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28 二つ目のダンジョン

 アリスの案内で宿屋に向かう途中、ふとアリスの歩みが止まった。


「ん、どうしたんだ?」

「・・・」


 アリスの視線の先には、ガムーザを行き交う人の群れがあるだけだった。


「知り合いでもいたのか?」

「あ、いえ。なんでもないわ」

「そうか・・・?」

「ええ、行きましょ」


 ちょっと気になったけど、黙って付いていくことにした。


 数分後、俺たちは無事に部屋を取ることが出来た。


 今回の宿はヴァレッサの街で泊まったところよりもお高いところだけど、なんと部屋それぞれにお風呂が付いていて、人の目を気にせずに入れるらしい。


 ご飯もレストランで食べる方式ではなく、ある程度決まった時間に頼めば部屋に持ってきてもらえるようだ。


「部屋も取れたことだし、俺はダンジョンに行きたいんだけどいいかな?」


 今のところ勇人さんの手がかりは石板の悪戯書きだけだからな。

 もしかしたらここのダンジョンのにも何か書き残しているかもしれないし、チェックしておきたい。


「悪いんだけど、少し用事があるの。明日でもいいかしら?」


 予想外の返事だった。明日かぁ・・・ただ待つのも暇だしなぁ・・・。


「ありゃ・・・うーん、それなら一人で様子見だけ行ってきてもいいかな?」

「そうねぇ、3階層までという条件なら一人で行ってもいいわ。あそこは全5階層だから」

「わかった、3階までだな」

「ええ、間違ってもボスに一人で挑んだりしちゃダメよ」

「わかったー!」


 もとより、一人でボスに挑むなんて危ないことはしないつもりだ。

 ここのダンジョンは一応、ホブゴブリンの討伐依頼と同じく、本来はEランクから入れるところらしいからな。


 そんなダンジョンのボスともなると、もしかしたらホブゴブリンより強いかもしれない。

 罠だって、前にあった岩が転がってくるヤツなんか、アリスが居なかったら危なかったし。


 ちょっとレベル上げをしつつ、アリスと二人で攻略するときの偵察をするぐらいに留めよう。


「・・・とは言ったものの・・・。ここのダンジョンって、どこにあるんだ?」


 いつもアリスに案内してもらってたから、全く道がわからない。

 通行人にでも聞くか・・・。




「おい聞いたか?お前ら!」

「ああ、早速絶好のチャンスが来やがった」

「ガムーザまで追ってきたかいがあるってもんだ」

「よーし、ヤツが程よく奥まで入り込んだら、マジックバッグを奪ってトンズラこくぞ!」

「「おう!」」


 当然のようにカマセーヌ達に盗み聞きされている才人であった。




 数十分後、俺はなんとかダンジョンの入り口にたどり着いた。


「ふぅ・・・ここか!」


 才人は早速、単身でダンジョンに乗り込んだ。


 そしてもちろん、この男達も。


「ん・・・?」

「どうした、カマセーヌ?」

「いや、()()()()()()のが気になってな」

「言われてみりゃあ確かに・・・まあ気にすることねぇんじゃねぇか?入るところを見られねぇほうが、俺達には好都合だしよ」

「そうだな。見失う前に行くぞ!」




 一行がダンジョンに入って数分後、入り口に二人の男が現れる。


「このバカ!この緊急時に持ち場を離れるとは何事だ!」

「す、すみません!」

「誰もダンジョン内に入ってないだろうな?」

「じ、自分が離れたのはほんの数分なんで、た、多分入ってないと思います・・・」

「まったく・・・」


「例の件、ギルドには報告したんですか?」

「ああ、大事を取ってCランク以上の冒険者が対応にあたる手筈だ」

「よかった、それなら安心ですね!」

「ああ。だが、これ以上被害者を増やさないためにも、一般冒険者の立ち入りは禁止だ。いいな!」

「はい!」




 何も知らない才人は一人、ダンジョンを探索していた。


「これは・・・迷いそうだなぁ」


 入ってすぐに目に飛び込んでくるのは、薄萌葱色の床と壁。


 壁は前のとこと同じくレンガ状のブロックでできてるけど、床はそこのものよりも大きな石畳で、色合いと合わさりまるで新品の畳のようだった。


「前のとこよりずいぶん広いな」


 前のダンジョン、つまりツェンノインはほとんど一定サイズの通路の連続で、広場のようになっているのはボス部屋など、一部の部屋だけだった。

 けど、このダンジョンは歩いていると定期的に広い空間に出る。


 広場には様々なデザインの石像があるし、通路にも飾り柱があって、かなり凝った作りだ。


「ダンジョンはどこもシンプルなデザインなのかと思ってたけど、全然違うな」


 物珍しさについ辺りをきょろきょろと見まわしながら進んでいき、見つけた階段を下りる。


 2階、3階。あっというまにアリスと約束した階層まで来てしまった。




 そうして初めて気が付く、違和感。


「なんか・・・なんもないな。っていうか、誰も居ない・・・?」


 モンスターはおろか、冒険者の一人もいない。

 ツェンノインですら、たまに初心者らしき冒険者とすれ違っていたのに。


 この広い迷宮に、たった一人。


 最初から分かっていたはずなのに、今はその現実がうすら寒く思えた。


「帰ろうかな・・・」


 嫌な予感。嵐の前の静けさというか、とにかく、そういうものを感じた。




 来た道を引き返そうと、踵を返したその瞬間。


「う、うわああああああ!!」


「!?」


 悲鳴が聞こえた。俺が来た道のほうから。


 {気配感知}に反応がないか、意識を集中しながら駆ける。


「っ!こっちか!」


 {気配感知}の範囲ギリギリに3つ、いや、4つの気配が入った。


「なんなんだよこいつ!?」

「チッ、早ェ!」


 近づくにつれ聞こえてくる戦闘音。


 くそ、なんなんだ・・・!?

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