友達じゃないですか43
「ふーん」
ジーッと、カトレアの剣を見るクラ。
「どうぞ」
カトレアは、鞘ごと剣を腰から外すと、クラに手渡した。
「!別に……見たい訳じゃないけど」
「そうですか。では、僕が見て欲しいので、見て頂けますか?クラは剣が好きみたいなので、是非感想を頂けたらと思います」
「別に好きじゃない」
口では否定するが、クラは素直に、カトレアから剣を受け取った。鞘から外し、刀身をじっと確認する。
「……流石、王子様が使う剣だね。綺麗に手入れされてるし、刃の出来が良い」
「良かった。そう言って頂けて安心しました」
クラから剣を受け取り、腰に戻す。
「よく紅の瞳に自分の武器を預けようと思うね。僕が、その剣で君を襲うとか考えない訳?ほいほい信用出来ない相手に武器を渡すものじゃないと思うよ」
クラなりの忠告を受け取ると、カトレアは目をパチパチと瞬きさせた後、首を傾げた。
「僕はクラを信用していますよ」
「馬鹿なの?紅の瞳をそんなに簡単に信用していい訳?」
「友達じゃないですか」
「いつ?!友達じゃないけど?!」
予想外過ぎる答えが返って来たのか、クラは思いっきり否定した。
「ええ?!友達じゃないんですか?一緒に冒険もしたじゃありませんか!」
「仕事ね?!仕事じゃ無かったら、行かないけど?」
クラの言葉に、しょんぼりとするカトレア。
基本、仕事関連で人間に接する時、人間を好きでは無いが、表面上、自分に敵対する人間以外には、礼儀正しく接しているクラだが、カトレアには素を出しているように見える。
「残念です……では、これから友達になれるように頑張りますね!」
「頑張らなくて良いけど?そんな無駄な努力する必要ある?!」
「クラ兄さん、カトレア。何してるの?もう用意出来たよ。出発しよー」
言い争いの内容は耳に聞こえていたが、急いで止める程では無いと判断し、キリアはゆっくりと支度を終え、2人に声をかけた。
不機嫌そうにカトレアを置いて、先に進むクラ。
「あの…大丈夫?」
友達じゃないとハッキリとクラに拒絶されていた。
命の危機的な物では無いし、ただの軽い言い争いかな。っと放置していたが、自分なら、友達じゃない!って言われたら、精神的ダメージはキツそう。
そもそも、王子様に対する態度では無いんだけどね……。普通に失礼極まりないよ。場所に寄っては不敬罪で牢屋行きだよ。
「大丈夫ですよ」
でも、カトレアは対して気にしていなさそう。それどころか、友達になれるように応援して下さいね!なんて、前向きな言葉を言ってる。凄いポジティブ……私なら、凄い落ち込んで、最低でも1ヶ月くらい引きづりそう……。
キリア達は、家から少し離れたある場所に着いた。
森の中にある、透き通った青い湖水の、とても綺麗な湖が広がる、どこか神秘的な場所。
「ここは…」
「ケイ先生の空間魔法、ワープで各地を繋ぐ転移場所ヒマリア。ここから、ケイ先生が空間を繋いでる箇所に行けるの」
前回のカトレアの依頼、王都に無事に送り届ける。には、王都にワープの礎が無かったから、使う機会が無かったけど、今回の目的地である雨天の山コリカは、ここ紅の森から普通に旅して、1ヶ月はかかる距離にあるらしい。
驚愕な距離に驚いたけど、ケイ先生の空間魔法で行ける海辺の街コムタからは、3日程で行ける距離らしく、コムタを経由して行く事になった。
「便利ですね、空間魔法」
「ね。ケイ先生結構あちこちワープ場所作ってるみたいで、助かるよね」
花畑の魔物を退治した時の村にも、ワープ場所があった。あそこも、普通に冒険したら結構時間がかかるって聞いた。
「紅の魔法使いのポストは、先生のワープがある場所に置いてるんだよ。じゃないと、あんまり遠かったら依頼こなすの大変でしょ?わざわざ、紅の魔法使いの住む森にまで直接!依頼に来る人間なんて普通はいないからね」
もう完全にカトレアの事を皮肉ってるよね…。クラ兄さん、仲良くする気無いってアピールしてる?
「是非、王都にも作って頂きたいですね」
「止めてくれる?!てか、無理だね。礎は先生が直接その場所に行かなきゃ作れないけど、先生は紅の森から出ないから」
引きこもり生活満喫してますからね。仕事だけで無く、私と違って、紅の瞳の色を戻せるのに、買い物にも行きません。
「おい、いーから行くぞ」
ジュンは魔法で杖を出すと、湖に向けた。
途端、大きな円形の魔法陣が湖水に浮かび、青く光り輝く。そのまま、ジュンは湖水に足を踏み入れたが、その体が沈む事は無く、水面に立っていた。
次いで、クラ、キリアも続く。
「綺麗な魔法ですね」
「ケイ先生の趣味だと思う」
多分、ワープ自体は、魔法陣さえあれば出来るはずだが、場所のロケーションに拘った結果、湖になり、光と反射して、綺麗で、水面に浮かぶ、神秘的なものになった。
実際、降り立った場所は、何も無い木の根や、浜辺の砂場等、神秘的では無いし、こんなに目立たない。いや、目立ったら困るから、魔法陣も浮かばないようにしてるのか、最小にして隠してるかの2択だと思う。
人間に見付かったら困るからね。
「取り敢えず、浜辺の街コムタまでーー」
ジュンはそう言うと、目を閉じ、杖を構え、祈りを捧げた。
ヒュンッと、4人の体が消え、光の余波だけが残る。




