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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第一章 黒い宝石と怪盗の日常
8/75

第8話 開戦の兆しはさりげない日々の中に

 シルバー鋭い目でテレビをにらむ。


(そして最強の探偵『夜調牙 百賭<やちょうが びゃっか>』は、この私の両親を推理で『抹殺』した女―――――――)

挿絵(By みてみん)

「すごいですね、【探偵協会マレフィカルム】のトップも3人も…テレビ越しだけど流石に威圧感で息が苦しくなる…でも、僕もいずれ『彼等に会う事』になるんだろうな…」

「――――ん?どういう意味だ。」

「実は以前、【マレフィカルム】の使者が僕の家に来て――――」


---------------------------------------------------------------------

「右堂院探偵、それがしは非常に洞察力と記憶力の高い探偵だ。その素質、ぜひ【マレフィカルム】の為、そして日本国民の為に利用してみるがいい。」

---------------------------------------------------------------------


「―――、って勧誘が…」

「へぇ」

「あっ、申し訳ありません、何か落ち込ませるような事、言いましたか。」

「ううん。」


(――――。もし義弘君が、【マレフィカルム】に入り、【カース・アーツ使い】になったら怪盗と闘う殺し合いの日常に脚を突っ込むことになる―――――)


 13秒の沈黙。そして右堂が話題を切り出す。


「―――実は僕。『探偵』をやってるのは、ある理由がありまして。」

「『人の役に立ちたいから』でしょ?前にも言ってたじゃん。」

「変化したのですよ、それ。」

「?????????」

「――――実は最近、この町に住むとあるレディに片思いをしているんです。」

「えっ…」

「その人は強くて、才能があって、僕に勇気を与えてくれる人―――ちょっとガサツで、言動に女性らしさはあまり感じられないけどだがそれが逆に美しい……」

「………」


 ガ―――ガ――――テレビから声が聞こえる。


『ああ。最近話題の怪盗シルバーのことか。我々【マレフィカルム】も奴の捜索を行っているんだが…どうやらなかなか腕の立つ怪盗のようで、まだ影も形も掴めていないんだ…』

―――――――――――――――――――――――――――――――――

[AM13:12]


 シルバーは右堂院と別れ、愛車で家に帰る途中だった。だが……だがしかし………


「フン、奴ら付けてきてるな。予定通りだ。」

 後ろから付けてくる車が1台あった!!!!!!


 ドンゴン!!!

 停車!!!!

「降りなよ、話があるんだろ?」


 モジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオモジオ


 モジオモジオモジオモジオ


 車から降りたその男たちは依頼人のヤクザだろう…だがおかしな姿をしていた。

 3人いたが、それぞれが、目、鼻、口の『被り物』をしていたのだ!


「俺は黒田組ヤクザ――――――「口」!」

「同じくヤクザ――――――――「目」!」

「そして黒田組――――――「鼻」!」


(なるほど…ヤクザは大体頭に傷とかついてるから外見的に目立つ…この大きな被り物は、街で目立たない為の変装か!)


 彼等こそ、右堂院の依頼人。


「麻薬を見られたからには生かしておけねー!!てめぇと右堂院は死のケジメだぜ!」

「オス!!それが ヤクザの掟……」


 目のヤクザにナイフを突きつけられる!!!!!!


「コンクリ詰めじゃあついてこい!!」

「【石の旅<ストーン・トラベル>】!!!!!!!」


 鼻と目が目を抑えて悶絶する。

「目があああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「な、なんだー二人共!!!」


「カタギ、それも生身の人間相手に能力を使うのは弱いモノ虐めみたいで好きではないが、まぁこれもあの彼を守る為よ。【石の旅<ストーン・トラベル>】…二人の瞳の粘膜を『石化』した。そして……」


 グッジョッバオ!!!!シルバー『石製の針』で二人の目と鼓膜を貫く!!!!


「な、なにやってんだおめえええーーーーーーー!!!!!!!」


「お前等が二度と私達に関わらないようにするための儀式だ。

 本当は殺してやってもよかったんだけど…まぁアイツが今回の一件を警察に連絡したし確実に牢獄行きだからな。」


「てめぇも傷害罪で豚箱行きだろうがァァァ――――!!」


「証拠は何も残らないし、残さない。お前とは違う。」

 『石の針』が水へと溶けていく。

 『石の針』は【能力】で『石化』した水だった。


「た!!た!!たしゅ!!!!た、たしゅけてーーーーーーー!!!」


 組長の鼻が逃げるために振り返り走り出す!!!


「背を見せられては瞳を『石化』できないな。だが丁度いい。丁度こいつのテストがしたかった所だ。」


 ――――シルバーは背中から『石のブーメラン』を取り出しそれを依頼人の脚に向かって投げた!

 鼻の右足にブーメランがぶっささり……!!!


「ゴアアアアアッス!!!!」

「『石化』を一瞬だけ『解除』する。」


 『石化』を『解除』されたブーメランは水の塊となる。

 そしてその瞬間。


「そして、貴様の血ごと『再石化』……」

「ブーメランが俺の体と一体化して…」


 ステーン!鼻がずっこける!

「―――さぁ、そろそろ目を潰す時間だ……」





「や……やめろ……やめてぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」





 ヤクザは…邪悪な存在だ。怪盗もまた、同類。


 だが私は……清らかな気持ちで生きている……


 なぜなら私には、あら運命があるから。なぜなら私には、【D・D・F】を守るという使命があるから……。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

[同時刻 グラン家倉庫部屋]


 プロメテウスは、睦月といっしょにこの部屋の奥の壁際にいた。


「大切な話があるって聞いてきたんですが……フフッ、おいぼれさん、なにしようとしてるんですか?」

「真剣な話だよ。」

「人の胸の先っぽを視線でしゃぶってるおいぼれさんの真剣な話って一体何さ……」


「実はワシ、怪盗シルバーを探してるんじゃ。」

「―――なにゆえ、シルバーを?」(そういえばじいさん、プレムがシルバーだって事知ってないんだっけ。)


「【D・D・F<ディープ・デッド・フィラー>】という宝石を盗み出したからじゃ。アレはワシの求める宝石――――」

「【D・D・F】…?」

「――――ミス・ジェーン、お主なら知っている筈じゃ。シルバーの居所を……」

「知りませんよ。なんで知ってるって思ったんですか?」



「……お主が島風の一人娘、睦月だからじゃ。」

「――――!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 ワシはプロメテウス・グラン、またの名を怪盗アルギュロス。――――

 ワシには運命がある――――生まれた時から神より授かりし『運命』が……


 【D・D・F】を闇の者の手から死守し、世界の黄昏を回避する事……それがワシの『運命』。


 いや―――『運命』だけの運命ではない、ワシの『一族の者』なら誰もが背負う運命。当然、わが孫……プレムでさえも。


 睦月ちゃん、お主は良い娘だった。ワシが【D・D・F】にまつわる真実を話した時、プレムの身を案じて、ワシにすべての情報を教えてくれた。


 あの優しさなら、孫の良き親友になれる。ワシがこの家を去った後、彼女の寂しい心を埋め尽くしてくれるだろう。



 ワシは孫から【D・D・F】盗み出す。運命の為。ワシの為。そして―――――――プレムの自由の為。


 扉の先に、悪夢の宝石はある。








 キュップイイーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ!!!!ドンゴン!!!!!!!!!!!!!


「うっ!!!このエンジン音!!!まさか……プレムが帰宅したな……」

 プロメテウス、プレム部屋のドアノブの握りしめる力を緩くする…


「―――まだじゃ、まだ『機』ではない。孫とはいえ、怪盗のプロ。それも伝説だ。ハンパな盗みでは、必ず―――失敗してしまう。だがプレム、必ずお前から【D・D・F】を盗み出してくれるぞ。」


―――――――――――――――――――――――――――――――――

[探偵協会マレフィカルム日本支部 探偵王の間]


 白金製のゲーミングチェアで足を組みながらワインを飲む『探偵王』百賭に、部下の探偵が話しかける。



「百賭様、例の男です。」

「通せ。」


 黒マントの男が、百賭の間に入ってくる。新潟博物館館長を殺した、あの男だ。


「夜調牙 百賭――進捗どうですか?」

「ああ、既に【D・D・F】は4つ揃えている。」

「おおっ、あと一つか―――順調だな。我が悲願の達成も近いぞ…!フ……フフ…フーーーーー!!ハーーーーー!!ハーーーーーーー!!!」

 黒マント朗報に大はしゃぎ。


「そして【最後】の【D・D・F】を所持する怪盗シルバーの元へは既に刺客を送っている。」

「ン………!?まてよ百賭……貴様今日のテレビ放送では、シルバーの影も形も掴めていないとか言ってたじゃないか!!影も形も掴めていない相手に殺しの刺客を送れるものなのか!?」


「【依頼人】様!!影も形も無いってのは嘘っすよ!!!」

40代ほどの男の声がする。


 声の先は、黒マントの男の右側、そこにいたのは、高級ソファーで股をひらいてくつろぐ、『三羅偵』の一人――――東結 金次郎。


「腕の立つ怪盗ってのは、探偵の動向を知るため、ああいう番組は必ず見るんすよ。だから、あそこでウソの情報を流せば、怪盗の不意を打つ事が出来る…所謂、情報戦ってやつよ。」

「そ、そうかなるほど…!して、シルバーの元にはどの探偵を送り込んだ…!どのご当地最強探偵か…!」



「いや、奴ら程度ではシルバーを殺す事は出来ぬ……夢天耀や、凶羅たけしの二の舞だ……だから、アイツを送り込んだ……わが協会、屈指の探偵を……」

「ま、まさか……」





「そう-―――――――【三羅偵】ロンカロンカだ。」

 

 その名は、天才美少女探偵と呼ばれる少女のもの。

 だが黒マントの男の足が震える。彼の想像が、これから起こる『最悪の悲劇』を予想してしまったからだ。

 

――――――――――――――――――――――つづく。


◆怪盗名鑑◆ #2

睦月(偽名:ジェーン)

蒼髪豊満探偵。シルバーと同年代(20歳)だが、シルバーより10年遅れて怪盗になった。

外出経験が少ない為、シルバー以外との他人とのつながりがあまりない。

『能力』は自身の『影』から無数の『紫色の蟻』を召喚するというもの。(名称不明)

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