秘密の同志37
軽くパニックになり、心の中で助けを求めたことで、兄達を思い出し、後ろーーー置いて行った兄達の方向を振り向いた。
「兄さんー!!」
「心配は要らないようですよ。流石、キリアのお兄さん達ですね。ニケ達の国の実力者が相手だったみたいですが、大変お強い」
遠くの方から、クラ、ジュンが息を切らしてこちらに駆け寄って来るのが見えた。
「キリアー!!」
「クラ兄さん!ジュン兄さん!」
キリアもまた、2人に向かって走り出すと、そのまま、2人の胸に抱き着いた。
「キリア!怪我は?!」
「大丈夫?遅くなってごめんね?」
ジュンとクラも、キリアを抱き締め返した。
*****
「ーーー第7王子?君が?嘘でしょ?」
感動の再会を果たした後、事の顛末について説明を受けたクラが、怪訝な表情でカトレアを見た。
「残念ながら、事実です」
ニコニコと肯定するカトレア。キリアも、隣でうんうんと頷き、肯定した。
「王子が1人で行動すんなや!てか俺等に依頼しに来んな!もっと他に頼れる場所あっただろ!」
ジュンの言い分はもっともだ。
カトレアは、ニケ達の仕業だと、証拠が無いから、ギルドも動けないと言ったが、ニケ達を捕まえられなくても、第7王子という身分なら、必ず、保護はしてくれたはずで、そっちの方が、遥かに安全だった。
「紅の森近くで襲われたのも理由の1つですが、どんな依頼も叶えてくれるとの噂を信じたのも1つです。実際、無事に送り届けて下さいました」
ギルドに送り届けるだけなら、ケイの空間魔法の一種、移動の魔法で、海辺の街コムタにでも行き、そのままギルドに送れば済んだ。
「……わざわざ自分の命を懸けてまで、したかった事でもあるの?」
クラは、神妙な趣きで、カトレアに尋ねた。
「いえ?ただ、紅の魔法使いを信じると決めた、僕自身の決断を優先しただけです」
「……ふーん」
カトレアの答えに、余り納得いっていないような表情を、クラは浮かべた。
闇夜から、もう朝日が登る。
「カトレア様」
「ああ。キリア、ジュン、クラ。僕を送り届けてくれて、本当にありがとうございます」
アレンの呼び掛けに応じ、最後に、カトレアはもう一度、大きく頭を下げ、3人にお礼を伝えた。
「依頼の報酬だが、何か要望があれば、こちらで最大限用意するがーー」
「王子様に報酬…」
「規模がデカ過ぎて僕達じゃ判断し切れないんで、一旦持ち帰って、一応の保護者に確認して良い?」
「一応…?ああ、構わない。後日連絡をくれれば、用意しよう」
アレンの問いかけに、クラもジュンも答えず、(一応)保護者のケイに丸投げを決めた。ここで高額な報酬を言って何か問題になるのも嫌だし、ちゃち過ぎるのも勿体無い。
((何かあれば全部先生(師匠)に責任をとって貰おう))
これが2人の共通の思惑だった。
「では、失礼する」
「あ…」
アレンに促され、その場を去ろうとするカトレアに、キリアは手を伸ばしーー引き下げた。
何考えてるんだろう……。もっと、お話したかったな。なんて、言える立場じゃないのに……。
ただでさえ、呪われてると蔑まれている紅の瞳で、人間とは差があるのに、カトレアは、この国の王子様だった。
(きっと、もう、会う事も無いんだろうな…)
初めて、人間と、仲良くなれる気がした。初めて、私の気持ちを、分かってくれる人間だった。
カトレアは、伸ばされた手が引き下がったのを見て、自分から、手を伸ばし、手を握った。
「!」
「キリア、また会いましょう。僕達は、同じ志を持つ同志なのですから」
「同…志!」
『僕は、紅の瞳の差別を無くしたいと思っています』
『私と……私と一緒に、紅の瞳の差別を無くすのを……手伝ってよ…!』
互いが互いに伝えた言葉を、覚えていた。
「大丈夫。きっと遠く無い未来、必ず、僕達の望みは叶います」
そう伝えると、カトレアはキリアから手を離し、アレンと一緒に、王都に戻ったーーー。
「望みって何?」
「へ?!いや、えっと…その…」
カトレアと別れ、息つく間も無く、自分達の家に戻る為足を進める最中、クラはキリアに尋ねた。
言ってはいけないことは無いが、兄達に言えば、人間と相入れるなんて無理。や、ジュンに至っては、人間嫌いなのもあって、そんな事すんな!と、止められてしまいそうな気がして、言葉に詰まる。
「えっと……いつか、街に買い物に行きたいなぁ。って、カトレアさんと……」
良い言い訳が思いつかなくて、何故か買い物を題材にしてみた。でもこれも、嘘はついてない!差別が無くなれば、買い物に行けるし!カトレアさんの名前は出す必要が無かったかも。って思ったけど、同志って言っちゃってるから、出すしか無いよね。
「あぁ?!んだその望みは?!」
「まぁまぁ。落ち着いてジュン」
クラは、怒りMAXのジュンを落ち着かせる為に、肩に手を乗せつつ、キリアから引き離した。
「買い物。ね」
「う、うん!買い物」
クラには見透かされていそうな気がしつつも、キリアは押し通した。
「あ!あそこ!野宿出来そうな場所あったよ?早く休んで、お家に帰ろ!」
話を切り上げる為にも、キリアは慌てて、今日の野宿場所を発見し、1人走り出した。
今から家に帰る為に、また来た道を戻る必要があるので、4.5日の旅路が待っている。もう夜は明け、朝。
「確かに。疲れたね。早く家に帰って、ふかふかのベッドで寝たいよ」
「帰って師匠が酔い潰れてたら、マジで1回吹っ飛ばす」
ーーーこうして、カトレアを王都まで無事に送り届け、紅の魔法使いの依頼は、無事に達成した。




