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39 道具を揃えよう

 レイさんが無事に魔法使いになれたので、諸々の用事を済ませてからダンジョンへ向かうことになった。

 宿屋の部屋を3人用のとこに変えてもらって、今はアイテムの買い出しにいくところだ。


 なぜかマジックバッグに入れておいたポーションが全部無くなってたんだよな。


 てっきりカマセーヌさん達にポーションを使わせちゃったのかと思ってたんだけど、俺のを使ったんだろうか。

 ・・・俺の腕の傷、そんなに酷かったのかな?


 そうだとすると、もし{アイテムボックス}に仕舞っていたら俺の治療は出来ていなかっただろうし、結果オーライだな。

 せっかく手に入ったマジックバッグを使ってみたくて、なんとなくポーション入れにしていて良かった。




「ここなら大抵のアイテムは買えるわ」

「おー、なんか雰囲気あるなー!」

「なんだかちょっと怖いです・・・」


 アリスに連れられて着いたのは、お爺さんが一人で経営している古い道具屋さんだった。

 一応通りに面してはいるけど、日当たりが悪くて少し暗いから、レイさんが言うようにちょっと怖い感じがする。


 でも、中は掃除が行き届いていて綺麗だし、品ぞろえも確かに良さそうだった。


「久しぶりね、お爺さん」


 アリスと店のお爺さんは知り合いのようだ。


「んん?おや、お前さんは確か・・・ゴンザレス!」

「アリスよ!!」


 ・・・知り合いだよな?


「アリスはほんと色んなトコ知ってるな」

「ええ、私も昔は今みたいに世界中を旅していたから、その時にね」

「へぇ、いつも助かるわ、ありがとね」

「アリスさんすごいです!」


 さーて、欲しいのはポーションと・・・臭い袋と・・・お?爆炎石まで売ってる!

 あれ?でも前に俺が手に入れたのとはずいぶん見た目が違うな。というか、表面に魔法陣が描かれてる。なんだこれ?


「なぁアリス、爆炎石が売ってるんだけど、前のと全然見た目違くないか?」

「あら?あー、それは人工ものの爆炎石ね」

「人工ものとかあるのか!」

「ええ、人工ものは主に魔法使いや錬金術師が作るのよ。天然ものと違って魔力を流し込まないと爆発しないから安全ね」

「へぇ・・・!」


 なるほど、つまりは魔法仕掛けの爆弾ってことか。


「その代わり天然ものより値が張るし、威力が高ければ高いほどその額は上がっていくわ」

「面白いな」


 爆炎石には助けられたし、これも買っておこう。


「お?この瓶はなんだ?」


 目に留まったのは、表面に多数の魔法陣が描かれた瓶だ。多種多様な大きさがあって、独特なデザインが目を引く。


「それは魔法瓶よ、魔法を封じ込めておくことが出来るわ」

「へぇ・・・!」


 魔法瓶といえば保温、保冷が出来る便利グッズってイメージだけど、こっちの世界だと魔法を封じ込めておく道具のことなのか。


「封じ込めた魔法は一度しか使えないけど、壊れない限り何度でも使えて結構便利よ」

「へぇ!レイさんは魔法使いだし買ってみようかな・・・って高!一番安いのでも5ゴールド!?」

「そうね、結構高いから手を出すのはもう少し稼げるようになってからのほうがいいかしら。それに、5ゴールドのそれじゃせいぜい火起こしの火種ぐらいしか封じておけないわよ」

「うへー、そうなのか・・・じゃあ、ものすごい魔法を封じようと思ったら、何百ゴールドもするとんでもない魔法瓶が必要なのか?」

「魔法を封じることだけが目的ならそこまでかからないわ。ただ、強度を上げるためには大型化して、多数の魔法陣で補強するのが手っ取り早いのよ。だから小型かつ強度も高いものとなると数十プラチナ、つまり数千ゴールドの値が付くこともあるわね」

「たっか!!」


 プラチナって、最初に門番のおじさんに教えてもらった時から一度も聞かなかった単位だぞ・・・。

 魔法瓶ってほんとにピンキリなんだな。


 残念だけど、魔法瓶に手を出すのはまた今度だな。


「よし、こんなもんでいいかな」


 買い物カゴに入れた商品はポーション10本、臭い袋5個、人工ものの爆炎石6個(中くらいのが2個と小さいのが4個)だ。


「あら、結構買うのね」

「うん、レイさんの分もあるから」

「え、そんな、だ、だめですよ!」

「でもレイさん、多分あんまりお金持ってないでしょ?それに、{アイテムボックス}にあるアイテムは本人しか使えないからさ、レイさんも持っててくれたほうがいざって時役に立つと思うんだ」


 カマセーヌさん達に腕の怪我を治療してもらえたのも、多分たまたまマジックバッグに入れておいたおかげだしな。


「確かにそうね。それなら私からはマジックポーションをあげるわ」

「アリスさんまで・・・!本当にいいんですか・・・?」

「うんうん。って、マジックポーションってなんだ?」

「魔力を回復させるポーションよ、魔法使いにとっては大切なアイテムね」

「へぇ!そんなのもあるんだ」


 知ってたら全部奢ったのに!

 まあ、ともかく買うものは決まったのでお爺さんのところで精算しよう。


「ふぅむ。こっちが255シルバー、そっちが50シルバーじゃな」


 俺の分が255シルバーで、アリスが買ったマジックポーション5本が50シルバーか。

 結構いい金額だけど、狼退治でずいぶん入ってきたから全然平気だな。


「2ゴールドと55シルバーでお願いします」

「50シルバー、ここに置いておくわね」

「はいよ」


 カタン。

 何かの音がした。


「わっ!?」

「ん?」


 振り向くと、レイさんが杖を手にしていた。

 どうやら壁に立てかけてあったものが倒れてきたらしい。


 山菜のぜんまいみたいな形の、古めかしい杖だな。


「おっと、すまないね。怪我はなかったかい?」

「は、はい。大丈夫です!」


 良かった。幸い何事もなかったようだ。


「おや・・・?」

「・・・?」


 店主のお爺さんがじっと杖とレイさんを見つめている。

 どうしたんだろう?


「そうか・・・確かにそれがいい。お前さん、その杖を貰ってやってくれんかの?」

「えっ・・・ボクがですか?」

「ああ。その杖はワシが若い頃に師匠から譲り受けたものでな、生きておるんじゃよ。無論、喋りはせぬが確かに"意思"がある。どうやらお前さんのことを気に入ったようじゃ」

「ボクを・・・?」


 え、何そのありがちだけど普通にすごいヤツ。

 ジョブの件といい、レイさん主人公体質すぎないか?


「ちょっと!その杖って確か・・・」

「ああ、ゴン・・・アリスの考えておる通りじゃろう」


 今またゴンザレスって言おうとしなかったか?


「ワシももう歳を取った。今のワシが持つより、未来ある若いもんが持っていたほうがいいじゃろう。貰っておくれ」

「いいんですか?大切なものなんじゃ・・・」

「貰ったほうがいいわ」

「わ、わかりました・・・大切にしますね!」

「うむ、そうしておくれ」


 杖を見送るお爺さんの寂しそうな、けれどどこか嬉しそうな顔を背に、店を後にした。


 俺・・・終始蚊帳の外だったんですけど!

 現在の所持金は18ゴールドと25シルバーです。

 多分誰も気にしてないと思いますが、消えた分は宿代です。

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