脳みそ空っぽ肉団子女77
本心からそう思った。
ケイが、過去の紅の魔法使いと同一人物である事も、薄々気付いた。でも、それには何か、理由があるんだ。っと。
カトレアの台詞に、一瞬驚いた表情を浮かべたが、ケイはすぐに声を上げて笑った。
『あはは。カトレア君は本当に面白いね!』
『恐縮です』
『ーーーお察しの通り、理由ーーってゆーか、俺はそもそも、街を破壊なんてしていないよ』
『!』
『嵌められたんだ。ある人間にね。そして、その人間の子孫が、今、君の行動を邪魔している人達だよ』
*****
「「ーーー」」
カトレアから話される昔話を、クラとキリアは、ただ黙って聞き入れた。
どうして紅の瞳が迫害されるようになったのか。それをついさっき王様から聞いたばかりなのに、それを上回る、衝撃の事実を聞かされて、頭が追い付かない。
街を破壊した紅の魔法使いがケイ先生?でも、本当は違うくて、ケイ先生は他の人間に嵌められただけで、その罪を擦り付けられた…?
「何で先生は、自分の無実を証明しようとしなかったの」
衝撃からか、クラの口調が、敬語では無い、タメ口に戻っている。
「自分達の地位を上げる為に、優秀なケイを勝手に敵対視し、挙句、ケイを排除する為に、街一つを犠牲にした人間達に失望したからだそうです。これ以上関わるのが、心から面倒臭くなったと」
自分はもう、人間と関わるのは止めようと、森に引き篭もった。
数百年経って、久しぶりに街に出て、自分だけで無く、紅の瞳の持ち主そのものが、呪われていると迫害されていると知り、驚いた。そして、後悔した。あの時、面倒臭くなって、全てを放置したせいで、自分を嵌めた奴等が好き勝手に捏造し、神様に愛されている、特別な力を持つ紅の瞳を排除したのだと。
「時間が経ってしまい、その事件を知っている人間はもう生きていない。人間との関りも絶ってしまっている。無罪の証拠も無い。気付いた時には、どうする事も出来なかった。と」
罪滅ぼしも兼ねて、人間に捨てられた子供ーークラやジュンを拾い、育てて行くうちに、余計、自分を嵌めた人間を許せず、紅の瞳の差別がこのまま続くのが嫌になった。でも、何も出来ない。でも、ただ大人しくしているのも嫌で、紅の瞳の魔法使いとして、人間達の依頼を受けるようになった。
何かが変化するのを期待してーーー。
「……その人間はーー今、カトレアの邪魔をしている子孫はーー」
そもそもの元凶は、その人間だ。その人間が、ケイを陥れなければ、こんな事にはならなかった。今も尚、紅の瞳の差別を無くそうとするカトレアの邪魔をしているーーー
(カトレアの邪魔?)
そう言えば、そんな事を言っていた人物が、一人いたーーー。
『お前は紅い瞳の差別を無くそうとしてるもんな。都度、ラナン家に邪魔されてるとも知らずに!』
「ラナン家……私の、元の家族が……ラナン家が、ケイ先生に罪を擦り付けた子孫なんですね……!」
雨天の山コリカで会った、元・兄のユーリの発言を思い出した。
「…はい、その通りです」
カトレアはゆっくりと頷いた。
私の……祖先が……紅の瞳の差別の、原因ーーー!
信じたくないけど、事実なんだと、カトレアの表情を見ても分かる。
「ごめんなさい…!私の…祖先が…!」
「キリアの性ではありません。そもそも、祖先が原因であって、その子孫に罪はありません」
「でも…」
「ケイも、貴女を責める気はありません」
ケイは、きっと、私がラナン家の人間だと、早い段階から気付いていた。気付いていたのに、私を、紅の魔法使いの一員にしてくれた。普通に、接してくれた。
「無実の証明のお手伝いをしたいと申し出ましたが、断れました。ケイは、自分の無実の証明は望んではいません。ただ、紅の瞳の差別を無くす事を望んでいます。貴女達の為にも」
「…そのラナン家は、祖先の罪を知っているの?」
クラは、キリアの頭をポンポンと優しく叩きながら、カトレアに尋ねた。
私と同じ、今、衝撃の事実を知ったはずなのに、クラ兄さんは私よりも落ち着いているように見えた。
「知っていると思います」
「何で断言出来るのさ?」
「ラナン家の長男、長女ともお会いしたと思いますがーー」
先に城に来ていたクラ兄さんも、サウィルンと初対面を終わらせていたみたいだが、どうやら、カトレアの婚約者だと風潮しつつ、ラット王子にもちょっかいをかけていたらしい。『第7王子じゃなくて、第3王子が落とせたらラッキー!ってか、私には第3王子のような、地位の高い人が相応しいの!』と、騎士団で高々と宣言したらしい。当然、厳重に注意され、ラナン家にも抗議がいった。
「あの脳みそ空っぽ肉団子女ね」
確かユーリさんは無能肌荒れ男でしたっけ。サウィルンさんは脳みそ空っぽ肉団子女に命名されましたか。長いな…。
「彼等は少し知能が低いようで、両親に甘やかされて育った結果、喋って良い事と悪い事の区別もつかず、勝手に持ち出してはいけないものも持ち出すような、残念な大人に成長しました」
「!まさか、あの赤い宝石!?」
クラ兄さんは、理解が早い。
ユーリが使用した、紅の宝石は、山を爆破し、土砂崩れを起こした。




