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 1日前の魔族領、とある城にて。

 カツカツと靴音を立て、美しい銀の長髪を揺らしながら、今か今かととある人物を待つ魔族が居た。


 レナード卿――先日暗殺された魔王の従者である。


「ここ数日、魔王様暗殺について調べ回ったが、有益な情報はほとんど無かった・・・」


 わかったことと言えばモーゲンロード公爵の発表通り、複数回の魔法の使用が確認されたことと、実行犯は一人ということぐらいか。


「犯人はかなりの魔法の使い手で、おそらく既に魔族領を抜け人間達の街に潜んでいる、か」


 確かにそう考えるのが自然だろう。だが・・・。


「どうにも納得がいかん。なぜ公爵殿は魔王様がご逝去されたと断言出来た?」


 魔王様のご遺体は未だ見つかっていない。

 魔法で跡形もなく消し去られたと言われれば、それまでだが・・・。


「やはり私が魔王様の死を認めたくないが故、自分に都合の良い情報ばかり集めているせいだろうか・・・」


 顎に手を当て、紅玉のような深い赤をした瞳を細める。


「これはこれはレナード卿」


 考えに耽る私に、目的の人物自らの声がかかる。

 モーゲンロード公爵――金の長髪を後ろに流した人物で、魔族の中でもトップの地位にいる貴族だ。


「公爵殿。本日はお時間を取っていただき感謝します」

「そうかしこまらないでください、我々は同志なのですから」

「ああ、すまない」

「それで、本日はどのようなご用向きで?」

「魔王様暗殺の一件で気になることがあるんだ」


 それこそ、今日私がこの城に来た理由だ。


「ふむ、といいますと?」

「公爵殿はなぜ魔王様が亡くなられたと判断出来た?」

「・・・私は見たのです」

「見た?」

「魔王様が賊の手に掛けられ、亡くなるその瞬間を」

「そんな、まさか・・・!」


 ありえない・・・!あの日、公爵殿と魔王様が一緒に居た、あの日は・・・!


「魔王様が亡くなられたのは、円卓の間です」

「っ!」


 円卓の間――魔王様と魔族の権力者達が集う会議の場。


 当然、集まるのは魔族の中でも力のある者達。力とは権力のみならず、武力を含める。

 そんな場で、公然と魔王様を手に掛けるなど、ただの賊に出来ようか?


 単独での犯行など、到底不可能だろう。

 となると・・・。


「まさか・・・」

「ええ、おそらく考えている通りかと」


 過激派。

 魔王様に近づく下衆共が、あの場にまで紛れ込んで居たというのか!?


 今後の魔族の身の振り方を考える、あの重要な会議の場に!


「私は実行犯を捕らえることで黒幕がわかればと考えているのですよ」

「そうか・・・」


 まさかそこまで過激派が潜り込んでいるとは・・・!

 やはりあの時、無理を押してでも魔王様にご一緒するべきだった!


 身内ですら信用できない今、公爵殿の言うように実行犯に情報を吐かせるのが一番の対処か。


「モーゲンロード様!」


 部屋の扉を勢いよく開け入ってきたのは、一般兵らしき魔族だ。


「どうしました?今は客人が来ているのですよ」

「申し訳ありません。ヴォルフ様からの報告です」

「ふむ・・・あちらで伺いましょう。レナード卿、少々お待ちいただいてもよろしいかな?」

「ああ、わかった」


 公爵殿は今も魔王様暗殺の犯人を追っていると聞く。

 調査で何か進展があったのだろうか。



「お待たせいたしました。少々まずい状況かもしれません」


 別室で報告を受けた公爵殿が、少し焦った様子で戻ってきた。


「む、先ほどの報告か」

「ええ。私が人間達の街へ調査に向かわせている、ヴォルフ君から報告がありましてね。()()()()()()()()()()()()、と。」

「・・・!?バカな、早すぎる!それでは、新たな魔王の座に、過激派が・・・!?」


 勇者の登場は、過激派の魔族が新たな魔王の座に就いてしまうことを意味する。

 穏健派の我々からすれば、勇者は手を取り合える同志である一方、ある種不吉の象徴ともいえよう。


「ええ、少なくともこのまま何の手も打たなければ、そうなるということでしょう」


 モーゲンロードの緋色の慧眼が光る。


「何か策があるのか?」

「はい。レナード卿にも是非お力添えをいただきたいのですが・・・」




 再び現在。


「あ、戻ってきました!」

「おかえりなさい」

「ふぅ、ただいま」


 魔法陣をくぐった先で二人に出迎えられた。

 石板を見ていたから、やっぱり俺が一番最後だったみたいだ。


「何かあったのかしら?」

「え?」

「ずいぶん時間をかけていたようだったから」

「あー・・・」


 そっか、前回は比較対象のレイさんが居なかったから目立たなかったけど、今回は流石にバレるか。


「えっと、石板の後ろに何か彫られてるのに気づいてさ、何かなーって見てたんだ」


 いい機会だし、ここらである程度本当のことを話そうかな。

 そろそろ俺の旅の目的についても共有しておいたほうがいいだろうし。


「そんなのがあったんですか?」

「うん、内容は・・・あー、まあ、暗号・・・みたいな感じだったんだけどね」


 流石に日本語で書かれてて、俺はそれが読めるってとこは隠そう。


「それで、内容はわかったのかしら?」

「うん、まあ・・・そう、俺は{鑑定}のランクを結構上げてるから、なんとかわかったんだ」


 我ながら咄嗟に考えたにしては上手い言い訳だと思う。


「{鑑定}って・・・はぁ、もう突っ込むのも疲れたわ」


 あれ、そうでもなかったか?・・・ってしまった、まさか!


「・・・もしかして{鑑定}って{アイテムボックス}と違って、みんな使えるスキルじゃないのか?」

「そうよ、普通鑑定士ってジョブに就かなきゃ使えないわ」


 おっけー!全然上手い言い訳じゃなかったみたいだ。


「あ、あはは・・・まあ、とにかく{鑑定}でわかった内容は、俺の探してる人がどうやら大きな王国へ向かったらしいってことなんだ」

「サイトさんの探してる人って、どんな人なんですか?」

「どんな人っていうかまあ・・・その・・・」


 まずい、特徴なんか全然知らないぞ!

 うーん・・・はぁ、もういいか。話しちゃおう。


「実は俺、勇者を探してるんだ」

「ふぅん、なるほどね」

「勇者・・・」


 アリスは腑に落ちたような反応で、レイさんは何かを深く考え込んでいるようだ。


「だからまあ、俺としては、次は勇者が向かったらしい大きな王国ってとこに行きたいなーって考えてたんだ」

「なるほどね・・・そうなると、次の魔王はやっぱり過激派になるのね」

「うん・・・残念だけど、多分そうなると思う。レイさんはどうかな?向かう場所、それでいい?」


 まだ何かを考え込んでいる様子のレイさんにも確認を取る。


「サイトさんは・・・サイトさんは、勇者に会ってどうするんですか?」

「え?」


 予想外の返しだった。


「勇者に会って、一緒に戦うつもりなんですか?魔族と・・・」

「えっと・・・」


 いつになく不安げな表情でまくしたてるレイさんに、思わずたじろいでしまう。


 そうか、大事なとこだけ隠して目的を話そうとしすぎるあまり、配慮が足りなかった・・・!

 レイさんにとっては、かなりデリケートな問題だよな・・・。


「その・・・人間と魔族が争うたびに勇者が来て、魔王を倒して・・・それでほんとに平和になったって言えるのかな?」

「それは・・・!」

「だから勇者とは、本当の平和のためにはどうするべきか、会って話がしたいんだ。もちろん、次の魔王が悪いことをするならどうにかしなきゃいけないとは思うけど、やっぱりみんな平和が一番!でしょ?」


 こういう時はちゃんと本心で話すのが一番だ。

 俺は確かに女神様から魔王を倒せって言われてこの世界に来たけど、その本質は結局こういうことだと思うんだよな。


「俺には次の魔王がいいヤツなのか、悪いヤツなのかすらまだよくわからないけど、この世界を平和にするべきだと思うし、したいんだ」

「そう、ですか・・・」

「ふふ、サイトちゃんたら言うわね」


 少し茶化したようにアリスが言う。


「な、なんだよ!いいだろ、たまには。まあ、そういうわけだからさ。もっと力を付けつつ、勇者を探すための旅なんだ。レイさんとアリスには、これからもついて来てくれると嬉しい」

「私は最初からそのつもりよ」

「ぼ、ボクも・・・そういうことなら、一緒に行きます!」

「うん、ありがとう。二人共!」


 思ったより色々話すことになっちゃったけど、結果的に良かったのかな、これで。


 いつかタイミングを見計らって、俺が異世界から来たってとこも含めて全部話そうかな?

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