紅の魔法使い6
確か、紅の瞳の持ち主は、魔力が強いと聞いた。
今まで呪われた子と蔑まされてきたこの紅の瞳が、魔力の強さの証となる。
「クラ君もジュン君も、これから兄弟子として頑張って行かないとねー!」
「兄弟子…」
「僕達が兄弟子なんて、変な感じだね」
ジュンとクラは、互いに顔を見合わせた。
「じゃあ今日は、初期の魔法から教えて行くね。まずは緊張を解すため深呼吸からーー」
失礼ながら、チャラく見えるケイさんの授業……どんな授業をされるのかとドキドキしていたけど、思いの他、真面目で、とても分かりやすい内容だった。
前世では勉強は苦手で、やる気なかったけど、魔法に興味があるから、そもそもの学ぶ意欲がまず高いし、不真面目にすると怪我をするって緊張感から、前世では考えられないくらい、真剣に取り組めた。
ケイさんも、分からないことは直ぐに教えてくれて、私のペースに合わせてくれるし、ジュンさんとクラさんも、私に付き合わせて初期の魔法の授業を受けてるのに、嫌な顔1つしないで、付き合ってくれた。
「さて、今日はここまでにしようか」
授業を初めて約4時間。辺りが赤く夕暮れに染まるまで、授業は続いた。
(もうこんな時間ーー集中してたらあっという間だった)
「キリアちゃん、魔法見込みあるよー!真面目だし、何より才能がある」
才能は、神様が与えてくれた特別な力の1つだろう。やっと、神様の恩恵を感じられてホッとしてる。このままだと、死んだ時、神様に山ほどクレームをつけないといけなかったから。
「ありがとうございます……えと、ケイ先生」
ジュンさんもクラさんも先生or師匠と呼んでるし、私もそれに習って、先生と呼ぶ事にした。
「くぅう!いいね!女の子に先生って呼ばれるだけでテンション上がるよー!!」
「……先生?先生ってロリコンなのかな?」
キリアの言葉でテンションが上がりのケイに、クラは冷たい氷点下の視線を送った。
「ええ?!いやいや、違うよ?!俺の対象年齢は幅広いとは言え、流石に8歳の女の子相手に手は出さないよ?!でもほら、やっぱり女の子の弟子って響きがさ!ほら!なんかこー違うくない?」
必死になって弁明するクラ。
必死になればなるほど、何故か嘘くさく見えるのは何故だろう?
*****
そんな会話を繰り広げていると、1匹の虹色に光る蝶が、目の前を横切った。
(綺麗…)
見たことの無い不思議な蝶は、この世界では当たり前にいる存在なのか、特別なのかも分からないが、とても幻想的だった。
虹色の蝶は、そのままキリアを通り過ぎると、ケイの肩に止まった。
「ーーふむ。新しい依頼のお願いだね」
虹色の蝶から何かを聞き取ったケイは、蝶に向けていた視線を変え、3人を見た。
(依頼?)
「今晩、依頼主が約束の場所に来るから、話を聞いてきてね」
「了解しました」
「またかよ…」
昨日来たばかりのキリアには、会話の内容は分からないが、3人にとってはいつもの事のようで、流れるように話が進む。
「キリアちゃんも一緒に行くかい?」
「えーーっと、その、依頼主と言うのは、何の事なんですか?依頼?仕事ーーという事ですか?」
全く内容は理解出来ないが、依頼と言うからには、その依頼主とやらが、ケイ達に何か、頼みをしてくるという事で、依頼主の呼び名と、1、2度では無い感じから、仕事では無いか?と推測する。
「せいかぁーい☆これで俺達は、お金や食べ物、衣類を調達していまーす!」
(何でも屋みたいな感じなのかな?)
「俺達は《紅の魔法使い》ーーその名で、依頼を受けてるんだ。少しは名の知れてるパーティだと思うよ。良い意味ーーよりかは、悪い意味で☆」
「悪い意味で?!」
「今日は依頼主から話を聞くだけだから危険は少ないと思うし、丁度良い機会だから、一緒に行って話を聞いて来るといいよ」
「…分かりました」
危険は少ない。の言葉は、危険性が少しはあるという事なのでは?と、多少引っ掛かるが、お世話になる以上、自分の食い扶持は自分で稼がないと行けない。お手伝い出来る事があるなら、何でもしないと。
「僕達と一緒だから大丈夫だよ」
不安な様子が表情に出ていたのか、クラさんが微笑みながら、優しい言葉をかけてくれた。本当に優しい。元・家族なら、危険だろうと何だろうと、躊躇無く放り込んでる。
「依頼主が来るまでにまだ時間があるし、それまでに、ご飯でも皆で食べよう」
そう言って、ケイ達は家の中に戻った。
ーーー夜。
闇夜に暮れた森の中を、ジュンの杖から溢れる光の魔法を頼りに進む。光の魔法があるとはいえ、その光は広範囲に及んでいる訳では無く、3人の足元を照らすのみで、見渡せば、辺りは暗闇。
「大丈夫?」
「大丈夫…ちょっと怖いけど」
森に1人捨てられた時の恐怖を考えれば、まだ1人じゃないから、耐えられる。一緒にいるジュンさんとクラさんは全然怖がって無いし、何なら慣れてる。
隣に平気そうな2人がいたら、恐怖も少し和らぐ。少し和らぐけど、怖いものは怖いけどね!
「手、繋ぐ?」
「……うん」
前世25歳ーーー12歳の男の子相手に情けないと思われるかもしれないけど、怖いものは怖い。今は8歳の女の子だし、許して欲しい。
キリアはクラの好意を素直に受け取り、手を繋いだ。
「もうすぐ着くよ」
昼間でも、同じ様な景色ばかりで迷ってしまいそうなものなのに、よくこんな真っ暗な森の中で、迷わず目的地まで行けるものだと感心する。