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25 旅の目的

「・・・さん、サ・・トさ・・・・サイトさん!」


 茫然自失とする俺に、フローナさんの声が響く。


「え、あ、はい」

「大丈夫ですか?お疲れのようですが・・・」

「あ、はい、いえ、大丈夫です・・・」


 あれ?俺どうしてたんだっけ?


 確か・・・そうだ、フローナさんに旦那さんが居ることが分かったショックでボーっとしてたんだ。


「カードの更新、終わりましたよ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 旦那さんは・・・もう帰ったみたいだな。


 ・・・はぁ、そりゃそうだよな。優しくて、美人で、仕事の手際まで良かったら旦那さんぐらいいて当然か。

 そもそも、モテスキル(男性用)は女性には効果無いし、はなっからチャンスなんてなかったわけだ。


 ・・・まあでも、これで何の未練もなく()()()()()()()()()な。




 アリスに魔王と勇者の関係について聞いてから、今後どうするか考えてたんだ。

 とりあえず今は3つ、目的を作った。


 1つ、魔王についてもっと知ること。

 アリスの話じゃ、今の魔王はわざわざ異世界から勇者がやってくるほど悪いヤツではないらしい。でも実際、俺と世代の近そうな勇人さんが勇者として来てるみたいだし、俺も女神様に魔王を倒せって言われてこの世界に来てる。

 この謎を解くには、やっぱり魔王のことをよく調べるべきだと思うんだよな。


 2つ、勇人さんの行方を知ること。

 勇人さんは多分、俺より少し前にこの世界に来たんだと思う。勇人さんに会えば魔王のこともわかるかもしれないし、同じ日本人として是非会って話したい。


 3つ、強くなること。

 結局魔王がどんなヤツなのかよくわかってないけど、強くなっておいて損はないはずだ。そしたらモテスキルの力が無くたって、女の子にモテるかもしれないしな、うん!


 これら3つの目的を達成するために一番良いのはやっぱり・・・色んな街を周って、ダンジョン巡りをすることだと考えた。

 場所が変われば魔王についての新しい情報を聞けるかもしれないし、ダンジョンを攻略すれば強くもなれる。勇人さんの行方もつかめるかもしれないしな。


 そういうわけで、名残惜しいけどこの街を発って次の街に行こうと思ってたんだ。

 いや別に、フローナさんが既婚者だってわかったからじゃないからな!ほんとに!




「これからどうされるんですか?」


 フローナさんが俺に問いかける。


「あぁそれは・・・アリスも聞いてほしいんだけど、実は俺、別の街に行ってみようと思ってるんです」

「え、もう行っちゃうんですか?」

「またずいぶん急な話ね」


 フローナさんはもちろん、アリスにも話してなかったから少し驚かれたようだ。


「うん、さっき決めたんだ」

「ふーん・・・」


 アリスが訝しげな表情で何かを考え込んでいる。う、さっきの質問との関連性に気付かれたかな?


「それなら、私もついていくわ」

「え・・・マジ?」


 てっきりダンジョン攻略の間か、この街に居る時だけ付いて来てくれるもんだと思ってたから、ここで別れることになると思ってたんだけど・・・。


 アリスと二人旅かぁ・・・なんかちょっと怖いような気も・・・。


「あら、何か困ることでもあるかしら?」


 複雑な感情で困惑する俺に、アリスがずいっと近づいてくる。


「い、いやいや!ありがたいよ!でも、大丈夫なのか?Aランク冒険者がそんな簡単に離れても」


 両手でアリスを軽く押しのけながら、純粋に気になったことを聞いてみた。


「問題ないわよ。私、もともとこの街に長期滞在する気は無かったもの」

「そうなのか」

「アリスさんが一緒なら私も安心できます!」


 俺はある意味安心できないんだが。

 まあ、冒険者として教わりたいことは山ほどあるし、頼もしいのは事実だけど。


「まあ・・・そういうことなんで、アリスと二人で別の街に行こうかなと」

「そうですか・・・ちなみに、どちらに行かれるんですか?」

「それは・・・まだ決めてないです」


 というか、この世界のことを何も知らなすぎて、俺が今どの辺に居て、周りにどんな街や国があるのか、全然わかってないんだよな。


「それなら、ガムーザはどうかしら」


 具体案を出せずにいる俺に、アリスが候補を挙げてくれた。


「ガムーザ?って、どんなところなんだ?」

「サイトさん知らないんですか?」

「はい・・・その、田舎から出てきたもので・・・」


 どうやら知らないほうがおかしいレベルの場所だったようだ。苦しい言い訳だけど、仕方ない。

 やっぱりもうちょっと調べてから話すべきだったかもしれないな。


「ガムーザというのは、ここから北にある大きな街の名前です。ダンジョンを中心に栄える冒険者の街で、サイトさんのような方にはうってつけの街ですよ!」

「おぉ!」


 ダンジョン!ちょうどいいじゃないか。


「どれぐらいの難易度のダンジョンなんですか?」

「そうですね・・・ツェンノインより少し高いぐらいでしょうか。入れるのも()()()Eランクからですし」

「おぉ!って・・・Eランクからなんですか?」

「はい、規模がツェンノインよりも大きいので」

「そうですか・・・」


 ランク、上げないとだな・・・。


「昇格に必要なポイントってどれぐらいなんですか?」

「あら、大丈夫よ。私と一緒ならEランク以上の判定を受けられるわ。それに、確かあそこは他のダンジョンをクリアした実績があれば、Fからでも入れたはずよ」


 そっか、パーティ単位でEランク以上なら入れるんだった。このシステム、つい忘れちゃうんだよな。

 それに、どうやらツェンノインをクリアしたおかげでFでも入れるみたいだ。


「おぉ!じゃあ平気だな」

「そうですね。ちなみに、昇格に必要なポイントは冒険者手帳に書かれていますから、後でチェックしてみてください」

「わかりました!」


 そういえば冒険者手帳のこと、最近すっかり忘れてたな。

 {鑑定}が思いのほかなんにでも使えて便利だから、頭から抜けてた。


「じゃあ、行先はガムーザで決まりだな。ここからどれぐらいで着くんだ?」

「馬車で半日、徒歩で数時間といったところかしら」

「え、なんで徒歩のほうが早いんだ?」

「そりゃ、馬なんかよりも私が全力で走ったほうが早いもの」


 あ、そうだ。この人普通に化け物だった。


「い、いや俺はそんな早く走れないし・・・」

「あら、大丈夫よ。担いでいくから」

「・・・」



 そういう問題か?



「でも、今行くと夜になっちゃうわね」


 確かに、窓の外を見てみると日が傾き始めていた。夕暮れにはまだ早いけど、今から数時間も経てば夜になるだろう。


「ま、まあ、そこまで遠くないことはわかったし、いったん今日は宿に戻ろうか」

「そうね」


「それじゃあお別れですね・・・」

「あぁ・・・そうなりますね。短い間でしたけど、今までありがとうございました!」


 フローナさんには本当にお世話になったな・・・。


「いえいえ、他の街でも頑張ってくださいね!」

「はい!・・・あそうだ、地図とかってどこで買えるんですかね?」

「ふふん、なんとギルドで売ってます!」


 少し寂しそうだったフローナさんの表情が笑顔に変わる。


「じゃあ、それ買います!」




 いつかしたようなやり取りで地図を購入した後、フローナさんとは手を振って別れた。


 少し寂しいけど、新しい街に向けてしっかり休息を取らないとな。


 諸々のチェックは、後で部屋でするとしよう。

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