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次の依頼者8





「でもこれであいつはイエロカード2枚で退場。もうあの髭親父の顔見なくて済むだろ」

警告2回目で退場ーーつまり、依頼を申し込む事も出来なくなるらしい。

「依頼を受けるか受けないかは、ジュンさん達が決めてるの?」

「まぁな。ムカつく奴からは絶対に受けない。本当は昨日の内に、1発レッドカードで退場にしてやろーかと思ったのに、クラが変な優しさ出すからー!」

「『呪われたお前等にわざわざ仕事を持ってきてやった』って言われた瞬間にキレて話一切聞かなかったんだもん。せめて内容くらい聞いた方が良いかなって思って。聞く価値無かったけどね」


先日、暴言を吐いて追い払われたのに、また今日も初っ端から同じ事を繰り返すなんて、どうやらヒゲールさんは学習能力が無いらしい。


「さて、じゃあ帰ろっか」

依頼主が(強制的に)ご帰宅されたので、もうここに留まる理由は無い。

*****

クラに促されるまま、外に出ようと足を1歩進めた所で、昼と同じ、虹色の蝶が、目の前を通り過ぎた。

「新しい依頼のお願いだね」

蝶はそのまま、ジュンの肩に止まった。

「……そうみたいだな」

「またヒゲールさんですか?」

「それは無いよ。さっきも言ったけど、退場になった人は、二度と依頼の場所に来る事が出来なくなる」

依頼の申し込みが出来ないーーすなわち、この場所に辿り着く事自体が出来なくなる。

「ついでだし、このまま話聞くか」

ジュンはそう言うと、肩に止まった蝶を手で払った。

キラキラと虹色の鱗粉を撒き散らしながら画面の方へ飛び、そのまま、画面の中に入ったと同時に、映像が写り変わった。

「さっきまでと違う場所…!」

「依頼主同士が会わないように配慮してるんだ。僕達に依頼に来るって事は、相当切羽詰まってるって事だからね」

画面が変わった事に驚くキリアに、クラは的確に説明した。


成程。呪われたとされる赤い瞳の持ち主にわざわざ依頼しに来るなんて、余程の事ですもんね。そりゃあ人殺しの依頼も来ますよね……。と言うか、そう言ったいわく付きの依頼しか来ないのでは?

思わず、この先の仕事のことを考えて、ゾッとする。


今度はどんな胡散臭くてやばい奴が来ているのかと思えば、次、画面に映ったのは、8歳のキリアよりも小さい、可愛い男の子だった。


『ーー紅の森へようこそ』

「!ほ、本当にいたんだ……」

少年は、どこからとも無く聞こえて来た声に、ビクッと体を揺らして反応し、その言葉からは、半信半疑でこの場所に来たと伺えた。

『俺は紅の魔法使いの1人、ジュンーー名前、要件を話せ』

「僕の名前は、リトーーー僕の、ママを助けて欲しいの!お願いします!」

まだ小さい拳を握りしめ、目に涙を溜めながら、リトは懇願した。


(お母さんを助けて欲しい?)

こんな場所にわざわざ依頼に来た点を除いても、リトの言葉は、切羽詰まっているように聞こえた。


『母を助けて欲しい?何から?』

「えっと…あの…!」

『さっさと話せ』

「!ジュンさん!駄目だよ!」

緊張と恐怖からか、上手く話せないでいるリトを急かすジュンを、キリアは慌てて止めた。

「まだ小さい子なんだから、上手く話せなくて当然だよ!もっと優しく話を聞いてあげなきゃ!」


前世、家政婦。シッターとして、子供の面倒も見ていました!大体!あんな小さな子が!こんな夜の森の中1人でいて、怖くないはずが無い!しかも、自分で言うのも何ですが、頼む相手が、あの呪われてるとされる紅の瞳の持ち主相手ですよ?!そりゃあ上手く説明も出来ません!


「貸して!これ?」

「あ!おいっ」


『ーーリト、大丈夫?』

キリアは、ジュンがそうしていた様に、見様見真似で、青色の音声通話石に触れ、声を出した。


「「!」」

音声通話石で、画面の向こうに声を届けられたのを見て、クラとジュンは驚きの表情を浮かべたが、それには気付かず、キリアはリトに優しく話しかけた。


『落ち着いてね。ゆっくり話してくれて大丈夫だよ。ママがどうしたの?』

「う、うん…!」

画面の向こうで、リトが頷いたのを見て安心する。

「あのね……僕のママ、町で有名なお菓子を作る人なんだけど」

『素敵なお仕事だね』


お菓子を作る人ーーパティシエさんかな?いいなぁ。私、この世界に来てからお菓子食べた事無いんだよねー。元・屋敷で作ってはいましたけど。


「あのね…その、ちょっと前に、芋を潰して、焼いて、味をつけたら美味しくなるお菓子を発明してね」


ん?芋を潰して焼いて味をつける?何だろ……そう言えば、この世界のお菓子食べた事無いから、何が主流なのか分からないんだよね。


「そしたら、それが凄い売れて……嬉しいんだけど、それを、良く思わないおじさん達がいてーー」


リトの話を要約すると、パティシエのママの作ったお菓子が爆発的に大ヒットし、そのお菓子に目をつけた露店を営む大富豪が、専属でこちらに雇われるか、全ての商品をこちらに御ろせと言ってきた。


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