11 ヒロイン登場?
「依頼、達成してきました!」
「お疲れ様です!ご無事で何よりです」
森から帰った俺は採取した薬草と、はぎ取った討伐証明部位をフローナさんに提出した。
「早い上にずいぶん取ってきましたね!えーと、キズナオセ草にドクナオリ草と、ゴブリンの耳ですね!・・・あら?これは・・・」
フローナさんがホブゴブリンの角を見て固まっている。
しまった!あんまり深く考えてなかったけど、冷静に考えたら駆け出しの冒険者が一人であんなのを倒したってバレたら、結構やばいんじゃないか・・・?
「あの、サイトさん?この角、どうされたんですか?」
「あー・・・えーと・・・」
まずい、正直に話すべきか?でも、スキルのこととかバレたらまずい気がするしな・・・。
嘘をつくとしたら、なんて誤魔化そう?『えーっと、なんか落ちてました!』とか・・・いや流石に無理があるよなー!
俺がなんて答えるべきか言い淀んでいると、近くにいた知らない冒険者の一行が口をはさんできた。
「はん、こんなひょろひょろのガキにホブゴブリンなんか倒せるわけがねぇ、大方どこぞの冒険者からくすねてきたんだろ」
「カマセーヌの言う通りだぜ!でなきゃ手柄のために金でも積んで、高ランクの冒険者から買い取った、とかなぁ!」
「はは、ちげぇねぇや」
うっわー、チンピラみたいな冒険者に絡まれる展開だー!
しかもカマセーヌとか呼ばれてたリーダーっぽいヤツの頬に漢字の『犬』みたいな形の傷がついてるんですけど!
どうやったらそんな傷がつくんだよ・・・頬だけ集中狙いされすぎだろ!
「サイトさん、疑うわけではありませんが、手柄やお金のために不正な方法で証明部位を入手するケースは、確かに報告されています。よろしければ、どのように入手されたのか詳しくお話しいただけませんか?」
「・・・。」
心の中でチンピラにツッコミをいれていた俺は、フローナさんの声で我に返った。
仕方ない、疑われるのも無理はないし、異世界から来たとかそういうことは隠して、{成長加速}についてぐらいは話すか・・・。
俺がそう諦めかけた時、背後からさらに知らない声がかけられた。
「ホブゴブリンを倒したのは間違いなくその子よ、私が保証するわ」
「あ、アリスさん!」
アリス、って・・・もしかして、前にフローナさんが言ってたあのAランク冒険者の!?
俺が思わず振り返ると、そこにはかわいらしいピンク色の道着を着た金髪碧眼の・・・・・・大男が居た。
う、嘘だよな?この、2M近い身長のソフトモヒカンの大男が、あのAランク冒険者の、金碧のアリスさんなわけが・・・。
「あ、あなたは・・・?」
「アリスよ」
「おっさんじゃねぇか!!!」
「失礼ね!!心は乙女よ!!」
心は、ってことは・・・なるほど、あんまり触れないでおこう。デリケートな問題だしな、うん。
「まあ確かに?心と体が食い違って生まれてきたのは不服だけど、それも悪いことばかりではないわ。この強靭な肉体があれば、大切な人々を守れるもの」
・・・!見た目はともかく、言っていることはすごくまともだ。フローナさんからも信頼されているみたいだし、意外といい人なのかもしれない。
「コホン。それで、詳しい話をお聞かせ願えますか?」
フローナさんがそれた話題を本題に戻してくれた。
そうだ、確かに俺も気になる。アリスさんと俺には当然面識がない。だというのに、なぜ俺がホブゴブリンを倒したと保証してくれるんだろうか。
「ええ、サイトちゃんには悪いんだけど、跡をつけさせてもらったのよ」
「え・・・」
俺、こんなゴリゴリのおっさ・・・いや、お姉さんに跡をつけられてたの!?!?え、普通に怖いんですけど。
「ああ、違うんですサイトさん!実は私が頼んだことなんです!」
混乱、というか、ドン引きする俺の様子を見て、フローナさんがフォローに入った。
「どういうことですか?」
「実は、サイトさんが薬草採取に向かってすぐに、アリスさんがギルドにいらっしゃったんです。それでサイトさんのことを話したら、心配だから様子を見に行くと言ってくださって・・・」
「なるほど・・・じゃあもしかして、アリスさんは俺がホブゴブリンを倒すところを見ていたってことですか?」
「ええ、そうよ。最初は平原を探していたんだけど、見当たらなくって。近くの森を探したらちょうどホブゴブリンと交戦中だったから、見させてもらったの」
そうか、{気配感知}で一瞬感じた気配の正体は、アリスさんだったんだな。っていうか!
「見てたなら助けてくださいよ!」
「ダメよ、それじゃサイトちゃんの雄姿が見られないじゃない!それに、本当に危なくなったら助けに入るつもりだったわよ」
「普通に死にかけたんですけど」
「あら、そうだったの?悪いことしちゃったわね。でも、私が駆け付けたのはホブゴブリンが臭い袋でもがいている辺りだったから、それ以前についてのことならわからないわよ」
「なるほど・・・確かに死にかけたのはそれよりも前ですね」
そういうことか、ちょうど形勢が逆転したタイミングに来たんだな。
「そうでしょう?私はね、確かにあなたを心配して様子を見に行ったけど、自力でなんとかなる場面まで助けるほど甘くはないのよ。ある程度の困難は自分で乗り越えられないと、助けが来なかったら死んでしまうもの」
「確かに・・・」
厳しいようだけど、きっとアリスさんなりの優しさなんだろうな。この人、本当に見た目以外は完璧かもしれないな、見た目以外は。
「それに、全く手を貸さなかったわけじゃないのよ?」
「え、何かしてくれたんですか?」
「あなた、剣を落とさなかったかしら?」
きっと、ホブゴブリンの攻撃を無理やり逸らした時のことだ。
「! もしかして・・・」
「ええ、足元まで投げたのは私よ」
確かにあの時、拠点の出入り口の辺りに落ちていたはずの剣が、いつのまにか足元に来ていた。
てっきり暴れるホブゴブリンがたまたま蹴り飛ばしたのかと思ってたけど、アリスさんが投げてくれていたのか!
「つまり今のお話をまとめると、アリスさんは平原でサイトさんを探すも見つからず、近くの森でホブゴブリンと交戦するサイトさんを発見した。その後は、落とした剣を投げ渡してあげただけで、サイトさんお一人の力でホブゴブリンを討伐した、と。こういうことでしょうか?」
「ええ、大体そんな感じよ」
「わかりました。ギルドはサイトさんのホブゴブリン討伐を承認します。サイトさん、疑うようなことを言って申し訳ありませんでした」
「あぁ、えっと、変に誤魔化そうとした俺が悪いんで、フローナさんは気にしないでください!」
アリスさんのおかげでスキルについて説明せずに済んでよかった。
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