敵対15
「ケイ先生…!」
感動しました!そんなふうに、紅の瞳のイメージを変えようって思ってくれているなんて…!
「キリア、騙されないでね」
「こいつ、前来た依頼主に悪態つかれて、酔ってたのも手伝って、罵詈雑言投げ付けて、魔法で大怪我負わせて、余計紅の瞳の印象悪くしてたからな」
以降、ケイ先生が依頼主の話を聞く場所に行く事は無くなり、ジュンさんとクラさんが担当する事になったらしい。
「あの後暫く依頼が全然来なくなって、ほんと大変だったよね」
「マジで生き埋めにしてやろーかと思ったぜ」
ジュンさんもヒゲールさんに対して冷たい扱いしてたけど、更に上を行く対応を……。
「やだなぁー。俺はジュン君と違って、素直な人間には優しいよー?言ったでしゃ?聖人君子って思われなくても良いって。大怪我させた依頼主は、本当にムカつく事ばっかり言って来たから、叩きのめしただけだよ☆てか、酔ってて実はあんまり覚えて無いんだけどね☆」
あれ?もしかして皆、キレたらやばいタイプですか?ジュンさんは予想ついてたけど、クラさんも怖かったし、最後の頼みのケイ先生まで駄目?オワタな…。
「ま、でも殺すのは良くないから、とりあえず別の手を考えような。殺るのは最終手段で!」
「…最終手段でも駄目だと思いますけど…」
キリアは一気に、紅の魔法使い達の恐怖と不安を加速させた。
*****
「くそっ!どうして失敗した?!」
ヒゲールは怒りを隠さず、従者達に怒りをぶつけ、怒鳴りつけた。
「分かりませんが、依頼したチンピラ達は、捕まってこちらの名前を既に出しているようで、ギルドから事実確認の要請が来ております」
「簡単に口を破りおって!」
直属の従者により、初めから金を払うつもりが無かった事を暴露されているので、チンピラ達には口を閉ざす理由が無い。寧ろ、ヒゲールにも捕まって欲しいので、積極的に情報提供している。
「噂によると、紅の魔法使いの仕業だとか…」
「くそぉ!呪われた低俗な人間の分際でワシに逆らうとはーー!」
ヒゲールはガンッと、強く机を叩き付けた。
「ギルドの連中も勘づいてきておる…!こうなったら、手段は選んでおれん!おい!」
「はっ!」
「息子だ!息子を誘拐しろ!息子さえ人質に取れば、母親も言う事を聞かざるを得まい。あの商品の販売の権利の契約を取れば、こちらのもの!それでも拒否すれば、親子共々、魔物の餌にすれば良い!」
ヒゲールの命令を受け、従者達はバタバタと急いで部屋を出た。
「どいつもこいつも!ワシに逆らいおってー!ふん!何が紅の魔法使いだ!ワシに逆らうとどうなるか、思い知らせれやる!!」
怒りの声は、家の中に大きく響き渡った。
*****
「……どうする?やっぱり、こいつこのまま殺ったほーが良くね?」
「だ、駄目だよ…!出来るだけ穏便に…!」
「キリアは優しいねー」
昨日に続いて、今度はヒゲールの家に一緒に偵察に来ていた3人は、目の前で繰り広げられた物騒な会話を前に、ヒソヒソと話した。
「それにしても、全く気付かないんですね」
今自分達は、ヒゲールのすぐ近くにいるが、ヒゲールは一切、3人がいる事を気付いていない。
「俺は闇の魔法を得意とするからな。姿を消す事くらい訳無い」
私達の体を包む、真っ暗なレースの魔法。人の視界を遮り、相手に姿を認知させなくする魔法らしい。なんて隠密行動に優れた魔法……魔法って本当に便利だな。
「実力者なら気付かれちゃったりするけど、ヒゲール達は雑魚いからね。ジュンには敵わないよ」
ジュンの魔法により、ヒゲールは3人に気付かないまま、自分達の作戦をペラペラと話し、3人の前で間抜けな宣戦布告をしたのである。
「どうやって思い知らせてくれるんだろーね、楽しみー」
ヒゲールの宣戦布告に、クラは笑顔を浮かべるが、瞳の奥は笑っていない。
「ねぇ、どうするの?リク、このままだと誘拐されちゃうよっ」
「始末しないって選択肢しかねーなら、1番手っ取り早いのは、ギルドにヒゲールを突き出すことだ」
ギルドが捕まえてくれれば、リク達親子の身の安全は確保される。
「話を聞く限り、捕まるのは時間の問題だけど、その前に2人に危害を加えられたら、依頼達成にならないから困るね」
リクの依頼は、母親を助けること。
「じゃあ、ギルドに突き出そう!」
「簡単に言うねー」
「ほんとだぜ。殺すよりめんどくせーのに」
また物騒な事言い出しましたね!怖いよぉ!確かに!ヒゲールさん最低で、めっちゃ嫌な奴だけど!!
「駄目っ!あんな人達の為に、ジュンさんやクラさんが手を汚す必要無いよ!絶対!勿体ないから!」
「「ーーー勿体ない?」」
双子らしく、2人は同じタイミングで言葉を放ち、2人して顔を見合わすと、小さく微笑んだ。
「まぁ、可愛い妹の頼みだし」
「……仕方ねーなぁ」
言い終わると、クラは短剣を、ジュンは魔法で杖を出した。
「闇魔法」
呪文を唱えると、クラ、ジュンの姿を隠していた闇の魔法が解けた。
「なっ!何だお前達は?!」




