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《生きている間は自由に過ごして良い》②87

 


「はい。僕の父様はーーーゴホッ!ゴホゴホッ!!」

「!大丈夫?!」


 急に咳き込む少年に驚いて、背中をさする。

「!血が出てるよ!?」

 手で押さえながら咳をした少年の手には、吐血したであろう血がベッタリと付いていた。

「……あはは。いつもの事なんです。僕、病気で、長く生きられないから……」

 良く見れば、少年の体は線が細く、顔色も青白い。

「不治の病って言われてるんです。医者にも匙を投げられていていますから……もう、後少ししか生きられないんです」

「そん……な…」

 まだこんなに小さいのに、死を覚悟してるなんて……。

「でもそのお陰で、父様に、《生きている間は自由に過ごして良い》と言われていて……今は、好きなように1人で散歩をしたりして、過ごしています」

「……」

 力無く笑う少年の姿が、とても、悲しく見える。まだ、生きたい。そう、強く感じる。


(助けて上げたいけど……病気なら、私が出来る事は何もーーー)


「あ!」

 思い出した。そう!今の今まで忘れてた!ポケットに入れっぱなしにしてた存在を!!

 ポケットに手を突っ込み、ハンカチに包んでいた、紅い実を取り出す。

 戦いの前に、やっと咲いた花の実。

 カトレアに報告しようとしていたのに、騒動のせいですっかり伝え忘れて、ずっとポケットに入れっぱなしにしてた。


 幻の花コトコリカ。


 この花の紅い実には、万病を治す効果があるって聞いた!

「はい、これあげるよ」

「え?あの、これはーー?」

「万病に効く薬なんだって。きっと、これを飲んだら、病気なんてすぐ治るよ」


 数百年くらい見付からなかった凄い貴重な物だけど、優しいカトレアなら絶対に、あげても良いって言ってくれる。

「そんな貴重な物を頂く訳にはーー」

「大丈夫だよ。君の病気は、絶対に良くなる。だから、今度は、君が他の誰かを助けて上げてね」

「……」

 ぽんぽんっと、少年の頭を軽く撫でた所で、急に、強い目眩がした。

 何これーー立っていられない。

 そのまま、落ちるように、目の前が真っ暗になったーーー


 ーーーと思ったら、そこは、城で用意された、自分の部屋の天井だった。



「……何これ……本当にどうなってるの……?」

 もう訳が分からない。

 あの戦場から、気付けば城の中庭らしき場所、そして、目眩がして暗転したと思ったら、自分の部屋のベッド。

「いやいやいやいや!訳が分からない!そもそも、皆は!?クラ兄さんは?!カトレアはーー!!」


 コンコンッ。

 カトレアの部屋に続く扉では無く、廊下側の扉から聞こえる、ノックの音。

「は、はい…」

 恐る恐る、返事をする。


「失礼する。キリアさん、すまないが、騎士団の方から要請があって、カトレア様の元を少し離れる事になるんだ。だからその間、カトレア様をよろしく頼ーー」

「アレンさん!!!」

 扉から現れたのは、訃報を知らされたハズの、アレンの姿。

 嘘…!嘘…!生きてる!生きてる!!

 ぶわっと、涙が込み上げてきて、ポロポロと、頬から流れ出した。


「なっ?!どうしたんだ?!何故急に泣くんだ?!俺が離れるのがそんなに不安なのか?!」


「ちょっとーー何、僕の可愛い妹を泣かせてるわけ?」


 私が泣き出したのを見て、慌てふためくアレンさんの後ろから、今度はクラ兄さんの姿が見えた。


「誤解だ!俺はただ、任務の報告をしようと!」

「話したでしょ?昨日、迷惑没落貴族一家が何しでかすか分からないから、用心しようって話をしたって。それなのに、カトレア様を放ったらかしにして任務を優先しようとするから、キリアが不安になったんじゃないの?」

「そ、それは!いや、大体、騎士団の方から要請があったのに、何故クラが俺を責める?!お前も騎士団の一員だろう!」


「クラ兄さん!!!」

 ガバッと、今度は、ベッドから飛び降り、クラの元まで行き、抱き着いた。

「キリア?本当にどうしたの?」

 胸の中でわんわん泣く妹の様子に異変を感じ、優しく声をかける。


「キリア?」

「!」


 部屋での騒動が聞こえたのか、隣の部屋から、カトレアも心配そうに、顔を出した。

「カトレアっ!」

「ーーーどうしたんですか?何かあったんですか?」


 良かった。皆無事でいる!良かった!本当に……!

 安心して、嬉しくて、私は、暫くの間、泣き続けたーーー。




 *****


「整理しますね。キリアは、長い夢を見ていた。と」

 カトレアの部屋に集まった私は、3人に、何故泣いていたのか、理由を掻い摘んで話した。


「変だよね。ごめんね……妙にリアルだったから、つい、皆の顔を見たら泣いちゃって……」

 そう。きっと夢だったのだろう。長い長い悪夢。私は、悪夢から目を覚ましたのだ。


「……キリア、僕が、ケイの過去について話した日を覚えていますか?」

「え?うん」

 衝撃的だったし、これからの決意もした日だから、よく覚えてる。

「それは、どの位前でしたか?」

「えっとーーもう3週間くらいは経ってるんじゃないかな」

 夢では、3週間経って、マドローナが攻めて来た。

「アレンの任務を詳しく言えますか?」

「夢の?うん。確か、病人や怪我人が沢山出た街まで、救護員を護衛する任務だったかな。でも、それが実はラナン家の策略で、その任務の最中、アレンさんはマドローナって国の手により、その……全滅してしまう……」


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