追い詰める90
馬鹿みたいにペラペラペラペラ、馬車の中で悪事をお話してくれて、助かりました。
……例え独り言だとしても、人に聞かれて困る事を、容易に口に出すものじゃないよね。どこで誰に聞かれているか、分からないんだから。
「まぁこんな物が無くても、ラナン家の罪は完全に暴かれました。ラナン家はもう、お終いです」
カトレアの言う通り、もう、全ては終わった。
あの日、私が、過去に戻って来てからというもの、動きは早かった。
王様に事のあらすじを説明して、直ぐに、救助要請が事実かの確認を行い、嘘だと分かると、騎士を襲う為に待機していたマドローナの部隊、そして、嘘の救助要請をしたラナン家の関係者を拘束。
作戦が上手く行っているように見せかける為、マドローナに、成功していると、虚偽の報告をさせ、おびき寄せた。
全ては、一網打尽にするため。
「なっ、ま、待ってよ!嘘、嘘よ!冗談じゃない!反逆者なんて、大袈裟!ただラナン家は、国がピンチに陥った時に、ちゃんと対応出来るかを試しただけよ!」
この後に及んで、苦しい言い訳をする。
「貴女は一体、何目線なのですか?」
「何目線って、そりゃあ、ラナン家の長女として、国を試してーー」
「……冷たい言い方をしますが、落ちぶれたラナン家如きに、国を試す資格があると、本気でお思いですか?」
「っ!失礼よ!ラナン家は落ちぶれてなんか無い!何よ!たかが第7王子の分際で!!」
どうしてこの人達は……こうも、見苦しくなれるのだろう。誰がどう見ても、ラナン家は没落寸前。今やラナン家の評判は地にまで落ち、今まで擦り寄ってきた人達も、顔色を伺っていた人達も、誰もいなくなった。
それなのに、自分達は偉いと、ずっと勘違いしてる。
汚い力で勝ち取った、まやかしの地位に溺れて、ずっと、見苦しく生きている。
「愚かですね」
「はぁ?!そんな事言っていいと思ってるの?!私にはね、奥の手があるのよ?!私が力を使えば、王都はすぐにドッカーンってバラバラになるの!」
首元にかけてあるロケットペンダントを手に取るサウィルン。
紅い爆弾を起動させるスイッチ。
本来なら驚異になり得るものだけど、今では、何の驚異にもなり得ない。
「どうぞ?使用して見て下さい。無駄ですから。ラナン家ご自慢の紅い爆弾は、全て、炎で焼かれ、消滅しました」
「!なっ!何で?!何で紅い宝石が王都に仕掛けてあるの知ってるのよ?!それに、紅い宝石の弱点が火だって事も!」
「貴女が教えてくれたんだよ」
死にゆく私の最後の土産話だと、意気揚々と語ってくれた事が、こんなに役に立つとは思わなかった。そこだけは、感謝しなくちゃね。
「脳みそ空っぽ肉団子女、無事確保出来たんだね」
戦闘がひと段落したクラ、ジュンも、私達の元にやってきた。
周りを見渡せば、マドローナの兵士達は、既に大半が、白旗を上げている。正規の騎士団に、チンピラ風情の国が勝てる訳がない。圧勝。あっという間に、勝負はついた。
「嘘ーっ嘘っ!紅い宝石も役に立たなくて、マドローナの奴等も、肝心な時に役に立たないーー!ほんっっと!皆、役立たずの屑共なんだから!」
全てを、他人の性にする。
「いー加減諦めろや、脳みそ空っぽ肉団子女」
「何なのその呼び名!?止めてくれる?!失礼よ!誰に向かって言ってるの!?私はーーー」
「知ってるよ。落ちぶれたラナン家。没落貴族のラナン家。売国奴で失敗したラナン家。ラナン家がいるだけで皆に迷惑がかかる。まるで呪われてる家だね」
ジュンに続いて、クラもサウィルンを口撃する。
自身が蔑まされて来た、呪われているの言葉を使い、同じ様に、ラナン家に返す。
元はと言えば、ラナン家の策略によって、紅の瞳の差別ら始まった。
「ふざけないで!呪われてるのは、あんた達紅い瞳でしょ?!ちょっと神様に愛されて産まれたからって、調子に乗ってたから、私達の祖先が、天罰を与えて上げたのよ!」
やっぱりラナン家では、過去の出来事が語り継がれて来たんですね。賞賛される、祖先の偉大な行動として。
「じゃあ僕達が、今度は君達ラナン家に天罰を与えて上げるよ。これから君は、一生、地獄を見る。世紀の大悪党として生きて行くんだからね」
長い時間、紅い瞳を迫害される原因を作り、その地位を回復しようと活動していたカトレアの妨害をし、更には、国を滅亡の危機にまで追いやった。その罪は、測りきれない程、重い。
「な、何よ!言っとくけど、私にはまだ、父さんや母さん、兄さんがいるんだから!絶対、私を助けに来てくれるわ!」
「それはどうでしょうか?」
きっと、サウィルンの最後の希望であった、家族の存在。それすらを否定するように、カトレアは口を開いた。
「マドローナは完全に敗北しました。我が国は、マドローナを許さないでしょう。そうなれば、その責任は誰に行くと思いますか?」
「そんなの、マドローナが弱っちぃせいでしょ?!あいつ等がもっと強かったら、こんな事にはならなかったのよ!」




