王都まで!34
私が森に捨てられた事を知っている人間は、私を捨てた張本人である、私の元・家族達しかいない。
「いいぜ、キリア。あいつの妹のよしみで、お前の命だけは助けてやるよーーーただし、条件がある!」
私は一言も命乞いをした覚えが無いのですが、何と会話されてます?
「カトレアを殺せ!そして、あの森の中で一生引っ込んで暮らせ!そうすれば、命だけは助けてやるぜ!この俺様の寛大な対応に感謝するんだな!」
「お断りしますけど…」
「あぁ?!んだとてめぇー!!」
もう一度言いますが、命乞いをした覚えがありません。勝手に話を進めないで欲しい。
「私も…紅の魔法使いの一員です!カトレアさんは、必ず守ってみせます!」
「ああ?!」
「そ、そもそも!何で私が罪を被らなきゃいけないんですか?!絶対に嫌です!」
横暴にも程がある!勝手に罪人にされかけて、挙げ句、本当に罪人になって、森に引きこもれ!なんて、酷過ぎます!
いちいち大きな声を出すニケに萎縮しつつ、キリアはハッキリと拒否した。
「このっっ!たかが呪われてる紅い瞳の分際でー!もういい!お前等全員、殺してやる!」
自分より遥かに格下認定している紅い瞳の持ち主に馬鹿にされ、最後には、(彼なりの)寛大な優しさをハッキリと拒絶され、怒りがピークに達したらしい。ニケは、残りの従者達にも、一斉に攻撃を命じた。
辺りに一斉に集まる、魔物。
「くそっ!魔物使い(ティマー)か!」
「結構な数呼んだねー」
クラとジュンは、一旦、キリアのカトレアの元まで下がった。
前回、カトレアに怪我を負わせた時と違い、今回はハッキリとカトレアに、ニケの姿を見られている。言い逃れは出来ない。罪を露呈させない為にも、ニケ達はここで確実にカトレアを始末する必要がある。
「……守りながらこの数の魔物を相手にするのはしんどいね」
ポツリと呟きながら、クラはキリアを見た。
正直、クラにとっては、手こずる事が予想外だった。今までも、魔物相手に手こずった事はあるが、人間相手に、手こずった事は無かった。
(油断してた…!)
たかが人間だと、自分自身にも驕りがあった。
「キリア、カトレアを連れて、王都まで走れる?」
王都までの道のりは、後少し。人目を避けてきた甲斐あって、ニケ達も、ここまで自分達を発見出来ずにいたのだろう。
「走れる……けど、兄さん達はーー?」
「俺達は、魔物使い(ティマー)とその他魔物を引き受けるよ」
「そんなっ!あれだけの数なのにー!」
「足でまといがいねー方が、スムーズに倒せる」
ジュンは素直に、ハッキリと答え、それは正しかった。
「このまま4人で固まってても、ジリ貧になるのは目に見えてる。それなら、先に1番厄介な魔物使い(ティマー)と魔物を殲滅する。直ぐに追い掛けるから、それまで持ち堪えてくれるだけで良いんだ」
「持ち堪える…」
「行けるか?」
今まで何もさせてくれなかった兄達が、初めて、私を頼ってくれている。
「ーーやる!絶対、カトレアさんを守る!」
「いや、最悪、そいつは捨てろ」
(あれ?)
「自分の身の安全が1番だから、最悪、カトレアを囮にして逃げるんだよ」
「そんな事したら紅の魔法使いの評判ダダ下がりだよ!」
依頼主の護衛を最悪な形で裏切るわ、殺人の罪を被せられるわ!最低な事しか無い!
「……キリアをお願いね」
「はい。勿論です」
クラは、カトレアに視線を向けると、小さな声で、そう告げ、カトレアもそれに答えた。
*****
「風魔法!」
迫り来る追手を、必死で魔法で蹴散らしながら、王都に向かって走る。向こうも、王都に入られたらお終いだと理解しているので、必死だ。
「はぁっはぁっ」
兄さん達が、魔物使い(ティマー)と大勢の魔物を引き受けてくれたけど、ニケ達含む人間は、こちらに攻撃をしながら、追い掛けてくる。
「キリア。いざとなったら、お兄さん達が言ったように、僕を捨てて、1人で逃げて下さい」
ニケ達の狙いは、カトレア。カトレアを見捨てれば、キリアは助かるかも知れない。
「絶対に嫌です!」
が、キリアは直ぐに拒否した。
「っ!あんな……あんな人間達に、カトレアさんを殺させない!絶対!絶対助けてみせる!私達、紅の魔法使いが!」
初めて、普通に接してくれた、心優しい人間。私と同じ、紅の瞳を持つ者達への差別を無くしたいと言ってくれた。
「私と……私と一緒に、紅の瞳の差別を無くすのを……手伝ってよ…!」
誰かが、私と同じ気持ちでいてくれると思うだけで、どれだけ、心強いか。どれだけ、嬉しかったか。
私に、紅の瞳の差別を無くす。なんて、そんな大それた事が出来るとは本当は思っていない。でも、ほんの少しでも、紅の瞳を持つ者達も、ただの人間なんだって、分かってくれる人が1人でも増えて欲しい。
「キリア…」
「このっ!待て!呪われた分際で俺様に逆らいやがって!」
ニケの従者の魔法使いが、火の魔法を放ち、キリア達の行く先を妨害する。
「!道が…」
炎が前方に燃え広がり、王都が見える位置まで来たのに、足止めされた。立ち止まるしかない。
後ろを振り向くと、ニケと、その従者達が、すぐ近くまで迫り、剣士の1人が、刃を抜いた。
「止めてーー!」
カトレアを背に、キリアは杖を構え、前に立った。




