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ディープ・デッド・フィラー  作者: とくめいきぼう
第六章 ストーン・トラベルは終わりを告げる
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第71話 ストーン・トラベルは終わりを告げる


「コールドは死んだ…百賭は戦闘不能(念のため私が蟻を纏わせている)…

 や、やったのか…ついに…!私たちは…!!」


「…ああ。」


 そしてゴゴゴゴゴゴ…!!突然の地震!

 地が揺れ、合体人間が崩れる。

 その内側から紫色の眩い光が差し込む景色があった。

 合体人間の中から、星形の黒い宝石が浮かび上がるように姿を見せる!


<---暗黒の至宝の一つ。【D・D・F】……3500年ぶりに復活せし>


 遠くで宝石が美しく喋った。


「伝説と同じだ。あれは、あの黒い宝石は間違いない…」


『さあ、我と契約を結ばんとする者よ、姿を見せるがいい。』


「【D・D…F<ディープ・デッド…フィラー>】!」


 そう―――後は、願いを叶えるだけ。

 『【D・D・F】を滅ぼすという願い』を…


「終わりね。」


 シルバーのその呟きは、弱弱しく、睦月には聞こえてはいなかった。



◇ Side:Silver



 「―――――――」


 ためらいがないと言えば嘘になる。

 なぜなら行けば、死ぬ。

 私は、悪魔に食われ、終わる。

 だからこの晴れた空が私には、天からの迎えのように思えた。

 でも。


「フッ、今一瞬迷った私はクズだね。」


 10年間、この時を待ち続けていた。


「――――いかねば。」


 神の使命を達成する、この最後の一日の終わりを。

 自分の未来を捨てるのは惜しいが、これが私にできる最良の生き方なんだ。

 ここで【D・D・F】が失われることによって、多くの未来が救われる。

 ポケットから携帯端末を出す。そして、着信履歴を見る。

 睦月、エクサタ、ロル。

 ニーズエル、エクス、ジジイ、右堂院君、怪盗島風。

 そして、今まで出会った、沢山の裏世界の人間。

 思い返せば、失った思い出ばかりだった。

 でも、得たものも沢山あった。

 人では無く、神の剣として生きてきた心算だったが、何時の間にか、私の中には、消す事の出来ない記憶が生まれていた。


 だから、この思い出は、地獄まで持っていく。

 

 しかし――――何か一つ、忘れていることがあるような。


「………」


 私の肩を強く掴む人物がいる。その手は震えていた。

 ああそうだ――――別れの言葉を、忘れていた。


「こういう時は、なんて言えばいいんだろうな。」

「………」

「睦月、震えすぎだ。死ぬのは、私の方なんだぞ。」

「き、君だって全然歩けてないじゃないか………」

「………」

「不思議な事だ。常に自分の事を考えずに生きてきた女が、

 今さら――――自分を………」

 

 もう泣かないと決めたんだがな―――――


「俺がやる。」

「――――!」


 私の向かう先に、エクサタがいた。


「エ、エクサタ!」

「シルバーさん、睦月さん………後は、俺に任せてほしい。」

「エ、エクサタ君!まさか――――」


 エクサタが、何もない地面を見つめる。


「……睦月さん、安心してほしい。

 シルバーさんの願いは必ず叶う……

 俺は、もう、迷いはしない……」

「―――!」

「だから、せめて最後まで……

 シルバーさんに付き添ってやって欲しい…

 最期まで大切なものの側にいてやれないのは

 ―――俺だけでいい。」


 …エクサタは、この戦いでニーズエルを見殺しにしてしまった。

 だから、せめて、私たちが、そんな末路を辿らないようにと、気を使っている。

 ――――エクサタ。


「ありがとう。」

「………機会があれば、いずれ地獄で。」


◇ Side:Exata


 さっきまで俺は、仲間を裏切ろうとしていた。

 ニーズエル、エクス殿……

 いや、この【D・D・F】を巡る戦いで散っていた、人間達を蘇らせるために―――――

 睦月さんとシルバーさんを裏切り、【D・D・F】を横取りしようとしていた。

 しかし―――もうそんな気は無い。

 結局俺は、何の活躍も出来なかった………

 何の価値も無い男だった。

 そんな俺が、2人を騙し、ニーズエルの思いを裏切ってまで願いを叶えるなんて―――

 図が高いにもほどがある…

 

 ――………あの巨大な合体人間が崩れ、その素体になった人間が、何人も死んでいる―――

 絶望と悲しみの呻き声を鳴り響かせている。

 そう、思えば彼らは今回の戦いとは無関係の人間だ。

 俺も、ごく普通に生きていたはずなのに―――

 体を改造されて家族を殺された……


「!」


 【D・D・F】に向かって歩きながら横を眺めると、遠くに東結金次郎とその取り巻きらしき探偵たちが見えた。

 取り巻きは、俺を見るや、走って此方に向かうそぶりを見せたが、東結金次郎がそれを左腕で征する。

 そして、何やら彼らに命令をし始める。

 10秒もたたないうちに彼らはバラバラになり、合体人間の素体になった人たちの救助を開始する。

 息の無い人間に必死で心臓マッサージをする、東結金次郎……


 ―――………その光景を見て決意が固まる。

 ここで絶望している彼らは、俺だ。

 理不尽によって家族を失った――――俺と同じだ。


『汝か………我を呼び覚ましたのは。』


「………そうだ。」


『二つの質問をしよう。汝の名は?汝の目的は?』


「俺の名はエクサタ・フィン・レンブレーヌ…我が目的は……」


 俺の願いは、ただ一つ。


「【D・D・F】を―――この世から完全に消滅させる事。」


『………』


 それは、ニーズの願いであり、睦月の願いであり、シルバーさんの願い。


『なるほど。いつかこの日が来るとは思っていたが……。フフ…』


「叶えられないか?」


『いや、ルール従い、汝が望み、叶えよう』


 黒い宝石は光を放ち、上空に浮かび上がる。


『去らばだ―――――――我がパートナーよ。』


 バ――――――――――――――――


 【D・D・F】が自分を中心に凄まじい光量の閃光を放つそして――――

 爆発し、光の雨を辺りに降らした――――


「あ―――――――――――」


 その光の中に、ニーズエルとエクスの影があった。


「ニーズ、エクス殿……――――」


『エクサタ君、これでよかったのよ、これで…………』

『これが、俺達の勝利なのだ――――

 俺達"五人"は―――勝利を打ち勝つ事が出来た…………』


「嗚呼………そうだな………」


『私たちは逝く――――

 ごめんね、貴方だけはこっちに連れて行きたくないから。』

『元気でやっていけよ、体には気を付けてな。』


「…………逝かないでくれ――――」


 しかし――――無慈悲にその二人の影は雲の中に消えていった。



◇ Side: Mutsuki


「睦月、震えすぎだ。死ぬのは、私の方なんだぞ。」


 私は―――ここに来てロルの言葉を思い出していた。

 それは、彼自身がシルバーの為に調べていた、【デモニック・スカーフの悪魔】を消滅させる方法。

 『転約』。それは、悪魔が自分の契約相手を、別の人間に取り換える事。

 それをあのクラークと言う悪魔に実行させることによって、恐らくシルバーは……


 ロルが言っていた方法は簡単。

 あの悪魔の【苦手とする言葉】を

 ――――悪魔のすぐそばで囁けばいい。

 …ただ、それだけなんだ。


「なぁ、睦月………あのさ………」

「どうしたの……シルバー……」

「色々さ、エラそうな事言って―――悪かった。」

「…言ってたっけ……」

「同じ歳なのに散々先輩面してさ。」


 フフ…シルバーが自分を犠牲にすることをあんなに批難してたのに

 ―――今私は……私の命を失ってでも、目の前のシルバーを救いたくなっている…!!

 どうしよう、体が止まらないなぁ………


「フフ、そんなシルバーの事も、私……好きだったよ。」

「愛の告白じゃないよな―――」

「愛の告白じゃないよ。」


 シルバー、君は私の事、本当はどう思っている?

 私は―――私は………

 

「あの、私も………」

「?」

「睦月の事、好きだったよ。

 愛の告白じゃないけど……」


 シルバーが、恥ずかしながら、その言葉を口にする。

 馬鹿――――そんな言葉、こんな場面で言われたら………


 ギュッ……


「フフ…」


 シルバーを背後から抱きしめる。

 唇を首の魔法陣が書かれてる箇所にそっと近づけ…


「『Waiting for you beyond the deep sea<深淵のその先で貴方を待っています>…』

 さようなら、シルバー。」


 そして、最後の別れの言葉を―――口にする……

 瞬時―――【D・D・F】が爆発し、光の雨が降り注ぎ、私の目に写る最後の景色となった。


 背後から、【デモニック・スカーフ】の触手が、私に襲い掛かる。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――岐阜県における【D・D・F】大争奪戦。

死亡者…エンペラー・ゴールド、アクアマリン・クラブ、ルビー・ハート、

    エメラルド・スペード、アメジスト・イーグル、トパーズ・ダイヤ、

    黒霧四揮、グレトジャンニ、マレフィカルム専属探偵11人、

    岐阜探偵事務所の探偵12人(冥錠親子含む)。

    一般市民(17454名)。

行方不明者…夜調牙百賭、一般市民(2204名)。

損害…岐阜県崩壊。

勝者…シルバーとエクサタ、虐奈、それと…


――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「あれ、まだ死んでない………あと………」


 シルバーは、自分の体にとある違和感を感じていた。


「睦月?どこ………」


 自分を後ろから抱いていた睦月が急に消えた。

 状況が飲み込めなかった彼女は立ちあがり、辺りを見回し始めた。


「…あれ、ほ、本当にいないわ―――おーい!睦月!!」


 しかし返事は無い。


「冗談キツイわね………最後の最後に、何処行ったのよ……!」


 ………その現場に、エクサタが近づく。


「えっ………シルバー殿?」

「エ……エクサタ!睦月を、睦月を見なかった!?」

「睦月殿……?いや、シルバー殿と一緒にいたのでは…」


 ―――――……


「――――得れば失う。失えば得る。全ては等価交換。

 彼女はそう言っていた………まさか………!」

「エ、エクサタ………?」



 そう、転約は成功した。





怪盗睦月/ジェーン/加賀美 響姫―――――――――――――死亡。



―――――――――――――――――――――エピローグへつづく。

◆探偵名鑑◆ #9

夜調牙 百賭


【百賭】


異名―――乱世探偵冥王

所属―――マレフィカルム日本支部探偵王

人種―――日本人(人造人間)

開発―――六畢工業

年齢―――24歳

IQ―――350

身長―――160cm


マッレウス・マレフィカルム日本支部『探偵王』。

天才探偵を生み出す研究の過程で、この世界に生み出された存在。

高い身体能力と知能を有している。


シルバーの両親を殺した張本人にして、今回のD・D・Fに関する一連の騒動の黒幕。

自らの正義を絶対なる正義と称し、D・D・Fの願いを使用して『全人類の思想を自分色に染める』ことで、グローバル化を破壊する事を目的としている。


【エンゲル】


所属―――マレフィカルム日本支部探偵王

開発―――六畢工業

IQ―――270

年齢―――10歳


その名の意は『天使<Angel>』。

百賭が自分の弱さを精神を補うために、『マレフィカルム本社地下にある強力な二重能力者を生み出すため研究装置』を用い作り出した第二の人格。

人格の設定は『全ての人間に好まれるような絶対正義』『決して絶望しない強い精神力』『誰よりも正義感の強い心の持ち主』で、案の定暴走してヤバい。


しかし人間相当の精神の為、遺伝子強化された百賭の身体の動作には不慣れで、戦闘能力は百賭人格状態の方が高い。

その為、非常時は百賭に体の所有権をバトンタッチする事となっている。

余談だが、『探偵マスター<ディテクティブ・マスター>』の契約者は百賭、『聖なる暴力<ホワイト・キネシス>』の契約者はエンゲルである。


『能力』は2つの【カース・アーツ】

①『探偵マスター<ディテクティブ・マスター>』

 【装備型】。

 契約者の周り数十mの時を記録し、

 それを任意のタイミングで再生する事が出来る。


②『聖なる暴力<ホワイト・キネシス>』

 【装備型】。

 背中から天使の翼のように生える、4本の白槍のカースアーツ。

 槍の先を任意のタイミングで爆破することができる、攻撃特化のカースアーツだが、応用で防御力や移動力の補強も可能。

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