第7話 三羅偵
あらすじ:
シルバーは仕事の中で怪盗見習い『睦月』の試験担当となり、彼女を怪盗にする。
しかし彼女の父『島風』は突如現れた島根の探偵『凶良たけし』に殺されていくのであった。
激しい激闘の末たけしを殺したシルバー。
『睦月』はいま…
[AM7:13 鳥取県グラン家(シルバーとプロメテウスの家)]
「はあ~良い朝だぜクソジジイ」
「プレム、おはよう」
シルバーの持論その1―――『三大欲求の中で最も重要なのは睡眠である』
眠りの三時間前には必ず夕食を済ませ、寝る前にノンカフェインのティーで体を温め眠気を施す。就寝には特注のソフトな抱き枕とホットアイマスクは絶対に欠かさない。午後11時に就寝、8時間の睡眠を経て、朝7時に起床。
「ん~冷蔵庫の中には~…おい…無いぞ……」
「?」
「ボケごっこしてんじゃねぇクソジジイ!!!!冷蔵庫の冷凍室に食べ残しのホットケーキ入れてただろ!!!!コォラァァー――!!!!」
シルバーがジジイの胸ぐらをつかむ!!!
「どわあああああああああああああああああああ!!!!!」
シルバーの持論その2―――『三大欲求の睡眠以外は適当でいい』
3食なんか全部ホットケーキでもいいし、彼氏なんていなくても別に生きていけるという意味だ。
「いや本当に知らんぞ!今回に限ってワシは無実じゃ!!」
「じゃあ誰が食べるっていうんだよ!」
ドンゴン!!ホットケーキの恨みを代行した机ドン!シルバーがテーブルを強く叩く!
「あ―――、すまないプレム、ホットケーキを食べたの…私だよ。」
「あっ…『ジェーン』か…」
シルバーが声の主のいる方向に目を向けると、
――――そこにはマッサージ機に座りながら本を読む怪盗『睦月』、1週間前にウィザーズの一員になったあの睦月がいた…。
ちなみにジェーンとは―――睦月のプライベートでの『偽名』だ。
家と父親という鎧を同時に無くした事で探偵達に命を狙われる身となった彼女は、なんやかんやあって新たな住居に移住するまでの短期間、グラン家に居候するという事になったらしい!
「責めないでくれよな、冷蔵庫の中のものは何でも食べていいって言ったのはお前なんだからさ……あっ老いぼれさん、バニラ味のカントリーマアム3つ取ってくれませんか。ココア味はいらないです。なんでカントリーマアムにココア味なんてあるんだろ。」
「ええ~?」
「取ってくれたら」
睦月がドスケベを揺らし、誘惑する。
「ジェーンちゃんはかわいいなぁ!」
「久々に若いムチムチ女と会話して浮かれてんなこのエロ老害…ところで、ジェーン、新しい住居は見つかったのか?」
「うん。お蔭さまで。一週間後にはここを発つよ。」
「そうか。良かったな。」
良かったの極み。
「ずっとここに泊まってても良いんだけどなぁ」
「いえ、そこまでしてもらう訳にはいきません。私も『組織』の一員になった以上プライドがありますし…なにより、亡き父の心に答える為、一人で戦わなくては…」
「ちなみに、父親が死んだ事を暴露するのはプライベートではタブーだぞ。」
「あっ……しまっ…」
「まぁ今度から気を付けようね」
「ははは…」
睦月とシルバーが苦笑いし合う。そしてこっそりと二人の話に耳をたてていたプロメテウス(クソジジイ)は…何やら考え込んだ表情をしていた…
「――――(父親が死んだ…?まさかジェーンとは…島風の一人娘か…たしかあの現場にはシルバーがいたという報告も……ならば…)」
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[AM12:10]
睦月がグラン家に居候して既に4日目、シルバーとプロメテウスはとある二つの問題に直面していた。
―――――――食糧の消費早すぎ問題。
―――――――トイレットペーパーの消費早すぎ問題。
まぁ2人暮らしから3人暮らしに変われば、そりゃ色々なアレの消費が早くなるのは当然の理論なので一日目で気づくべき問題であった。
シルバーは、そんな問題を解決すべく、愛車のエンジンを鳴らして買い出しに出かける。
―――――――車種はビュイック・スペシャル(正式名称――" Ted & Sue Richadson's 1962 Buick Special " Bu Wicked "")。
めっちゃスピード出る車だ。
……
「ふぅ…一通り買い物終わり。腹減ったしレストランでも行くか…」
一時間ほどで一通りの買い物を済ませシルバーは昼食をするために行きつけのレストラン―――『The taste of Phoenix』に向かう。
「ジェーンには悪いけど、たまには一人でゆっくり食べたいしね…」
「―――あっ、グランさんですか?おはようございます。」
「ハ―――!?!?」
背後から男に声を掛けられるシルバー。―――謎の男。正体不明の謎の男。
「…!あ、君は確か…『探偵』の…」
紺色のコートに片側だけ発達した奇妙な前髪、身長は180㎝。優しそうな顔に鋭くとがったその目つき。
――――その男、『右堂院 義弘』、24歳私立探偵である。
「ヨシヒロ君、こんにちは。あと、何度も言ってるけど私の事はプレムでいいよ。」
「いえ、そういう訳にはいきませんよ。年下ですが、僕はあなたの事を尊敬しています。
尊敬の対象に失礼な言葉づかいをするのは、僕自身の『プライド』が許さない…。」
シルバー恥ずかしそうに頭かく。
「ふーん、真面目だなぁ。で、こんな所で何してんの。」
「依頼主の落とし物の調査ですよ。どうやら、2日前の夜中にこの付近をバイクで走ってる途中、50万ドルを入れた『肌色の財布』を鞄から落としたらしくて…」
「いつもいつも損な役回りねぇ。それにしても、肌色の財布、か…。」
「…グランさんは何か思い当りとかありますかね?」
「その依頼主が走ったルートを記した地図はある?」
「ええ、これです」
「-――なるほどね…ちょっとついてきて。」
シルバーは右堂院をとある場所に誘導する。
「これは…」
そこにあったのは、
道路のわきの溝によくある鉄で網目状のアレに挟まった『肌色の財布』であった。
「すごい、なんでここにあるってわかったんですか!?」
「前にここ歩いてる時にたまたま見つけたんだわ。」
「そ、そうですか―――――でもグランさんはいつもすごいです……この前の調査の痕跡も直ぐに見つけてしまいましたし。やっぱり私なんかよりずっと洞察力と記憶力が高いし、探偵のしての素質がありますよ!!」
「よしよしよしてよ、私探偵になるつもりなんかないわよ。(ていうか怪盗だし。)」
…………
(今日ドライブしてる間に『100m』以上離れた車内から見つけていたなんて言っても、信じられなさそうだしなぁ…ヨシヒロ君、『普通の人間』だし…
――――私には、天才怪盗一族の『血』が流れている……この体には先祖たちが遺した、天賦の才が遺伝している。身体能力の高さ、洞察力と記憶力の高さに於いては、『普通の人間』よりずっとずば抜けている。私は、生まれついての天才怪盗なのだ。)
「中身、50万ドルと依頼人が言ってた情報と一致する名刺が入ってますよ。―――――ん?なんか『白い粉』が入った袋もあるな。」
モッサァ・モッサァ
「『違法ドラッグ』だな、それ。」
「えっ……」
「成程、財布なんかを探偵に探させる時点で何かおかしいとは思ったが、依頼人は『ヤク中』か。名刺と麻薬が同時に入った財布を別の人間が見つけてしまうのはマズいから、お前に調査を依頼したんだな。」
「フエ!?フエエエエエエエエエエエエー!!犯罪ですかよ!!!」
右堂院が頭を抱える。まるで終わりの始まりを見たかのように。
「ま、依頼人次第で仕事内容が変わるなんでも私立探偵の仕事だ。こういう事も起こるだろうよ。」
「どどどどどどどどどどどどどどうすれば…」
「―――――取りあえず、こんな所で『白い粉』持って話すのもアレだ。時間もアレだしレストランにでも行こうよ。」
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[AM12:20]
米帝からの刺客。あまりのウマさで逆に激怒する舌。
―――――ハンバーグ専門のゴクジュョウ・レストゥラン"The taste of Phoenix"。
「僕はラーメン。」
「わかりましたそちらのお客様は」
「パンケーキ。」
「お客様、パンケーキはデザートでございます!!!!!!!!!」
「はやく。」
「分かりました。」
そしてパンケーキとラーメン届く…飯を食べながら二人は談笑をはじめる。
「で、あの『財布』はどうすんだ?」
「探偵としてのプライドの為、依頼遂行を優先して、依頼主に届けるか…それとも、人として、正しい道を歩むために警察に通報するか…グランさんはどうすべきだと思いますか?」
「それは私に聞く事じゃないだろ…」(真面目なのか真面目じゃないのかわからんな)
ピ―――ガシャガシャッッ!!
『え~~~!本日のゲストは…【国際探偵協会マレフィカルム日本支部】の皆さんでーす!!!』
「ん…テレビがうるさいな」
店のテレビで何やら探偵に関する特集が放送され始める。
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【探偵協会マレフィカルム】
――――正式名称マッレウス・マレフィカルム<魔女狩り>
シルバーの所属する能力者怪盗集団「ウィザーズ」に対抗するために作られた、世界規模の探偵協会だ。
ウィザーズと同様、呪いの鏡によってカース・アーツ使いを増やしているようだ。
(夢天耀、凶羅たけしもここの所属)
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「この店、テレビも置いてるんですね…それにしても、探偵特集か……」
「そういえば今日のこの時間はこの番組やるんだったな、一応(【探偵協会】の動向を知るために)録画はしているが…」
「―――――あ、あの探偵様は!」
『フッフッフ……もっと寄りなさい…!!わたしの美貌を全国放送するのです!!!!
―――――ちょっと2カメ!3カメ!あと3m寄りなさい!!小走りで!!』
シルバー画面見て驚いた。
「【天才少女探偵・ロンカロンカ】かッッッ!!!!」
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テレビの画面に、真紅のブレザーを着た金髪ツインテールの女が写る。身長は170㎝ほど、目は黒紫で鷹のように鋭い。また、胸の大きさに恵まれている。
――――彼女の名は、乱渦院 論夏…またの名を『ロンカロンカ』。
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「ロンカロンカ17歳……生まれ付き超常じみた『高い知能』を有しており、わずか『7歳』の時にマレフィカルムの一員となったという記録がある―――――超天才探偵。現在は学生。狙った怪盗は絶対に逃さない。
女性としての見た目も最高だ。人形のような顔に、細い腕と脚。
―――――そのため、ファンのオタクも多く探偵界隈のアイドル的な扱いをされる事は珍しくないし、アイコラエロ画像が匿名画像掲示板に沢山出回ったりしている。」
「あれ、グランさん意外に探偵に詳しいんですね」
「―――――まぁな…」
がやがや
『俺の苗字さぁ―――――「とうけつ」って読むんだけどォ……これ"ガキ"どもにすっげぇ弄られるんすよ―――――。あいつら、ケツとかア○○とか大好きすぎるだろ…。「半ケツ○○○麻呂」とか「プリケツ金○○」とか…
―――――ああクソッ!学生時代の嫌なメモリー思い出しちまったぜッ!ウォイ!』
ドドドドドドドドドド…………
「三羅偵のひとり、【動かぬ探偵・東結 金次郎】か……」
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ロンカロンカの次にテレビに映し出されたのは、東結 金次郎<とうけつ きんじろう>。外見は40代ぐらいのファッションセンスがカスのオッサン。
――――其れ以上に的確な例えが無い。黒いキャスケットを被り、100円で売ってそうなダサい服を着ている。
探偵協会マレフィカルム日本支部には支部内最高クラスの探偵3人に与えられる称号――――【三羅偵】が存在する。
東結とロンカロンカは―――その【三羅偵】のうちの二人である。
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「【三羅偵】の2人がテレビに出るなんて……」
「【三羅偵】……日本に生きるもので知らぬ者はいない、百戦錬磨の三人の探偵!!」
シンッ――――――テレビ番組が唐突に黙る。
「最後はやっぱりあのお方ですね…」
「―――。来るか…【日本探偵界最強の女】。」
タッ……タッ……
Voooooo........
『司会人、一つ問おう。人が人の頂点に立つ為に必要な"もの"とは…何だ?』
『フヒヒ!力。結果。資質。――――即ち"カリスマ"ですじゃ。』
『カリスマ…フフ、カリスマか…確かにそれも大事…』
Voooooooooooo........!!!!
『――――だがカリスマで立つ頂点とは…凡なる頂点でしかない……!!!
凡なる頂点では、真なる救済は行えない――――現に見ろ。支持率争いなどでトップに立った癖に、全ての民を楽園に導く力の無い奴らがこの世界にどれほど存在するか……そう、人間の頂点の歴史は…紀元前から一歩も進化はしていない。』
VOoooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!
『時は既に西暦2010年、人類の頂点の有り方を再度考え直す頃合いだと、俺は思うのだ……真に人の頂点にあるべきは"絶対正義"だよ。分かるかね司会者?』
『?????????????????????????????』
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銀髪に赤色の瞳。身長は162㎝ほどか。純白のメイド服をサイバー系のデザインにしたような恰好をしており、全身からは並々ならぬ帝王の闘気を放っている。
彼女こそ、探偵協会マレフィカルム日本支部のTOP。【三羅偵】より格上の称号を持つ女。【探偵王】。乱世探偵覇王。次期総理大臣に最もちかい女。
『夜調牙 百賭』――――その者である。
◆怪盗名鑑◆ #1
シーフ・シルバー(本名プレイマー・グラン)
褐色低身長銀髪。怪盗歴10年の美しいベテラン女怪盗。
願いを叶える宝石・DDFを手に入れるも使用方法が分からず日々を浪費する。
『能力』は触れたものや視界内の液体を『石化』する【ストーン・トラベル<石の旅>】