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マドローナ81

 


 この前は、試運転で伝令を城中に飛ばしてたけど……これは……本物?緊急事態??

 ただ事では無い雰囲気に、背筋が凍る。

 取り敢えず、様子を確認しようと、キリアは部屋の外に出た。


「キリア!」

「!カトレア!」


 外に出た所で、こちらに向かって走り寄るカトレアの姿が見えた。

「一体、何事なの…?!」

「詳しくは僕も分かりません。こんな事は初めてです」

 キリア達以外も、皆、この状況に戸惑っているのか、あたふたと走り回っているのが見えた。


『騎士の皆さん!至急、騎士団の練習場に集まって下さい!繰り返します!騎士、魔法使いの皆さん、至急、騎士団練習場に集まって下さい!』


 スピーカから聞こえる台詞に、ゾクリと、また、背筋が凍る。


 騎士に…魔法使い…?集めて、どうするの…?!何があったの…?!



 困惑はしているが、このままここにいても仕方が無い。緊急事態。騎士に魔法使い……戦える者……?嫌な予感しかしない…。


「魔物が襲撃でもして来たのかな…?」

「魔物……確かに、最近、騎士団に救助要請が多発していると父様から聞きましたが……」


 こうなってくると、王都の外に出てしまったアレン達騎士団も心配だ。


 急いで騎士団の練習場まで来ると、そこには、もう大勢の人達が詰め掛けていて、クラ兄さんの姿もあった。

「!キリア」

「クラ兄さん!何があったの?」



「……アレンが率いていた騎士団の隊が、全滅した」


「ーーっ」

「……嘘ですよね?」

 いきなり、信じられない言葉が飛び込んで来て、言葉に詰まる。それは、カトレアも同じだったようで、目を見開いたまま、クラに確認をした。


「……残念ながら、事実です。隊が全滅した事を伝えろと、1人だけ、生かされて戻ってきた隊員が証言しました」

 拳を強く握りしめながら、クラ兄さんは苦痛の表情を浮かべていた。


(嘘……アレンさんが……!嘘……!)

 信じられなくて、目眩がする。

 心臓がはち切れそうなくらい、辛い。でも、私よりも、きっと、カトレアの方が、ショックは大きいはず。


「…………戻って来た隊員に言付けを頼んだと言いましたね?魔物に、そんな知能的な事が出来るとは考えられません。相手は人間ですね?」


 ショックなはずなのに、カトレアは1度目を閉じ、数秒沈黙した後、平静を装って、クラに犯人についての情報を尋ねた。


「そうです。詳しくは今からーー」


 ザッと、騎士団の練習場に、ラット騎士団長と、王様が現れ、ズカズカと、急ぐように皆の前に立った。


「皆、よく聞け。我が国は、他国から宣戦布告を受けた」


「!他国って……!」

「隣接にあるマドローナって国ね。野蛮な人種の多い、マフィアが従事ってる国なんだけど、規模はそんなに大きく無いし、今までこの国に喧嘩を売るなんてしなかったんだけど、急に仕掛けてきたんだよ」

 隣にいるクラ兄さんが詳しく教えてくれる。

「マドローナ…」

 私は聞いた事が無い国だ。と言うか、紅の魔法使いの家からあまり出ないようにしていたのもあって、自国ですら知らない事も多いのに、他国となれば、もっと知らない。


「僕とジュンが先生に拾われるまで、奴隷として暮らしていた国だよ」

「ええ?!」


「マドローナを向かい撃つ!野蛮な奴等に、我が国が荒らされるのを許してはならん!!」

「おおーーー!!!!」

 王様の宣言に、騎士達から雄叫びが上がる。


 クラ兄さんの言っている事が正しいなら、規模の大きいこの国に、マドローナが勝てるはずが無い。喧嘩を売るだけ、無駄。負け戦確定。それなのに、王様達が必要以上に焦っているように見えるのは、何故?



「ラット兄様!」

 騎士団長として、慌ただしく騎士達に戦闘の準備を命令しているラットの元に駆け寄る。


「何故アレン程の騎士が、マドローナに負けたのですか?アレンならば、例え不意打ちであろうとも、マドローナに負けるなんて有り得ません!」

「……救助要請」


 ラット様に聞くしか無いって分かってはいるけど、私にはその一言では解読不能過ぎる!


「アレンの任務は、病気が広がった街に、治療員を送るための護衛だったんだ」

 クラがまたもや、代わりにキリアに説明してくれる。

 魔物討伐の任務とは違い、治療員を送る護衛の任務では、騎士は数人しか同行せず、あとは非戦闘員のみ。

「アレンは、治療員を守って、死んだ」

「……っ」


 アレン達の死は、他の騎士達も伝わっているのだろう。騎士達の中には、涙を流している者もいた。でも、誰もが、足を止める事は無かった。

 皆、国を守る為に、戦う準備を進めている。


「クラ、お前はカトレアと行動しろ」

「!ラット騎士団長!僕も騎士団と一緒に行きます!」

「命令だ」


 それだけ言い残すと、ラットはマントを翻して、その場を去った。

「クラ兄さん…」

 この短い間にも、クラ兄さんは、ラット様を信頼して、共に戦いたいと思うようになったんだ。それなのに、こうやって置いて行かれるなんて……。

 クラの気持ちを考えると、キリアは居た堪れない気持ちになった。


「ラット兄様は、随分クラを信頼してるんですね」

 ん?

 何故かカトレアからは、反対に、ラット様がクラを信頼しているとの言葉が出た。

「……本当に……仕方無いですね。あそこまで言われたら、カトレア様を守るしか無いじゃないですか」



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