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13 チェックインと質問

※アリスは身長2M近い大男です。

 アリスさんに連れられて中世ヨーロッパ風の街を歩くこと数分。見えてきたのは、レストランと宿屋が横にくっついたような施設だった。


 かなり大きな建物で、レストランも含めるとギルドとそう変わらないほどの規模だ。お風呂が付いてるって言ってたから、その分面積を取ってるのかもしれないな。


 レストラン側は通りに面している部分の壁がほとんどなく、かなり開け放たれた作りになっており、中には卓を囲み食事を楽しむ冒険者や一般人の姿があった。


「もしかして、あそこですか?」

「ええ、そうよ。驚いた?ここはね、レストランとしても営業しているの。正確には、宿屋とレストランが提携しているんだけどね」

「へぇー!そうなんですね」

「この宿で食事をするときは、お隣のこのレストランで食べるのが一般的ね。宿泊者は割引してもらえるし、ここのお料理は絶品なんだから!」

「確かに美味しそうですね!」


 卓に乗る料理はどれも魅力的で、肉を焼いた香ばしい匂いが鼻腔をくすぐってくる。あまり眺めているとまた腹の音が鳴ってしまいそうだった。


「じゃあ、早速チェックインを済ませに行きましょう!」


 早くご飯にありつきたい俺は、少し急かすようにアリスさんに投げかける。


「ええ、そうね。私もお昼まだだから、おなかがすいてきちゃったわ」




「おかえりなさいませ、アリス様」

「ええ、ただいま。悪いんだけど、お部屋の変更って出来るかしら?二人用の部屋がいいのだけど」


 宿屋に入るとすぐに、アリスさんが玄関番の人と話し始めた。そうか、アリスさんはもうここに部屋を取ってるんだったな。

 って!まさか相部屋にするつもりか!?


「ちょ、ちょっと!一人用の部屋でお願いします!」


 流石にまだこの人と同じ部屋に二人っきりってのは気が引けるんだよな・・・。


「あら?一人用の部屋に二人で泊まるなんて・・・意外と大胆なのね」

「なんでそうなるんですか!別々ですよ!別々!」

「もう、照れ屋さんなんだから」

「・・・。」


 この人、本当に大丈夫なんだろうか。というか、この人と一緒に居て大丈夫なんだろうか。心配だ、主に俺の貞操が。


「えーと、一人用のお部屋を1つお探しということでよろしいですか?」


 玄関番の人は困惑しつつも、俺の意を汲み取ってくれた。グッジョブ!


「はい!」

「承知しました・・・はい、空きがございます。1泊40シルバーですが、よろしいですか?」

「はい」


 俺はバックパックに入れておいた達成金の袋から、40シルバーを取り出して渡した。


「はい、40シルバーちょうどですね。こちらお部屋の鍵でございます。隣のレストランでお食事の際にご提示いただくと割引がございますので、ご活用くださいませ」

「ありがとうございます!」


 渡された鍵には独特な文様のキーホルダーが付いていた。

 なるほど、宿泊者には割引があるって言ってたけど、これを見せて証明するのか。


「それじゃあ、レストランに行きましょうか」

「はい!」




 ワクワクしながらお店に行くと、アリスさんが先導してちょうど二人分空いている席に座った。

 どうやらここは店員さんが席に案内するのではなく、お客さんが勝手に席に着くシステムのようだ。


「サイトちゃんは、文字は読めるかしら?」

「はい、読めますよ」

「そう、それならこれがメニューだから、読むといいわ」


 渡されたメニューには文字しか書かれておらず、料理の説明もほとんど記載がなかった。

 といっても料理の名前は至ってシンプルで、猪肉の鍋とか熊肉のステーキとか、読んだだけで内容がわかるからそれほど問題はないけど。


 そうか、日本人の俺からすると料理の写真やら簡単な説明が載ってるのが当たり前だけど、こっちの世界じゃこんな感じなんだな。


「何かオススメとかってありますか?」


 適当に決めても良かったけど、せっかく異世界に来て初めての食事だからな。

 ハズレを引きたくないし、この店に何度も来たことがあるらしいアリスさんにオススメを聞くのが無難だろう。


「そうねぇ、この店はお肉が美味しいから、肉料理はどれもオススメね。中でも私のお気に入りは兎のシチューかしら。あとは、店員さんに聞けば今日のオススメを教えてくれるわよ。どれが獲れたてか教えてもらえるから、新鮮で臭みのないものが食べられるわね」

「なるほど、じゃあ兎のシチューと店員さんのオススメにします!」

「私もそうするわね」


 早速店員さんを呼んで聞いてみたら、今日は鹿肉のステーキがオススメらしいので、それと兎のシチューを二人前頼むことにした。


 料理を待っている間に、アリスさんに聞きたかったことを質問してみようかな。


「あの、スキルについてちょっと聞いてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。何かしら?」

「{アイテムボックス}ってスキルなんですけど」

「あら、よくある質問ね。確かに早めにランクを上げたいスキルだけど、最初は戦闘系のスキルを上げたほうがいいわよ」

「え・・・あー・・・」


 人前で使っていいかわからなかったから、{アイテムボックス}がレアなスキルかどうかを聞こうと思ったんだけど、早めにランクを上げるべきか聞きたいと勘違いされたみたいだ。


 でもどうやらこの感じだと、みんな普通に持ってるスキルっぽいな?


「あら、もしかして違うことが聞きたかったのかしら?」

「えーと、なんていうか、みんな持ってるものなのかなーって・・・」

「ジョブに就いている人なら誰でも持ってるわよ?そうじゃない人でも発現するかという話なら、私にもわからないわね」

「え、そうなんですか?」

「ええ。かなり有名な話だと思うけど・・・聞いたことなかったかしら?」

「あ、はい」


 そうなのか!ってことはもしかして俺、ジョブに就いてるのにわざわざバックパックを使ってるバカみたいに映ってたんじゃあ・・・。


「だから私も手ぶらでしょ?まあ、サイトちゃんの場合はまだスキルランクが低いでしょうから、お金みたいに嵩張らなくて大事なものだけ仕舞っておけばいいわよ」

「あ、そうですね!」


 そうか、ランクが低いとそんなにいっぱい仕舞えないんだ。だからバックパックを使ってる、って言えば通りそうだな。

 普通はいきなりSランクの{アイテムボックス}なんて持ってないはずだもんな。


 それなら、お金だけは{アイテムボックス}に仕舞っておこうかな。{アイテムボックス}を使えば、数え間違いをする心配がなくて便利だし。


「じゃあもしかして、ランクの高い冒険者を見分けようと思ったら、荷物を持ってるかどうかでわかるんですかね?」

「そうね、1つの指標にはなるわね。特に、装備が豪華なのに荷物を持っていなければ、大抵高ランクの{アイテムボックス}持ちよ」


 なるほどなー、強い人ほど色んな物を持ってるイメージだけど、逆に全部仕舞っておけるようになるから手ぶらになっていくのか。


 なんかこういうのって面白いな!

 アリスさんのおかげで少しこの世界の常識を学べた気がする。

いつもいいねありがとうございます!

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