攻撃を繰り返していたが、それは中断され、ミュラエは距離感を一気に縮める。ティリウスの胴体の上に跨るミュラエ。その時、唯一反抗の手段として活用させていた腕を見つめる。見つめる表情はとても美しい。瞳が煌めいていたので、ティリウスはティリウス自身の現在の顔面を瞳に映して確認する事が出来た。

嫌な顔だった。自分はこんな⋯落ちぶれた表情をしながら戦って⋯いや⋯もはやこれは“戦い”なんてものでは無い。ティリウスはもうとっくに、ミュラエへの攻撃を当てられていない。そんなレベルで“戦いを繰り広げていた”など、表現に値しないだろう。


今度はなんだ⋯何をするつもりなんだ⋯。このまま俺を殺すのか⋯?俺の胴体に跨って・俺の腹部を蹴り潰したりでもするのか?内臓を抉り出して、グロテスクな生涯の終え方をするのか⋯。俺はアトリビュートに負けた⋯。普通に考えれば、超越者に勝つ事なんて、有り得ない。俺はテクフル諸侯の人間だ。天根集合知ノウア・ブルームを取得していたとしても、セラヌーンアトリビュートには、白鯨も発現可能なのだろう。七唇律聖教に入教した事があるのだから、当然だ。


ティリウスが一生涯の終わりを決意した。自分の血液が付着したミュラエが自分の真上⋯仰向けになった真上に直立している。“跨っている”。

だが、ティリウスが思ってもいなかった衝撃の行動へと、ミュラエは走った。

ミュラエは、ティリウスの左手を持ち上げる。ティリウスはもう、戦意損失状態。勝利の二文字を諦めた形だ。腕には一切の気力も残っておらずフラフラ。


『左腕を持ち上げられた⋯はぁ⋯へし折られて終わりか⋯』


次、自分の耳に聞こえる音は、左腕の骨が不用意に曲げられ、折られていく音⋯そう思っていた。

感覚器官。次に、ティリウスの感覚器官を研ぎ澄まさせたのは、聴覚では無く、“触覚”だった。

「お前⋯いったい、、、なにをしている?」

「気持ちぃ⋯ンンん⋯あぁんっ」

ミュラエは、ティリウスの左腕を掴み、左手を握るにまで至った。そして、その握られた左手を自身の胸に近づけ接触を果たさせたのだ。

意味が分からなかった。ティリウスは現在起こっている事象を理解する事が出来ず、混乱が脳内に生じてしまう。

仰向けの状態。それに跨るミュラエ。ミュラエの身体は血だらけ。その血液というのはティリウスの出血によって付着したもの。乳房部分にも血が大量に付着しており、ティリウスは左手を伝い、べっとりとした自分の出血を感じる。いい想いは出来なかった。というか、こんな状況で胸を揉まされても、ティリウスは一切興奮しない。だが、ミュラエはその逆だった。


ティリウスは左手に力を入れる。ミュラエの胸部分からの脱却だ。しかしそれを許さないミュラエ。

「ねぇ⋯だぁめ⋯。もっとこの手ェほしいの⋯⋯」

「お前⋯何考えてたんだ⋯」

理解不能だった。ティリウスを求めるミュラエのその姿⋯。正常とは言えないものだ。情欲に溺れた女。快楽のみを求めるミュラエについていけないティリウス。直接的な攻撃よりも、タチの悪い肉体的接触。

「これ⋯あなたの血よ⋯あなたの血を感じる⋯あなたの血と⋯この手⋯」

「痛ぃ⋯⋯⋯」

ティリウスが逃れようと試みるが、そこを抑えようとミュラエの力が強まっていく。ティリウスの左手はミュラエの胸に当たっている。ティリウスは自分の力で、ミュラエの胸を触ろうとしていない。

「ねぇ⋯どうして⋯?なんで⋯?なんで私はダメなの⋯?血が欲しい⋯」

「はぁ?」

「見て?あなたの血⋯⋯これが戮世界の血⋯。種生命の違いだよ⋯。あなたは元々通常人類だったんでしょ?それがなに、この力⋯天根集合知ノウア・ブルームに目覚めて、通常人類からの脱却を図ったのね⋯⋯」

「お前⋯何をいってやがる」

「テクフル諸侯の力を使って何がしたいの?」

「はぁ⋯??」

ミュラエはティリウスの左手から快楽を得ようとしている。それと並行に、自身に付着したティリウスの出血液を絵の具のように使用し、ティリウスの胴部にこねくり回す。当然、服を着用しているので、ティリウスの肌に触れているわけでは無い。だがティリウスはミュラエの指を“服を通して得られる触覚”だと思えなかった。

跨っているミュラエは、ティリウスとの距離感を更に近づける。ミュラエは上体をティリウスの胴体に預ける。ティリウスは仰向けの状態。それに加えてティリウスの残された力は残り僅かなので、ミュラエの身体を受け止めるしかない。ミュラエとティリウス。濃密な肉体的接触が始まる。


「おい⋯やめろ⋯⋯⋯」

「あなたの本性を聞くまで、これは終わらない。私だってしたくない。“最後までやるやつ”はサンファイアに取っておく。知らない男の人とはしたくないから」

「⋯⋯⋯⋯」

「ティリウス。テクフル諸侯になって何か得られものはあったの?こうして私と“繋がる直前”みたいなご褒美以外に、良いことあった?」

「あ⋯⋯⋯あ⋯⋯⋯」

良い気分になれない。美少女だとは認識している。ティリウスはミュラエよりも年上。青年に相当するティリウスは、今までにも多くの恋愛経験をして来た。だがこんなのは、初めてだ。経験した事の無い、プレイ直前の絡み。しかもそれをこんな戦場で⋯。周りの人間が見たら、いったい何を思うんだ⋯。ティリウスは今にもここから抜け出したかった。だけど、力が入らない。強く固定されている訳じゃない⋯ただ単にティリウスの残された体力が極僅かなのだ。

「⋯ねぇ⋯?このまま、一緒になる事を求めてたりする?」

「ばかか⋯ガキのクセに⋯⋯」

「そんなガキに、あなたは…負けてる⋯」

「⋯⋯⋯」

「ねぇ教えてよ。テクフル諸侯ってなんなの?大陸政府ってなんなの?私達アトリビュートが、そんなに憎い?」

「憎いも何も…お前達は悪魔だ。虐殺王の血を継承している存在を…戮世界に残してしまっている…」

「それはあなた達がアルシオン王朝の治世に抗えなかったからでしょ?」

「抗ったさ…。俺たちの先祖は抗ったんだ…それに勝てなかった…大敗を喫した…」

「通常人類は、何回負ければいいんだろうね?」

「……」

「凄い睨んでるけど、やっぱり…殺したいって言う感情が強いんだね…私…間違ってたかな…。こうやれば男は女に溺れるって聞いたんだけど⋯聞いた…?まぁ…自分のイマジナリーとリアリティを含ませただけなんだけどね…」

「…お前に欲情するはずがねぇだろ…俺はお前に殺されかけたんだぞ…そんなやつに興奮する馬鹿なんてクソ童貞だけだ」

「あ、、そうなんだ…私が男を色目つかって誘い出しても…こうして…局部が触れるような事をしても…」

「やめろ…やめてくれ…」

「ん?今…さっきとは違う反応したよね?それって…ここを触ったから…だよね?」

「……やめてくれ……」

「ん?………でも…もっと突起物があるもんなんじゃ無いの?……全然どこにもそんなの無いんだけど…」

ミュラエはティリウスの股間部分を触る。最初はサワー…と触れる程度のものだった。そこを触るとティリウスの表情が変わったので、もっと攻めるようにした。そうすればまた、新たなるリアクションが窺える…と踏んだからだ。しかし、ティリウスの股間には男として“あるはず”の物が無かった。

「生殖器………」

ダイレクトな表現を避け、“生殖器”と表現したミュラエ。特にミュラエは何も考えていない。意図は無いようだ。『ちんこ』『チンコ』『ちんぽこ』『尿道管』『肉棒』

『ちんちん』…色々な言葉の選択は出てきたが、ミュラエが選んだのは『生殖器』だった。男女問わずに表現が適切な表現方法の『生殖器』。ティリウスの股間を触ると、なんだか『チンコ』に関連する言葉を選択してはならない⋯と思ったからだ。

「私と同じ?あれ??…⋯なんで?だって…」

ミュラエはティリウスの大胸筋を触る。

「無い…………私みたいに、無い…のに、私みたいに、“無い”」

ティリウスの胸を触り、ティリウスの股間を触る…。

ティリウスの顔を見ると、悲哀に満ちた顔面をしていた。

「……………俺は…去勢されたんだ…」

「…キョセイ………」

天根集合知ノウア・ブルームを受け取るためには…そうするしか無かった…」

「ヒュリルディスペンサー…あなたも受けていたの?」

「……ああ…そうしなければならなかった…ただのヒュリルディスペンサーじゃダメだったんだよ」

「うん?…どういうこと?旧式ヒュリルディスペンサー…」

「俺も…受けた事があんだよ……ミュラエ…、俺は…お前を知っている。カタベリー修道院だろ?あん時…俺もいたんだよ…」

「へぇー…そうなんだね」

「おい…お前…そんだけかよ…俺もカタベリー修道院の朔日にいたんだぞ?」

「……その時の事は…思い出したくないから…。今、あなたのその言葉に凄いイラついてる」

「…………なぁ、俺は運命だと思ってる」

「なんでそんなことを黙ってたの?」

「ミュラエだと確信が持てなかったから…」

「へぇー……そう…そのままで良かったのに」

「ミュラエ。お前だけでも良い。ここから今すぐ立ち去れ」

「何その変わりよう。気持ち悪いんだけど」

「好きでもねぇやつの身体にまたがってる変態女に言われたくねぇな」

「これは私なりの男を惑わすテクニック」

「…………お前…あれから変わったな。そんなやつじゃ無かったぞ」

「私…あなたとそんなに仲良かったの?」

「仲良かった…というか…ヒュリルディスペンサーで何回も会話しただろ?」

「………知らない…あなたを知らないよ。私…知らないって」

「おい……落ち着けって」

「私知らないよ!知らない知らない!あなたを知らない!!知らない人よ!どうしてそんなこと言うの!?」

「ミュラエ…お前…何があったんだ…?なぁ」

「やめて!触らないで!もう!こっちに来ないで!!」

理不尽にも程がある。ミュラエから肉体的接触を仕掛けて来たのに、今度は『触らないで!』と言ってしまう始末。

「分かった…分かったから…」

「嫌だ!…だめ!嫌だよ!!落ち着けないよ……どうして知ってるの?あなたは私のなんなの…?どうして私は記憶が無いの?断片的に無いの?それとも全部無いの?覚えてる記憶は偽り?本当の記憶はどこにあるの?全部私が覚えてる記憶…どこからどこまでが本当なの?虚構はどこ?現実はどこ?………私は………なんなの?だってさ…違うじゃん。私はウェルニと今日までずっと一緒に生きて来た。アトリビュートの存命を許さない人間達に反旗を翻すために。それをなに?私は私が知らない期間があったとでも…………………………………」



───────

「ティリウス、君…何しとんちゃん?」

───────

「……お前は…!?」

ミュラエとティリウス。ミュラエが頭を抱え、現状に拒絶反応を覚えている中、ティリウスの名を呼ぶ人間が降臨する。

「スカナヴィアのゾディアックに呼ばれてここに来させてもらったんだけど⋯凄いカオスなんちゃね。俺の出番いるっちゃか?」

「ラージウェル、お前の出番はここじゃない」

「でもぉ…呼ばれたっちゃから……ごめんね。でも本当は俺を欲してるっちゃよね?その感じ…この女の子にぶった斬られた感じっちゃぁ…ね?」

「……」

「いけない女の子だね…君…アトリビュートだよね?」

「だれ、、、、、お前も、、、私達の邪魔をする者?」

「邪魔してるのはそっちゃぁよ。乳蜜祭最終日。大事な大事なイベントを壊しやがっちゃさ?なんぁか、よく思えないちゃよね。教皇は教皇で、兵士と執行官を向こう側に連れて行っちゃうし…傍若無人もいい所っちゃぶー…」

ミュラエは天根集合知の黒影を発動。腹部と後背から、複数より展開した『幻影空間真空の抽象』。黒影は螺旋を帯びながら、急激にエネルギー加速を開始し、1秒にも満たない速さで攻撃への展開が完了。その複数の螺旋ベルトが一斉に“謎の女”へ降り注がれる。

しかし、女は黒影を全て排除。ニュートリノ・レイソのウプサラソルシエールを感知したミュラエ。

「お前…七唇律聖教か?」

「ご名答っちゃね。俺は七唇律聖教。訳あってスカナヴィアからの命令を受けて、帝都ガウフォンに舞い降りた。『ラージウェル・プリミゲニア』。七唇律聖教大陸政府直属議員です」

女なのに“俺”…。一人称が特異的だな…と思っただけだったミュラエ。

「ティリウス?こんな女の子に負けちゃって、この先の位置が危ぶまれると思うんだけど、そこんちゃころ大丈夫?」

「…………」

ティリウスはもう声を出せる状態では無かった。先程までラージウェルの降臨に反応していたが、もう限界だったようだ。

「喋らないっちゃね…。うーーんでも…死んではいないみたい…。だけど!俺が来たからにはもう安心っちゃね!そこにいるアトリビュートへの成敗を俺が下してあげる!」

ミュラエを指差すラージウェル。その顔はキメた感じだった。

「どう?決まった?決まったっぽくない?すっごい良い感じに決まったと思うんちゃけど…どやっちゃった?」

「お前…ウザイ…」

「え?なんでそんなこと言うの?」

「殺したい…」

「ころ、、、したい…?まもお、、アトリビュートってこんな人しかいないっちゃか?さっきからこの分断エリアを見ていると、ずっと『殺したい』の欲望が拡がってる…。良くないと思うよ?それ」

「私の性だ。否定するな」

「うーん…否定したい!否定したい!だってそれ!間違っていると思うから!」

「お前みたいな清純派ぶってて、“俺”って一人称にしてて“不思議ちゃん”ぶってる女が物凄く大嫌いなんだよ!!!」

ミュラエの天根集合知『幻影空間真空の抽象』が発動。黒影ソードと黒影拳銃、更にはその2つの攻撃ブラストの強化エンハンスを齎す、“黒影の祝福”が追従。2つの攻撃が開始された直後に多段的な追い討ちを発動するという仕組みだ。黒影の祝福は、肉眼での確認が可能。相手にもこれは視覚可能な存在ではあるが、止めることは出来ないだろう。

ミュラエの先に仕掛けられた天根集合知ノウア・ブルーム攻撃。これに反応する事は不可能かと思われた。しかし、それに対して即時的な防御フェーズへと以降するラージウェル。

「言葉じゃ解決出来ない…。この星に生きる全ての生命で、唯一与えられた器官なのに…。それを使わずに、手を使って物事を終わらせる…。それじゃあまるで、人間じゃないみたいちゃよ」


ラージウェルを纏う、白色の帯。3本が最初に同時展開され、2倍3倍にも膨れ上がり最終的には27本の帯がラージウェルを帯同。

「いくよ……『禍天まがそらの魔女・マズルエレジーカ零号』」

虧沙吏歓楼です。最近は、色々と他の事に追われている中で何とか執筆をやっています。自分らしくいられる場所が『Lil'in of raison d'être』の執筆作業なので、ストレスとかはありません。

嬉しいですね。絶対に…。絶対に…。

それはそうと、『Lil'in of raison d'être:Elliverly's Dead Ringers』について。本篇を最優先にしていますが、そろそろ更新していこうと思います。

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