先生には容赦しません78
魔法を使えないユーリが、あれだけの爆発を引き起こせた。
「赤い宝石は有能ですよ。その痕跡を残さない。まるで魔法を使った後のように、残るのは魔力の欠片だけ」
使った人間が魔法を使えなければ、その場にいて、魔法が使えるケイ先生が真っ先に疑われる。
「ケイから昔の話を聞いた時に、赤い宝石ーー爆弾の事も聞きました。ユーリはそれを、誰にも見られないように、取り巻き達にも隠すように使っていました。それは、祖先の悪事を知っていて、隠そうとしているのだと認識しまいした」
赤い爆弾をこの目で見て、ケイの話が事実である事の証明も出来た。だが、赤い爆弾を回収する事は出来なかった。
「……ケイがこの話を、お二人に話して良いと言ったのは、今後、ラナン家が何をしでかすか分からないからです」
ラナン家は今、長男であるユーリの失態により、没落寸前の落ちぶれた貴族になり下がった。
「ラナン家は、自分の地位を格上げするために、ユーリーー優秀な赤い瞳を持つ者達が邪魔で、どんな非道な手段を使っても排除するような人達です」
自分達がのし上がるために、自分達より優秀な人材は必要無い。
「二人には、立ち止まって欲しくない。二人には、自分達の好きなように、生きていって欲しい。だから、ラナン家に負ける事無く、立ち向かって欲しい。と、ケイは話していましたよ」
「ケイ…先生…ずっと、1人で苦しんでいたんですね」
カトレアの話を全て聞いて、まだ、頭の中で整理が出来ていない。けど、ケイ先生は、ずっと、苦しんでいたんだ。と、思った。
「僕はそう思わないけど」
だが、クラ兄さんはそれを否定した。
「ただ面倒臭いから引き篭っていただけでしょ?今だって表舞台には顔を出さないし」
「そ、それは、ケイ先生が出て来ちゃったら、騒動になるからでーー!」
「何百年も前の話だよ?歴史書が残ってるとは言え、閲覧は一般人には出来ないみたいだし、閲覧出来ても、その程度の認識でしか無い。現に、カトレアも、初めて先生に会った時、断定出来なかった。なのに、肝心の紅の瞳の差別を無くすのを、カトレアとかキリアに丸投げしちゃってさ、他力本願も良い所だよ」
問答無用にバッサバッサ切り捨てる。
「そ、それはそう…かもしれないけど。でも、ケイ先生も完全に被害者だし……外に出るのが怖い気持ちも分かるし……」
「鵜呑みにしてしまった、僕達王族の責任ですから」
「キリアもカトレアも甘い」
またしてもバッサリ切り捨てられてしまった。クラ兄さん、ケイ先生に容赦無いな…。
「まぁでも、大体は理解したよ。こんな大事な事を今まで黙っていた事にもムカついてるけどーー君に免じて、我慢してあげる」
「!僕ですか?」
クラの目線の先には、カトレアの姿。
「紅い瞳の差別を最初からしていなかった。僕達は、人間ってだけで、君を毛嫌いしてたのにね」
兄さん達も、人間に酷い扱いを受けて来た。だから、人間が嫌いだった。カトレアの言葉や態度に、心を開く事が出来なかった。自分達がされてきたように、人間というだけで。
「それどころか、紅の瞳の差別を無くそうと、自分の命を懸けたり、自由研究だって嘘ついて無能肌荒れ男を止めようと策略したりーー」
ああ!流石クラ兄さん!自由研究が口実だってもう気付いちゃってました?!
「本当に……君は、どうしようも無いくらい、お人好しだよね」
ふっ。と小さく微笑むと、クラは膝をついて、カトレアに頭を下げた。
「紅の瞳の差別を無くす為に尽力してくれた事、心より感謝しています。ありがとうございます、カトレア様」
「クラ兄さん…!」
クラ兄さんは、ラット王子の弟だからとゆう理由だけで、カトレアの態度を改めた訳じゃ無かったんだ。きっと、カトレアの事を、認めたから。
「そんな……僕は、ただ、紅の瞳の持ち主達が、悪い人達では無いと、皆に知って欲しかっただけです。あの、だから、また、普通にして頂けるとーー」
「はい。それだけで充分です」
カトレアの訴えに全く耳を傾けないクラ。
クラ兄さんの態度に恐縮し切るカトレア。
横から見てると、カトレアがただただ困惑してるように見える……カトレアは本当に、クラ兄さんに元の態度に戻って欲しいんじゃないかな?私にも、敬語使って欲しく無いって言ってたし……。
あ、でも、私もお城に仕えるようになったんだから、ちゃんとカトレアに敬語とか、様付けで呼んだ方が良いのかな?!
「あの、カトレアさーー」
「キリア!キリアまで止めて下さいね!僕、何度もクラには、普通に接して下さいってお願いしてるんです!」
様を付けで呼ぶ前に、意図を読んだカトレアに止められてしまった。
「滅相もございません。私如きがカトレア様に礼節を欠くなど、以ての外です」
「クラ!」
あれ?何かクラ兄さん、カトレアが嫌がるのを見て楽しんで無い?もしかして、わざとしてる?確かに、カトレアは、クラ兄さんやジュン兄さんがどれだけ冷たい態度を取っても気にもとめて無かったのに、今の方が、困惑して困ってる気がするけど……怖。
「コホン。兎に角、今日僕が伝えたかったのは、没落しかけているラナン家が、今後、どんな手を使ってくるか分からないので、気をつけて欲しいという事です」




