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勝利92

 


 未来で起きた悲劇を、私は忘れていない。

 過去、ラナン家の祖先がした罪を、代々、積み重ねて来た罪を、私は許せない。


「元・家族として、私が裁いてあげるね」


 貴女の大切な時間を奪った。老いた体では、もう何も悪さは出来ないでしょう。ただ、残された時間を、罪人として過ごせばいい。

 プライドの高い貴女には、とても屈辱的でしょうけど。


「キリアの分際でーー!呪われた、ゴミ屑の分際で、私達にざがらうなんてー!!ああっ!私の、若い、体がーー!!」


 嘆きの叫びとともに、最早1人で歩けなくなったサウィルンは、騎士団に拘束され、連れて行かれた。



「ーーっぅ」

 落ちぶれたサウィルンの背中を見ても、あの人達を家族だと思っていないから、悲しみは浮かばなかった。ただ、やっと、終わったんだ。っという、安堵が胸に込み上げてきた。


「お疲れ様でした、キリア」

「カトレア…」


 優しく私の肩に手を乗せ、労りの言葉をかけてくれる。

「キリア!大丈夫だったか?!怪我はねーか?!かすり傷1つねーだろーな?!てか、あの脳みそ空っぽ肉団子女、本当に殺さなくていーのかよ?!」

 そんなカトレアを押し退け、ジュン兄さんが怒涛の質問攻めをしつつ、私を抱き締めた。

「大丈夫だよ。もうサウィルンさんは何も出来ないだろうしーーーあの人には、絶望的な未来しか待っていないもん」

 サウィルンさんは、私を除く家族の事は、本当に愛していたんだと思う。でも、その家族にも、もう会えない。そして、固執して来た地位も全て失い、今度は自分が、罪人として、後ろ指を指されながら生きて行く事になる。

 彼女にとって、これ以上無い程、絶望的な未来。


「てか、キリアの特殊魔法、凄いね。相手の時間を奪ったり、滅んだはずの花を復活させたり、過去に戻れたり」

 クラ兄さんも、ジュン兄さんに続いて、ギュッと、私を抱き締めた。


 花を復活させたり、過去に戻ったりしたのは、私が意図してやった事じゃ無いんだけど……。今、過去に戻れとか、コトコリカを復活させろって言われても、絶対出来ないもん。



「キリアのお陰で、最悪な未来を回避する事が出来ました。本当に、ありがとうございます」

 カトレアが頭を下げ、礼を述べていると、騎士団に指示を出し終えたラットとアレンもやってきて、キリアに膝をつき、頭を下げた。

「ちょっーー?!止めて下さい!!」

 アレンさんはまだ兎も角、第3王子が頭を下げるのは、本当に止めて欲しい!私、ただの一般人なのに!


「止める必要は無い。紅の魔法使いに命を救われたのはこれで2度目だ。礼を言う。我が国を救ってくれた事、感謝する」

 ラット王子に続き、その場にいた騎士団全員が、一斉に頭を下げ、キリアに礼を述べた。


「カ、カトレア!お願い!止めさせてよ!」

「何故ですか?キリアは我が国の救世主です。礼を述べるのは当然では?」

「救世主?!」


 自分がそんな大それた存在になった覚えは全く無い!し、その称号は性にあわないから、今すぐに止めて欲しい!大事にしないで欲しい!


「無理ですよ。キリアは国を救ったんですよ?大事になるに決まってます」

 私の頼みは、即、一掃される。

「僕達どころか、父様からも称賛のお言葉を頂く事になると思いますよ。これで、紅い瞳は一般どころか、特別な物だと思い知らせる事が出来ます」


 王様から?!嘘でしょう?!望んでないのに、規模が段々大きくなって行く……

 嬉しいよ。紅い瞳の地位向上の役に立てるなら、それは私が望んでた事だし、嬉しい。嬉しいけど、私がスポットライトを浴びるのは望んでなかった!


 困り顔でクラ兄さんを見上げるも、クラ兄さんは首を横に振った。

「諦めた方がいいよ。ここでキリアが逃げちゃったりすると、ラット騎士団長もお困りになるしね」


 クラ兄さん……!随分ラット王子様贔屓になりましたね!ラット王子様も満更ではなさそうに嬉しそう!無表情なのに、私でも分かるぞ!


「ケイの冤罪も、あのペンダントがあれば、晴れると思います」

「!師匠の冤罪が…」

 カトレアの言葉に、ジュンがいち早く反応した。その表情は、どこか、ホッとしていた。


 ジュン兄さんは、人間が嫌いで、ずっと紅の魔法使いの館に留まっていたけど、それとは別に、ケイ先生の事をずっと、心配していたんだって、分かってる。

 ケイ先生を1人、あの館に残すのが、ジュン兄さんは嫌だった。

「はい。長きに渡って、ケイの無実を晴らす事が出来ず、申し訳ありませんでした」

 数百年も前から、ケイ先生は、罪を擦り付けられ、汚名を被せられ、1人、苦しんで来た。

 頭を丁寧に下げ、謝罪するカトレアを、ジュンはジッと暫く見つめた。


「……お前だけは……ずっと、師匠の無実を信じて、真実を明かそうとしてくれてたんだな…………ありがとう」

 傍にいた私と、クラ兄さんだけにしか聞こえないような、小さな小さな声で、ジュン兄さんは、カトレアに感謝を伝えた。



「では、王都に帰りましょうか」


 こうして、マドローナとの戦いは、我が国の勝利という形で、幕を閉じた。



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