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1 異世界転移

初投稿です、よろしくお願いします。

 俺の名前は斉藤才人さいとうさいと。今日でちょうど20歳になる大学生だ。共に誕生日を祝える相手もいないので、今は一人寂しくベッドで趣味の娯楽小説ライトノベルを読んでいるところだ。


「はぁ、異世界転生かー・・・いいよなぁ、ラノベの主人公は異世界に行ってチートスキルで無双して、女の子にモテモテで・・・」


 最近流行りのラノベ主人公と、彼女いない歴=年齢の自分を比べること自体が間違いではあるのだが、誕生日を祝ってくれる男友達すらいない俺は、その差を感じずにはいられない。


「俺も異世界に行きたいなぁ。チートスキルで無双したら、俺でも彼女の一人ぐらい・・・いや、一人どころかハーレムだって夢じゃないぞ!」


 そんな現実では到底起こりえない妄想を口にしながら、次の巻に手を伸ばそうとすると、今までに聞いたことのない女性の声が聞こえてきた。


「ふふん、その願い、私が叶えてあげましょう!」


 ・・・ん?なんだか今ものすごく俺に都合のいい言葉が聞こえてきたような?いやいや、そんなことがあるわけがない。きっとラノベの読みすぎで幻聴でも聞こえたのだろう。


「幻聴ではありませんよ」

「うわぁ!また聞こえてきた!?」

「私は女神です。あなたには異世界へ行き、魔王を倒してもらいたいのです」


 これは・・・夢じゃない!試しにほっぺをつねってみてもちゃんと痛いし、外に人影もない!キタキタ、ついに俺も、異世界へ行けるんだ!・・・でも1つ気になることがある。


「なんで俺なんですか?」

「あなたは神に選ばれたのです、斉藤海人さん」

「・・・ん?今なんて言いました?」


 俺の聞き間違いじゃなければ、サイトウ()()()って呼ばれたような・・・


「あなたは選ばれたのです」

「いや、その後」

「・・・?斉藤海人(かいと)さん、とお呼びしましたが」


 なんだか嫌な予感がしてきたが、一応確認をしてみよう。


「あの、俺、斉藤才人(さいと)なんですけど・・・」

「・・・・・・あ」

「あってなんですかあって!!」


 おい嘘だろ!?まさか、1文字違いの別の人に声をかけるつもりだったのに、間違えただけなんて言わないよな!?こんなチャンス二度とないんだ、絶対に異世界に行かせてもらうぞ!


「・・・。」

「ちょっと!女神様!?」


 この駄女神、まさかこのまま黙ってれば、無かったことに出来るとか思ってんじゃないだろうな!?幻聴じゃないって言ったのあんただぞ!?


「だ、駄女神とはなんですか!神様にだってたまにはミスぐらいありますよ!」

「ミスって認めたな!?今認めたよな!?」


 というか勝手に俺の心の声を読んだのもあんただし!


「うう、確かに1文字違いの別の人に異世界へ行ってもらうつもりでしたよ!そういうわけなので、では!」

「ではじゃねぇ!そのサイトウカイトって人も一緒でいいから、俺も異世界へ飛ばしてくれ!」

「そういうわけには行かないんです!」

「どうせ転移者特典とかでチートスキルとか貰えるんでしょう?」

「それは確かにそうですけど・・・」


 やっぱり貰えるんだ。そうとわかれば絶対に異世界に行くぞ!


「それなら誰だって同じようなものじゃないですか、俺なら絶対に魔王を倒して見せますから!」

「うぅ、そう言われても条件に合致しない人を転移させるわけには・・・あれ?友達0、恋人無し、両親共に他界・・・?」


 やめてくれ、列挙されると悲しくなるだろ!


「うぅ、かわいそう・・・」

「同情もすんなって!」

「でも、これならいけますね・・・本当に、どうなっても知りませんからね!」


 さりげなくこちらの責任にされた気がするが、異世界に行けるのならばなんでもいい!いざ行かん、異世界!


 そんなことを考えていると、突然目の前が眩い光に包まれた。俺は思わず腕で目元を覆うが、光は一瞬で晴れた。


「ここが異世界・・・?にしては、なんだか何も無さすぎるような・・・ん?あれは・・・」


 目の前には、黒く何もない空間に白いタイルを敷き詰めたような場所が広がっていた。そして、なんだかアホそうな顔をした女性が立っていた。


「本当に失礼な人ですね!私ですよ!わ・た・し!」

「あぁ、さっきの駄・・・女神様」

「また言いましたね!また私のことを駄女神と!」

「い、言ってませんよ、ただちょっと、そう!駄菓子が好きそうな女神様って言おうとしただけで」

「全然誤魔化せてませんからね!アホそうな顔とも言ってましたし!」

「それは心で思っただけで、口には出してませんよ」

「思うだけでも十分失礼ですよ!」


 勝手に人の心を読むのも割と失礼なことだと思うので、おあいこだろう。それよりも気になるのは・・・。


「ここはどこなんですか?」

「はぁ、しょうがない人ですね・・・えーと、ここは転移特典を選んでもらうための空間です」

「おお!自分で選べるタイプの特典なんですね」

「やけに理解が早いですね・・・」


 まあ、友達がいない分たくさんラノベ読んでますから。・・・自分で考えていて寂しくなってきたが、それも今日で変わるぞ!


「こちらに特典の内容が記されたカードがあります。この中から1つを選んで、あちらに見える魔法陣に乗っていただければ、異世界への転移が出来ます」


 宙には何枚かのカードが浮いており、女神様が指した方向にはたしかに緑色の魔法陣らしき模様があった。


「それから、ここで選んだ特典以外にも、{成長加速}や{言語理解}、{アイテムボックス}や{鑑定}といった便利スキルと、あちらの世界で使えるお金が付いてきます」


「おお、それだけついてくるならここで選ぶのは好きなもので良さそうですね!カードの内容は・・・なになに?勇者への転職権、{経験値10倍}、{知識の図書館}、{モテスキル(女性用)}、{モテスキル(男性用)}・・・ッ!?」


 モテスキル!?こ、これがあれば確実に女の子にモテるんじゃないか!?正直俺は不安だったんだ。いくらチートスキルがあっても、結局"いい人"止まりなんじゃないか、って。でもこのスキルがあれば、そんな心配は要らない。


「これ、これにします!確かこれをもって、あの光ってるところにいけばいいんですよね?」

「そうですけど、ちょっと!そのスキルは・・・」


 俺は迷わず{モテスキル(男性用)}と書かれた特典カードを手に持ち、魔法陣へと駆け込んだ。何か聞こえた気もするが、早く異世界に行きたくて仕方が無かった俺に、その声は届かなかった。


「ありがとうございました!これで、俺も異世界でモテモテライフを送れるぞ!」


 魔法陣に飛び込んだ俺は、再び眩い光に包まれた。やった、これで本当に異世界に行けるんだ。待ってろよ異世界!待ってろよ美少女!


「行っちゃいました・・・。あの人、そっちの趣味があったんでしょうか?」


 才人は気が付いていなかった。{モテスキル(男性用)}とは、[男性にモテるようになるスキル]であり、[女性にモテるようになる男性向けのスキル]ではないことに。

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