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12 達成報告と新しい仲間

「はっ、()()()()()()()()の証言なんて、どこまでホントだかなぁ?」


 俺への疑惑が晴れたのもつかの間、カマセーヌと呼ばれていた冒険者が声を上げた。


 "仲間殺し" その単語が出た途端、アリスさんの表情が険しく、どこか物悲しげに変わった。いったいどういう・・・

「――その辺にしてください!ギルドはサイトさんのホブゴブリン討伐を承認しました、これは事実です!」


 フローナさんの声で、思考から呼び戻された。


「けっ、そうかよ。行くぞお前ら!」

「チッ」


 カマセーヌ一行はそう吐き捨てると、ギルドを後にした。


「まったく、失礼な人たちですね!」

「いいのよ、フローナちゃん。彼らの言ったことは事実だもの」

「それは・・・!」

「いいの、それよりサイトちゃんの報告を処理してあげて。彼、今日冒険者になったばかりなんでしょう?それでホブゴブリンを討伐するなんてすごいじゃない!昇格よね?」

「え、ええ・・・はぁ、そうですね。サイトさん、これだけの達成報告ならランクを上げるのに必要なポイントは十分溜まります。更新を行うのでカードを出してください」


「・・・え、あ、はい!」


 なんだか事情を知ってる人同士の会話ですごーく気まずかったんだけど、急に俺の話題に戻ってきたな・・・。


 アリスさんの話が気になりつつもカードを渡すと、フローナさんは慣れた手つきで更新を行ってくれた。


「薬草採取依頼が10ポイント、ゴブリン退治依頼が15ポイント、依頼外討伐のポイントが合計82ポイント、全部で107ポイントですね。GランクからFランクへは100ポイントで上がれるので、サイトさんはFランクに昇格です。おめでとうございます!」


 依頼外討伐というのは、ホブゴブリンとゴブリン4匹分のことらしい。


 俺はもともとゴブリンを3匹討伐する依頼を受けてたんだけど、合計で7匹倒してきたから4匹分は依頼外討伐ってカウントになるみたいだ。


「ありがとうございます!」

「おめでとう、サイトちゃん。ホブゴブリンとの戦闘、カッコよかったわよぉ」

「あ、アリスさんも、ありがとう、ございます・・・」


 なぜだろう、背筋がゾクッとした。語尾にハートマークがついていそうな声色で褒められたからだろうか。


「そうだ!昇格といえば俺、これでもうダンジョンに入れるんですよね?」

「えーと、それは・・・」

「なぁにサイトちゃん、もうダンジョンに行くつもりなの?」

「え、はい。まあ・・・」


 まずいことでも言ってしまったんだろうか。やっぱりいくらホブゴブリンを倒せたといっても、知識と経験の浅い俺が一人でダンジョンに行くのは危険ってことなのかな。


「うーん、確かにFランクになられたわけですし、許可を出さないわけにはいかないんですが・・・」

「心配よね」

「はい。先ほどホブゴブリンとの戦いで死にかけたとも言っていましたし・・・」


 う・・・そう言われると確かにそうだ。結局、あの時もアリスさんが剣を投げてくれたおかげでスムーズに倒せたんだしな・・・。


「それなら私がついていくわ。もともと指導してほしいって話だったわよね?」

「え・・・」

「よろしいんですか?だいぶお時間を取っていただくことになってしまいますけど・・・」

「ええ、大丈夫よ。サイトちゃんには不思議な魅力を感じるの、きっと良い冒険者になると思うわ!そういうわけだから、しばらく同行させてもらうわね」

「あ、あはは・・・」


 嬉しいような、なんだかちょっと怖いような・・・。まあ、フローナさんは事情を知った上でアリスさんを信頼してるみたいだし、多分大丈夫だろう・・・多分。


「それで、どうするの?達成金を貰ったら買い物にでもいくかしら?それとも、一度宿に戻って休憩にするかしらん?」

「あ、宿はまだ取ってないんです」

「あら、そうなの」


 そういわれてみれば、こっちの世界に来てから碌に休んでないし、ご飯も食べてないな。思い出したら急に腹が減って・・・


 グゥー


 空腹を自覚するのと腹の音が周囲に響くのは、同時だった。


「サイトさん・・・」

「うふふ、先に宿を取ったほうがよさそうね」

「あぅ、はい・・・」


 俺は自分でもわかるぐらい紅潮する顔をうつむいて隠しながら、その意見に同意した。




「それじゃあ達成金をお支払いしますね。薬草採取が30シルバー、ゴブリン退治が45シルバー、依頼外討伐報酬が1ゴールドと50シルバーで、合計1ゴールドと125シルバーです!」

「ありがとうございます!」


 駆け出しセットが1ゴールドだったから、もう元は取ったな!


 ポイントと同じく依頼外の支払いが多いな。やっぱりホブゴブリンの報酬が美味しいらしい。

 確かホブゴブリンの討伐依頼はEランクだったから、本来まだまだ挑むべき相手じゃないんだろうな。


 そんなことを考えながら、俺は受け取ったお金入りの袋を背中のバックパックに仕舞った。

 まだ{アイテムボックス}の希少性がわからないから、街に入るときはバックパックを取り出して背負うことにしてるんだ。




「オススメの宿屋さんとかってありますか?」


 お金も入ってきたことだし、宿屋についてフローナさんに聞いてみた。


「そうですね、駆け出しの方がよく利用されている宿でしたら何軒かご紹介できますよ」


「予算を教えてくれれば私が案内してもいいわよ。出来るだけお料理の美味しいところがいいわよね?」

「あ、そうですね。アリスさんに連れて行っていただくのが一番良いかもしれません。私の情報は人づてに聞いたものですので」


 なるほど、確かにアリスさんのほうが宿屋はよく利用しそうだな。予算か、宿屋って普通どれぐらいの値段で泊まれるんだろう?


「相場があんまりわかってないんですけど、大体いくらぐらいするんですか?」

「そうねぇ、食事付きなら1泊20シルバーぐらいかしらね。お風呂が付いてたり、ベッドや食事が豪華だと50シルバー以上することもあるわよ」


 お風呂!そういえば、結構汗をかいたからお風呂に入ってさっぱりしたいな・・・。


 お風呂がついてると高いってことは、この世界だと宿屋にお風呂があるのは当たり前じゃないのかな?


「ちょっと高くてもいいんで、お風呂がついてて食事の美味しいところがいいです!」

「いい心がけね、冒険者は体が資本。心身ともに休める良い宿屋を選ぶのは大正解よ!」


 ただ単に現代日本に生まれた俺としては、それぐらいは付いててほしいというだけなのだが、褒められてしまった。


「それなら、私が今泊まっている宿がちょうどいいわね。お風呂が付いててお料理もおいしいから、この街にきたら必ず泊まるのよ」

「へぇ!それは楽しみですね」


「いい場所が見つかったようで何よりです」

「フローナさんも、ありがとうございました!」


 俺はフローナさんにお礼を言い、アリスさんと一緒に宿屋へ向かった。

 いつもいいね、ありがとうございます!

 あと私勘違いしてたんですけど、星マークの評価を入れられるのは一人1回きりなんですね!

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