呆れる悪足掻き36
「すみません。身分を隠して入学していました」
「はぁーー?!?」
アレンに守られながら、軽く謝罪の言葉を口にする。
「カトレア様……ですから、王子である事をきちんと公言し、留学した方が良いと申したのです」
「すみません。でも、まさか命を狙われる事になるとは思わなかったので……」
普通に入学してたら、普通は、命を狙われないのだから、当然。ニケみたいな奴がいた事がおかしい。
「僕は第7王子だから、結構自由に生活させて貰ってるんです」
「嘘だろ……お前が……王子!知っていたら、俺だってー!!」
俺だって、命を狙おうとしなかった。が正解ですかね。そうですよね。流石に他国の王子様に手を出したとあれば、大問題ですよね。最悪、国によっては、物凄く重い重い刑になるのではーー?
「帰り、魔物に襲われたと聞いた時は、本当に……心臓が止まる所でした」
「あはは。心配をかけてしまってすみません」
「笑い事じゃありません!従者達を逃がして、自分が囮になるだなんて……何を考えているのか!」
魔物に襲われて私が助けた時に1人だったのは、従者達を逃がしたからだったみたい。
「だから私がお迎えに上がるとーー!」
「アレンは任務の途中だったのでしょう?なら、そちらを優先して頂かないと」
「カトレア様はこの国の第7といえど、王子なんですよ?!もう少し自覚をお持ち下さい!」
カトレアがアレンに怒涛に責められている中、ニケは騎士達に手錠をかけられた。
「待ってくれ!これは何かの間違いだ!俺様はこいつが王子だったなんて知らなかったんだ!こいつが黙ってたのが悪いんだ!俺様を貶める為にわざと教えなかったんだ!」
往生際悪く、更には意味の分からない言い分を喚き散らすニケ。
「貶める?何の為にだ?」
「それは!俺様が優秀だから、目障りでーー!」
「カトレア様は貴様を相手にもしていない。実際、お前がカトレア様の何の脅威になった?成績も勝てず、周りの信頼も得られず、親の財力と権力で従者達を使っていただけだ」
カトレアを守る騎士のアレンは、まるでゴミを見るような目で、ニケを睨み付けた。
「っ!ーーそうだ!俺様は貴族の息子だぞ?!俺様に何かあれば、父上が許さないぞ!!」
この後に及んで、父親の権力を振りかざすニケに、心底呆れてしまう。
「その父上と貴様の国には、我が国から正式に抗議しよう。我等の国の王子の命を脅かしたとしてな」
「だから、父上がーー!!」
「自覚しろ。貴様が唯一、誇れていたその父親の権力ですら、カトレア様には敵わないと。カトレア様は、貴様等の国よりも遥かに巨大な国の王子なのだからな」
「そんーーっなーー」
成績も負け、教師の信頼も、他生徒達からの人望も負けていたニケにとって、唯一勝てていたのが、親の権力であり、貴族という身分だった。
だが、それすらも、本来のカトレアの身分には敵わない。
「身分がどうであれ、誰かの命を脅かすその行為そのものが、許される物では無い。しっかり反省して下さいね」
騎士達に連行されるニケの背中に向かい、カトレアは最後に言葉をかけたーーー
「はっ!」
怒涛な展開にぽかんと呆けていたが、気付けば、周りを人間に囲まれている。
(こ…怖い…!)
騎士達の中には、冷たい視線や、警戒しているのか、睨み付けてくる人もいた。人数が圧倒的に多かったとしても、ニケ達を一瞬で一網打尽にした人達で、強いのは明白。
(な…何?私も、カトレアさんの命を狙ってたと思われてる…?怖い…!何かされるの…?!)
「キリア」
怖くて、フードを深く被り直し、俯いていると、近くに来たカトレアが、キリアの被ったフードを外した。
「命懸けで僕を守って下さって、ありがとうございました」
「え?いえ、その…依頼、だし…」
「はい。とても助かりました。僕の命が救われたのは、貴女達、紅の魔法使いのお陰です」
満面の笑みを浮かべながら、カトレアはキリアに礼を述べ、カトレアに言葉に、周りの騎士達からざわめきが起こった。
「救った…?紅の瞳が…?」
「あれだろ、紅の瞳って呪われてるってゆうーー」
喧騒の中から聴こえる声。
「ーーーキリア。と言うのか?」
「!は、はい…!」
様子を見ていたアレンが、すぐ近くまで来て、キリアを見下ろした。一瞬しか剣さばきを見ていないが、騎士達の中でも群を抜いて強いと、直ぐに分かった。
何を言われ、何かをされるのか?!と、警戒して体を強ばらせていたキリアに、アレンは、膝を付き、頭を下げた。
「カトレア様の命を救って頂けた事、心より感謝する」
「えーー」
アレンが頭を下げ、礼を述べた事で、周りの騎士達もはっ!と気付いたように、次々と頭を下げ出した。
「ありがとうございました!」
「カトレア様をお救い頂き、なんとお礼を言ったらいいかーー!!」
「え?え?え?」
一斉にお礼を言われ、戸惑うキリア。
何なに何なに何なに?!お礼?!人間が私に?!国の騎士さんが?!有り得ない!何で?!助けて兄さん達ーーーって、そうだ!




