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38 二人目の仲間

 魔王が暗殺された件についての話が終わったようなので、ガイラスさんに聞きたかったことを質問してみる。


「ガイラスさん!」

「ん、なんだ?」

「勇人って人のこと、知りませんか?」


 今俺達が旅をしている理由は主に3つ。勇人さんの行方を知ること、魔王について知ること、強くなること。

 魔王についてはさっきとんでもない情報を聞いたばかりだし、強くなるのもモンスターと戦っていれば自然と達成できる。


 けど、勇人さんについてはまだダンジョンの石板に書かれていた悪戯書きしかヒントがないんだよな。

 となると、あとは直接知っていそうな人に聞くしかない。


「ユウト・・・?悪いが聞き覚えがねぇな。どんなヤツかわかれば思い出すかもしれんが」

「そうですか・・・うーん」


 どんなヤツって言われても、この状況で勇者です!って言ったら余計混乱させそうだし、そもそもなんでそんなことを知ってるんだって話になるよな・・・。

 容姿について話せればそれが一番いいんだけど、あいにく見た目の情報は全く知らないし。


「あー、もし出会ってたら忘れなさそうな人ではあります」


 曖昧だけど、これぐらいしか言えることがないんだよな。


「そうか。ま、仕事柄重要なヤツなら大体覚えてっから、それなら多分会ったことは無いと思うぞ」

「わかりました、ありがとうございます」

「おうよ。まあ、なんか情報が入ったら伝えるよ」

「助かります!」


 情報は無し、か。


 まあ、もし女神様が魔王の暗殺について知ってて、近いうちに現れるであろう過激派の魔王への対策として俺達をこの世界に呼んだのなら、勇人さんもまだ大した行動は起こしていないはずだ。

 ガイラスさんが知らなくても無理はないか。


 勇人さんも今の俺みたいに旅をしてるのなら、どこかでばったり出会うかもしれないしな。

 そう焦ることもないか。




 一通りの話が終わった後、当初の目的であるレイさんの冒険者登録をすることになった。

 今は必要事項の記入を終えて、対応してくれた受付嬢さんと4人で試金石のある部屋へ向かっているところだ。


 ちなみに、記憶喪失のレイさんに必要事項がきちんと書けるか不安だったけど、そこは事情を知ったガイラスさんの手助けとアリスの信用でなんとかなった。


「こ、ここに手を置くんですね・・・」

「はい」

「ファイトよ、レイちゃん!」

「レイさんならきっと大丈夫ですよ!」


 不安そうにするレイさんを3人で見守る。


 試金石に手を当てたレイさんが青白い光に包まれる。

 あー、俺のときもこうだったなー。まだ数日前のことだけど、なんだか少し懐かしい。


 ・・・・・・あれ?なんか、長くないか?


 青白い光が消えない・・・どころか、なんだかさっきよりも眩しくなったような?

 俺のときはこんな長くなかった気がするんだけど・・・。


「こ、これは・・・」

「驚いた。思った以上の逸材かもしれないわね」

「ど、どうなったんだ・・・?」


 試金石に浮かび上がっていた候補は、魔法使い、魔拳士、魔法剣士、錬金術師、テイマー、弓使い・・・って!多すぎ多すぎ!

 嘘だろ!?ジョブに就けなかったら、なんて言ってたけど・・・大抵のジョブには就けるんじゃないか!?


「私も長く受付嬢をしているわけではありませんが、こんなことは初めてです!」

「え、えっと、ボク、どうしたら・・・」

「好きなものを選べばいいわよ。途中で変えることもできるもの」

「そうそう!」


 驚いたー、魔族だからってのもあるのかもしれないけど、レイさんがここまですごい人だったなんて。


「じゃ、じゃあ魔法使いにします!」

「いいけど、大丈夫かしらね」

「何か問題でもあるのか?」

「うーん、問題という問題はないのだけど、魔法は術者のイメージが大切なのよ。記憶喪失の彼女に上手く扱えるか、少し心配ね」

「た、多分大丈夫だと思います!」


 そう言いながら、レイさんは両手を胸の高さに上げ、ふんす!と意気込んでいる。

 俺より10cm以上は小さい体格も相まって、小動物みたいでかわいらしい。どうやらやる気と自信があるようだ。


「そう?ならいいのだけど・・・まあ、最初はダンジョンの浅いところで慣らしましょうか」

「そうだな」

「はい!」


 よーし、次は俺の番だな。


「俺もいいですか?他のジョブが出てないか試したくて」

「ええ、どうぞ」


 今度は俺を青白い光が包む。

 頼む、盗賊以外のかっこいいジョブ・・・!







 俺を包んでいた青白い光が消えていく。

 あれー?やっぱりレイさんの時より短いような・・・。


 浮かび上がった候補は・・・盗賊だけだった。


 うん、まあ、そんな気はしてたよ・・・とほほ。

 レイさんの結果が羨ましい。


 まあ俺はともかく、レイさんが無事魔法使いのジョブに就けてよかった。




 そんなこんなで、レイさんの冒険者カードを発行してもらうことになった。


「お待たせしました、こちらがレイさんの冒険者カードです」

「わぁ、ありがとうございます!」


 出来上がったカードを、嬉しそうに瞳をキラキラさせながら受け取るレイさん。

 やばい、可愛い。この世界に来て初めてのトキメキかもしれない。


 いや、フローナさんも美人だったけどさ?なんかこう、レイさんには守りたくなるような、庇護欲が掻き立てられるような感じがあるんだよな。

 やっぱり俺が異世界に望んでいたのは、こういう可愛い女の子との出会いなんだよなー!


 今まで出会ってきたのは、俺が守るどころか守られる側になる屈強なおと・・・いや、おん、あー、アリスだけだったしな、うんうん!

 そんな風に頷いていると、当の本人がずいっと顔を覗き込んできた。


「サイトちゃんたら何頷いてるのよ」

「うわぁ!?び、びっくりさせんなよ」

「失礼ね、人の顔を見て驚くなんて」

「いやだって顔でか――」

「あ゛ぁ゛!?」

「――くれちゃってるからさ、レイさんがカードを受け取るところが!か、感動的なシーンだからちょっと、どいてて!」

「あら、確かにそうね・・・悪かったわ」


 ふぅー、あぶねぇ・・・。

 アリスを怒らせると怖いからな・・・。まあ、アリスも頼もしい仲間であるのは間違いないんだけどね。


「お二人のおかげで無事に冒険者になれました、本当にありがとうございます!」


 受け取ったカードを大事そうに仕舞いながら、何度目かわからないお礼を言われた。


「いやいや、俺は大したことしてないですよ」

「ええ。私も大したことはしていないわ」

「そんなことないです!ボク、とっても嬉しかったんです。記憶を無くして、気が付いたら人間の街に居たボクを、誰も助けてくれなくて・・・。最後の希望が冒険者になることだったのに、あんな目に遭って・・・。だからボク、本当に嬉しかったんです、お二人が助けてくれて!」

「「レイさん(ちゃん)・・・」」


 月並みな表現だけど、太陽のような笑みを浮かべるレイさんがとても眩しく見えた。


「これからも何度だって助けますよ、もう仲間だし!な、アリス!」

「ええ、そうね」

「本当にボクでいいんですか・・・?」

「「もちろん(よ)!」」

「っ・・・!よろしくお願いします!」


 というわけで、可愛らしい新米魔法使いのレイさんが正式に仲間になったのだった。

 いいね、感想、ありがとうございます!

 やっとレイが正式に仲間になりました。実は投稿を始める前から構想に居たので、結構長く待ってもらってました。

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