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“俗世”ד異世界”双界シェアワールド往還血涙物語『リルイン・オブ・レゾンデートル』  作者: 虧沙吏歓楼
第拾壱章 エリュテイア・ゲートウェイ/Chapter.11“AnotherDimension”
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[#91-次元を超越する胎芽の末裔]

[#91-次元を超越する胎芽の末裔]


サンファイア、アスタリスがセラヌーン姉妹を連れて舞台上に出現。舞台の影からその姿を現した。地面から生えてくるように。真っ先にサンファイアとアスタリスは、ヘリオローザに近づき、フラウドレスの現状を伺った。


「ヘリオローザ」

「遅いじゃん。てか!?アタシって分かるの?それにサンファイア⋯左手⋯⋯」

「そんな事はあとだ。姉さんの遺伝子が少し入ってるから、異常事態は直ぐに判る」

「俺が居ねぇ時、フラウドレスを守ってやってたんだろうなぁ?」

「その言い方だと⋯この状況を既に把握し切ってるみたいね」

「ああ、フラウドレスは今、どんな感じなんだ?」

「アイツにやられた⋯⋯とてつもない力と衝突しあったんだけど⋯フラウドレスが負けちゃった⋯」

「その結果が⋯これって言うことか⋯⋯」

サンファイアが口を震わせてそう言った。フラウドレスが倒れている。倒れ⋯伏せている⋯⋯。目を開けそうに無い⋯力を全て使い切ってしまったようだ。サンファイア、アスタリスは全力で声を掛ける。

「フラウドレス!おい!フラウドレス!!」

「姉さん!姉さん!来たよ!僕ら来たよ!サンファイアとアスタリスだよ!」

サンファイアとアスタリスの全力の声掛けは舞台上に響き渡った。セラヌーン姉妹は2人に問い掛ける。

「サンファイア⋯アスタリス⋯⋯」

「フラウドレスは⋯もう⋯⋯」

ミュラエが、ウェルニが⋯“現実”を突きつけた。

「うるさい!!」「うるせぇ!!」

サンファイアが、アスタリスが⋯“激高”した。

「まだ決まった事じゃねぇだろ!ヘリオローザ!」

「分かってる。フラウドレスを助ける。これは⋯アタシにしか出来ない」

───────

「この人が⋯薔薇の暴悪・ヘリオローザ」

「お姉ちゃん⋯ホンモノ⋯?この人⋯」

───────

「ヘリオローザ、何か策はあんのか?」

「分からない⋯何も無い⋯だけど⋯ラキュエイヌを助けられるのは⋯アタシだけだ!」

「⋯⋯分かった。ヘリオローザ、頼むよ⋯」

サンファイアがヘリオローザに激励。愛する者を救ってほしい⋯。現実世界に具現され人体化を遂げたヘリオローザを前にしても一切驚く様子も見せず、ただただフラウドレスへの意識に集中させている。

「サンファイア!」

「なに?」

サンファイアは膝を折り、フラウドレスに緊急処置を施すヘリオローザに顔を近づけた。


「教皇を殺せ」

「⋯⋯⋯⋯ああ、分かった」

「なんだ?ヘリオローザはなんて言ってたんだ?」

「あの教皇とかいうヤツを殺せって言ってたよ」

「フン、はぁ?あのバカ。何言ってんだ。言われんでも⋯分かりきってることを」

「だよね」

「だが、まさかあんなキューティーな顔面とナリをしてるとは思わんかったな」


「惚れた?」

「フン、うるせぇ。お前には言いたい事が山ほどある。お説教は後だ」

「ヘリオローザ。教皇は任せて」

「頼むよ」

ヘリオローザ。フラウドレスの身体を通してあんなにやり取りを交わしていたのに、人格が変わったように見えた。

人体化ヘリオローザは、サンファイアとアスタリスに全てを託す。自身は瀕死状態のフラウドレスを復活させることに注力。



「2人とも⋯⋯⋯」

「この人が⋯ヘリオローザ⋯?」

「まさか人体化と出会えるとは⋯」

「僕もこの姿のヘリオローザは初めて見た⋯。これが本来の姿なんだろう⋯」

「そこの2人!」

「⋯ヘリオローザ?」

ヘリオローザはセラヌーン姉妹を呼ぶ。ミュラエがその問い掛けに応えた。もちろん、ウェルニも振り向く。

「フラウドレス・ラキュエイヌ。この子も、奴隷制度を反対している。君達と願いは一緒だよ」

「⋯!」

「お姉ちゃん⋯⋯」

「ありがとう、ヘリオローザ」


ヘリオローザはフラウドレスへの処置に戻った。

「じゃあ、フラウドレスは⋯私達と同じ意志だ」

「ウェルニ⋯ありがとう」

「んな事、いちいち確かめ合う必要ねぇだろうが」

「あぁん?もいっかい言ってみろよ善人殺しがぁ!」

「ウェルニ!⋯喧嘩してる暇なんて無いのよ」

「あのガキかぁ、フラウドレスをやったヤツは」

「教皇ソディウス・ド・ゴメインド。七唇律聖教の高位に座する者だ」

「あんなクソガキがかぁ?」

「そう、あんな子供がね」

「色々と説明を求める事が多過ぎるけど⋯」

「ミュラエ、とりまお前ら戮世界の住人がバグってるっちゅーことは理解出来た」

「アスタリスは理解が早いね。助かるよ」

「まぁな」

「お姉ちゃん⋯?」

「お前のお姉ちゃんは良い女だな。お前はその血を継いでるハズなのになー」

「お前ほんとにイケすかねぇ男」

「あのクソガキにどっちが早く報いを受けさせるか。勝負と行こうぜ」

「望むところだ」


「ウェルニ!!」

「アスタリス!」


──────────────────

「お兄ちゃんとお姉ちゃんたち、なにしてんの?」

──────────────────


大陸政府、剣戟軍、異端審問執行官に包囲された4人とヘリオローザ、フラウドレス。

そこに上空から教皇ソディウス・ド・ゴメインドが降下。

「あのさぁ⋯じゃましないでもらえる?女の人2人とぉ⋯男ツー」

男女差別があった。“女の人”に相当するのはセラヌーン姉妹。この2人には、人差し指で自身を示して来た。対するサンファイアとアスタリスには、指差し無し。“ツー”という訳の分からない言葉を使用して来た。普通に考えると、“2人”⋯と解釈出来る。


教皇のユーモア⋯というかなんというか、年相応の語彙力だなぁと思った。僕とアスタリスに向ける視線が、明らかにセラヌーン姉妹とは違っていたのも印象的。

「あーあ、おこっちゃった。あーあーあ、だめだよ⋯。今からだいじなのがはじまるのに、なんでじゃましちゃうのよ」

「分かってたんでしょ?私達がここに来るのは」

「むーまぁね」

ウェルニが教皇との対話を始める。大陸政府らが一斉にウェルニへ顔を向けた。

「アトリビュート。奴隷としてぜんぶ捕まえたかったけど、君達みたいな生き残りがいるんだよね。そんぐらい分かってた!」

ハツラツな笑顔が憎い。

「子供にしては良く喋るなぁ?おい、お前、なんなんだよ」

「えぇーーーと、どちらさまですか?」

「敬語は使えんのか?大したガキだぁ」

アスタリスの発言に武器を構え直す異端審問執行官と剣戟軍。大陸政府はアスタリスへの警戒を続けるが、依然として戦闘態勢になる事は無かった。比較してみると、天根集合知ノウア・ブルーム持ちとそうでは無い者⋯双方が行う、4人への対応は大差があった。

「ガキとか言わないでよー。君達はぁ、薔薇のお姉ちゃんと一緒に来た人だよね?」

泣く素振りを見せた。それは直ぐに欺きだと判る。わざとなのか⋯それとも周辺人物が今までそれに騙され続けてきたから今更変える必要性を感じず、放置された感情朽ち果て行動となっているのか⋯。複数事項の考察が可能な不快行動であったことは確かだ。


「だったらなんなんだよ」

「もお!目がこわいいいいい!ねえねえ剣戟軍ぅ!この男の目がすごいこわいいい!何とかしてよーー」

「了解」

剣戟軍がマシンガン射撃を開始。セラヌーン姉妹、サンファイア、アスタリスの“乳蜜祭カチコミ軍団”に向けて、初の攻撃命令が下された。その内容は至ってシンプル。

既に包囲中の4人に向けて発砲。

「こんなモノで俺らを殺せると思ってんのか?」

アスタリスがルケニアを顕現。ニーズヘッグを呼び出し、発砲された弾丸を空中で斬撃。竜の姿であるニーズヘッグは、マッハスピードを発揮し弾丸を切り裂いていく。

残った弾丸は無い。全てが地面に落下する事となった。

「なに!?」

「勘弁してくれよ⋯クソガキの配下なんてこんなもんだな」

剣戟軍に情け容赦無い言葉をかける。アスタリスの暴虐っぷりを表すに相応しいやり取りまった。


「へぇー!すごいすごーい!パチバチバチバチバチバチ」

拍手をしている。拍手の音は“パチパチ”なのに、教皇の口から発声されているのは“バチバチ”。教皇の教育レベルが窺えるシーンだった。

「お兄ちゃんなに!?誰なの!?なにもの???あ!ひょっとしてさぁ、超越者の茎進化てきな??あっちの世界ではそーいうのが進化の立ち位置なの?」

「ガキンチョに話す必要があんのか?」

「あるよー!あるあるあるあるある〜!」

「気色悪ぃ⋯」

「おにいちゃんげひんな言葉つかうね」

「悪かったなぁ。お前みたいな裕福なところで育ってねぇんだ」

「あー、それは⋯ごめんなさい⋯どういうところで生まれたのかなぁ⋯??」

「テメェはいちいちムカつくガキだな⋯」

「アスタリス」

「ああ、分かってる。おい、お前よぉ、俺の横にいるこの男が俺よりも怒ってるんだよ」

「え、、、、さっきっから黙ってる地味めな男?」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「ご覧の通り。相当お怒りだ。お前の配下、剣戟軍と能力持ちでどれだけ時間を稼げるかな」

「時間を⋯稼げる??そのいいかた⋯笑っちゃうね。時間なんて要らないと思うんだけど⋯⋯⋯って、、おもってた!!」

「はぁ?」

「⋯⋯⋯ミュラエ、ウェルニ、これが七唇律聖教の高位なの?」

「うん⋯そうだよ」

「あの“朔式神族”が元凶だ」

「ウェルニ・セラヌーン。どこまで調査がすすんでいるのか、しらないけど、それはあんまりしない方がいいんじゃないかな」

「私の名前を口にするな。穢れる」

「けが、、れる⋯ええ、それってぇ⋯じょーだん⋯ってやつだよね、えだって、もお、君たちの血は穢れてるじゃないか⋯ソーゴは戮世界テクフルを創成した神々の末裔だ。君達はただの悪魔だ。悪魔の末裔だろう?ンフフフ⋯わけがちがうじゃーん!」

「“胎芽”をバカにするのか?」

「ミュラエ・セラヌーン。姉妹でなにやってんのさ⋯せっかくその身を捧げることで⋯戮世界テクフルの救済になるってぇーのに⋯⋯⋯。さ、その身体をソーゴにちょーだい?おふたりとも!今だったら間に合うからさ!ささっ!はやくしないと⋯ほかのみんなもいっぱいいて⋯予約満杯でーす⋯なぁーんてことになったら遅いんだよ?」


「誰が生贄になるってぇんだよ!!!」

「ウェルニおねぇちゃん⋯そんな声を出さないでよ⋯もお⋯こわいよ⋯こわくてこわくてたまらないー!」

「お前⋯ほんとに殺すぞ⋯」

「え、、この話にアスタリスが介入するとは思わなかったなぁ!これには幻夢郷もビックリなんじゃないかな⋯」

「うるせぇよ⋯⋯」

セラヌーン姉妹と教皇ソディウス・ド・ゴメインドの対話に、アスタリスが乱入。

「ミュラエ、ウェルニ。アレは僕らがやる」

「⋯⋯⋯」

「私達もやる!」

サンファイアも参戦。そしてサンファイアは教皇の相手を自分達がやる⋯と提案した。ウェルニはそれを受け入れられなかった。ウェルニはそれに対して直ぐに反論を行った。だが姉・ミュラエはサンファイアの提案に賛成した。

「分かった」

「お姉ちゃん⋯?」

「教皇は⋯2人に任せる」

「私達は!?」


「君たちは⋯俺らが相手だ⋯⋯⋯アトリビュート」

「大陸政府か⋯⋯」

大陸政府、異端審問執行官、剣戟軍、教母、ノアマザー。4人の前に立ちはだかる者を代表して、侯爵ロウィースがセラヌーン姉妹の前に立つ。

「大陸政府ごときで、私達に勝てるとでも?」

「それは⋯やっても見なくちゃわからんことよ」

「おじさんもいるんだー」

「あなたは公爵。公爵という位階でも奴隷制度には肯定的なんですね」

「ミュラエ、位階なんて関係ありませんよ。これは総意。決して裏付けをした訳でもない、根幹からの総意なのです」

「公爵カリウス。あんたはこの中でも年齢が一番の上。少しはまともに話が出来る相手と思ってたけど⋯実際話してみるとそうでも無いね」

「あまり耳に入れたくない言葉が掛けられた気がするのだが、気のせいかな?」

「気の所為じゃねぇよ。ジジイが。いい年こきやがって、ガキに振り回されてんじゃねえよ」

「妹さんのその人間性。今から矯正するのだったら間に合います。是非ともこちらに来ませんか?」

「はぁ?」

「勧誘はやめてください。変態ですよ」

「七唇律聖教があなた方、アトリビュート複数名をご招待します。もちろん。お金は受け取りません。虐殺王サリューラス・アルシオン。アルシオン王朝帝政時代から受け継がれる濃厚な血が欲しい」

「お前⋯今⋯⋯」

「ん?どうしました?セラヌーンの姉」

「“アトリビュート複数名”って⋯⋯」

「あぁ⋯その事でしたか⋯⋯。先程、報せがありまして⋯奴隷帝国都市ガウフォンに接近・潜伏・諜報を行っていたアトリビュートを全員捕虜として捕らえました」

「⋯⋯なんだって⋯」「⋯⋯⋯なに」

「残念でしたが⋯君達以外のアトリビュートは全員、大陸政府の手中にあります。幸いな事に、天根集合知ノウア・ブルームの力は脅威に値する代物では無かったので、簡単に捕まえる事が出来ました。良かったですよ。本当に弱者で」

「⋯⋯」

弱者⋯帝都ガウフォンには多くのアトリビュートが集まる⋯と思っていた。弱い人間。それは⋯アトリビュートと言えるのか⋯。弱いアトリビュートなんて、見たことが無い。強いアトリビュートもいるはずだ。

私とウェルニのように強いアトリビュートが。

何故来ない⋯。どうして、、、強いアトリビュートは来なかった?

乳蜜祭に関与したくないからか?

アトリビュートが奴隷として扱われる事に何も思わないのか⋯⋯⋯自分達の仲間なのに⋯人間の手、、、たとえ天根集合知を持っていても、そう簡単に落ちるはずが無い⋯。

いや、そんな確定的なことは言えない。

「帝都ガウフォンは現在、教皇による天根集合知ノウア・ブルーム“不可侵位相領域”のおかげで、異能者の侵入を許していない。それに伴い、こちらからの脱出も不可能だ。⋯⋯普通はだな」

「カリウス」

教皇がカリウスの名を発する。

「カリウス達は⋯のこりのアトリビュートを。白鯨メルヴィルモービシュによって連れて来られた不届き者は⋯ソーゴが相手をする」



帝都が鳴動。突然巻き起こる地殻変動の動きで、直立が不可能になる。避難を開始している観衆はカナン城へ注目する。その瞬間、カナン城と周辺の帝都ガウフォンが分断された。

その“分断”というのもまた特殊なもので、区画を分断したのでは無く、“人と人”を分断した⋯と解釈するのが妥当だった。

先程、教皇ソディウス・ド・ゴメインドは戦闘対立構造を指定した。その対立構造を教皇は形作ったのだ。現在いるカナン城前の広場。広場の周辺エリア。観衆は教皇によってワープが行われ、別の区画へと飛ばされた。しかしそれは、分断エリアの対象となった所のみ。

間一髪のところで分断区画対象に指定されなかったカナン城周辺建造物群に居住している、職務をこなす者は、教皇ソディウス・ド・ゴメインドのワープ対象に指定されなかった。ただし、大陸政府の天根集合知によってバリアは張られる事となった。

教皇もバリアぐらいなら発動出来たはず⋯。何故、最後まで民間人への配慮が無かったのか⋯その答えに辿り着く必要性は無いように思えた。

コイツには教育的指導が必要だと思った。そんな教皇は、僕と俺を対立指定した。セラヌーン姉妹は、教皇以外の大陸政府等のメンバー。

恐らくは大丈夫だろう。セラヌーンの2人だったらきっと窮地を脱せるはずだ。

そして、僕達は誓ったんだ。

────────────

4人で絶対に帰ってくる⋯と。

────────────



15時1分──。


「始まったのか?」

「サンファイア、始まったわ」

「お姉ちゃん!これ走って着く距離なの?」

「当たり前でしょ。そんなに遠くないってーの。それにこんだけの走りだけでそんなにゼェゼェするなんて、ウェルニらしくないよ?」

「そうだぞー?ウェルニぃ?お前はこんな事でヘタバる女だったんか??」

「うるせー黙れ殺すぞ」

「女の子が使う言葉じゃありません」

「お姉ちゃん!コイツをどう思ってんのよ本当に!」

「今は協力しなくちゃいけない。アスタリスの力が、必要だから」

「⋯だってさ。セラヌーン姉妹の好感度は姉貴のおかげで持ってるようなもんだな」

「教皇でも無ければ、大陸政府でも無ければ⋯私が先にお前を殺すかも⋯」

「お姉さんが黙ってねぇーぞー?」

「2人とも!」「2人とも!」

サンファイア、ミュラエが2人を叱る。

「4人で、、絶対、、、帰ってくるよ、、、」

「ええ??なにぃ?」

「どうしたの?サンファイア」

「あぁ?なぁに言ってんだおまえ。疾走感漂ってる中なんだから、もっと大っきな声で言えよ」

「だから⋯4人で一緒に帰ろ⋯!これが終わったら!」

「そうだね。サンファイアに賛成だよ」

「ありがとう。ミュラエ」

「お前らでヨロシクやってろバァーカ」

「アスタリスは死に様夜露死苦で。私も、サンファイアに賛成!」

「ありがとう、ウェルニ」

「うん!⋯アスタリスはぁ?あんた、ひとりぼっちで帰るのぉん?」

「はぁ?」

「サンファイアはぁー、、、私ら⋯セラヌーンと一緒に帰るんだよん?あと、アトリビュートもいっぱいにね!」

「別に⋯⋯勝手にしやがれ」

「⋯⋯アスタリス⋯⋯⋯」

「⋯⋯なんだよお前!そんな顔すんじゃねぇよ!なに“すん⋯”って顔してんだおメェ!」

「サンファイアは、アスタリスと一緒に帰りたいみたいよ?それは、、、アスタリスも一緒なんじゃないの?」

「ミュラエ、ちょっと俺が良いように扱ったからって調子乗んなよ?」

「あら、凄い顔赤くなってますけどぉ〜、、アスタリスくーん???どちたのかな〜?」

「こういう時のお姉ちゃんほど、面倒な相手はいないからねアスタリス。覚悟しなさいよ?」

「フン、なぁに言ってんだバカ⋯⋯⋯」

「あら、その「⋯⋯」が哀愁あったねぇー」

「⋯⋯⋯⋯」

「もう楽になったら?⋯私達と一緒にいても良いんでしょ?そんな強がんないでさー」

「ミュラエはおかしいんだよ」

「うん?そう?私、おかしい?」

「俺は⋯お前らの仲間を殺したんだ」

「でも、中にいるんでしょ?お腹の中に」

「それは⋯お前に希望を少し与えただけだ。真実だと言い切れない中途半端な嘘だよ!ただの嘘なんだよ!」


「でも、、、それが真実になるかもしれない」

「え、、、、、」

「戮世界テクフルは特別な力が与えられている場所なんだよ。2人が居た原世界よりも⋯強力な異分子エネルギーで満ちてる。アインヘリヤルの朔式神族。彼等が齎した文明にはその特別な力が多分に含まれていたから。アスタリスの欺きだって、真実・本当になるかもしれない」

「⋯⋯そう、、なのか?」

「うん!きっとそう!⋯てか、あれ?なにその反応⋯『そう、、なのか、、』って⋯アスタリス、、ひょっとしてさぁ⋯トシレイドとアッパーディスに戻って来てほしいの?」

「馬鹿言え!俺がこいつらにムカついたのは事実だ⋯」

「ま、あなたが2人を消したのは間違いないから、私だって無理矢理にでも良心的な自分を見せてるんだからね?」

「そうか、そのミュラエの良心が消えたら俺をどうする気なんだ?」

「殺すでしょうね」

「ンクククク⋯その矢継ぎ早に放たれた言葉⋯嫌いじゃねぇぜ」

「良かった、アスタリスならそう言ってくれると思ってたよ。だけど私に二度とこの言葉を言わせないで。これはサンファイアのためでもあるの。あなたのことを一番に大切に思ってるのは、サンファイアと⋯フラウドレス⋯そうでしょ?」

「⋯⋯⋯⋯はぁ⋯⋯⋯わかったって説教くせぇんだよミュラエは」

「ウチには獰猛な女メガロドンがいますので」

「ガオーーー!」

「ウェルニ、メガロドンはサメだよ?」

「サンファイア、サメもガオーじゃないの?」

「違うよ、サメは『シャアーー!』だよ」

「いいや!違ぇって。サメは『ビャアーー!』だ」

「アスタリス、論外!!」

「はぁああ?テメェのガオーよりはマシだろうが!」

「ァァあん?獰猛って言ったら『ガオーー!』でしょーが!」

「ウェルニ⋯多分、君が描いてるのは⋯“ライオン”じゃないかな⋯」

「え、、、、サンファイア⋯それって⋯⋯さかな?」

「陸上生物」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アッカ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アッカ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アッッッッッッカ!!!お前!メガロドンのこと、ライオンの類だと思ってたのか?アッハハハハハははは!!笑っちまうぜぇぇー!!ギャッハハハウハハウハウハウハハハ!!」

「もお!そんなに笑わないでよ!!」

「ンフフフぷぷ」

「サンファイア!」

「ごめんごめん⋯面白いね、ウェルニって」

「口元上げて、細目にしながら言わないでもらえる?」

「ごめん!面白くってさ⋯」

「ギャーハッハッハッハッ!!アッハハハヒィー⋯⋯こりゃあ傑作だぜぇ⋯笑うは笑うは⋯腹痛てぇ腹痛てぇ⋯」

「アスタリス⋯こいつは乳蜜祭が終わったら締める。⋯お姉ちゃん!サンファイアと脳ミソ掃き溜め人間が意地悪してくるんだけど⋯⋯」


「静かに⋯」

3人は静まる。意外にも場の空気は読めるアスタリスに僅かながら感心するウェルニ。それはほんの一瞬の出来事であるが、ウェルニの心情切り替えが激動。といってもただ単にアスタリスへの評価がゼロ起点から大幅に下方だっただけである。“ギャップ”を感じる瞬間であったと言えよう。

「アイツが⋯教皇ソディウス・ド・ゴメインドが⋯ただのガキじゃねえのか?」

「セブンスには、あの人の戦闘力が判らないようね」

「ウェルニには判るの?」

サンファイア、アスタリスには教皇ソディウス・ド・ゴメインドが畏れる存在だとは思えなかった。

「原世界の住人には判らないのよ。それも多分、魔障病だと思う。ウェルニ、2人へのアフターケアを頼んだよ」

「サンファイアはイイけど⋯」

「はあ?ヤレよ」

「それが人に物を頼む態度かぁん?」

─────────

「ウェルニ、お願い」

─────────

サンファイアはウェルニの両手を掴み、自身の両手で握った。力強くも無く弱くも無く⋯ちょうどのいい力加減。更にはサンファイアの勇ましい顔つきに、ウェルニは溺れてしまう。火照った顔が完成されてしまったのが自分でもよく分かった。あまりにも恥ずかしい自分が出来上がってしまった⋯と思い、ウェルニはサンファイアからの握り手を振り払う。その反動でウェルニはサンファイアへの視線を逸らしながらこう言った。

「⋯⋯わかった!サンファイアが言うなら⋯⋯しかたない⋯」

「ありがとう!」

ミュラエは、微笑む。その微笑みをアスタリスに共有した。アスタリスは呆れた顔を作る。サンファイア×セラヌーン姉妹の三角関係が完成した事への“呆れ”だったが、実際は“興味無し”という意味での呆れ。

『そんなシークエンスを挟み込まないと、コイツは動けないのか⋯』

ウェルニが抱くサンファイアへの愛。アスタリスには難解な感情だった。サンファイアが愛を抱かれる対象に値しない人間⋯だとは思っていない。だが、状況を考えてほしい⋯そう思っただけである。フラウドレスの存在も確認出来なければ、先程の“爆発音”も気になるところなのに⋯。


「何が起きたんだ⋯」

「どうしたの?お姉ちゃん⋯!!あれは⋯⋯」

セラヌーン姉妹の顔色が一気に変わった。

民衆が凄い。どうやらここが乳蜜祭のイベント会場のようだ。会場へと続く道だったが、大して人間を見なかった事が少々気になるポイントではあったのだが、その疑問点は解消される運びとなった。

乳蜜祭の会場周辺。僕らはその周辺エリアにやって来た。人が集まっているのは主に、会場の前方のみ。会場を取り囲むように円を形成しているのだが、地上には人がいるのは前方のみ。つまりは、あの、舞台上の前に多くの人間がいるということだ。

前方以外の人間は主に何処から、イベントを見ているか⋯と言うと、上だ。居住スペースや職場オフィス。前方以外のスペースからは、イベントの模様を確認する事が難しかった。単純に人の多さと物理的な壁が視界を遮っている。

そんな中で、僕らはミュラエの先導によるおかげで、イベント会場を捕捉出来る場所にまで来れた。

「あれは⋯⋯人か?」

「女の子⋯だよね、、、、」

ウェルニ、ミュラエの発言が、サンファイアとアスタリスにも伝わると、2人は何かを察して、直ぐにその模様を確認した。すると2人の表情は一変。

「⋯⋯⋯⋯そんな⋯⋯⋯⋯」

「ウソ、、、、だろ、、、、」

「サンファイア?アスタリス?、、大丈夫?」

ミュラエが心配する。そう言わなきゃいけない⋯と思ったからだ。まさかアスタリスを心配する時が来るとは思わなかった。

「⋯まさか⋯⋯あの⋯倒れてる女の子って⋯⋯」

ウェルニも察したようだ。

「僕らの姉さんだ⋯⋯」

「そんな⋯⋯⋯」

「瀕死よ⋯司教兵器を受けた可能性がある」

「司教兵器?」

「なんだよそれ⋯⋯」

「別名ウプサラソルシエール。暴喰の魔女の可能性もあるけど、そうじゃない事を祈るしかない⋯」

「姉さんはどうなるんだ!?ミュラエ!」

「最悪の場合⋯死ぬ⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

固まった。サンファイア、アスタリスは固まる。そして芽生えてくる。殺意。もう止まらなかった。

「フラウドレスの横にいるのは⋯だれ?心配しているようだけど⋯⋯」

「あと⋯フラウドレスは何故、舞台にいるの⋯大陸政府とどういう関係なんだ⋯?」

「姉さんも姉さんなりに、戮世界からの脱出を企てていたんだよ、そうだよ⋯絶対⋯アスタリスそうだよね??」

「ああ、あったりめぇだよ。大陸政府も白鯨を持ってるヤツらがいるんだろ?そんなヤツらで構成されてる機関だろ?じゃあ、俺と考えは同じだ。白鯨を見たんだよ。それでアジトに潜伏・諜報活動していたんだろうな。賢い女だ」

「いや⋯そんな簡単にあの舞台に立てるはずが無い⋯」

ミュラエが震えながら言う。サンファイアとアスタリスは、ミュラエから謎を呼ぶ発言に、頭を悩ませる。

「サンファイア、フラウドレスの横にいるのは誰?」

「⋯⋯アスタリス」

「サンファイア、フラウドレスの遺伝子信号、検知してねぇよな?」

「だよね⋯⋯僕も同じだ⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯ヘリオローザ?」

「俺も同じように思ってた」


「アレが?薔薇の暴悪⋯?」

「嘘でしょ⋯⋯伝承記とは全然、形状が違う⋯お姉ちゃん、ただの人間だよ?」


「僕らも⋯あの姿は初めて見た⋯」

「え、、そうなの?」

ミュラエの表情が切り替わった直後、アスタリスは独断専行を開始しかける。ルケニア“ニーズヘッグ”の能力で飛行能力を有していた。そんなアスタリスの単独攻撃を読み切っていたミュラエが、天根集合知を発動。ニーズヘッグの姿へと変動を遂げ上空へ急速上昇を開始したアスタリスに向けて、楕円形の“影”を出現させた。その影は急速上昇を遂げたアスタリスを飲み込み、現実からの抹消を実行。サンファイアは、当該事象に驚きを隠せないが、ウェルニは“してやったり”の表情を浮かべた。

「ミュラエ!!アスタリスは⋯?」

「心配ご無用」

影が再び現れる。その影から放り出されるようにニーズヘッグが再出現。ニーズヘッグの姿は無力化され、アスタリスへ、強制フォルムリバースをさせた。

驚愕の出来事を飲み込む事が出来ないアスタリス。発現者であるミュラエに対しては、怒りすら芽生えない。戦慄すらも感じていた。そして“楕円形の影”に飲み込まれた瞬間、白鯨の光輪の事を思い出し、そのトラウマにも怯えてしまう。しかしこれはアスタリスの深層意識レベルで処理・対応されたもの。決して表沙汰にしたくない⋯と言うアスタリスの強い意志の表れだ。


「待って」

「フラウドレスが死に損なってる!俺らはフラウドレスを探しに来たんだ!今!あそこで⋯⋯フラウドレスが⋯死にかけてるんだ⋯⋯⋯」

「分かってるから⋯ちょっと落ち着いて⋯⋯助けるよ。助ける。サンファイアと約束したから。ね?」

「うん⋯ありがとうミュラエ。アスタリス、君一人で行くな」

アスタリスに優しく寄り添うサンファイア。

「アスタリス一人で行くなよ。僕も同じなんだから」

「⋯⋯⋯策があんのか?ミュラエ」


「“今の”だよ」

天根集合知ノウア・ブルーム?」

「お姉ちゃんの天根集合知ノウア・ブルーム“幻影空間真空の抽象”。影を発生させ、対象物を別次元へと強制退去を行うことが出来る!そしてその強制転移空間も自由自在にコントロール可能」

「これを使って、舞台まで転移する」

「よし、早くやろう」

「焦らないでサンファイア」

「ミュラエ!早くやってくれ」

「アスタリス⋯うん、判ってる。フラウドレスさんを救おう」

「あと、薔薇の暴悪もね。薔薇の暴悪は奴隷達への憤怒で満ちてると思う。サンファイアとアスタリスの事を認識出来ない可能性も考えとくんだよ?」

「ヘリオローザが奴隷を⋯」

「アイツ⋯ここで復讐を果たそうとして⋯フラウドレスを巻き込んだのか?だとしたら、ヘリオローザにも罰を与えねぇとな」

「アスタリス、それは違うと思うよ」

「そう言いきれねぇだろ?何が起きるかなんて、ここから分かったもんじゃねぇんだから」

「それだったら、良い方に考えようよ。未来なんて、考えだけだったら無限なんだからさ」

「フン⋯キメたこと言ってんじゃねーよ。サウスポーじゃなくて良かったな」

「ご心配どうも。ルケニア顕現への問題は無い。安心して」

「みんな、準備はいい?⋯⋯戦闘が始まる。4人で帰るよ」

「レピドゥス、出番よ」

ウェルニの中で、暴喰の魔女・レピドゥスが鳴動を熾す。発生段階を終わらせ、ウェルニのゴーサインで高速発現を行えるシークエンスへと移行。

ミュラエの天根集合知ノウア・ブルーム『幻影空間真空の抽象』が発動。影は先程アスタリスを飲み込んだサイズよりも拡大。4人を現在地から消した。


そして、4人がステージへ出現した。



現在15時46分──。


「ソーゴのあいては、、、原世界からのひとたちだよー!薔薇のお姉ちゃんとはどういうごかんけい?」

「お前にそれを説明する義理はあるか?」

「ええええ、ケドさぁ⋯そういうのいる?いらなくない?けっきょくは、人間なんて、ミチのせいぶつなんだから、ソーゴはしりたいんだけど⋯!どういうかんけいせいなの!?」

教皇ソディウス・ド・ゴメインドの台詞がうざったるくなり、我慢の限界を迎えたアスタリスは、ルケニア『ニーズヘッグ』を顕現。臍帯を通して顕現された。腹部からの顕現は最大火力エネルギーを長時間に注ぐ事の出来る半永久機関として活用するのが目的だ。ただしルケニアと母体を繋いでいる臍帯が切断されてしまったら、戦闘力は極端にダウン。ルケニアを顕現不可になってしまうまでにはならないが、それ相応の負荷が母体には掛けられる。ルケニアを背負うものとしての“呪縛”と捉えることが出来るシステムだ。

そんなリスキーなシステムを把握した上でアスタリスは、ニーズヘッグを臍帯を通して顕現。アスタリスはニーズヘッグに臍帯を乗じて命令。

『あのガキを黙らせろ。殺せ。アディショナルタイムは不要だ。短時間で仕留めるぞ』

ニーズヘッグは母体へ呼応。それが形となったのは、教皇の長話が終わった直後だった。


分断されたカナン城広場兼儀式開催エリア。教皇ソディウス・ド・ゴメインドによって分断された“向こう”では、大陸政府らを中心とするメンバーとセラヌーン姉妹が戦っている。


ニーズヘッグは上空にて浮遊している教皇に向けて火焔放射攻撃。教皇に直撃し、当たりは爆炎が発生。煙も同時に発生し、それを切り裂くように近接攻撃も浴びせた。鋭い鉤爪を技巧派に活用した、痛々しい乱れ引っ掻きが炸裂。アスタリスはニーズヘッグの視点映像を所定位置で確認する事が出来る。

教皇に一発目の火焔放射、二発目の乱れ引っ掻きが全て命中している事が判明し、より一層の力を込める。

「サンファイア!」

「判った!」

アスタリスのアナウンスによってサンファイアが追撃を開始。サンファイアとアスタリスが教皇へ同時攻撃を実行しなかったのは、サンファイアの能力を温存させるため。教皇ソディウス・ド・ゴメインドのステータスがどれ程のものなのか⋯カナン城までの移動中でセラヌーン姉妹から話を聞いてはいたが、2人で確かめたかった。

だがサンファイアは自身のルケニア『ラタトクス』を顕現。自身の能力をフル活用させた攻撃を発動させた。ラタトクスの高速移動能力を攻撃行動に転じさせた目にも止まらぬハイスピード衝撃波打撃。ラタトクスはニーズヘッグが乱れ引っ掻きを行う場所に打撃衝撃波を放つ。ニーズヘッグはそれが迫ってくる事を確認し、急いでその場から離れた。

ニーズヘッグは正面から目線を逸らしていない。なんなら後方も一切確認していない。更にラタトクスの打撃衝撃波は音無し。サイレントアタックなので、普通ならばしっかりと視覚を使わないと接近を感知するのはほぼ不可能だ。

これはルケニア同士の“共鳴現象”によるもの。ルケニアとルケニアが互いの関係性と有用性を理解し合った結果、調律・調和が生まれ、絶大なハーモニー現象が巻き起こる。

フラウドレス無き今、原世界の遺伝子が戮世界に炸裂。ラタトクスの攻撃も教皇ソディウス・ド・ゴメインドに命中した事が確認され、2体のルケニアは地上へと降着。

2体は母体へ戻ること無く、教皇ソディウス・ド・ゴメインドの様子を窺う。決して油断はしていなかった。

「こんなもんか?」

「判らない⋯だけど、、、確実に僕らの攻撃は当たったはずだ」

立ち込める煙。先程、ニーズヘッグが切り裂いたにも関わらず、上空の教皇がいた位置からは何故か⋯狼煙が発生していた。狼煙が巻き上がっているから⋯というよりも前に2人はルケニアの顕現を続行させる事を選択してはいたのだが、当該事象が明確な“顕現続行の理由”となった。


「アハハハハハハハはははははわーはっはっはっはっ〜!!」

子供の笑い方。公園で親と遊んで遊んで遊んで遊んで⋯親がへたばっているけど、まだまだ遊び足りない子供の笑い方。無邪気だなあ⋯と普通なら思うが、現状はそう思えるはずも無かった。

「俺とサンファイアのルケニアを受けているのに、笑えんのかよ⋯アイツ⋯」

「⋯只者じゃない⋯っていう噂は⋯その情報以上かもしれない。アスタリス⋯」

「ああ、ただのガキじゃねぇみてぇだ⋯」

「そだねー。ソーゴはぁ、、ただのガキじゃありますぇーん!あと、、ガキガキって言うのやめてくれない??ちゃんとソーゴには名前があるんだから!ああーでもほんとうはソーゴのなまえ、言っちゃいけないんだよね、けど、、、君たちはルール外!原世界からのおきゃくさんはていちょーにもてなさないと!だから⋯ソーゴの事は、、なまえでよんで⋯」

「⋯死ね」

「⋯え、、、、うそ⋯⋯⋯」

教皇ソディウス・ド・ゴメインドに向けて、アスタリスのルケニア『ニーズヘッグ』が空間転移。一瞬にして間合いを詰めて、ゼロ距離火焔放射を開始。

「それは⋯ちょっとズルいよー⋯まだしゃべってるとちゅうなんですけど⋯⋯」

火焔放射は見事に命中。一発目の内容と同じだった事と、教皇ソディウス・ド・ゴメインドが口を開いていた⋯という高速スピードに対しての反応を示した事実があった事で、油断は出来ないアスタリス。

「サンファイア!来るぞ!」

「うん⋯!!」

アスタリスの掛け声にサンファイアが反応。2人はルケニアで防御膜を張る。


「ンはァ!!」

教皇が火焔放射を打ち払う。異形生命体ティーガーデンを2体発現。黒色の粒子から生み出された生命体。その反転色である白色の粒子から生まれた生命体。2つが教皇から発現され、ウネリを遂げている。上空にて螺旋のように回転しながら周期的移動旋回。グルグルと周回を続け、やがて形態変化を始めた。

「させるか!」

アスタリスが2つの異形生命体ティーガーデンへ攻撃を開始。セラヌーン姉妹から聞いていた“司教兵器、ウプサラソルシエール”だと断定し、攻撃特化タイプへの移行を進めた。直ぐにその形態変化シークエンスを終わらせ、周期的周回移動によってそちらも、形態変化を遂げようとしているモノへの強制中断を図った。

異形生命体ティーガーデンの正体がどうであれ、アスタリス、サンファイアは教皇から発現されたアタックウェポンは殺さなければならない。

分断された“向こう”で、フラウドレスは倒れている。しかも瀕死⋯という生と死の狭間を行き交う重大な生命維持を左右するポイントだ。

2人は教皇ソディウス・ド・ゴメインドを許さない。どう足掻いても必ずコイツを殺す。その意志決定で2人は異形生命体ティーガーデンの形態変化を待たずして攻撃を行っている。

ルケニア『ラタトクス』は状態異常変化のサポート攻撃を行う。基本的な攻勢はアスタリスのルケニアに任せ、後の対応転移万が一の救済措置の為に、ラタトクスは自身の能力を温存しておく。

しかしながら先程のように、サンファイアが攻撃に参加することはある。つまりは作戦なんて無いようなもの。殺すチャンスがあれば、いつでもサンファイアは荷重攻撃に参加するつもりのようだ。


「どりゃあぁぁぁぁ!!!」

ニーズヘッグが、臍帯の距離である移動可能範囲を極限に拡大。これによって母体への体力消耗は極端に上昇してしまう。長時間の活動が不可能なルケニア顕現なので、これはあまり得策な戦法とは言えない。だがこれは時間との勝負。2人は既に判っていた。教皇ソディウス・ド・ゴメインドの深淵に眠る“本来の力”というものを。

ニーズヘッグが黒色の螺旋、白色の螺旋、それぞれ2つに共通してある部分を発見。それは蛇状となっている螺旋の中央、それぞれの全長28mの真ん中なので14m付近に謎の赤い点がある事が確認出来た。


2人がマインドスペースで会話を始める。高速簡略で話が進められ、現実世界での時間の流れは2秒で幕を閉じた会話だ。

『サンファイア!これは⋯』

『僕も確認した。恐らくこれは活動を停止させることの出来る“コア”なる存在だ』

『お前⋯アッチの仲間なんかって言うぐらいに、決めつけた事言うじゃん⋯』

『今は⋯何かを頼る事なんて出来ないだろう?』

『アイツらに聞くとかは?』

『ミュラエ、ウェルニ⋯⋯⋯』

2人は現在、大陸政府、ノアマザー、教母、剣戟軍、異端審問執行官と戦闘を行っている。分断された向こうの状況は、等間隔的に映し出されていた。分断した壁が透明になったり、不透明になったりと⋯。これはシステム的な問題で、こうならざるを得ないものなのか、それとも教皇の“あえて”このようなシステムを採用したのか⋯定かではないが、恐らくは後者のような気がした。

『2人なら、螺旋の中央にあるコアの正体が判るかもしれない!』

『かもしれないっつーか⋯判ってもらわねぇと困るんだよ!』

『そうだね⋯声は聞こえないよね⋯』

『ああ⋯ガッチし、アッチの世界とコッチの世界で分け隔てられてる⋯』

『姉さんとヘリオローザもあっちか⋯⋯⋯』

『仕留めるぞ、サンファイア』

『うん、もちろんだよ』


ニーズヘッグが周回旋回移動を実行しながら形態変化を遂げている黒色の螺旋、白色の螺旋に対しての物理攻撃を継続させている。しかしこの螺旋への効果は無かった。移動速度は高速化。やがて地上にいるラタトクスには眼球で追うことは不可能になる。サンファイアは、ラタトクスとの繋がりである臍帯を解除。サンファイアはラタトクスとの融合を開始。身体を野ざらしにしているアスタリスの元へと向かった。

「⋯!やばい⋯⋯!!サンファイア!こっちに来んな!!」

「え、、⋯!?」

サンファイアがルケニア『ラタトクス』との融合を開始し、臍帯との繋がりが無くなった事で行動範囲に制限が無くなった。だが臍帯を無くし、母体とルケニアが融合した事で、ルケニアの構成物質を100%感受することになる。しかしながら自分の身が危険な状態、或いは自分の身体へ多大な外傷があった時はこの“融合”が意味合いを果たす。

ルケニア以上に、安全な場所は無い。

補助行動をアスタリスの近くで行おうとした時だった。

アスタリスから、接近を拒否する声が聞こえて来た。これは、マインドスペースでは無く表面化されたもの。マインドスペースは“意識”して初めて開始される特殊なコミュニケーションツールだ。それを使用せずに⋯肉声で『来るな!』と高らかに言ったアスタリス。

アスタリスがこんな無警戒なミスをするはずが無い⋯ということは、言わざるを得なかった⋯?


だが、、、サンファイアはもう既に⋯アスタリスからの警告を受けた直前で⋯アスタリスの近くへと辿り着いてしまっていた。

─────

「ざんねーん」

─────


黒色、白色。2つの螺旋が形態変化の高速化を収束。急激に停止した周回旋回移動に対応できなかったニーズヘッグは、対応に追われてしまう。

「スラスター、急制動、目標ニーズヘッグ」

教皇による司教兵器への指令が下った。急停止を実行した2つの螺旋が、対応に追われていたニーズヘッグへの攻撃を開始。高速周回旋回移動を急停止させた螺旋に、対応が遅れてしまったニーズヘッグは、既に周回旋回移動を終わらせている螺旋の餌食となってしまう。2つの螺旋がニーズヘッグを挟み込み、自由を奪った。

サンファイア兼ラタトクスは、事態急変への対応策開拓として移動方向の転換を即座に開始。向かった先は、教皇ソディウス・ド・ゴメインド。2つの螺旋を生み出している母体だ。しかしここでサンファイアは驚きの新事実を知る事となる。

「⋯⋯⋯うそでしょ⋯⋯」

「うん、サンファイア、ソーゴもビックリなんだよー」

「く、、、、ソ⋯⋯⋯いてぇ⋯いたい⋯⋯⋯」

アスタリスが悶絶する。ニーズヘッグが受けている外傷攻撃とほぼ同等のダメージがアスタリスに付与されている。ハーモニクス⋯ルケニアと母体“セブンス”の統合意識バイタル指数。これが高ければ、母体の制御機能が高まり、ルケニアを自由自在に操る事が出来る。但しそれによってルケニアとの繋がりが濃くなれば濃くなるほど、ハーモニクスは上昇。不必要な外傷攻撃ステータスも母体であるセブンスへ付与される。現在のアスタリスはニーズヘッグが受けている攻撃をハーモニクスによって付与されている形だ。決して楽な状態とは言えなくなってしまった。

「アスタリス!」

「どうやら⋯ソーゴとあなたたちは、おなじみたいだね⋯どうして?なんで?ねぇねぇねぇ⋯なんで⋯“おヘソからソレが出てんの?”」

「⋯⋯⋯⋯」

サンファイアは理解した。ミュラエが言っていた、アトリビュートの先祖はセカンドステージチルドレン⋯だという事。


セカンドステージチルドレンから分岐して生まれたセブンス。戮世界ではその分岐進化が“アトリビュート”となっている。教皇ソディウス・ド・ゴメインドが、アトリビュートの可能性がある⋯これは僕なりの仮説だが、教皇がアトリビュートだとするなら、合点がいく。腹部⋯もっと言うなら“臍の部分”から黒色&白色の螺旋を発現しているあたり、僕らセブンスのルケニア顕現方法と酷似し過ぎている。

臍帯⋯とは言っていなかったが、ただ単に教皇がその言葉を知っていなかっただけのようにも思える。もちろん油断はできない。学力が低い⋯年齢相応のように思わせておいての策略かもしれないし、なんならそもそも僕の仮説だって的を射てない可能性だって十分に有り得る。


「いや転移まぁまぁ合ってるよー?」

「⋯!?」

「え、、、そんなにビックリすること?ふつーにサンファイアの脳内に侵入しただけなんだけど⋯」

驚いた⋯⋯⋯信じられなかった転移どうして⋯?どうやって⋯⋯⋯あまりにも⋯ちょっと⋯信じられなさすぎて⋯

「うわ⋯ンフフフハ⋯⋯⋯すごっ!めっちゃもお、、なんか⋯“驚愕っ”て、これのことを言うんだねってぐらいのリアクションだね」

サンファイアの心情は全て読み取られている。

「サンファイアー!イイのかなぁ?アスタリス⋯あんな感じだよ?」

「⋯⋯アスタリス⋯!」

悶絶と絶叫。アスタリスの喉から吐き出される言葉に意味なんて無い。意味の無い言葉⋯絶叫に関連する言葉とは言えない言葉が次々と飛散する。唾液を地面に散らし、次第には鼻血まで噴出する事態に発展してしまっている。

「⋯アスタリス!」

「だーめ」

サンファイアはすぐさま彼の元へと向かおうとした。ラタトクスのまま。だがそれは叶わなかった。教皇の螺旋から粒子状物質がサンファイアに迫り、一つの小規模コロニーを形成。サンファイアは分断された世界で更に分断された個室へと鹵獲されてしまう。

「だーめ!だーめ!だーめ!ウフフフフフハハハハ⋯アッハハハギャギャ⋯アギャ!アギャ!アギャ!アギャ!」

踊り狂っている。そのさまを見せつけられるサンファイア。教皇の狂気が体現されたシーンであった。

一回目の分断プロトコルとは異なり、個室分断は外の様子を確認する事が許されない空間。

「ふたりではなしをしようよ!お兄ちゃん!」

「おにいちゃん⋯⋯」

「そ!おにいちゃん!うへへ」

「⋯⋯臍帯から現れた君の能力はなんなんだ⋯」

「司教兵器。鴉素エネルギーと蛾素エネルギーがかたまってできた異形生命体ティーガーデンだよ。って言っても上手く理解はできない??」

「⋯いや⋯」

「そうだよねー?アッチにいるアトリビュート2人にいろいろきいたんだもんねー?」

カタコトになったり、流暢に喋ったりと年齢が定まっていないように思えてくる不可思議な言葉の使い方。まともに会話する事なんて⋯考えられなかった。

「姉さんに何をしたんだ」

「え?もお、その話?ソーゴはもっといっぱい話したいことあるんだけど⋯ねえねえ!原世界ってどんなところなの?セカンドステージチルドレンの茎進化なんでしょ?原世界では今、戦争が起きてるけど⋯それがげんいんでしんかがおきたの?」

「何故⋯それを知っている⋯」

「きみたちがここにきたげんいんがおしえてくれるんだあ」

「白鯨か⋯」

「そう!白鯨メルヴィルモービシュ。多次元世界の管理者!メルヴィルモービシュとは古い付き合いなんだよ!まぁもちろんソーゴはお子ちゃまだから、最近しりあったばっかりなんだけど⋯⋯“ろすとらいふういるす”」

「⋯⋯⋯」

「『なぜ、殺戮バクテリアの名前すらも知っているんだ⋯』と、言いたげなようすだね。もったいぶって無いで、言っちゃえばいいのにいー」

「僕から君に聞きたい事は一つ」

「お!うん!なになに?」

──────

「今すぐ、ここから元の世界に帰せ」

──────

「うえ?うそ?ほんきでいってるの?」

「教皇の仲間のせいで、僕らは戮世界に連れてこられた。僕らは君たちが原世界と呼んでいるところに戻りたいだけだ」

「まぁたぶんそれは無理だろうねー」

「なぜ?なぜだ」

「だってーメルヴィルモービシュでしょ?白鯨でしょ?“仲間”って言うほど仲良くは無いし⋯こっちから頼んで、快く聞いてくれるっていうモンでも無いしさー」

「⋯⋯⋯」

「そんな顔でみられても⋯ソーゴにはどうする事もできないもん⋯ごめんね?⋯⋯⋯あ!会った?ニーベルンゲン形而枢機卿船団と!元気してた?」

「⋯⋯⋯姉さんが一人殺したよ」

「へぇー。なんか、ソーゴが思ってるいじょうのできごとがあったんだね。どうじょうするよ」

「白装束の軍団とは関係性は」

「その人たちはね、ソーゴのなかまだよ!正式な仲間」

「じゃあ、僕が今、『一人殺した』っていうのを聞いて、どうおもったんだ?」

「うん、はらわた煮えくり返ったね!ムカついてた!!」

「⋯⋯⋯そう」

「誰がそんなやつらのもうしいれなんて聞くかって思った!」

「⋯⋯だが、教皇も姉さんにしたことは同じだろ?」

「いや?だって、薔薇のお姉ちゃん、まだ死んでないじゃん!そんなのズルくない?しんでないのにさぁ、こっちの仲間は一人死んだんでしょ?、ニーベルンゲン形而枢機卿船団が原世界に何をしに行ったか判る?」


「うるせぇんだよ⋯⋯」

「あっ!まだ生きてた!良かった良かった!って⋯よろこびたいところなんだけど⋯フラウドレスがこっちの仲間を一人殺した⋯それをきいてきみたちへのしょぶんは決まったもどうぜんかな」

相変わらず、流暢な言葉とそうでは無い年齢相応な口調がアンバランスだ。

「あの、白装束の女か?ソイツらとの戦いは大したもんでもなかったぜ⋯あれは⋯⋯お前とはどういう関係だったんだよ」

「ソーゴの幹部的立ち位置のひとたちだよ!原世界調査先遣隊として、兄弟世界の“そっち”に送り込んだんだけど⋯どうやら返り討ちにあっちゃったみたい⋯⋯」

「戮世界から原世界に行くのは可能なんだな」

「うん!そうだよ!アスタリス!だけどきみたちはもうもどれないよ。それに⋯愛しの君主が、あんなザマじゃあ帰れないでしょぉ?」

アスタリス、サンファイアは攻撃行動再開。フラウドレスへの言及が怒りの沸点を更なる攻撃行動への覚醒に繋がっていく。教皇は即座に迎撃態勢へ移る。

表出していた黒色と白色の螺旋は司教兵器ウプサラソルシエールへと姿を変貌させていく。黒色は鴉素エネルギーに上方修正を施されたニュートリノ・ヤタガラス搭載の『キューンハイト』。白色は蛾素エネルギーに上方修正を施されたニュートリノ・レイソ搭載の『チルペガロール』。各種ウプサラソルシエールが発現された。

サンファイアとアスタリスがウプサラソルシエールと相対するのは今回が初めてである。なので戦況をどうやって攻略していくかが、勝敗を分ける大きなポイントとなる。決して油断する事は許されない⋯。

フラウドレスという驚異的な戦闘能力を持つ彼女が、この有様だ⋯⋯2人にとって信じられない出来事だが、本当なのだろう⋯。フラウドレスが倒された⋯という事実が2人の能力覚醒へ繋がる素材にもなっていく。

「来れるもんならきてごらんよ!君たちおねえさんは⋯」

「お前がフラウドレスを『姉さん』と言うなぁあああ!!」

サンファイアが攻撃を開始。サンファイアの身体は今、ラタトクスと同化している。なので、小回りが非常に効く状態となっている。意思疎通が臍帯を通してでは無く、直接的に実行する事が可能となっているので、バトルコントロールの情報伝達が爆速。

ラタトクスの影分身を使用、その影分身体の全てから放たれる量子エネルギー弾。球状形態を基調としたこの量子エネルギー弾が、およそ30の影分身体から放たれ、一斉に教皇へと命中。命中した途端に煙が発生したが、即時にそれは払われ、教皇の攻撃ターンへと移行する。

だがアスタリスは教皇の攻撃ターンを奪い取ろうとする。

「ちょっと!つぎはソーゴのターンでしょお!?」

「戦いに番なんてねぇんだよ!」

「大人気なーーー!!い!!」

教皇の怒号が木霊する。教皇自らが作り上げた壁に亀裂が入っていく。

『そうか⋯⋯⋯教皇の作ったものを壊せるのは、教皇だけなのか⋯』

分断世界を作り上げた教皇ソディウス・ド・ゴメインド。この壁を作れるも壊せるのも、教皇だけ⋯。教皇の彷徨によって亀裂が生じた壁を見て、サンファイアはある戦略を企てた。しかしこれをマインドスペースでアスタリスに伝えると、教皇に伝わってしまう。

もしかしたら、今、こうして心で処理されている内容も教皇にはバレているのかもしれない⋯⋯。教皇の末広がりな能力に、考察の余地が拡大解釈されてしまう⋯。今は的を絞って、とりあえずは動くしかない⋯。教皇の攻撃で分断壁を壊すんだ。


ラタトクスの量子エネルギー弾が直撃。それを物怖じせずに受け止め、さらには一切の少々休止も挟まずに戦闘行動を継続させる様子を見せている教皇。

「ガキは眠ってろ!」

「いや、、いま、アスタリスの攻撃を食らっちゃうと⋯ひとたまりもない気がするんだけど」

教皇へ攻撃ターンを明け渡さない⋯と言わんばかりにアスタリスは、ルケニア『ニーズヘッグ』を教皇に激突させる。ニーズヘッグは突進攻撃を軸にさせ、その突進の際に生まれた“磁場重力”をも捻じ曲げる恐ろしいグラビティパワーが纏われた身体を突進攻撃に活用。周辺地帯は地面に切れ目が生じるほどの衝撃を生んだ。

一方、アスタリスのルケニア『ニーズヘッグ』のグラビティパワーで分断壁への亀裂は確認されていない。やはりどんだけ強力な攻撃をこの分断世界に与えても、作った本人にしかマイナス負荷を掛けることが出来ないようだ。

教皇に向けての突進攻撃であったが、その高速移動の際に、ニーズヘッグへ忍び寄る魔の手が現れる。

「ざんねんだったねー。ソーゴのとこにはそうかんたんにはいけないんだー!」

虧沙吏歓楼。暑いです。

広島原爆投下の日。何も思わないはずが無い日です。笑顔でいる事が難しい⋯そして冒涜のような気がしてならない心の不調さを体現する日。数々の証言を目と耳で感じ取る日。その惨憺さたるや、戦慄。

「リルイン・オブ・レゾンデートル」にこうした正史出来事のエッセンスを含ませた演出描写があります。こうした演出が気に入らない方も多くいると思いますが、何か自分の言葉で書き残しておきたいと思っての行動です。不謹慎だとは思いません。

遺構にせず、語り継ぐためには誰かが話をしなければなりません。私はこうした手段でしか語り継げないだけです。

何も解決していない中、眠いのでねます。

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