24 ダンジョン攻略達成報告
まだ気になることは多くあるけど、これ以上の情報を転移者だと疑われずに聞き出すのは難しそうだな。
後のことは街に戻りながら考えよう。
「色々教えてくれてありがとう、とりあえず行こうか」
「あら、もういいのかしら。じゃあ行きましょ」
袋小路の部屋から出ると、ダンジョンの入口横に出た。
そういえば、入るときにちらっと見えてたっけな。ここに繋がってたのか。
「おかえりなさいませ、無事にクリアされたんですね」
出口近くにいた門番さんに話しかけられた。入るときに対応してくれた人とは別の人だけど、覚えていてくれたらしい。
まあ、横にすごく目立つアリスが居るから、そのせいかもしれないけど。
「あ、はい!おかげさまで!」
「それではこちらを」
門番さんに手渡されたのは、王冠の紋章が入ったメダルだった。
「これは・・・?」
「ギルドが発行している、ダンジョンを攻略した証のようなもので、こちらから出てこられた方にお渡ししています。ギルドにて冒険者ランクポイントと交換できますよ」
「おー、なるほど!」
そうか、ダンジョンだと証明部位をはぎ取れないから、こういう形で達成の証を配ってるのか。
「アリスさんも、どうぞ」
「ええ、ありがとう」
アリスも門番さんから証を受け取っていた。初回クリア者以外も含めて、ちゃんと人数分貰えるんだな。
「ありがとうございましたー!」
才人達は門番に礼を言い、ヴァレッサの街へ向かって歩き出した。
「思った通り出てきたな。こっそり跡を付けるぞ」
「「おう!」」
「バカ野郎、声がでかいぞ!見つかったらどうする!」
「「すまねぇ・・・」」
・・・余計な3人組も一緒に。
ヴァレッサの街に着いた俺たちはギルドに直行した。貰ったメダルを提出するためだ。
「こんにちはー」
いつもの窓口でフローナさんに話しかける。
窓口はいくつかあるから他のところでもいいんだけど、なんとなく慣れてるフローナさんを選んでしまう。
「あ、サイトさんとアリスさん!こんにちは。装備、新しくされたんですね」
そっか、フローナさんにはまだ見せてなかったんだっけ。
今着てるのは、昨日新しく買ったライトアーマーだ。運動部の人が着るようなインナーに、胸、肩、肘、膝にプロテクターのような追加装甲を着けている。
駆け出しセットのレザーアーマーより動きやすくて、しっくりくるんだよな。
ちなみに、下は普通のズボンだ。無難なデザインで、動きやすくて丈夫そうなものを選んだ。
「はい!前のもまだ使えるんですけど、ホブゴブリン戦でちょっと無茶しちゃったので・・・」
「なるほどーそういうことでしたか!こんなことならもう少し良い物をオススメするべきでしたね・・・」
結局、駆け出しセットの武器と防具は1日使っただけでお役御免になっちゃったんだよな。
一応予備として取っておいてはあるけど、今後も使うかと言われたら微妙だ。
「普通初日でホブゴブリンと戦う子なんていないもの、フローナちゃんは悪くないわよ」
「あ、あはは・・・」
耳が痛い。
「それで、本日はどのようなご用件でしょう?」
気を取り直して、本題だ。
「実はさっきダンジョンをクリアしてきたんです、ほら」
門番さんに貰った攻略の証をフローナさんに見せた。
「わ、本当にクリアされたんですね、おめでとうございます!早速更新していきますか?」
「お願いします!」
ダンジョン攻略ってどれぐらいのポイントが貰えるんだろう?
確かホブゴブリンのポイントが70だったから・・・50ぐらいかな?
「後で私もお願いするわ」
アリスも後で冒険者カードの更新を頼むようだ。そういえば、アリスは既にAランクだけど、一応まだ上があるんだよな。
昇格はポイント制って聞いてるけど、Aランクでも回数を重ねたらああいう低難易度のダンジョン攻略でも上がれるものなのかな?
「わかりました、今日の報告はお二人共これだけですか?」
「ええ、そうよ」
「それならすぐ終わるので同時にやっちゃいますね、アリスさんのもお預かりします」
「あら、いいの?ありがとう」
今日は俺もアリスもダンジョン攻略しか達成内容がないから、同時にやってくれるらしい。
やっぱりフローナさんは優しいし仕事の手際もいいし、なにより美人だし、ずっとこの街に居たくなっちゃうなー!
なんて考えながらカードの更新が終わるのを待っていると、体格の良い男性がフローナさんの窓口にやってきた。
俺とアリスが近くにある椅子に腰かけているから、既に俺たち二人に対応してることはわかってるはずなのに、だ。
俺も毎回フローナさんを選んでるけど、いつもたまたまフローナさんの手が空いてるタイミングだし・・・。
なんでわざわざフローナさんの窓口を選んだんだろう?
「おう、帰ったぞー!フローナ」
「あ、おかえりなさい!あなた」
・・・ん?あなた?
「あら、サイトちゃんもわかる?フローナちゃんの旦那さん、ハンサムよねー」
フローナさんと話している男性を見つめていると、アリスにそう囁かれた。
え・・・だん、え・・・?
旦那さん・・・?
「今日はあなたの好きなステーキだから、仕事が終わったら一緒に食べましょ!」
「おーそりゃ楽しみだな!ガハハ」
明らかに親密な者同士の会話。
嘘だろ・・・あんなに俺に優しくしてくれたフローナさんが・・・
既婚者だったなんて!?!?
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