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無表情54

 


「よく1人でここまで来れたね。弱いのに」

「ユーリには、単純にお金目当ての人や、ラナン家に取り入ろうする取り巻き達がいるんですよ」

  クラの疑問を、すぐにカトレアが答えた。

  ユーリ専用の隊員が用意されているらしく、今この場にはいないが、ここに来るまでの道中、彼等に守られながらやって来たらしい。


「…ラナン家は、権力の強い…貴族…なの?」

  家の事を全く知らないキリアは、特別とも取れる待遇をされているラナン家について、尋ねた。

「そうですね。それなりに強い貴族ではあります」

  疑問について聞いている最中、少し離れた場所から、バタバタとやってくる数名の足跡が聞こえた。


「ユーリ様!」

「!おい!一体何をしていた?!俺が危険な目にあっていたとゆーのに、何故助けに来ない?!」

  駆け寄ってきた上記の取り巻き達を、ユーリは怒鳴りつけた。

「え、ええ?!ユーリ様が、ここから先は1人で行くから、決して来るな!と…」

「五月蝿い!主に命の危機が迫っていたら、何を置いても助けに来るのが普通だろう!」


  なんて理不尽な……。ユーリさんが来るなって言うから、離れた場所で待機して、こちらの様子が分からなかったんじゃないの?それでどうやって、主の命の危機が分かるんだよ……。

  ああ。でも、なんか私も、こうやって理不尽な事でよく怒鳴りつけられてた気がする。


  思い出したくない記憶を呼び覚まされて、キリアは冷めた目を浮かべた。


「そ!それより、ラット様がこちらに来ました!」

「何?!クソっ!お前等に時間を取られたせいでーー!」


  ヒュンッッッッ!!!!と、風が横切る様な音が聞こえると同時に、何かが、体の横を通り過ぎた。

「「「!」」」

  ジュン、クラ、キリアは、それぞれ武器を持ち、カトレアを守るように立った。

『クァァアアアアア!!!』

  魔物の咆哮が響き渡る。

  翼を持った、鷹の魔物が、こちらを鋭い目で、睨み付けた。

  魔物化してしまった鷹の魔物の体は、通常の鷹のサイズより3倍程大きく、爪や(くちばし)が鋭い。一突きされただけで、大怪我を負ってしまう。

「スピードが早いね。全部で15匹。頂上付近に住まう魔物かな」

  この森に来てから、初めて出会った魔物で、クラは冷静に、周囲を見渡し、魔物の数を確認した。

「多いな…!くそ!どんだけ魔物いんだよ!」

  今いる場所は、平地で、そこそこの広さはあるが、踏み外せば、そこは断崖絶壁の山の上。地上まで一直線に落下する。

「キリア。カトレアを守ってて。ジュン、足場に気を付けて。万が一僕が落ちたら、ちゃんと魔法で助けてよ」

「落ちんなよ!」

  戦い方を確認し合い、いざ、戦闘に入ろうとした所で、3人は、動きを止めた。


  反対側の平地の入口から、白銀の鎧を着た騎士達が、次から次へと、魔物を退治して行く。

  彼等が着ている白銀の鎧に、キリアは見覚えがあった。それは、カトレアの騎士であるアレンが着用していた物と同じ。

  (ーーってことはーー)


「ラット兄様」

  騎士達を先導するかのように、1番前で、堂々と剣を振るう青年に向かい、カトレアは名前を呼んだ。


  (やっぱりー!!第3王子様来たーー!!!)


  ラット兄様と呼ばれた青年は、黒の短めの短髪に、カトレアと同じ茶色の瞳をしていて、イケメンの血筋なのか、同じ様に顔立ちが整っていた。

  手際良く、全ての魔物を退治し終えると、ラットは無表情で、カトレア達の元まで近寄った。


「……何故、ここにいる?」

「自由研究でやって参りました」

  無表情のラットに対して、ニコニコと笑顔で答えるカトレア。

「自由研究…?」

「はい。学校の宿題です」

  受け答え中でも一切変わらない鉄の表情。


「そうだ。ラット兄様、僕の友人達を紹介しますね」

  (止めてーー!!!)

  内心、キリアは叫んだ。


「こちら、紅の魔法使いの皆さんです。彼女がキリア。そして、彼女の兄で双子の、ジュンとクラです」

「……」

  紹介されるや否や、ジッと、鋭い視線で無言で睨み付けられる。

  周りの騎士達からも、紅の瞳を持つ魔法使いとしてか、警戒されるような鋭い視線が送られる。


「……邪魔をするな」

  冷たい口調、声色で、短く、声をかけられ、ビクッと、体が反応する。


「ユーリ」

「は、はい!ラット様」

  ラットに呼ばれ、魔物襲撃から逃げるように片隅にいたユーリは、そそくさと近寄った。

「…身勝手な振る舞いは止めろ」

「も、申し訳ございません」

  第7王子であるカトレアには横柄な態度をとっていたのに、第3王子であるラットには、平身低頭で謝罪してる。

「…戻るぞ」

  そう言うと、ラットはマントを翻し、ユーリ含む騎士団を引き連れて、来た道を戻って行った。



「歓迎されて良かったです」

「お前の目は節穴か!」


  呑気に真逆の印象を述べるカトレアを、ジュンは怒鳴りつけた。

「明らかに邪魔だから帰れって感じじゃ無かった?」

  クラも、ジュンに賛同する。

  勿論、私もそう思った。なんなら、自由研究如きでこんな場所まで邪魔しに来んなよ!ってフルで聞こえた!


「もう、いっその事、日を改める…?」


  数百年近く目的の花は見付かっていないし、魔物はいっぱいいるし、第3王子様には邪険に思われてるし、ユーリさんはいるし……。

  せめて、魔物の討伐作戦が終わって、落ち着いてからの方が、皆の為にも良いと思う。


「それだと、学校が始まる前に他の宿題が終わりません」

  カトレアはきちんと、ケイ先生のワープの魔法を計算してから紅の魔法使いに依頼して来たみたいですね。偉いですねー。


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