2 現状整理
光が晴れると、俺は見慣れない草原に居た。
「おぉ!ここが異世界・・・だよな?本当に来られたんだ!」
てっきり街の中にでも飛ばしてくれるのかと思ったけど、思いっきり草原のど真ん中だな・・・。そういうところ気が利かないよなー!まあ、あの女神様のミスのおかげで1文字違いの俺が異世界に来られたんだし、逆に感謝するべきか。
「ていうか俺今、裸足じゃね?」
異世界に来られた感動も束の間、自分が屋外向けではない恰好をしている可能性に思いあたる。自室のベッドでラノベを読んでいたのだ、もしそのまま異世界に飛ばされているのなら、裸足のはずだ。
気になって足元を見てみると、見慣れない靴が目に入った。どうやら女神様が気を利かせ履かせてくれたらしい。気が利くのか利かないのかどっちなんだ。
おそらくこちらの世界の物なのだろう、粗雑な作りに思える靴だが、意外と履き心地は悪くない。
よく見ると服装もこちらの物らしき品に変わっている。・・・あれ?俺もしかして女神様に脱がされた?キャー女神様のエッチ!
・・・・・・心を読む女神様はどうやらもう俺のことを見ていないらしい。まあ、正直これは助かる。服装で目立つのは異世界転移物あるあるだからな。これなら目立たずに済みそうだ。
「それはそうと、どっちに行ったらいいんだ?」
俺は若干不安になりながらきょろきょろと辺りを見渡すと、人が通った痕跡のある道があった。道の先には看板らしき物が立っている。早速道に出て読んでみることにする。
「どれどれ・・・この先ヴァレッサの街?」
どうやら街があるらしい。確かに目を凝らしてよく見ると街が見え・・・ないな。結構先まで歩く必要があるのか。
どうせなら街中と言わずとも、街に近い場所にして欲しかったな、と思いつつ。俺はあることに気が付いた。
「あれ?この看板、見たことない文字で書かれてるけど、普通に読めるな」
あまりにさらっと読めたので一瞬気が付かなかった。そういえば選んだ特典以外にも、{言語理解}とか色々スキルが貰えてるんだっけ。
一応確認しておきたいな、どうやったら見られるんだろう?ここはやっぱりお決まりの・・・
「ステータスオープン」
俺がそうつぶやくと、ゲームのような半透明のステータスウィンドウが表示された。
「おお!やっぱり!」
俺は軽く興奮しながら、自身のステータスをチェックすることにした。
{サイトウ サイト}
{種族 :ヒューマン}
{Lv : }
{ジョブ: }
{力 :9}
{耐久 :8}
{器用 :11}
{敏捷 :10}
{魔力 :0}
{スキル:鑑定 アイテムボックス}
{ユニークスキル:言語理解 成長加速 モテスキル(男性用)}
「Lvとジョブって欄が空白だな。ジョブはともかく、Lvまで空白なのはなんでだ?」
それに、スキルの欄がとんでもないことになってるな・・・。
「ちょっと試してみよう、とりあえずそこら辺の草に、{鑑定}!」
{ただの雑草 特に利用価値はない。}
うん、まあ、そうだよね。この辺にいっぱい生えてる草が薬草とか、そんな美味しい話はないか。
ていうか雑草って・・・確かにそうかもしれないけど、名前ぐらいあるんじゃないのか?特に利用価値がないものに対して鑑定スキルを使ったら、こんな感じに出るのだろうか。
「まあいいや。次は{アイテムボックス}だな。なんて言えばいいんだろう?」
悩んだ俺はとりあえず{アイテムボックス}の中身が見たい!と念じてみることにした。すると
{異世界の服(上)}
{異世界の服(下)}
{異世界の肌着(男性用)}
{異世界の下着(男性用)}
{10ゴールド}
先ほどと同じようにウィンドウが表示された。
「おお、表示されたぞ!ん?てっきり何も入ってないかと思ったけど、なんか服とゴールド?ってのが入ってるみたいだな。試しに出してみるか」
俺が手元に出るように念じると、出てきたのは俺が元の世界で最後に着ていた服と、初めて見る金貨だった。
「なるほど、さっきまで着てた服が{アイテムボックス}に収納されてたのか。ゴールドのほうはどうやらこっちの世界のお金みたいだな」
特別な思い入れがある服ってわけでもないけど、一応向こうの世界の物だからな、大切に取っておこう。お金のほうは特典で貰えるとか言ってたっけ。
{アイテムボックス}に入っていれば、無くす心配がないのは便利だな。モテスキルはかける相手がいないと試せないし、とりあえず検証はこんなところでいいかな。
俺は取り出した服とお金をもう一度{アイテムボックス}へ戻し、街に向けて歩き出した。