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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾壱章 エリュテイア・ゲートウェイ/Chapter.11“AnotherDimension”
107/150

[#92-介錯の一手]

サンファイア、アスタリスは、フラウドレスのことを考えていない時間はありません。

[#92-介錯の一手]



高速移動中、凄まじい素早さで攻撃目標へと向かっていたニーズヘッグにキューンハイトとチルペガロールが最接近。ニーズヘッグと同等の速度を維持し、並列移動を遂げている。ニーズヘッグは高速移動中、2体の司教兵器に対しての防衛行動を開始。それに伴い高速移動の速さは瞬く間に、減速化。ニーズヘッグは教皇への直接攻撃よりも先に、司教兵器ウプサラソルシエールの殲滅を最優先事項と認識。

「獣の形⋯⋯人の形とも捉えられるな⋯こんなくっせぇナリしやがって⋯俺をサンドイッチしてんじゃねぇよ気色悪ぃな!!」

上にはキューンハイト。下にはチルペガロール。浮遊中なので、ニーズヘッグは地上との距離を取っている状態だ。なので地面との乖離が発生してしまっている。上下で司教兵器ウプサラソルシエールに挟まれる展開を強いられてしまったニーズヘッグ。

「クソ⋯!!」

母体・アスタリスは臍帯を通してコントロール。ニーズヘッグの高速移動を急停止させ、攻撃行動の一時中断を試みる。

「アスタリスだめだ!!」

「え、、、」

サンファイアがアスタリスに警告。その声が空間全体に響き渡った。アスタリスはサンファイアからの警告を受けて、高速移動中断コントロールの“中止”を決意。だが一瞬でも高速移動中断を決めた以上、次なる行動制御がニーズヘッグに渡るのは順番的にも後ろになってしまう。

よって、サンファイアの警告をアスタリスは受け入れられない状態に陥ってしまった。

「もうだめだね。いろいろとみらいをよみきってるからさぁ、ソーゴは。ふたりがおもってるよりにばいさんばいよんばいに!つよいよ!」

挟み込んだキューンハイト、チルペガロールが獣人化。粒子状物質が螺旋を描いていたフェーズから形態変化を開始。粒子が粒子を呼び寄せ、互いに与える続けるエネルギーが、より量子を増幅させる装置に転換。やがて獣人の姿へと変貌。翼が歪な方向に生えていたり、口腔の奥から生えている牙が異様な曲がり方をしながら発達していたり⋯多関節によって決して常人では曲がらない方向にさえ曲げる事ができていたり⋯とにかく獣人化を遂げた司教兵器ウプサラソルシエールが叡智の枠を飛び越えた究明すべき存在である事は確かだろう。

2体の司教兵器が干渉を起こし合い、再び螺旋を形成していく。しかしそのフェーズは直ぐに終わり、また獣人の姿へと変えていく。それが繰り返される時間が等間隔的に継続されていくがその速さが尋常では無いものだった。


上下に司教兵器が位置につき、ニーズヘッグが対抗しようと反転運動を起こそうとした時、上と下に並列状態を完成させた2体がニーズヘッグを挟み潰す。ニーズヘッグは2体からの攻撃に対抗出来るほど思考を広くさせる事は不可能であった。様々な手段を用いてもこの状況から抜け出す事を最優先に考えていた。だが、それを果たす為にはアスタリスの技量が足りていない。アスタリスは全てを悟り、司教兵器からの攻撃を受け入れてしまう。

サンファイアはそれを見ている。頭部が揺れた。これが脳の直接的な表現だと思った。ただ恐ろしい事が起きている⋯という意味での震えでは無く、単純な形としての“揺れ”であった。

苦しかった⋯。とてもじゃないが、辛い現実だった。どうして⋯⋯アスタリスが、、、あんな目にあってしまったんだ⋯。

「ウワァアアアアアアアアア!!!!」

サンファイア狂乱。ニーズヘッグを挟み潰した2体に向けての“撃滅”行動を開始。その速さは別次元の空間を行き来する事で覚醒を飛躍的なまでに高め上げた。決して単なる“覚醒”では収めずに、自身の身体へと完全状態と化した中でトレース作業を実行する。これによって覚醒兆候のままで戦闘に出るのでは無く、0~100の覚醒を発揮。ぽっと出の覚醒を維持するのでは教皇には勝てない事を悟ったサンファイアの知的頭脳プレイだ。

別次元への行き来をしながら、2体への拡散波動弾を炸裂させる。挟み潰し中の2体から、ラタトクスへの迎撃行動として粒子で生まれた“弩”が発現された。

クロスボウ滑車式ウィンドラス。黒色と白色。鴉素エネルギーと蛾素エネルギーから産出されていく粒子がクロスボウを生成。1個⋯2個⋯3個⋯4個⋯5個⋯と司教兵器の数以上のクロスボウが生み出されていく。互いの粒子と粒子が化学反応を起こすものもあった。それは6個目のクロスボウ生成にて初披露された。

合計8つのクロスボウは、アスタリスを挟み潰し中の2体の前に浮遊。キューンハイトとチルペガロールが、クロスボウを操作し、サンファイアに向け、矢を発射するのかと思われた。そんな中、再びキューンハイト、チルペガロールの司教兵器2体から人型の個体物質が生成される。

サンファイアは生成の阻止を実行に移す。しかしその時、キューンハイトから別生命の個体反応を検知。現在サンファイアは覚醒能力を“一時的なまでにしない”ために、別次元世界への介在を行っている。これによって司教兵器2体からの攻撃・状態異常は受けない⋯と思われている。更にはこちら側の行動を把握が出来ない⋯と思っていたのに⋯どうやら、サンファイアの行動は読み取られているようだ。

サンファイアがキューンハイトとチルペガロールの別生命個体反応を検知し、別次元からの潜伏攻撃を行おうとした瞬間、別生命個体反応が急速にエネルギーゲインを上げる。

「高エネルギー反応⋯!?」

別次元からの攻撃を予測し、教皇は司教兵器2体への次なる指示を下していたのだ。

「あっち行ったりこっち行ったり⋯もお、つまんない!ぜんぶ見えてんだからそんなウヤムヤにしない方がいいよ?」

「なに⋯!?」

サンファイアは潜伏攻撃を中断。 別次元への滞在を継続させた。だがその時間は長いものでは無かった。別次元に迫るクロスボウの矢。その矢の色は黒色と白色だった。黒色と白色の矢は、“太極図”のようにお互いの色を纏ってもいた。これが6つめ以降のクロスボウ生成によるものだと直ぐに判明。別次元に侵入して来た司教兵器の武器クロスボウ。

「僕だけの次元じゃないって事か⋯」

「その通り!理解するのがはやいねぇー!さすがだねー!アスタリスとはわけがちがうよ!サンファイアはゆーしゅーゆうしゅう!」

別次元世界に響き渡る教皇ソディウス・ド・ゴメインドの声。クロスボウの矢が発射され、サンファイアのルケニア『ラタトクス』へと追尾攻撃を開始された。

「クソ!?ホーミング性能あんのか⋯!」

サンファイアはいつものテンションから解放されたようにアスタリスのような口調に成る。これは必然的なものだった。サンファイアは我慢していた訳ではない。今までのサンファイアが普通のサンファイアであり、サンファイアの個性だった。しかし今までのサンファイアの人間性は捨てなければならない状態に突入している。

サンファイア自信にはそれが分かっていた。だからもう⋯優しき心を持つ純真な男はいない。愛しであり、忠誠を誓っている主君の現状を思えば思うほど、自身から漲る体力が増加していく。体力の増加に伴って、戦闘行動にも変動が現れ始めていった。


「許さない⋯姉さんを⋯⋯アスタリスを⋯⋯⋯酷い目に遭わせて⋯⋯お前を絶対に許さない⋯⋯」

「ええー、でもそっちが先に殺したんでしょー?じゃあ喧嘩両成敗ってやつじゃない?これ!さいきんおぼえたんだぁー!つかいかたあってる??どう?」

「⋯⋯⋯⋯」

別次元にて行われる対話は、直ぐに幕を閉じた。一方的な物ではなく、しっかりとターンが発生した“対話”となったのは、サンファイアがこうなっても“自我を放置していない”という証でもある。

ホーミング性能のある矢が、逃げ惑うラタトクスに狙いを定める。別次元⋯。何も無い、虚空の世界で、ラタトクスはただ逃げる。逃げる。逃げ続ける。その背後を追い続ける8つの矢。逃げ惑う中で、サンファイアは別次元と戮世界現世と繋がっている部分を発見することが出来た。どうやらこの部分からキューンハイト、チルペガロールを別次元に降臨させたようだ。

「どこかなぁー?あれれれれ、どこいるのかなぁ⋯みつけられないなぁああ、、あれれれれ。どこーぉ?ねぇー!!ンフフフスすすす⋯どこどこぉ!?⋯⋯ここだ!」

こんな事を放ち並べているが、ずっと延々と矢による追尾攻撃は行われている状態だ。教皇ソディウス・ド・ゴメインドは、現状を楽しんでいる。自身の能力によって発現された司教兵器が放つ攻撃に、逃走し続けるサンファイアが、相当面白いようだ。

教皇は敢えて、楽しんでいる様子を別次元にスピーカーさせる事で、サンファイアを感情的にさせようと目論んでいた。

人間、感情に身を任せるのは危険だ。

だが教皇の声に一切の反応を示さないサンファイア。そう、サンファイアは全て判っていた。

教皇が自分の感情コントロールに侵食しようとしている事を。だからサンファイアは教皇の狙い通りにはなるまい⋯と自我を強く持った。だがそれでも教皇の“精神波長攻撃”は終わらない。更には物理的な攻撃も平行だ。

別次元と現世の繋がりを思わせるポイントを特定した事で、自分がすべき事は確定。2つの世界が繋がっている“架橋”を破壊しなければならない。この架橋を破壊する前に覚醒能力を我が物に出来ればいいのだが、別次元でも戦闘が繰り広げられるとは思ってもいなかったので、意識が多方向となり、覚醒修得に大きなタイムロスが掛かってしまっている。

「にげてるばっかりでいいのー?もっともっとさー、こうげきしてくればいいのにーーーー!」

逃走を継続するラタトクス。それを追尾し続ける司教兵器のクロスボウ矢。防戦一方のサンファイアが遂に動く。

「じゃあ、これならどうよ」

「うん?」

虚無。その言葉通り、何も無い空間に突如として複数の柱が聳え立つ。その柱から次第に“大樹”へと姿を変貌させる。すると別次元世界には光が照射され、聳え立つ大樹がみるみる成長を遂げていく。10m、20m、30m⋯とズンズンと伸び、最終的には46mにまで成長。

「おっきーー。おっきいね。そのおっきな木ぃ、どうすのん?」

「もう、鬼ごっこは終わりだ」


それが3本存在し、サンファイアの援護を開始した。大樹から発芽する数々の花弁。色彩豊かな7色の虹を思わせる花弁が大量に発芽を開始。これは3本全ての大樹に共通する事象だ。大樹が3本一斉に同様の行動を起こす。花弁が咲き開く段階にまで到達した途端、花弁が大樹から散り散りになっていき、その散っていった花托と花柱の部分から軌道線を描く硬質化物体が出現する。これはサンファイアの放つ特殊攻撃だ。別次元とルケニア『ラタトクス』は相互関係を構築し、互いの能力を誘発させ合った。その結果、ラタトクスの具現化させたい戦闘行動が別次元で限りなく反映されていく。

まさにこの3本の大樹と花弁はラタトクスの願いそのものだった。これはサンファイアの思考も一定量は含有しているが、ほとんどはラタトクスの思考領域から産出されたものだ。サンファイアもまさかここまで100%の形で創成されるとは思ってもいなかった。

硬質化軌道線はラタトクスを追尾していた8つの矢をインターセプト。追う立場だった矢が、今度はそれから回避する羽目になってしまう。だがその時間は長くと続くものでは無い。8つの矢が対して、硬質化軌道線の数は⋯⋯いや、これは“数える”作業に入る意味が無いように思えた。

“ざっと50”と言えば済むような軌道線の数だったからだ。8つの矢はラタトクスへの追尾攻撃の気配を窺っていたが、大樹からの軌道線をいち早く“憂慮すべき事態発生”と認識。その認識した直後には8つの矢は朽ち果てていた。

「なにそれー!?ひどいよ!ひどいひどいヒドイヒドイ!!」

教皇の声掛けに呼応して、再び8つの矢が別次元に解き放たれた。サンファイアはその“解き放たれた”瞬間を目撃。先程、別次元と現世の“架橋”を発見したが、やはりあの場所から教皇ソディウス・ド・ゴメインドは攻撃を実行しているとみた。

「分からないとでも思ったあ?ザンネンだったねーソーゴにみえないものなんて無いんだよー?」


サンファイア困惑。あの“架橋”を破壊せねば⋯未だに覚醒能力を我のものと出来ていない⋯。さっさと身体に落とし込まないと、このままでは永遠と発射されるクロスボウの餌食になってしまう。大樹3本だってどこまで耐久出来るか判らない。

「ねぇねぇ!その大樹ってさぁ、なんなの?どうやって出したのよ⋯!もしかして“ユグドラシルの為政者”と関係ある系のヒト??」

「⋯?なんだそれは⋯」

「あ、知らないだ⋯⋯⋯まぁ、知らないんだったらそれでいいとおもうけど⋯⋯」

別次元にて教皇の顔は確認出来ない。だが今までの声色と明らかに違うものであったのは確かだった。“ユグドラシルの為政者”⋯。聞いたことも無い言葉に困惑を示すサンファイアだが、これを好機と捉えた。一瞬の緩みを見せれば勝機を見いだせる“何か”があるかもしれない。

花托と花柱からの硬質化軌道線は、“架橋”へと侵食を始めた。これはサンファイアからの指示では無い。

「え!?こっちに来んの!?」

別次元から現世に向けて、硬質化軌道線は一斉に放たれた。


教皇は現世にいる。別次元と現世を繋ぐ“架橋”より、サンファイア兼ルケニア『ラタトクス』を追い詰めていたのだが、現世に出現した硬質化軌道線によって、油断が出来ない状態となってしまう。

「ウザイんだけど!?ヤダヤダヤダヤダ!!ソーゴこんなのにのまれたくないよ!」

教皇は逃げる。必死で逃げているが、そのリアクションからは似つかない程に、余裕の回避精度を誇っていた。教皇からは赤紫色の羽根が広がり、分断世界を縦横無尽に駆け回った。そして⋯分断世界の向こう側、つまりは大陸政府らとセラヌーン姉妹が現在戦闘を行っている場所にも侵入を遂げた。大陸政府らは教皇の侵入を受け、心配の表情を浮かべる。

「みんな!だいじょーぶ!?」

「はい、問題ありません。教皇は?」

異端審問執行官の戦術長が教皇の問いかけに応える。セラヌーン姉妹と大陸政府中核メンバーらは戦闘中。大陸政府は教皇の分断世界侵入に気づいてはいたが、セラヌーン姉妹への隙を生ませないために、教皇の問い掛けに対応する事が難しかった。教皇は現状を鑑みて、次のように指令を下す。

「剣戟軍と異端審問執行官、ちょっとコッチに来て!」

「御意に」

剣戟軍、異端審問執行官への指令を下す。分断世界を行き来する事が出来るのは、発現させた教皇ソディウス・ド・ゴメインドのみ。剣戟軍、異端審問執行官は、教皇の能力によって透明化を遂げる。そして、なんと分断世界を往還出来る能力を付与されたのだ。

「凄い⋯⋯」

剣戟軍、異端審問執行官ら総勢40名は教皇から付与された“往還の力”に感服。

「みんなさぁ!ちょっとこれ使ってぇ、ぶっ殺してほしい敵がいるのー!」

「サンファイアですか?」

「そお!そのサンファイア!あいつすっげぇ上から目線でヤイノヤイノ言いやがるし⋯めちゃくちゃムカつくテンションなんだよね。なんか薄気味悪いせいかくのくせに、カッコつける節もあって、ソーゴがいっちゃんにきらいな男だ!だから早く殺してー!」

「御意に⋯。しかし⋯我々は通常人間。超越者の末裔と判別されている敵に太刀打ち出来るかは⋯分かりません⋯」

剣戟軍部隊長が正直に話す。教皇はだいたい分かってはいたが、こうも正直に話されると、段々剣戟軍、異端審問執行官らにもムカつくようになってきた。

「あー⋯⋯そうなの、心配しなくていいって!ソーゴがまだまだ君たちに付与してあげるから!ささっ!じゃあ入って入って、あ、というかもうメンドッチャイからソーゴが勝手につれていく!!」


教皇ソディウス・ド・ゴメインドが総勢40名の剣戟軍&異端審問執行官を強制送還。送還先は当然、別次元世界。


剣戟軍、異端審問執行官との面会時、サンファイアは別次元世界にて独りでいた事になるわけだが、この間に覚醒能力を完全に我が物とする事が出来た。そして別次元世界にて発現可能だった大樹3本の正体も感じ取った。

「⋯⋯⋯なに⋯⋯この木⋯さっきのか。いや違う⋯小さい⋯僕が発現させたものはこれよりも遥かに大きいものだ」

自分が発現させた大樹と、覚醒能力から読み取れる大樹への“追憶”。この2種類の大樹には関連性があるように思えて来た。

更には覚醒能力からの読解で、大樹に生命反応がある事も検知。サンファイアの考えに合点が行く内容だった。自分は別次元世界に発現出来た大樹3本へほとんど指示を出していない。にも関わらず大樹3本はサンファイアを防衛するような行動を起こして見せた。それは今も健在だ。

「ユグドラシルの為政者⋯⋯」

教皇が言っていた文言に心当たりは無い。だが何かしらの関連があると見て、サンファイアはこれについての考察を行っていた。しかしその時間を蝕むかの如く、次なる敵が別次元世界に降り立ってきた。それは⋯⋯赤紫色の羽根を広げた40名の軍団だった。

「パーリーたーーーイム!!!サンファイア!ソーゴはちょっと高みの見物?みたいなぁ?事をしておくよ!だけど、サンファイアにそのじかんはナッシング!!この顔に見覚えがあるはずだよー?」

別次元にやって来た奴らの顔を指しているのか⋯。教皇の言葉通りサンファイアには見覚えのある顔だった。

「オマエら⋯⋯⋯」

「『オマエら』って言ってしまうぐらいの関係性なの?へぇ〜、そんな友情を築いていたんだね!原世界ではいったいどんなあらそいをくりひろげたことか⋯“本体”と交信する日が来たら、まっさきにそれを聞くとしよお!」

別次元世界に降臨したのは、40人の剣戟軍と異端審問執行官。姉さん、ヘリオローザの周辺⋯舞台とそのステージ周りにいた奴ら。更に⋯その40人の中には、“ニーベルンゲン形而枢機卿船団”の奴らもいた。顔の作りが似ているだけ⋯サンファイアにはそう見えたが本当の所は判らない。ニーベルンゲン形而枢機卿船団と教皇の関係性がどこまでのものなのかを理解していないサンファイア。

サンファイアからしたら当該事象は憂慮すべき事態と捉えるのが妥当だろう。仮に、原世界で交戦したニーベルンゲン形而枢機卿船団と本物なら、彼等は脅威的な存在となり、先程より複雑な戦闘系統を強いられる事になる。そして、原世界から戮世界へこんなにも簡単にふらっと来訪出来る⋯なんてそんな能力が、教皇か、枢機卿船団にあるなら⋯もっと他の能力を疑うのが普通だ。

原世界と戮世界。2つの世界を往還する事がこんなにも簡単に成し遂げられるなら⋯の話だが。そんな考察を齎す事象の登場にサンファイアはこれまで以上に警戒心を強めた。

「これ、懐かしい?なつかしいかなぁ?ソーゴがね、原世界につれていかせたんだよー!、、サンファイアは、原世界に戻りたい!とか言ってるけど、ほんとうにそうおもってるの?だって、、しってるよ?いま、すごいんしょ?原世界って。戦争でもうしっちゃかめっちゃかって話⋯その影響をコッチはうけてるんだよねー。あ、その表情からサッスル!!さっした!あのアトリビュートから話をきいたんだね」

「それでお前らは、アトリビュートを中心に大陸神グランドベリートへ生贄として捧げているんだろ」

「そう!ベラベラベラベラとしゃべるねぇー。アトリビュートは。そんなカンタンに他人を信じるはずが無いんだけどねぇーー。まぁしんじるはしんじるか⋯きみたちは“兄弟姉妹”みたいなもんだからね」

「⋯⋯⋯セカンドステージチルドレンか⋯」

「ンフフヒヒヒ⋯⋯さぁ!みんな!サンファイアへ、走れーーー!!」

教皇が命令を下す。その声が別次元世界全体に響き渡った。当然、この声はサンファイアにも聞こえている。決してそれは聞かせない方が良い、指示にも思えるが、教皇はそこまで深く戦況について考えていないようだ。

最早、勝利は見えている⋯のか。余裕の表情を浮かべ、現世から別次元世界の戦況を監視している教皇。そんな教皇の眼前ではキューンハイト&チルペガロールによって挟み潰され、戦意損失中のアスタリスがいた。



「ねぇねぇねぇ、君の愛しの人って⋯フラウドレス?それとも⋯サンファイア?同性愛者ってすごく麗しい恋愛感情だとおもおよ!ソーゴはそんな2人の恋愛をとても、とても、とってもおうえんしてる!けど⋯アスタリスは⋯⋯⋯簡単にそんなれんあいをできないかもね」

「あああああああああ!!!」

アスタリスは身動きが取れない。アスタリスに五感は宿っている。感覚器官に関する損傷箇所は無い。それは教皇は最も慎重になっていた部分だからだ。アスタリスは視覚出来ない“ライアーメール”状の拘束縄によって自由を奪われていた。そんな中で施される拷問。腹部に突き刺される司教兵器の尻尾。黒色なのでそれはニュートリノ・ヤタガラス『キューンハイト』と判明した。

アスタリスを激痛が襲い、絶叫をあげる。

「シーーーーー!っ!!しずかにしてよ⋯!そんなに声あげちゃったら、サンファイアがコッチきちゃうでしょ?」

「クソガキ⋯おまえ、、、ちょうし乗ってんじゃねぇぞ⋯⋯」

「アハハは⋯なんだかソーゴみたいな喋り方になってるよ!上手くしゃべれないのかな⋯ソーゴはワザと子供じみた喋りを所々にしてるんだけど⋯アスタリスはぁ⋯⋯ねらってないね!もうそれが精一杯なのかな⋯??」

「ゆるさねぇからな⋯⋯サンファイアに手を出してみろ⋯⋯死神でもなっておまえを殺しに行く⋯覚えときゃがれ」

「なんだかそれって既に敗北宣言してなあい??死ぬの?え、死んじゃうの?ちょっとぉ!嫌だって!ソーゴ、目の前で人が死ぬのなんてみたくないよ!ギリギリのところまで生かしておいて、そっから“渚”を迷走するのがおもしろいんだよ!なのに⋯そんな簡単に死なれちゃぁ⋯困るよーー!うぇーーんウェンウェンウェンうぇーーーんウェンウェンウェンウェンウェンウェン」

見るにも耐えない⋯子供が見せる“嘘泣きの演技”。重複言葉“嘘泣きの演技”。だが今の教皇ソディウス・ド・ゴメインドには一番に最適解な表現だった。あまりにもな、嘘泣きだったので、アスタリスは今すぐにでも鼓膜を破壊したかった。そんな事をする余裕が削がれている以上、行動に移せない事を悔しがる。この間にも行われる嘘泣き。


終わった。

「サンファイアとの通信はできないんだぁ?」

「⋯⋯⋯⋯」

教皇はアスタリスとの距離を縮める。顔面と顔面が擦り合わさるぐらいの力だ。少しでもアスタリスに自由動作が可能なら、ここで頭突きを食らわせるつもりだった。しかしアスタリスは沈黙。戦意損失にまで陥った事で、自己再生に時間が掛かっている。

「サンファイアとの交信はもうむりなの?やってみたら?できるんでしょー?まだ、やらないだけで」

「うるせぇ⋯⋯⋯」

「あ、、、ごめんなさい⋯⋯2人が仲良くお話して、ソーゴへの対策を練ってるすがたが、すごくカッコよくて⋯ほんとう⋯ごめんなさい!!でも、、、2人の会話まだまだ聞きたいから、もっとおはなししていいよ!ささ!どぞどぞ!」

「サンファイアは⋯いま、、どうなってる⋯⋯」

「立場わかってる?ソーゴって憎きテキ、じゃないの?そんな敵に、そぉんなこと聞くの??」

「⋯⋯⋯どうなんだよ⋯⋯⋯」

「ああ、ああ⋯まぁ⋯生きてるよ?いま、ソーゴの部下たちが一斉にサンファイアに向かって攻撃をはじめた。サンファイアの実力だと余裕なのかもしれないけど⋯コッチはコッチでもっといろんな手を打ってるからね。しぶといとおもうよー」

「⋯⋯⋯じゃあ俺はおまえと俺を挟み潰しやがったウプサラソルシエールとやらを相手にするってことだな」

「ソーゴ的にはそのつもりは無かったな⋯だって、アスタリスはもう戦闘不能でしょおーよ。その感じじゃあ⋯もうね⋯⋯」

「俺を殺せないのか?“殺したくないのか?”」

「お、なかなかいい線!いい読みだね!その読み、けっこお当たってるよ!直撃!めええちゅーー」

アスタリス行動再開。

「あーあ、やっぱりだ。ソーゴとキューンハイト、チルペガロールを騙してたんだね!?」

教皇と司教兵器の拘束をアスタリスが解く。アスタリスは教皇との会話の最中、ルケニア粒子を微量ながら大地に流出させていた。その粒子がアスタリスから抜け落ちた事によって、戦意損失状態に陥っていたのだ。アスタリスから流出したルケニアは、大地にて“その時”を待ち、遂に定刻へ。アスタリスの号令がルケニアに放たれると『ニーズヘッグ』が顕現され、アスタリスの拘束縄を一気に引き裂いた。司教兵器と教皇は、突然の出来事ながら瞬時に発生したイレギュラーな事象にも即座対応。大地への鳴動によって分断世界はかつてないカオス空間を形成していく。分断世界の空間全域にまで大地鳴動の影響は齎される。カナンしろ周辺の広場は戦果へと発展。もし分断壁が無ければ、確実に帝都ガウフォンは崩壊。民間人が大量死する最悪の光景を目にしていたことだろう。

「ちょっと!!あのさぁ、、、やめてくんない?もしソーゴが壁を作っていなかったらどうやって責任取るつもりだったわけ!?」

「⋯⋯責任⋯?はぁ?⋯⋯俺は⋯⋯フラウドレスに手を出した奴を許さない⋯彼女を傷つけたやつを許さねぇって決めてんだよ。たとえ世界が壊れようとも⋯⋯フラウドレスに傷を負わせたやつを殺せればそれでいい⋯」

「ラブリーな友情を強く感じるとても酸味の効いたシーンなんだけど⋯むかんけいのみんかんじんを巻き込むことは⋯うなずけないなぁ⋯ソーゴにはガウフォンをまもる責務があるんだ」

「じゃあ⋯俺を殺すんだな。俺はもう⋯止められねぇぜ」

「ああ⋯なんて君は面白い人なんだ⋯⋯。これをボイスサンプルにして君の舞台の幅を広げてみたらどう??ねぇ!ドリームウォーカーあ!」

「⋯はぁ?」

「やりすぎかもしれなーー!い!このままだとガウフォンがこわれちゃうよーー!」

天に向かって、そう叫んだ教皇。当然ながらこの分断世界にいるのはアスタリスと教皇のみ。アスタリスは教皇の行動に不信感を抱いた。ただのサイコだとは思えなかったのだ。こうして子供が“教皇”という大層な肩書きを持っているのも意味があるはず⋯。

司教兵器という異形の化け物を操る姿も、とてもじゃないが普通では無い。セラヌーン姉妹、更にはアスタリスがサンファイアと再会するまでに交戦したトシレイドとアッパーディスの存在を思い出す。仮に⋯教皇も白鯨を発現出来たら⋯⋯⋯その白鯨が、“メルヴィルモービシュ”に該当する存在だったら⋯。

教皇という肩書きなら⋯可能性は捨てきれない。きっと、教皇を殺せれば、道が開ける。そう思ったアスタリスだが、容赦の無い司教兵器からの攻撃がアスタリスに進軍を開始。

「あら、避けられちゃった⋯⋯⋯もっとちゃんとうごいてよ!」

キューンハイト&チルペガロール。司教兵器から放たれたのは、魔法陣から詠唱された魔術砲撃。サンファイアに放たれたクロスボウ同様、こちらの魔術砲撃も黒色と白色の2種類が炸裂。攻撃手段が異なるだけで、魔術砲撃も追尾攻撃を基本軸として、ホーミング性能を有した遠距離攻撃。アスタリスは司教兵器との距離を取り、ルケニア『ニーズヘッグ』への実体化顕現を開始。これは現在のサンファイアと同じ形式。つまりは、臍帯からルケニアへの戦闘行動の指示をするのでは無く、乗り移って行う。

少々のタイムロスも許さない⋯2人の覚悟・決心が現れた戦闘フォームと言えよう。しかしルケニア『ニーズヘッグ』になった直後、魔術砲撃と同時に、教皇ソディウス・ド・ゴメインドが眼前にまで迫る。

『距離をとった』⋯と言っても、決してmレベルの単位では無い。儀式開催の舞台⋯フラウドレスが倒れ、それをヘリオローザが看病していた場所が主な戦闘展開区域であったが、そこから分断され、教皇×アスタリス×サンファイアは、カナン城の外縁へと移動した。カナン城を囲むように分断世界は構成され、繁華街、居住区画ギリギリの直前まで分断世界を敷る“壁”が造られている。

そんな広大な世界を駆け回り、1kmもの距離を取ってはいたのに、瞬時に教皇はアスタリスの逃走位置を特定。

「にげないでよー。鬼ごっこ⋯⋯って、、原世界で流行ってる?」

常識を超えた能力。アスタリス自身も己の力を称賛してはいるが⋯自身の中に“怪物”を2体も有しているのは実に興味深い。しかも2体からは数多くのウェポンを発動させることが出来るのだろう⋯。じゃなきゃ、フラウドレスをあんな目に遭わせれるはずが無い。

教皇の能力をサンファイア、アスタリスがそれぞれの境界、その身で体験している。2人それぞれは、心の奥底で同じ事を思っていた。

『フラウドレスが負けた相手を打ち負かす事が出来るのか⋯』と。

フラウドレスの敗北。フラウドレスがどのような攻撃を浴びせられ、瀕死状態に陥ったのか⋯未だにサンファイア、アスタリスへはフラウドレスを撃沈させた攻撃を食らっていない。だから2人は恐怖を覚えていた。

マインドスペースはもう使えない。教皇に丸聞こえな事が分かったからだ。そういう観点から言うなら、“丸聞こえ”なことを教えてくれるのは“警戒心の無さ”なのか、“戦いを楽しんでいるのか”⋯。どのみち、サンファイアとアスタリスを舐め切っているのは確かだ。


「もしかして⋯アスタリス、サンファイアが心配になって⋯別次元に行こうとしてる?」

「だったら?」

「うーん⋯どうだろうね⋯男として、なさけないなぁとはおもうかなぁ。やっぱりそれってカッコイイ事なのかもしれないけどさぁ、ソーゴからは逃げたことになるじゃない?ソーゴ的にはいんしょうは悪くなるかなぁって思おうよ」

「そうか、そうなのか⋯じゃあ良かった良かった良かった」

「え?なんで??」

「別にお前からの好感度なんて求めてねぇからな!」

放射された魔術砲撃がアスタリスの直前に迫る。迫った途端、アスタリス兼ルケニア『ニーズヘッグ』が魔術砲撃に極氷の刃から発動可能な、フリーズショットを放つ。極氷の刃は、瞬時にニーズヘッグが形成。発達した湾曲の3枚刃が魔術砲撃に向けて、弧を描くように線を発生させる。湾曲線が描かれるその線上⋯残影部分から超多数のフリーズショットを発射。アスタリスの意志決定の刹那、ルケニア『ニーズヘッグ』が憤怒を攻撃行動に転換させたのだ。眼前にまで迫った魔術砲撃に命中したフリーズショット全弾。魔術砲撃はニーズヘッグの眼前で停止、更には停止では留まらず、そのまま空中に浮遊。フリーズショットはただ凍らせるのでは無く、空間内のオブジェクトに転化させた。

フリーズショット“イルリサット”の影響を受け、全ての魔術砲撃が停止。これに教皇は焦りとも取れる表情を浮かべた。

「⋯⋯⋯」

言葉にはせず、顔色だけで焦りの感情は判断出来た。予想外の出来事だったのだろう。しかしそれを言葉で表すことは無かった。

「へぇー、ちょっとバカにし過ぎてたのかもしれない。アスタリス、きみ、けっこうやるんだね」

「⋯⋯⋯」

油断は出来ない。フラウドレスが敗北したんだ。その事実がある限り、絶対に⋯一瞬でも好きを作ってはならない。

「はぁ、ちょっと疲れたから自律運動展開」


「了解」

「了解」


「⋯?」

初めてだった。司教兵器2体、黒色のキューンハイト、白色のチルペガロールから声を確認した。喋るのか⋯と思ったが、“獣人”の姿をしているにあたり、そこまで珍しいことでも無いように思える。


⋯⋯⋯いや、もう既にアスタリスの思考が麻痺しているのだ。明らかに人とは掛け離れた存在である。そんな未知なる生命体が発声器官を有している⋯など、通常では理解が追いつくにも時間のかかる事だ。

「ソーゴつかれたから、あとはまかせるかも。ちょっとお休みしてるねん⋯⋯⋯」

「おい!待ちやがれ!!!逃げんなクソガキ!!」

「その⋯やばんなことばづかい⋯きをつけたほおがいーよ⋯⋯⋯フラウドレスだってコノマナイでしょ⋯⋯」

アクビをしながら、教皇はなんと分断壁にめり込んだ。アスタリスは急いでその分断壁に向かう。だが、それは叶わなかった。

道中、チルペガロールの手に捕まったからだ。

「置き土産⋯⋯」

「おきみやげ⋯それはなんだ⋯」

「分からない。分からないが恐らく彼は“八咫烏”のことを言っているように思える」

「“嫘姐”、嫘姐の事を言っているに違いない」


アスタリスが発した『置き土産』というフレーズに引っ掛かるキューンハイトとチルペガロール。アスタリスの人体を指で抓ったまま、司教兵器2体は口喧嘩の前段階のような会話を繰り広げている。先程とは全く違う展開だった。ペットが飼い主に似る⋯とは、聞いた事があるような言葉があったけど⋯それに近しい現象が今ここで起きている。


アスタリスがこんな事を考えに至らしめているが、彼は今、白色の司教兵器ウプサラソルシエール、チルペガロールの餌食になっている。しかし司教兵器2体はアスタリスの事なんてお構い無しで、会話を続行していく。


「教皇が言ったのか?」

「ええ、そうよ。八咫烏と嫘姐に任せろ⋯とね」

「嫘姐と一緒に発現されるのは久々だ」

「そうね⋯⋯嫘姐的には⋯もっと広いところでやり合いたかったんだけどねー」

「おい」

「でもまぁ実際はどうなんだ?」

「実際って、なに?」

「おい⋯」

「八咫烏はこのぐらいがちょうどいい」

「嫘姐はね⋯広いところで整いたくないのよ」

「整う?⋯⋯それは虚想空間だけだろ?」

「えぇえ?そんなことないよん?嫘姐は、戮世界を極限まで味わいたの」


「おい」


「だからって⋯宿主の意に反することは許されるものでは無い」

「八咫烏ってほんと、こういう生真面目なやつばっかり。嫘姐、八咫烏達のことを悪く思ってるって噂、聞いたことあるでしょ?」

「いいや、嫘姐と共演することなんて滅多に無い。それに八咫烏同士で集う会なども無い」

「それ、実はあったりしたらどうする?」

「⋯⋯⋯」

「おい⋯⋯⋯」

「キューンハイトが知らないだけで⋯もし、キューンハイトの知らないところで八咫烏同士の集まりがあったらぁん」

「それは⋯⋯⋯色々と⋯楽しくやってるんじゃないか?」

──────

「おい!!!」

──────


「あ、ごめんね?忘れてた忘れてた⋯」

「はぁ?」

意味が判らない。本当に意味が判らない状況と化した。教皇ソディウス・ド・ゴメインドが分断壁の向こうへ消失した途端、司教兵器2体は発声器官を目覚めさせ、解放されたかのように発語をフル活用している。

「嫘姐、その者、ずっと摘んでおく気か?」

「だって⋯宿主がそう言ったからさぁ⋯てか!嫘姐じゃなくて、『チルペガロール』!名前がちゃんとあるんだから、嫘姐って呼ぶのはやめて」

「司教兵器同士が名前で呼び合うことは禁止されているじゃないか」

「うっさ。黙っとれ!バカ。ねえねえ、アスタリス、さっきはごめんね?大砲みたいにバンバン撃っちゃって」

「はぁ?お前ら⋯何言ってんだ⋯⋯」

チルペガロールがアスタリスの人体を摘む行為を終了させる。アスタリスはその直後、ニーズヘッグに顕現。当然、臍帯無しの融合版だ。アスタリスは真っ先に顕現させたニーズヘッグを司教兵器ウプサラソルシエールに向けて突撃を決行。

「はー⋯キューンハイト、おねがーい」

「了解」

轟速。視覚捕捉不可能のハイスピード。ニーズヘッグは己の翼に現エネルギー粒子の全てを飛行能力に注ぎ込む。一極集中型となったニーズヘッグ。五角形能力ステータスで表すと、“飛行”観点のみに突出して効果が表れている形となる。だがこれでは突撃時の攻撃が不十分⋯。なので突撃直前に、戦闘ステータスのアタッチメントを即チェンジ。セブンス特有の量子エネルギー粒子を、通常時の能力ステータスへ戻す。アスタリスにはこれが容易だった。もしかすると、“他のセブンス”にも可能なのかもしれない。サンファイアだって⋯フラウドレスにだって⋯。

能力ステータスの即時書き換えが可能なスキルを引っ提げ、特攻を開始した。

しかし、ニュートリノ・ヤタガラス『キューンハイト』がアスタリスの轟速接近に介入。轟速接近中のニーズヘッグに黒色の螺旋が襲い掛かる。アスタリスは接近中に螺旋が自身を包み込もうとするのを感知し、螺旋の軌道を逸らそうとする。軌道を逸らそうとしても効果が得られなかった為、ならば⋯と自身の軌道を逸らすことに注力した。キューンハイト、チルペガロールへの特攻は無効試合となってしまうが致し方なかった。だがその時、予想外の事態がニーズヘッグを襲う。

「なんだ⋯!?」

自身の特攻軌道が真っ直進。軌道を逸らすことが出来ない⋯なんなら、自分の制御下に置かれていない事が判明した。融合しているニーズヘッグを制御出来ない事なんて初めてだった。

「どうしたら⋯いいんだ⋯⋯⋯!」

アスタリスにはどうする事も出来ない。真っ直進をしたまま黒色螺旋がニーズヘッグを包み込む。マイナス負荷が掛けられ、ニーズヘッグの特攻は減速。それも等間隔に訪れる減速だ。

アクセルを踏んだり、急ブレーキを掛けたり、踏んだり⋯急ブレーキを掛けたり⋯踏んだり⋯掛けたり⋯。

ニーズヘッグが制御下に置かれていない中で、このような規則正しい最悪のリズムがアスタリスの身に降り掛かる。まちがいなく、これは司教兵器の仕業であった。

踏んだり掛けたり⋯を繰り返し、減速行動は終了に終わった。今までの司教兵器の攻撃とは訳が違うもの。攻撃的な動きから、教皇ソディウス・ド・ゴメインドが離れると、敵を玩具のように捉え、真新しい特殊な攻撃を実行してくる。

気味の悪い光景だった。それに振り回されるアスタリス。いや、アスタリスの事なんてお構い無しに動いているように思えてくる。

「どう?アスタリス」

と、思っていたら、チルペガロールが喋りかけてきた。等間隔で実行された強制減速。キューンハイトのされるがままに減速が行われた事に、憤慨するアスタリス。

「テメェら舐めてんのかこの野郎⋯」

「野蛮だな。宿主が言っていた通りだ」

「うん⋯でも、嫘姐達も悪いんじゃない?宿主があー言ってるだけでさ、アスタリスはそんな悪い人じゃないもんね?だって!フラウドレス⋯だっけ?」

────────

「お前らがその名前を口にすんじゃねえ!!!」

────────

轟く紛糾。司教兵器2体は流石に黙っ⋯⋯

「分かった!もうその名前は口にしないよ!約束する!」

「⋯⋯了解だ」

「はぁ⋯?なんなんだお前ら⋯マジで気持ち悪い⋯⋯」

「ああ、、そうだよね⋯いくらなんでも⋯キャラ変し過ぎだよね⋯多分だけど⋯嫘姐と八咫烏、さっきと違う登場人物扱いされてるかもしれないよねー」

「恐らくな。まずそもそも、宿主がいた時は一回ぐらいしか、発言を許可されていなかったしな」

「そ!自己紹介しておくね!嫘姐が、ニュートリノ・レイソの『チルペガロール』!このネーム、オキニなんだよね〜〜アスタリスは、遠慮なく好きな呼び方でいいから言ってね?」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「無視ぃぃ?!ま、いいや。ハイツギィ」

「八咫烏は⋯ニュートリノ・ヤタガラス『キューンハイト』。チルペガロールのように呼び名を強要するつもりはない。好きなように言ったらいい」

「⋯⋯⋯」

「うん?どしたの?アスタリス⋯?、、、あ!そゆことか!自分も自己紹介したらいいのかなあって思ってるってこと?」

「はぁ⋯?お前ら⋯⋯⋯何言ってんだ⋯⋯」

「あー、あぁ⋯そうだ、、よね⋯⋯⋯そうだよね⋯⋯」

「嫘姐、八咫烏達の接触方法が気に入らないようだ。あまりアスタリスの気を損ねる行為はやめにしよう」

「そだね。嫘姐、気をつけるよ!フぅン!」

先程まで激しい戦闘を繰り広げていたアスタリスとキューンハイト&チルペガロール。司教兵器2体からの応対が激変した。

「一応、説明しておいた方が⋯いいのかなぁ⋯⋯八咫烏ぅ

「そうだな、アスタリス。聞いてくれ」

「聞かない。ふざけんな⋯⋯お前ら⋯どの面下げて、そんな事言ってんだよ⋯俺とお前らが今、どんな関係性だかわかってんのか?」

「うん⋯分かってるけど⋯⋯でも、、、宿主が離れたから、いつも通りでいれるんだよ」

「色々と困惑する事が起きているかもしれないが、理解はしてくれ。八咫烏と⋯こちらにいる嫘姐。つまりは⋯黒色の鴉素と⋯」

「白色の蛾素」

「ウプサラソルシエールは、宿主から一時的に解放されると、自我を取り戻す事が出来るんだ」

「⋯⋯!!」

「ちょっと⋯話を聞いてくれよ⋯」

アスタリスは黒色の螺旋を振り払おうとする。しかしキューンハイトが黒色螺旋のパワーゲインを上昇させる。アスタリスは振り払おうと決意した直後、黒い雨を浴びせられ、行動可能範囲が極限にまで狭められてしまう。更には、生命維持にも支障をきたす事態にも発展。アスタリスは地面に倒れ、正気を失ってしまった。これに対し、ニュートリノ・レイソ『チルペガロール』が否定的な意見を発した。

「キューンハイト!やりすぎ!!死んじゃうでしょ!」

「すまない⋯決して八咫烏はそこまでするつもりは無かったんだ⋯本当にすまない⋯」

アスタリスは沈黙している。

「謝罪よりも先にアスタリスをなんとかしなさいよ」

「分かった。すまない⋯⋯」

キューンハイトがアスタリスを解放。制限のかかっていた動作範囲が元に戻ったことでアスタリスは、攻撃を再開させてしまう。もう、アスタリスは憤激のままに行動していた。司教兵器2体が何を言っても無駄なのかもしれない。

しかし、キューンハイトとチルペガロールはただただアスタリスからの攻撃を受けているだけでは無い。アスタリスが何度目かもう判らないルケニア顕現を果たし、ニーズヘッグとしての遠距離攻撃を放つ。主には即激氷弾“イルリサット”が放たれていたが、先に放出していた火焔放射“ウシュアイア”を炸裂。

氷と炎。2つの相反する自然エネルギーがニーズヘッグの口腔から放射され、凄まじい攻撃量を帯びたものが生成された。しかしながらニーズヘッグのこれほどの攻撃を持ってしても、司教兵器2体に効果は無い。

「⋯クソ⋯⋯!」

「アスタリス。聞いて。お願いだから⋯少しでも⋯嫘姐達を信じて」

「うるせぇ⋯テメェらマジでなんなんだよ⋯!!」

ニーズヘッグの相反攻撃を物怖じせず、一切の反動を無く、撃ち込められたものを軽々とゼロにせしめた司教兵器2体。キューンハイトは攻撃の反動で生まれたニーズヘッグの隙をついて、再び拘束。何度やっても同じ事だった。

────────

アスタリス兼ニーズヘッグは、司教兵器2体には勝てない。

────────


フラウドレスが敗北した⋯という時点で既に勝敗は決まっていたようにも思える。だが、アスタリスは諦め切れなかった。せめてもの弔い。アスタリスにとっての弔いは、外敵の排除。それしか手段は無かったのだ。

と言うよりも、それがアスタリスだった。

アスタリスだから⋯フラウドレスだったら絶対に分かってくれる。


そうだ。

アスタリスはもう、フラウドレスが“死んだ”と思ってしまっている。


チルペガロールがアスタリスの深層に侵入。危険域に突入している人間性の拡充に強制停止信号を発振。アスタリスには抵抗の意思が無く、そのまま発振信号を受信する形となった。これはアスタリスの意思じゃない。アスタリスの心が、決壊しかけている自我を助けているのだ。

「八咫烏、アスタリスはまだ生きてる。色んな意味で⋯生きてる!」

「分かった。丁寧にコミュニケーションを取る事としよう」


ニーズヘッグは留まる。もはや戦闘力は格段に減少。ニーズヘッグを顕現しているのも、不可能なのではないか⋯と思う司教兵器2体。だが実際、こうしてニーズヘッグを顕現出来ている。竜。竜の形をした謎の生命体。

「これ⋯原世界では、有名なのかな⋯」

「フラウドレスも同じように腹部から⋯臍だ。臍から生命体の兆候を発揮させていた。きっと同類なのだろう」

「“ルケニア”・そう言ってたよね。異形生命体ティーガーデンとは違うのかな⋯どう思う?八咫烏」

「八咫烏は⋯ティーガーデンだと思っている」

「⋯⋯はぁ⋯ハァハァ⋯」

アスタリスが目を覚ます。

「休んでいるとこ悪いが、君の仲間が大変な戦闘を行っている。サンファイア⋯と言ったかな?八咫烏、あと横にいる嫘姐」

「どもおー」

「ウプサラソルシエールでは別次元への攻撃を止めることが出来ない。第一段階に発動した攻撃プロトコルである、滑車式クロスボウでの攻撃は終了させてもらった」

「アスタリス、でもね今、教皇が“テルモピュライ”と異端審問執行官を呼んで、サンファイアの具現覚醒インストール領域へ、進軍を開始させたんだ⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「ごめんね⋯嫘姐達が、止めたいのは山々なんだけど⋯宿主がいないと、別の次元に干渉することは出来ないルールになってるの。七唇律への違反で魔女の消滅が確約されてしまうの⋯だから⋯アスタリスが自分の力で別次元に飛んで、サンファイアと共闘するしか方法は無い」

「⋯⋯⋯⋯教えてくれ⋯お前らは俺の仲間なのか?」

「⋯⋯⋯」

チルペガロールは反応に困る。チルペガロールの反応を見て、キューンハイトがアスタリスの問い掛けに応じた。

「中立だ。そうでもないし、そうとも言える」

「あのクソガキと一緒にいる時⋯お前らは俺らを殺そうとしてきた⋯そうだよなぁ?そんなヤツらの言葉を信じろってぇのか?しかも⋯こんな⋯⋯獣まがいの姿した、人知離れ奴らを⋯⋯」

「それは、君も同じじゃないか、アスタリス」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アスタリス、図星つかれちゃって、“惑ってる”顔がうきぼりになっちゃってるよー?」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「やめるんだ、嫘姐。すまないな、嫘姐はこの通り、ひょうきんな性格なんだ」

「そうみてぇだな。白いのを俺にぶち込んで、内臓を抉りだそうとしてたよな⋯あとひと手間加えてたら絶対死だった」

「ごめんね⋯あれは⋯教皇の指示で⋯あーするしか無かったんだ⋯」

「黒いテメェは、俺を散々こき下ろしやがって自由を奪い続けていたな」

「だから誤っているし、そうなってしまったわけも話しただろ?」

「お前らの言葉なんて誰が信じるんだよクソが」

司教兵器2体は困る。アスタリスの心を満たすのは、残酷で、殺戮⋯アルシオン王朝帝政時代の初期のアルシオン王朝一族がこのような蛮行しか求めていない者たちだったが、今まさにアスタリスがそれと酷似した心を持っていた。

相当危険な感情の深淵を覗いてしまったことに、キューンハイトとチルペガロールは急いでアスタリスのケアを図る。

「アスタリス⋯」

チルペガロールは嫘姐。ニュートリノ・レイソが搭載され、女性人格を宿した存在である。反対にニュートリノ・ヤタガラスが搭載されたキューンハイトは、男性人格を宿している。

キューンハイトよりもチルペガロールは優しく接した。かといって、キューンハイトもアスタリスへの手厚いサポートを施そうとしていた。しかしそれを受け入れないアスタリス。

「嫘姐達の事は許してくれなくていいんだけど⋯サンファイアはどうするの?このままだと本当に危ないと思うよ」

「証拠は?」

「⋯⋯キューンハイト、見せてあげて」

「⋯ああ」

キューンハイトが、黒色粒子を体内から吐き出す。それに警戒を示すアスタリス。その様子を見るチルペガロール。

「大丈夫。あなたを攻撃したりしないから。今はね」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

アスタリスはチルペガロールからの発言を受けて、安心なんて出来なかった。

『今は攻撃しないから』。

そんなの何の安心材料にもならない。


「これを見てくれ」

キューンハイトが黒色粒子で形成したのは中規模なモニター。そのモニターの中には、虚無の空間が映し出されていた。電子機器とは言えない⋯なんとも不可思議な形状と機構で形作られたモニター。そんなモニターに投影された虚無の空間を信じようとはしないアスタリス。

「⋯⋯⋯」

「アスタリス見て。サンファイアよ。これ、サンファイアでしょ?」

「⋯⋯⋯」

アスタリスがチルペガロールを睨みつける。『信じるとでも思っているのか⋯?』と言わんばかりに攻撃意志のある鋭い眼光だった。

実際、サンファイアがいる事は確かだ。だがどうしてサンファイアがこんな何も無い、ポリゴンとサイケデリックな世界観が融合した未知なる謎の空間にいるんだ⋯。

「アスタリスは⋯サンファイアがこの世界を形成した創始者だっていうのは⋯判る?」

「⋯なんだと?この次元を創ったのがサンファイアだと言いたいのか?」

「うん、そうだよ。嫘姐とキューンハイトがアスタリスを挟み潰した時から、サンファイアは別次元に逃亡を開始した。自身の中で目覚めた覚醒の兆候を確認したんだろうね。それを我が物にして戦闘力の進化を画策。そのために別次元を創成してそこに入っていった」

「八咫烏は思う。サンファイアに出来るのなら、アスタリスにも出来るんじゃ無いか⋯と」

「どう?できそう?」

「⋯⋯⋯お前らがこのモニターに映ってる場所に送還したんじゃねぇんだな?」

「うん。あと⋯現在、サンファイアを追い詰めている謎の飛行群体なんだけど⋯」

「テルモピュライと異端審問執行官が“アークエンジェル”と化した存在だ」

「⋯⋯お前らとの関係性は?」

「無いよ。誓える」

「⋯⋯」

チルペガロールの答えの後、アスタリスがキューンハイトに睨みを利かせる。『お前はどうなんだよ』という意思表示であった。

「もちろん八咫烏も知らない。八咫烏達の制御下を離れた教皇による独断行動だ。まぁいつも独断的な行動が目立つけど」

「アスタリスが嫘姐達を信用出来るアイテムは無いんだけど⋯ただこれだけは言える。“サンファイアが危ない”」

「⋯!」

この時、アスタリスの中で芽生えた感情が次第に肥大化を遂げる。

俺には分からない。なんでだか⋯チルペガロールから聞こえた声が、フラウドレスの生色を帯びていたんだ。そんなの有り得ない⋯何度もそう思ってる。だけど本当なんだ。俺の意識がバグってることぐらい分かってるけど⋯本当なんだ⋯。バグっている中で、フラウドレスの声を聞いた。これが現在の自分を次なる戦いへの始まりの合図。

自分としては、 チルペガロールの言葉を信じたくない。だけどフラウドレスの声としてその言葉を聞いてしまうと、拒否を示す自分がバカバカしくなってくる。

「アスタリス⋯」

「アスタリス⋯」

自分でも分からない。ましてや、サンファイアが創成させた“幻覚状態”を可視化したかのような別次元世界。司教兵器2体のコイツらはそう言っているが、サンファイアにアレが創れるのか⋯?

「アスタリス⋯行くの?」

チルペガロールの声が聞こえる。俺は無視をしているな。⋯フン、なんだこいつ⋯普通に聞いてみたら良い女の超えしてんじゃねぇか。普通の人間だったら俺が食ってヤってたのに。そんな可愛い声して心配してくれんなよな。お前がサンファイアが危険⋯とか言ったんだろ?

「アスタリス、行き方判るのか?」

あー、お前か?キューンハイト。八咫烏っつってんだから、“カラス”と関係があるんだろうな。チルペガロールは“レイソ”⋯だっけ?レイソってなんだよ⋯⋯白い色してたし⋯⋯あー、こんな事に頭使ってる暇ねぇんだ。

「その状態だと⋯」

「だが、どうするんだ嫘姐。八咫烏と嫘姐がこれ以上、宿主以外の人間と接触しては危険だ。朔式神族が黙ってないぞ」

「うん⋯そうだね。じゃあ⋯」

「おい⋯嫘姐、何をする気だ」

「アスタリスへ、少しでも⋯嫘姐達の想い“信頼”を方舟として提供する」

「接触段階が急上昇してしまうぞ。それでもいいのか?」

「嫘姐は平気。八咫烏はどうすんの?今なら嫘姐の方舟、ペアチケット余ってるけど?」

「⋯⋯⋯わかった。血分けのウプサラソルシエールだ。嫘姐を信じよう」

「そう来なくっちゃ!!」

鴉素エネルギー、蛾素エネルギー

黒色、白色

ニュートリノ・ヤタガラス、ニュートリノ・レイソ

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

キューンハイト、チルペガロール。

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