差別の原因75
幼いカトレアに、紅い瞳の偏見を無くしてくれた人。幼いカトレアの命を救ってくれた人。
その人がいたから、今のカトレアに会えた。
「…ありがとうございます、キリア」
「っ!あ、あの、サウィルンさんは、どうしてカトレアに言い寄ってくるようになったんですか?」
何故だか、カトレアの笑顔が眩し過ぎて、動悸がし出して、目を逸らしながら、あのお騒がせの人物について尋ねた。
「さぁ?少し前からなのですが、急に猫なで声で甘えられるようになって、婚約者だと勝手に色々な所で風評されるようになって、困っていたんです」
話を聞くと、前までは、第7王子なんて、王位継承権の低い、いてもいなくても一緒の約立たず王子!と、彼女の兄と同じように、カトレアを小馬鹿にしていたのだが、ラナン家が没落しかけた辺りから、急に擦り寄るようになって来たらしい。
「……それって、ラナン家の地位向上の為に、カトレアを利用しようとしてるんじゃ……」
依頼の時に、人々から話を聞けるようになったキリアは、カトレアの良い評判を沢山聞いていた。
貧しい人々の為に、病院を無償で提供したり、魔物で困っている村に、騎士団を送り込んだり、誰にでも気さくに話し掛け、優しく、遂には、紅の瞳の差別を無くし、優秀な人材を発掘した。
そんなカトレアと結婚すれば、例え第7王子だとしても、評判は良くなるし、貴族としての地位も回復して貰えるかもしれない。それに、第1、2、3、4ーーと、上位になれば、結婚は難しいかもしれないが、第7王子程度なら、ラナン家との婚姻は有難いと受け取るだろう。とでも考えているんだろう。本当に、頭の悪い人達が考えそうな事だ。
「そうかもしれませんね」
あっけらかんと答えるカトレアもまた、キリアと同じような可能性を考えていたのだろう。
「何にせよ、僕は婚約を受けるつもりは微塵も有りません。それは父も同意しています」
以前までの権力があったラナン家ならまだしもや、最早没落寸前の貴族。そんな貴族と、自分の息子を結婚させる事は望まないだろう。
「城には二度と足を踏み入れさせませんし、安心して下さい」
「わ、私は本当に大丈夫だよ」
確かに、久しぶりに声を聞いた時は、昔を思い出して、体が硬直しちゃったけど、すぐにカトレアが庇ってくれたし、うん。大丈夫。
「良かった。では、最後の案内になりますので、行きましょうか」
「最後の案内?」
「はい。父様の所です」
ーーーそうですよね。国王に挨拶。一番大切な事ですよね。
早速来た緊張MAXの王様の初対面に、元・家族サウィルンとの対面の衝撃が一瞬で吹き飛んだ。
*****
「疲れたぁ…」
王都にていてからの目まぐるしい忙しさがひと段落したのは、その日の深夜。
あれから、カトレア、アレンさん付き添いで王様に挨拶し、何故かそのまま夕食に誘われ、流れで第1王子、第2王子とも顔を合わせる事になった。王妃様や、第1・第2王子様の婚約者様と会話したり、雲の上の人達に囲まれている自分が信じられなかった。
せめて顔見知りのラット王子様やクラ兄さんがいてくれればーー!!
クラ兄さんは騎士団の宿舎で生活しているらしく、お城の中にはいない。
私はベットに顔からダイブして、疲れた体を休ませた。
「…王様達、皆良い人だったな…」
誰も、紅の瞳を前に、差別を口にする人はおらず、それどころか、今までの紅の瞳に対しての差別を謝罪してくれた。王様に頭を下げられる私の気持ちを考えて欲しい…。それを話したら、どうやらクラ兄さんも、城に来た初日に王様に頭を下げられたらしい。
何故、こんなにも優秀で、神様に愛された証である、紅の瞳が呪われていると差別されることになったのか。その話も、王様はしてくれた。
ーーー数百年も昔、歴史書では、赤い瞳の魔法使いが、一夜にして、一つの街を跡形もなく吹き飛ばした。その街に住んでいた人々全てを巻き添えにしてーーその鬼の所業から、紅い瞳は、呪われている。悪魔の瞳だと言われるようになったーーー
過去、紅い瞳の魔法使いが起こした残虐な事件が、差別される事になった要因だと記されているらしい。
「街を吹き飛ばした……か」
大魔法使いが本気になれば、それは出来るのかもしれない。私は出来ないけど。私は攻撃魔法がそんなに得意じゃない。ジュン兄さんなら、得意だけど……。例え紅の魔法使いと言えど、実際、街を吹き飛ばせる程の魔法を使えるのは、ほんの一握りだと思う。
(ケイ先生だって、出来ないと思う…)
ケイ先生は空間魔法や、魔法道具を作るのに長けている。
トントン。
「!はい」
廊下に続く扉では無く、部屋の中に備わっている扉から、ノックの音が聞こえ、ガバッと起き上がった。隣の部屋に繋がる扉のノック。即ちノックの主は、カトレアであるとゆうこと。
私はパッパッと髪を整えると、鍵を外して、扉を開けた。
「お疲れのところすみませんキリア。今、少しお話いいですか?」
「はーーーい、いい…けど…」
扉を開け、迎えたカトレアの表情は険しく、真剣で、何か重要な話をされるんだな。と、分かった。
カトレアの部屋に通され、用意されていた珈琲の入ったティーカップの置かれたテーブルに案内された。
「クラ兄さん!」
そこには、クラの姿もあった。




