雨天の山コリカ44
4人の姿が消えたのを確認し、ケイは、転移場所であるヒマリアに姿を現した。
「無事に行ったねー☆」
のほほんと告げ、湖の前まで来ると、魔法の余波も薄れていき、徐々に辺りは薄暗くなった。
「……さて、無事に帰って来れるかな」
ケイは、一言、そう呟いた。
*****
海辺の街コムタ。夜の浜辺は、以前と変わらず、人気は殆ど無い。
街に着くと、キリアはいつもの様にフードを深く被り直し、瞳を隠した。兄達2人は、瞳の色を薄い青色に戻している。
「すぐ街からは出るよ」
「うん。でも、懐かしいね」
コムタには、1番最初、まだ紅の魔法使いの家に来て2日目の依頼で来て以来。
あの時は、何も分からず、何も出来ず、家族に捨てられたばかりで、何とか頑張らないと。って、必死で、何か役に立てる事は無いかと、考えてた気がする。
「あの人間の名前なんだったっけ。いたね、屑な奴」
「ズタボロに締め上げた奴な」
そう言えば、兄さん達、ヒゲールさん半殺しにしてましたよね。今思えば、あれも結構やり過ぎな感ありましたけど……まぁ、ヒゲールさんならいいか。失礼な人でしたし、最低な人でしたからね。
思い出に浸りながら、街の中には入らず、目的地である雨天の山コリカに向かう為、外に出た。
ここから目的地までは約3日。冒険の隊列は、前と同じで、前衛クラ。真ん中にキリアとカトレア。後衛にジュン。
「幻の花コトコリカだっけ?それってどんな花なの?」
花に興味なんて無いので、知識はゼロ。コトコリカの名前すら聞いた事が無く、クラはカトレアに向かい尋ねた。
知識が無いのはクラだけで無く、キリア達も同様。調達の依頼達成の為にも必要な知識なので、カトレアの説明を、3人が待った。
「幻の花コトコリカ。その名の通り、幻と言われる程、希少な花で、ここ数百年、発見されていません」
「「「 ・ ・ ・ ・ ・ ・」」」
長い沈黙が、辺りを支配した。
「ーーー数百年、見付かっていない?」
「はい」
「そんなん見付かる訳ねーだろーが!!」
ジュンが思いの丈をありったけ叫んだ。
いや、王子様に対する態度じゃないのは重々承知で、分かる。分かるよジュン兄さん。見付かる訳無いよね?そう思っちゃうよね?でも、駄目だ!止めなきゃ!
「ジュン兄さん落ち着いて!暴力は駄目!」
胸倉を掴みかかりそうな勢いのジュンを、慌ててキリアは止めた。
「見付からなくても良いんですよ。自由研究なんですから」
「はぁ?!」
「過程が大事なんです」
兄さん達はそもそも、学校って言う物をよく知らないから、自由研究とか宿題って定義を分かって無いんですよね。そして、それをわざと説明してません。何故なら、そんなもん如きで依頼してくんな!と怒ってしまう気がしたから!
「……よく分からないけど、別に見付からなくても、ある程度の成果が残せればそれで良いって事?」
「そうですね。どんな所を探して、どんな時間帯に探して、どんな天気で探したかーーその上で、見付からなかった。でも、それは立派な自由研究になります」
言うて、ただの学校の自由研究ですからね。絶対に見付けないといけない王家の使命!とかじゃないですからね。良かった。本当に。
「依頼が達成出来るなら、もうそれで良いよ」
自由研究の意味は良く分かっていないみたいだが、依頼が達成出来るなら何でも良いと、クラは納得した。
「納得出来るか!くそ!逆に何が何でも見付けてやる!」
変に意固地なスイッチが入ったジュンは、逆に花を見つけ出そうと、燃え上がっている。
「頼もしい限りです。コトコリカは、紅い実のなる、ピンク色の花びらをしています。コトコリカの実は、万病を治す薬になると言われていて、雨が多く振る地域に生息するのが特徴で、難敵が多く、魔物達もこぞって実を食べるので、数が少なくなり、希少と呼ばれるようになったのでは無いかと言われています」
「難病…」
紅い実が、病を治す。
この世界って、紅い目に対して偏見凄いけど、紅の物って、実は凄いんじゃないの?って思ってしまうのは、私だけ?
「見付かれば、世紀の大発見で、僕は学校で表彰状を貰う事間違い無しですね」
うん。多分、そのレベルの話じゃないと思う。本当に見付かったら国を上げての成果だよ。
「その表彰状とやらを貰ったら、報酬は倍だからな!今度は、飲兵衛師匠だけじゃなく!俺の報酬も払って貰う!」
「あ、狡いジュン!」
「構いませんよ。お二人の要望をお聞きします」
流石王子様……太っ腹。
「キリアも良いですよ」
「え?」
「報酬。考えておいて下さいね」
ニッコリと爽やかな笑顔で言われてしまった。イケメン王子の笑顔は眩し過ぎます……!直視出来ない!
*****
3日後ーーー4人は、無事に雨天の山コリカに到着した。時刻は深夜、雨天の山の名に相応しく、到着する少し前から、雨が激しく降り続いていた。
全身びちゃ濡れで、寒い。思った以上に体力を奪われる。
「ねぇ、今日はもう止めない?休もう」
ガタガタと震えていると、クラ兄さんが、私の体を支えてくれた。




