26 情報整理、その後出発
「聞いたか?お前ら」
「あぁ、どうやらガムーザに行くみてぇだな」
「ちょうどいい、俺らもそろそろ行こうと思ってたとこじゃねぇか」
「でもどうすんだ?アリスの野郎、馬より早ぇって言ってるぞ」
「心配はいらねぇ、どうせあいつらが出るのは明日の朝だ。だったら、俺達は今から向かえばいい」
「今から行くのかよ!?もう暗くなってきてるってのに!?」
「るせぇ!つべこべ言わず行くぞ!」
噛ま・・・カマセーヌ達に盗み聞きされていることなど露知らず、才人達は宿に到着した。
いつものレストランで食事をとり、風呂に入った後、部屋に戻る。
「ふぅ・・・」
ここのレストランの料理、やっぱり美味いなぁ。
ガムーザって街のご飯も美味しいといいんだけど・・・。
「さて、寝る前に昇格条件でもチェックするか」
歯磨きを済ませた俺は、寝る前に諸々のチェックを済ませることにした。
フローナさんは冒険者手帳に必要ポイントが書いてあるって言ってたな。
どれどれ・・・ん?
「Fランクにはポイントだけで上がれるけど、E以上になるにはそれ以外の条件も必要なのか・・・」
まとめるとそれぞれ必要なポイントは
G→Fが100
F→Eが500
E→Dが1000
D→Cが3000
C→Bが5000
B→Aが10000
A→Sが0
らしい。これに加えて、特定のダンジョンのクリアや指定モンスターの討伐、ギルド職員との手合わせなどの条件を達成したら昇格できるようだ。
ただ、何か偉業を成し遂げた場合は、ギルドのお偉いさんの権限で直接ランクを上げてもらえることもあるみたいだ。
というか、高ランクになるにはポイントよりもそっちのほうが重要らしくて、低難易度の依頼をコツコツこなし続けるだけじゃ、せいぜいDランクが限界のようだ。
Sランクに至っては逆にポイントが不要らしいから、誰でもコツコツ頑張ったら高ランク!とはいかないんだな。
「なるほどな・・・」
最終的に、ポイントは飾りになるみたいだな。
まあそうか。じゃなきゃ、ゴブリン倒して数十年、他のモンスターを一切倒さないままSランクになりました!みたいな人が現れちゃうもんな。
そうなると、アリスはただポイントを稼ぎ続けただけじゃなくて、何かすごいことをやり遂げたんだな。
今度機会があったら、何したのか聞いてみようかな。
「・・・そういえば更新されたカード、見てなかったな」
せっかくフローナさんが更新してくれたのに、昇格条件だけ気にして何ポイント貰えたか確認してなかった。
「んーと・・・え!?107!?」
確か、更新される前の残りポイントは7だったはずだ。ってことは・・・ぴったり100も貰えたことになる。
「ホブゴブリンですら70だったのに・・・?」
でもそうか、俺のときはアリスが道を覚えてたし、{罠感知}とかのスキルがあったからすんなりいけたけど・・・。
普通は道なんてわからないし、罠にも気をつけなきゃいけないし、証明部位ははぎ取れないし・・・。
意外と妥当なのかもしれないな。
「あとは地図のチェックぐらいか」
ギルドで購入した地図を開いてみた。
どうやら今俺がいるのはかなり広い大陸のようだ。この辺りは穏やかな平原が続いていて、次に行くガムーザまでは難なく行けそうだな。
「しばらくは平原続きになりそうだな」
まだガムーザ以外の街がどんなところかわからないから、そのさらに次の行先は当然決めていない。
けど、どの方角に進むにせよ、しばらくは変わり映えのない平原が続いているようだった。
「山や海はかなり遠くみたいだな・・・」
そういえば、ここのレストランにはあんまり大きな魚料理がなかったっけな。あれは海が遠かったからか。
「よし、なんとなくわかったし、今日はもう寝よう・・・」
正直、地図だけ見ても街の特徴とかがわからないから、あんまりピンと来なかったな。
ま、ここが小さな島ではないことがわかったし、しばらくは陸続きで旅が出来そうだ。
「ふぁぁ・・・朝か」
朝、というか早朝だな。1時間戻っただけで空が暗くなりそうなぐらいの。
昨日は結構寝るの早かったしな・・・。
「アリスはもう起きてるかな?」
俺は部屋の洗面台で歯磨きや洗顔を済ませ、着替えてからアリスの部屋に向かうことにした。
お風呂もあるし、この世界の衛生観念って結構しっかりしてるよな。
この世界にはちょくちょく転移者が来るみたいだし、もしかしたら誰かがあっちの文化を広めたのかもしれないな。
コンコン、とドアをノックする。
結構朝早いからまだ起きてないかな・・・?
「あら、はーい」
「あ、アリス、起きてた?」
「えぇ、ちょうど今着替えていたところよ」
良かった、起きてはいたようだ。
「うふふ、見るかしら?私のネグリジェ」
ネグリジェって確か・・・あのひらひらした、女性がよく着る寝巻みたいなやつだよな・・・。
思わずアリスが着ている姿を想像する。
「うっ・・・え、遠慮しておくよ」
俺は湧いてしまったイメージを搔き消すように、ブンブンと首を横に振りながら丁重にお断りした。
朝っぱらからなんてものイメージさせてくれるんだ、全く!
そんなやり取りをしつつ、少し待っていると部屋の扉が開いた。
「待たせたわね、朝ごはんを食べたら出ましょうか」
「ああ。でも、こんなに早くからやってるのか?レストラン」
「ええ、早朝から夜遅くまでやってるから大丈夫よ」
「そりゃすごいな。ありがたいね」
これがヴァレッサの街で食べる最後のご飯だからな。おなか一杯食べて行こう。
「あんなにいっぱい食べるんじゃなかったあああ!」
「ほら、もっとスピード上げるわよ」
「降ろしてくれえええ!!!」
平和で穏やかな草原の道。
ガムーザへと続くその道の上を俺は・・・アリスに抱えられ、爆速で運ばれていた。
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