35 出会い
「ふぅ・・・やっと一息つけたな」
食事を終え、お風呂に入ったり着替えたりと、ひとしきりやることを終えた俺はベッドで横になっている。
「そういえばステータスチェックしてなかったな」
狼達との死闘で相当レベルが上がったはずだけど、チェックする暇がなくて結局見ていない。
「今のうちに見ておくか・・・」
{サイトウ サイト}
{種族 :ヒューマン}
{Lv :25(+8)}
{ジョブ:盗賊}
{力 :59(+17)}
{耐久 :51(+15)}
{器用 :77(+22)}
{敏捷 :85(+24)}
{魔力 :0}
{スキル:鑑定(S) アイテムボックス(S) 気配感知(C) 忍び足(D) 剣術(C) 観察眼(C) 罠感知(C) 鍵開け(D) 急所突き(C) 罠師(D)}
{ユニークスキル:言語理解 成長加速 モテスキル(男性用)}
{獲得可能スキル: }
{使用可能スキルポイント:22(+9)}
「うお、めっちゃ上がってる!」
スキルポイントも途中で{急所突き}と{観察眼}のランクアップに使っちゃった割に、すごい溜まってるな。
うわー、どのスキルに振るか迷っちゃうな・・・!
「・・・ん、{罠師}?そういえば、ダークウルフを倒した時になんか手に入ったような・・・あれか」
早速チェックしてみよう。
{罠師 罠の扱いが上手くなるパッシブスキル。罠を解除したり、仕掛けたりする能力が上がる。ランクが上がるとより罠の扱いが上手くなる。}
{ランク上昇が可能です。罠師のランクを上げますか? YES / NO}
{必要ポイント:3}
「おー、便利そうだけど・・・地味なスキルだな」
どうせならもっとかっこいい技がいいんだけどなぁ・・・。
分身とか、瞬間移動とか・・・。
そういえばフローナさんが、体を鍛えたら戦士のジョブが出ることがある、とかって言ってたっけ・・・。
結構強くなったし、今才能の試金石に触れたらもしかして・・・かっこいい技がいっぱい使える戦士になれたりして・・・!
明日はアイテムを補充してからアリスとダンジョンに行くつもりだったけど、その前に1回才能の試金石に触れに行こうかな。
「よし、やることも決まったし寝よう・・・」
結局スキルポイントはいつも通り温存することにした。
特に何かが不足してるとも思わないし、結局その時に必要だと思ったスキルに割り振るのが一番いい気がするんだよな。
ちゅんちゅんとさえずる鳥の声が聞こえる。もう朝か・・・あと少し寝たいな・・・。
こんこんとドアをノックする音が聞こえる。アリスか・・・でももう少しだけ・・・。
こそこそとベッドの横を歩く音が聞こえる。なんだろ・・・寝起きドッキリか・・・?
「サイトちゃん!」
「んん・・・」
目を開けると、アリスの顔面が視界いっぱいに映った。
「うわぁあああ!?」
「はぁ、やっと起きたわね」
「お前それやめろよ!?」
ダンジョンでも似たようなことをされたのを思い出す。
あの時は後頭部をぶつけてめちゃくちゃ痛かったんだよな・・・。
幸いここはベッドの上だったので、驚いて叩きつけた頭を押し返す感触は柔らかい。
「何よ、起きないのが悪いんじゃない」
「そうだけどさ・・・って、どうやって入ったんだ!?」
今回もアリスとは別室に泊まることにしたから、鍵は持ってないはずだ。
「呼びかけても仲間が部屋から出てこないって言ったら、宿屋の主人が開けてくれたのよ」
「そうだったのか・・・悪いことしちゃったな」
なんだか申し訳なくなって主人に謝罪をしたら、『何事もなかったようで、何よりでございます』と言われた。
いい人で良かった・・・。
その後、少し遅めの朝食を取った俺達は宿を出た。
目立つ時計台を目印にギルドへ向かうと、騒がしい声が聞こえてきた。
なんだ・・・?喧嘩でもしてんのかな・・・?
「うぅ・・・どいてください!」
「うるせぇ!何かしでかすつもりだろ!」
ギルドの前で言い争っていたのは、水色のワンピースを着た可愛い女の子と、見るからにガラの悪い男達だった。
って、あれ・・・?あの女の子どこかで・・・。
白みがかった銀髪に尖った耳・・・そうか、この街に来た時にぶつかった子だ!
「そんなことありません!冒険者登録しにきただけです!」
「だぁかぁらぁ!俺達についてくりゃそんなことしなくて済むっつってんだろ!」
男が女の子の手を掴み、強引に連れて行こうとする。
「嫌です!放してください!」
「うるせぇ!はなっからてめぇら魔族に拒否権なんざねぇんだよ!」
ん、魔族・・・?よく見ると、確かに髪の間から小さな黒い角が2本生えているのが見えた。
ほんとだ・・・てっきりエルフかと思ってたけど、角が生えてる。魔族の子だったんだ。
「なぁアリス、なんで誰も助けないんだ?」
ガラの悪い男達は4人居て武装もしてるけど、ここはギルドの前だ。
人だかりも出来てるし、あれだけ可愛い女の子なら助ける人が現れないほうがおかしい。
「あの子が魔族だからよ。前にも言ったでしょう?人間と魔族の関係は決して良好とはいえないって」
「そんな・・・」
じゃあ、誰もあの子を助けないってことか・・・?
「黙ってついてくりゃいいんだよ!奴隷になりゃ冒険者なんかにならなくて済むだろうが!」
「っ・・・!」
"奴隷"という単語にアリスと二人で眉を顰める。うわぁ・・・この世界にも居るんだ、こういうこと言っちゃうやつ・・・。
「奴隷って、そんなの認められてるのか?」
「いえ、本来奴隷制度は国に認められてはいないわ。だけど、魔族は黙認されているのが現状よ」
「なんだよそれ、ひどいな・・・」
よーし、誰も助けないなら俺が助けよう!
ちょうどLvもだいぶ上がったところだし、ぐっすり寝たから体力もばっちりだ!
「ちょっと、どこに行くのよ!」
一歩前に踏み出した俺をアリスが呼び止める。
『まあ見てて』とだけ返し、人だかりを掻き分けていく。
「ちょぉっとまったぁ!」
騒ぎを中心に、ちょうど円のようになっていた空間に入り叫んだ。
「あぁ?なんだお前は」
「こいつ、例の狼騒動で活躍したっていうルーキーじゃねぇか?」
「ほぉ・・・こいつが」
周りの人だかりもざわざわと噂話を始めた。
お?もしかして俺ちょっと有名人になってる・・・?いいぞ、これでビビってくれたらやりやすい!
「狼騒ぎで調子に乗ったガキが、今度はヒーローの真似事か?」
「俺はただ、大の大人がよってたかって女の子に絡んでるのが見過ごせないだけだ!そっちこそ、俺を知ってるなら逃げたほうがいいんじゃないか?」
向こうは俺を知ってるみたいだし、少しかましてみた。
戦わずに済むならそっちのほうがいいしな。
「くく、ははは!俺達が逃げるって?面白ぇ、やってみろよ」
ん・・・?なんか思ったよりもビビらないぞ・・・?
そういえば人間相手にやったことはなかったけど、{鑑定}してみようか。
目の前のこいつのステータスを見せてくれ!{鑑定}!
{Lv :36}
{ジョブ:戦士}
{力 :115}
{耐久 :106}
{器用 :73}
{敏捷 :81}
{魔力 :12}
あれぇ・・・?ちょっとまって、強くね・・・?
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